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地盤工学会特別シンポジウム -東日本大震災を乗り越えて-

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タイトル 東日本大震災対応調査研究委員会 名簿
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出版 地盤工学会特別シンポジウム -東日本大震災を乗り越えて-
ページ 1〜8 発行 2014/05/14 文書ID 67535
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タイトル 地盤変状メカニズム研究委員会 委員会報告
著者 地盤変状メカニズム研究委員会
出版 地盤工学会特別シンポジウム -東日本大震災を乗り越えて-
ページ 9〜20 発行 2014/05/14 文書ID 67536
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タイトル 土構造物耐震化研究委員会 委員会報告
著者 土構造物耐震化研究委員会
出版 地盤工学会特別シンポジウム -東日本大震災を乗り越えて-
ページ 21〜32 発行 2014/05/14 文書ID 67537
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タイトル 地盤構造物耐津波化研究委員会 委員会報告
著者 地盤構造物対津波化研究委員会
出版 地盤工学会特別シンポジウム -東日本大震災を乗り越えて-
ページ 33〜42 発行 2014/05/14 文書ID 67538
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タイトル 地盤環境研究委員会 委員会報告
著者 地盤環境研究委員会
出版 地盤工学会特別シンポジウム -東日本大震災を乗り越えて-
ページ 43〜53 発行 2014/05/14 文書ID 67539
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タイトル 高比重変形追従材を用いた放射能汚染貯蔵技術の開発
著者 稲元祐二・成島誠一・長江泰史・水野正之・氏家伸介
出版 地盤工学会特別シンポジウム -東日本大震災を乗り越えて-
ページ 55〜59 発行 2014/05/14 文書ID 67540
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タイトル 太平洋上に流失した震災瓦礫の漂着調査-小笠原諸島硫黄島・南鳥島-
著者 山口晴幸
出版 地盤工学会特別シンポジウム -東日本大震災を乗り越えて-
ページ 60〜68 発行 2014/05/14 文書ID 67541
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タイトル 東日本大震災による津波災害廃棄物の発生原単位と発生量推定手法
著者 山中稔・豊田尚也・野々村敦子・長谷川修一
出版 地盤工学会特別シンポジウム -東日本大震災を乗り越えて-
ページ 69〜73 発行 2014/05/14 文書ID 67542
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タイトル 災害廃棄物の流動化処理土への利用に関する研究
著者 柴田英明・田中正智・韓涛・岡野剛
出版 地盤工学会特別シンポジウム -東日本大震災を乗り越えて-
ページ 74〜78 発行 2014/05/14 文書ID 67543
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タイトル 中性領域で効率的な脱水を行うことを目的とした、加圧濾過方式(フィルタープレス)を用いた脱水の評価事例
著者 水野克己・和田克彦・藤原照幸・田村明・乾徹・勝見武
出版 地盤工学会特別シンポジウム -東日本大震災を乗り越えて-
ページ 79〜85 発行 2014/05/14 文書ID 67544
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タイトル 津波堆積物のような木くず混入土の粒度試験方法に関する一提案
著者 千葉祐太朗・今西肇
出版 地盤工学会特別シンポジウム -東日本大震災を乗り越えて-
ページ 86〜92 発行 2014/05/14 文書ID 67545
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タイトル 震災がれきおよび津波堆積物由来の木屑混じり発生土の有効利用のための土質力学特性の評価
著者 風間基樹・森友宏・大沼清孝・大山浩一・相川良雄
出版 地盤工学会特別シンポジウム -東日本大震災を乗り越えて-
ページ 93〜101 発行 2014/05/14 文書ID 67546
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タイトル 腐朽過程を考慮した木片混じり土の力学特性の把握に関する研究
