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出版

タイトル 平成27年度道路保全地盤技術向上の調査・研究成果報告会(<特集>第51回地盤工学研究発表会)
著者 宮田 喜壽
出版 地盤工学会誌 Vol.64 No.11・12 No.706・707
ページ HP18〜HP19 発行 2016/11/01 文書ID jk201607070024
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  • タイトル
  • 平成27年度道路保全地盤技術向上の調査・研究成果報告会(<特集>第51回地盤工学研究発表会)
  • 著者
  • 宮田 喜壽
  • 出版
  • 地盤工学会誌 Vol.64 No.11・12 No.706・707
  • ページ
  • HP18〜HP19
  • 発行
  • 2016/11/01
  • 文書ID
  • jk201607070024
  • 内容
  • 平成 27 年度道路保全地盤技術向上の調査・研究 成果報告会Debrief Session about Research and Studies on Improvement in Geotechnical Road Management宮 田 喜 壽(みやた よしひさ)(公社) 地盤工学会「平成 26 年度道路保全地盤技術向上の調査・研究助成審査委員会」委員長1.本報告会の背景地盤工学会は,道路保全技術センターからいただいた寄付を原資に,道路保全技術の向上に資する調査助成事業を平成 24 年にスタートさせた。この事業は公募制で,厳正な審査をパスした研究担当者には,最長2年間研究費が助成される。得られた成果は中間及び最終報告書として学会から公開され,研究担当者は研究発表会で実施される成果報告会で発表する流れとなっている。これま図-1 表面波探査の道路盛土への適用に関する研究(川尻ら)で,平成 24 年4件,25 年3件,26 年4件,27 年5件の助成が行われてきた。今年の報告会は5件の研究テーマが発表され,内容の質の高さ故,深いところまで踏み込んだ議論が交わされた。以下,発表の内容を簡単に紹介する。2.報告内容(1) 表面波探査の高度利用による積雪寒冷地における道路盛土の健全性評価手法の開発【担当:川尻峻三(北見工大),橋本 聖(寒地土研),川口貴之(北見工大),期間:平成 27 年度】道路の健全性を迅速に評価する技術の必要性が高まっ図-2 道路下の地中空洞崩壊メカニズムに関する研究(佐藤ら)ている。本研究では,締固め度の異なる2つの試験盛土を構築し,施工直後でのS波速度分布と乾燥密度及び含に関する研究では,多孔質領域と流体領域での流れを同水比の関連性の検討結果をもとに,盛土の健全性評価に時解析する解析法の精緻化を進め,既往の研究で提案さ対する表面波探査の適用性を検証している。さらに,降れた理論解と極めてよく一致する結果を得ている。模型雨前後で同様な検討を実施し,盛土の降雨時安定性評価実験に関する研究では,複雑な現象を室内で再現するたに対する表面波探査の適用性を検証している。以上の検めの知見を多く蓄積する成果を得ている。この研究は 28討より,表面波探査が盛土の密度条件,降雨浸透や凍結・年度が最終年度であり,模型実験と数値解析の更なる進融解に伴う盛土の状態変化を評価できることを明らかに展によって,道路陥没メカニズムの全容解明につながるしている。本研究の成果は,対象とした積雪寒冷地はも多大な成果が期待される。ちろん,様々な地域の道路盛土の健全性評価の高度化に貢献するものとして評価される。(3) 真空圧密を併用した盛土の施工における泥炭の強度増加とその推定に関する研究【担当:荻野俊寛(秋田大),(2) 外部応力による地中空洞崩落メカニズムの解明【担当:佐藤真理(島根大),藤澤和謙(京都大),期間:平成 27 年~ 28 年度】期間:平成 26 年~ 27 年度】道路は様々な地盤に構築されるが,泥炭地盤上の盛土の安定問題は古くからの技術的課題として残されている。近年,道路陥没事故が度々報じられているが,そのメ本研究では,近年施工実績を伸ばしている真空圧密を併カニズムは十分に解明されているとはいえない。本研究用した盛土工法の有効性に着目し,これを模擬した三軸では,道路陥没の要因として埋設管破損部からの土砂流試験から,真空圧及び盛土荷重によって有効応力変化を出現象に着目し,新しい浸透流解析の開発と,メカニズ受ける泥炭がどのように最終的な強度や剛性の発現に至ム解明を目的とした模型実験が実施された。浸透流解析るのかについて,実験的検討を行っている。一連の検討HP18地盤工学会誌,64―11/12(706/707) 図-5 道路陥没対策に関する研究(椋木ら)図-3 道路盛土真空圧密に関する研究(荻野)(5) 下水道管渠の老朽化に起因する道路陥没の対策工法の提案に関する研究【担当:椋木俊文(熊本大),大谷 順(熊本大),期間:平成 26 年度】道路陥没の問題については,現象のメカニズムの解明とともに効果的な対策技術の確立が求められる。本研究では,道路陥没の被害を防ぐための地盤補強技術の確立を目的に,産業用 X 線 CT スキャナ装置内での補強材料の土中引抜試験と,空洞上部に補強材を配置した模型載荷実験を実施した。一連の実験では,ジオグリッド,不織布,補強・排水両機能を有するジオコンポジットが用いられた。引抜き試験では,材料の種類によって異なる図-4 道路盛土内地下水位予測に関する研究(西村ら)の結果,軸応力と真空圧の両方を載荷した場合,両者の相乗効果によって,強度と剛性の増加は顕著になることや,載荷速度が大きい場合,一時的な強度低下が生じることを明らかにしている。本研究の成果は,真空圧密を併用する道路盛土工法の設計・施工の合理化に大きく貢献するものと評価される。(4) 気候変動への対応を視野に入れた盛土内水位予測モデルの開発【担当:西村 聡(北海道大),所 哲也(苫小牧工専),泉 典洋(北海道大),山田朋人(北海道大),期間:平成 26 年~ 27 年度】気候変動によって水理作用条件が変化し,道路盛土の安定性が損なわれる問題が懸念されている。本研究では,降雨浸透・蒸発散・築造履歴などを考慮した不飽和浸透流解析により,盛土内間隙水圧の長期・短期変動を再現・予測する手法について検討している。一連の検討の結果,間隙水圧あるいは浸潤線位置の変動形態を3つに分類し,異なる時間窓に対して浸潤線位置を推定する簡易な方法を確立している。さらに,北海道・札幌の近年の降水特性の分析を行い,盛土安定性に関わる長期リスクの有無破壊形態の違いを明らかにし,模型実験では,土中の水分分散まで考慮した効果的な補強材配置の有効性を明らかにしている。地盤補強技術はこれまで擁壁や盛土を中心に用いられてきたが,今回の研究によって陥没問題にも有効であることが明らかになった。3.おわりに以上紹介した5件の研究成果の詳細は,地盤工学会ホームページ(http://goo.gl/aryVS3)に掲載しているので,是非参照いただきたい。地盤工学会ホームページには過去の助成研究の報告書も掲載されているので,道路保全に関わる皆様には是非とも目をとおしていただきたい。新しい技術の社会実装には,研究者だけでは限界があり,様々な立場の人が関わる必要がある。地盤工学会は伝統的に立場の異なる方々が集まって,ひとつのことを成し遂げる文化がある。道路保全の問題についても,この助成事業をきっかけに問題解決のための新しい動きがでることを期待している。来年で終わるこの事業の総括の方法を,学会として考えないといけないと考えている。(原稿受理2016.10.5)を明らかにしている。本研究の成果は,地盤工学と水工学の知識融合で,効率的な道路盛土の維持管理をより長期的視野で行うことに貢献するものと評価される。November/December, 2016HP19
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