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出版

タイトル 前方後円墳の設計原理(<特集>第51回地盤工学研究発表会)
著者 新納 泉
出版 地盤工学会誌 Vol.64 No.11・12 No.706・707
ページ HP11〜HP11 発行 2016/11/01 文書ID jk201607070020
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  • タイトル
  • 前方後円墳の設計原理(<特集>第51回地盤工学研究発表会)
  • 著者
  • 新納 泉
  • 出版
  • 地盤工学会誌 Vol.64 No.11・12 No.706・707
  • ページ
  • HP11〜HP11
  • 発行
  • 2016/11/01
  • 文書ID
  • jk201607070020
  • 内容
  • ヘッ前方後円墳の設計原理Construction Design of Keyhole-Shaped Burial Mounds新納泉(にいろ いずみ)岡山大学大学院社会文化科学研究科 教授1. は じ め に等高線図が,一気に 20cm 間隔となり,設計原理の詳細な検討が可能となった。前方後円墳は,古墳時代(3 世紀中頃~6 世紀末)に築なかでも誉田御廟山古墳(応神陵古墳)は墳丘の残存かれた,日本列島にほぼ固有の形をもつ古墳である。前状態が非常に良いものの中で最大となる,墳丘の長さ方後方墳も含めて,およそ 5 200 基が築かれており,最420mである。20cm 間隔の等高線図を駆使して墳丘の後大の大仙古墳(仁徳陵古墳)は墳丘の長さ 486m と推定円部の検討をしてみると,平面形では,半径は 1 段目斜されている。主として土を用いた建造物としては世界で面:1 段目平坦面:2 段目斜面:2 段目平坦面:3 段目斜も屈指のものとなろう。最近の研究で,前方後円墳は極面:墳頂平坦面の長さの比が,2:1:2:1:6:3 となり,1 段目めて周到な設計によってつくられていることが分かってと 2 段目の平坦面の長さが 6 歩(8.4m)となった。高さきたので,それを紹介したい。は下から 5 歩:5 歩:15 歩で計 25 歩(35m)となる。2. 岡山市造山古墳の測量調査一方で前方部は,前方部隅からの稜線が中軸線と交差する点(P 点)と前方部の前端(D 点)までの間の段築造山古墳は,墳丘の長さ約 350 m の,全国第 4 位の前を検討した。D-P の 1 段目斜面:1 段目平坦面:2 段目斜方後円墳である。陵墓に指定されていないので,自由に面:2 段目平坦面:3 段目斜面:前方部頂平坦面の比が墳丘に登ることができる。私たちは,2005 年から 3 年に2:1:2:1:4:2 の 12 単位。ひとつの単位の長さは 7.5 歩で,わたって造山古墳のデジタル測量に取り組み,トータル高さは下から 6 歩:6 歩:12 部となる。驚かされるのは,ステーションを用いておよそ 120 000 点の座標を計測し7.5 歩×12 単位が 90 歩で,後円部の半径と同じになるこた。とだ。また,前方部前面の 1 段目の高さは後円部より 1墳丘は 3 段に築かれているが,この詳細な計測の結果,段の高さは下から 1:1:3 の比でつくられており,基本と歩高く,2 段目は 2 歩高く,墳頂は後円部より前方部が 1歩低くなるという,絶妙の設計となることが分かった。なる高さは 6.25mであることが分かった。また,後円部ところで,いま述べた P 点と後円部中心点までの距離の平面形をみると,半径では 1 段目斜面:1 段目平坦面:は,造山古墳では半径の 1.5 倍であったが,誉田御廟山2 段目斜面:2 段目平坦面:3 段目斜面:墳頂平坦面の長古墳では 1.25 倍に縮小している。そのために,誉田御廟さの比が,2:1:2:1:6:4 となり,1 段目と 2 段目の平坦面の山古墳は少し寸詰まりな感じがする。いずれにしてもこ長さが 6.25 m となって,高さから得られた数値と一致すのようにして設計された結果,理論上の墳丘長は,90 歩ることが明らかになった。この 6.25 m という値は,中国×2+(90 歩×0.25)+90 歩で,計 292.5 歩となる。おそで漢代から用いられた 1 尺(0.231 m)を 6 倍した「歩」らく,古墳の規模を指示されたのは,300 歩だったのだという単位の 4.5 倍にあたる。勾配は,底辺 4.5 歩,高さろう。その差である 7.5 歩は,どうやら後円部後端を引2.25 歩の直角三角形で定めており,2:1 の比で,26°余き伸ばす形で解決されたようだ。90 歩×0.25=22.5 歩なりとなる。ので,そこを 30 歩にしておけば,非常に整った設計にな造山古墳の測量によって,後円部の墳丘は段築のテラスの幅を基本単位とし,傾斜を直角三角形の底辺と高さの比で決定していることが明らかになった。るのだが,そうはなっていない。土量の節約を図ったのか,それとも別の理由があったのだろうか。前方後円墳の斜面の傾斜は,斜面の崩落を避けることができる範囲で,可能な限り急となるよう設計されてい3. 陵墓古墳のレーザー計測2010 年になって,古墳の航空レーザー計測が実施される。斜面の高さが高くなるほど斜面を緩くしていることも,他の古墳も含めた検討から分かってきた。るようになった。大阪府と堺市・羽曳野市は,百舌鳥・古市古墳群の世界遺産登録を目指し,主要な古墳の航空レーザー計測を実施し,2013 年にその成果を等高線図の形で公表した(『歴史発掘おおさか 2012』大阪府立近つ飛鳥博物館)。それまで 1m間隔の等高線で描かれていたNovember/December, 2016参1)新納考文 献泉:誉田御廟山古墳の設計原理,日本考古学,Vol.39,pp.53~68,2015.(原稿受理2016.9.23)HP11
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