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タイトル 8. 講座を終えるにあたって(平成23年度紀伊半島大水害の実態と教訓-「想定外」豪雨による地盤災害の軽減に向けた提言-)
著者 深川 良一
出版 地盤工学会誌 Vol.64 No.9 No.704
ページ 46〜46 発行 2016/09/01 文書ID 72057
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  • タイトル
  • 8. 講座を終えるにあたって(平成23年度紀伊半島大水害の実態と教訓-「想定外」豪雨による地盤災害の軽減に向けた提言-)
  • 著者
  • 深川 良一
  • 出版
  • 地盤工学会誌 Vol.64 No.9 No.704
  • ページ
  • 46〜46
  • 発行
  • 2016/09/01
  • 文書ID
  • 72057
  • 内容
  • 平成年度紀伊半島大水害の実態と教訓―「想定外」豪雨による地盤災害の軽減に向けた提言―.川良立命館大学深教授講座を終えるにあたって一(ふかがわ理工学部. 本講座を振り返ってりょういち)都市システム工学科る。大規模崩壊に関しては,基本的に付加体が密接な関係を有している。付加体は著しい変形を受け,種々の岩本講座は,平成 23 年( 2011 年) 8 月 30 日から 9 月 4石から成る混在岩ができたり,断層の上面がずり上がっ日にかけて主に紀伊半島に影響を与え続けた台風 12 号た大規模な逆断層ができたりする。大規模斜面崩壊は,によって引き起こされた土砂災害について総括したものすべり面になった逆断層の破砕帯や滑り易い流れ盤の風で,以下のような 8 章からなる。化帯で起こっていることが多い。一方,大規模土石流は,第 1 章はじめに熊野酸性火成岩類(花崗斑岩)の地層で多く発生してい第 2 章平成 23 年台風 12 号による降雨特性と紀伊半ることが特徴である。基盤岩を構成する堆積岩の熊野層島の地形・地質の特徴群では,大規模土石流や表層崩壊が少なかったことは対第 3 章奈良地域の災害の実態照的な結果であった。これらは,今後の地域の斜面防災第 4 章和歌山地域の災害の実態を考える上で大きなヒントを与えることとなった。第 5 章三重地域の災害の実態第 6 章紀伊半島大水害以降の防災・減災の取り組み第 7 章「想定外」豪雨による地盤災害への対応と教訓. お わ り に本講座でも繰り返し述べてきたが,我々は自然災害の歴史をもっと知らなければならない。筆者は滋賀県在住であるが,滋賀県民の数年前までの自然災害に対する認第 8 章講座を終えるにあたって識はかなり甘いものであった。すなわち,滋賀県は自然今回の災害は,明治 22 年( 1889 年) 8 月に発生した災害の少ない恵まれた県であると思う県民が多数を占め十津川大水害の際の降雨量にも匹敵するような降雨量をていた。そういう状況の中で平成 25 年( 2013 年)に大記録したことが大きな特徴である。結果的に奈良,和歌津市南部で連続雨量300 mm に達する豪雨があり,その山,三重を中心に大きな被害がもたらされた。3 県で死際土嚢を積み上げていた男性 2 名が負傷した。これは者・行方不明者 88 名を数えたのは痛ましいことであ滋賀県では 60 年ぶりの土砂災害による被害者であるとったが,この災害から後世のための教訓を得ることが重のことだった。しかし,その 60 年前に起こった土砂災要である。害のすさまじさを知っていれば,滋賀県は自然災害の少この災害では,大規模土石流や大規模斜面崩壊が多発ない安全な県であるというような認識はおそらく生まれし,犠牲者数の拡大や地域社会への影響の長期化等に繋ていなかった。昭和 28 年( 1953 年) 8 月に現在の甲賀がった。大規模土石流や大規模斜面崩壊に対しては,防市信楽町多羅尾地区で発生した土砂災害では,多くの斜災施設等でその力を押さえ込むことは困難であり,こう面崩壊,土石流により死者44名,重軽傷者130名を数えした大規模事象の発生予測結果に基づく効果的な避難体た。制の構築が現実的な被害軽減策であろう。各地域は,地同様な話は最近の熊本地震でもあって, 1611 年の慶形地質条件が似通っている限り,降雨に対する斜面の耐長三陸地震の後, 1619 年の肥後八代地震, 1625 年の肥性がほぼ同程度であると想定できる。ただし,100年確後熊本地震と続いたパターンとの類似性が指摘されてい率を超えるような降雨は流石に希なので,その豪雨時のる。勿論たまたま類似した可能性もあるが,こういう事耐性を実際に検証できる機会は少ない。よって,今回大実があったことを知っていれば,今回の地震についても規模土石流や大規模斜面崩壊の発生する場合の降雨条件心構えが変わっていた可能性はある。をある程度絞り込めたことは重要な成果である。また,奈良,和歌山,三重 3 県における被災地における地形地質条件の解明がかなり進んだことも特徴であ46以上のような意味で,本講座で明らかになった多くの気象特性,地域特性が歴史の風雪に耐え,今後の地域防災に長く生かされていくことを心から期待したい。地盤工学会誌,―()
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