著者 野々山栄人・中野正樹・新木毅・浜島圭佑・岡崎稔・大塚義一・濱谷洋平・中島典昭
出版 地盤工学会特別シンポジウム -東日本大震災を乗り越えて-
ページ 102〜108 発行 2014/05/14 文書ID 67547
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タイトル 震災復興資材(分別土C種)の植栽土壌としての利用
著者 西村伸一・後藤丹十郎・山本千絵・村上賢治・珠玖隆行
出版 地盤工学会特別シンポジウム -東日本大震災を乗り越えて-
ページ 109〜113 発行 2014/05/14 文書ID 67548
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タイトル 浦安市地盤の地層構成・物理特性・力学特性の把握
著者 中井健太郎・野田利弘・中野正樹・村上孝弥・浅岡顕
出版 地盤工学会特別シンポジウム -東日本大震災を乗り越えて-
ページ 114〜122 発行 2014/05/14 文書ID 67549
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タイトル 不整形な境界から発カした表面波によって拡大した浦安市の液状化被害
著者 浅岡顕・中井健太郎・野田利弘・村瀬恒太郎
出版 地盤工学会特別シンポジウム -東日本大震災を乗り越えて-
ページ 123〜131 発行 2014/05/14 文書ID 67550
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タイトル 東北地方太平洋沖地震における浦安地区の有効応力解析―水平2 方向同時加振が地震時応答とその後の沈下に及ぼす影響―
著者 濁川直寛・桐山貴俊・福武毅芳
出版 地盤工学会特別シンポジウム -東日本大震災を乗り越えて-
ページ 132〜140 発行 2014/05/14 文書ID 67551
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タイトル マルチハードニングモデルによる浦安の液状化解析
著者 塩見忠彦・藤原良博
出版 地盤工学会特別シンポジウム -東日本大震災を乗り越えて-
ページ 141〜145 発行 2014/05/14 文書ID 67552
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タイトル 3D FEM 解析による再液状化メカニズムの解釈の試み
著者 張鋒・森河由紀弘・阪口秀・平朝彦
出版 地盤工学会特別シンポジウム -東日本大震災を乗り越えて-
ページ 146〜155 発行 2014/05/14 文書ID 67553
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タイトル 遠心力模型実験による細粒分含有率の異なる砂の沈下特性
著者 山崎智哉・風間基樹・河井正・森友宏・金鍾官
出版 地盤工学会特別シンポジウム -東日本大震災を乗り越えて-
ページ 156〜160 発行 2014/05/14 文書ID 67554
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タイトル 非塑性細粒分を含む材料の液状化強度・被害の評価に関わる密度指標の再考
著者 金鍾官・風間基樹・河井正・森友宏
出版 地盤工学会特別シンポジウム -東日本大震災を乗り越えて-
ページ 161〜167 発行 2014/05/14 文書ID 67555
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タイトル SYS Cam-clay model への超弾性構成式の適用
著者 山田正太郎・野田利弘・浅岡顕・中井健太郎
出版 地盤工学会特別シンポジウム -東日本大震災を乗り越えて-
ページ 168〜174 発行 2014/05/14 文書ID 67556
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タイトル 2011 年東北地方太平洋沖地震で被災を免れた仙台塩釜港向洋埠頭桟橋背後地盤の液状化ポテンシャルと残留変形
著者 仙頭紀明・谷田貝航・佐野峯麻聖
出版 地盤工学会特別シンポジウム -東日本大震災を乗り越えて-
ページ 175〜181 発行 2014/05/14 文書ID 67557
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タイトル 平成23 年東北地方太平洋沖地震でみられた締固め改良による地盤の変形抑止効果の検証
著者 竹内秀克・野田利弘・中井健太郎・高稲敏浩
出版 地盤工学会特別シンポジウム -東日本大震災を乗り越えて-
ページ 182〜188 発行 2014/05/14 文書ID 67558
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タイトル ジオテキスタイル補強土を用いた盛土の耐震メカニズムの数値解析による把握
著者 酒井崇之・辻慎一郎・中野正樹・野田利弘・田代むつみ
出版 地盤工学会特別シンポジウム -東日本大震災を乗り越えて-
ページ 189〜197 発行 2014/05/14 文書ID 67559
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タイトル 間隙水圧消散工法の液状化対策効果の予測に関する水~土連成解析
著者 野中俊宏・山田正太郎・野田利弘・矢藤彰悟
出版 地盤工学会特別シンポジウム -東日本大震災を乗り越えて-
ページ 198〜204 発行 2014/05/14 文書ID 67560
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タイトル 地震後も続く粘性土地盤の長期圧密沈下挙動の解明
著者 磯部公一・大塚悟・高原利幸
出版 地盤工学会特別シンポジウム -東日本大震災を乗り越えて-
ページ 205〜211 発行 2014/05/14 文書ID 67561
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タイトル 亀裂進展解析による地震時の河川堤防分離破壊の解明
著者 新保泰輝・矢富盟祥
出版 地盤工学会特別シンポジウム -東日本大震災を乗り越えて-
ページ 212〜218 発行 2014/05/14 文書ID 67562
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タイトル 粘土基礎地盤上の河川堤防の被災メカニズムに関する一考察
著者 小高猛司・野田利弘・吉川高広・高稲敏浩・李圭太・崔瑛
出版 地盤工学会特別シンポジウム -東日本大震災を乗り越えて-
ページ 219〜224 発行 2014/05/14 文書ID 67563
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タイトル 軟弱地盤上の矢板補強した河川堤防の地震時評価
著者 野田利弘・中井健太郎・加藤健太
出版 地盤工学会特別シンポジウム -東日本大震災を乗り越えて-
ページ 225〜231 発行 2014/05/14 文書ID 67564
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  • タイトル
  • 東日本大震災対応調査研究委員会 名簿
  • 著者
  • 出版
  • 地盤工学会特別シンポジウム -東日本大震災を乗り越えて-
  • ページ
  • 1〜8
  • 発行
  • 2014/05/14
  • 文書ID
  • 67535
  • 内容
  • 地盤工学会特別シンポジウム-東日本大震災を乗り越えて-東日本大震災対応調査研究委員会 名簿地盤変状メカニズム研究委員会【委員長】浅岡顯名古屋大学名誉教授公益財団法人地震予知総合研究振興会【副委員長】風間基樹東北大学大学院工学研究科塩見忠彦株式会社マインド土木工学専攻【幹事長】野田利弘名古屋大学減災連携研究センター【委員】石丸真一般財団法人電力中央研究所磯部公一長岡技術科学大学環境・建設系海野寿康五洋建設株式会社東北支店宇野浩樹大成建設株式会社技術センター技術企画部企画室大塚悟長岡技術科学大学環境・建設系大矢陽介独立行政法人港湾空港技術研究所金田一広株式会社竹中工務店河井正東北大学木村誠株式会社間組技術・環境本部技術研究所菊池喜昭東京理科大学理工学部 土木工学科菊本統横浜国立大学大学院 都市イノベーション研究院桐山貴俊清水建設株式会社小高猛司名城大学理工学部社会基盤デザイン工学科小濱英司独立行政法人港湾空港技術研究所酒井崇之名古屋大学大学院佐々木地球工学研究所地震工学領域技術部大学院工学研究科耐震構造研究チーム土木工学専攻技術研究所地震防災研究領域耐震構造研究チーム工学研究科社会基盤工学専攻広島大学名誉教授新保泰輝五大開発株式会社菅野高弘独立行政法人港湾空港技術研究所仙頭紀明日本大学工学部土木工学科高稲敏浩株式会社淺沼組技術研究所高橋章浩東京工業大学竹内秀克株式会社不動テトラ田代むつみ名古屋大学大学院鋒地震防災研究領域技術研究所建設技術研究部康張(技術研究所 土木グループ)技術研究所大学院理工学研究科地盤事業本部技術部工学研究科社会基盤工学専攻名古屋工業大学大学院工学研究科創成シミュレーション工学専攻1 辻慎一朗前田工繊株式会社地盤防災推進部土屋光弘西松建設株式会社 土木施工本部土木設計部設計課中井健太郎名古屋大学大学院中井照夫名古屋工業大学名誉教授永井裕之株式会社安藤・間技術本部土木研究部中野正樹名古屋大学大学院工学研究科社会基盤工学専攻濁川直寛清水建設株式会社技術研究所萩原協仁基礎地盤コンサルタンツ株式会社工学研究科社会基盤工学専攻株式会社地域地盤環境研究所 名古屋事務所中部支社技術一部Hemanta Hazarika九州大学工学研究院Hossain MD. Shahin名古屋工業大学大学院橋口公一九州大学名誉教授第一工業大学教授福武毅芳清水建設株式会社技術研究所村上哲茨城大学工学部都市システム工学科友宏東北大学大学院工学研究科森工学研究科創成シミュレーション工学専攻土木工学専攻山田正太郎名古屋大学大学院山川優樹東北大学山崎浩之独立行政法人港湾空港技術研究所吉田洋之東電設計株式会社李圭太渡邊直人工学研究科社会基盤工学専攻大学院工学研究科土木工学専攻地盤・構造部地盤防災研究領域動土質研究チーム建築本部建築原子力部株式会社建設技術研究所株式会社ケー・エフ・シー大阪本社地盤構造室技術部基礎工開発課土構造物耐震化研究委員会【委員長】龍岡文夫東京理科大学理工学部土木工学科理工学部建設環境工学科【副委員長】安田進東京電機大学古関潤一東京大学生産技術研究所人間・社会系部門【幹事長】谷和夫独立行政法人防災科学技術研究所減災実験研究領域 兵庫耐震工学研究センター【副幹事長】橋本隆雄株式会社千代田コンサルタント高橋章浩東京工業大学大学院後藤聡山梨大学東日本事業部地域整備部理工学研究科土木工学専攻大学院医学工学総合研究部【委員】足立有史株式会社間組土木事業本部技術第二部大井昌弘独立行政法人防災科学技術研究所2社会防災システム領域 大島昭彦大阪市立大学大学院工学系研究科都市系専攻大林淳株式会社不動テトラ沖村孝財団法人建設工学研究所小椋仁志株式会社ジャパンパイル笠間清伸九州大学門田浩一パシフィックコンサルタンツ株式会社規矩大義関東学院大学清田隆東京大学生産技術研究所近藤勉川崎地質株式会社佐伯英一郎日之出水道機器株式会社佐藤真吾株式会社復建技術コンサルタント仙頭紀明日本大学塚本良道東京理科大学東畑郁生東京大学大学院時松孝次東京工業大学大学院豊田浩史長岡技術科学大学中井正一千葉大学大学院工学研究科建築・都市科学専攻都市環境システムコース中出剛株式会社熊谷組土木事業本部人見孝独立行政法人都市再生機構技術調査室平出務独立行政法人建築研究所眞島正人株式会社設計室ソイル松下克也株式会社ミサワホーム総合研究所技術開発部構造研究室宮本順司基礎地盤コンサルタンツ株式会社関西支社地盤技術部山内崇寛前田建設工業株式会社若井明彦群馬大学大学院若松加寿江関東学院大学阿部長門東亜道路工業株式会社石川敬祐東京電機大学稲川雄宣株式会社大林組技術研究所内山伸清水建設株式会社大北耕三株式会社大北耕商事大塚悟長岡技術科学大学桑野二郎埼玉大学神田政幸公益財団法人鉄道総合技術研究所構造物技術研究部基礎・土構造研究室小濱英司独立行政法人港湾空港技術研究所地震防災研究領域耐震構造研究チーム櫻庭拓也株式会社 CPC地盤事業本部技術本部技術開発部大学院工学研究院建設デザイン部門防災地盤工学研究室大阪本社環境・エネルギー部工学部社会環境システム学科事業本部地盤グループ新技術ビジネス開発室計画部工学部土木工学科理工学部土木工学科工学系研究科社会基盤学専攻理工学研究科建築学専攻環境・建設系土木設計部土工・開削グループコスト管理・都市環境チーム構造研究グループ土木事業本部土木設計・技術部技術開発グループ工学研究科工学部社会環境システム学科技術部建築・都市環境学系地盤技術研究部技術研究所環境・建設系地圏科学研究センター3 佐々木哲也独立行政法人土木研究所地質・地盤研究グループ澤田俊一応用地質株式会社エンジニアリング本部地盤解析部竜田尚希前田工繊株式会社開発技術部田中俊行鹿島建設株式会社技術研究所田山聡株式会社高速道路総合技術研究所中村邦彦一般財団法人電力中央研究所西村学パシフィックコンサルタンツ株式会社林豪人岡三リビック株式会社土質・地盤グループ道路研究部地球工学研究所大阪本社交通技術部技術部技術企画室平野孝行西松建設株式会社土木設計部藤原斉郁大成建設株式会社技術センター土木技術研究所藤原寅士良東日本旅客鉄道株式会社松岡元名古屋工業大学松島健一独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構農村工学研究所三神厚徳島大学大学院ソシオテクノサイエンス研究部(工学部建設工学科)安福規之九州大学地盤・岩盤研究室地盤力学チーム建設工事部構造技術センター施設工学領域土質担当【オブザーバー】末岡徹大成建設株式会社技術センター地盤構造物耐津波化研究委員会【委員長】菊池喜昭東京理科大理工学部 土木工学科【副委員長】菅野高弘独立行政法人港湾空港技術研究所富田孝史独立行政法人港湾空港技術研究所 アジア・太平洋沿岸防災研究センター(兼 WG 主査)【幹事長】池野勝哉五洋建設㈱ 北陸支店【副幹事長】田地陽一清水建設㈱ 技術研究所【WG 主査】池谷毅鹿島建設㈱ 技術研究所前田健一名古屋工業大学 都市社会工学科・環境都市系プログラム宮田喜壽防衛大学校 システム工学群建設環境工学科水野健太若築建設㈱ 建設事業部門 技術設計部技術課【委員】磯部公一長岡技術科学大学環境・建設系井上修作㈱竹中工務店 技術研究所 地震工学部4 上野勝利徳島大学大学院織田幸伸大成建設㈱ 技術センター 土木技術研究所 水域・環境研究室春日井康夫ソシオテクノサイエンス研究部九州大学大学院加藤亮輔㈱日建設計シビル 地盤調査設計部金田一広㈱竹中工務店 技術研究所 建設技術研究部越村俊一東北大学大学院小島謙一公益財団法人鉄道総合技術研究所 構造物技術研究部基礎・土構造近藤巧㈲K&Ocorporation佐伯公康独立行政法人水産総合研究センター 水産工学研究所 水産土木工学部 水産基盤グループ桜庭雅明日本工営株式会社 中央研究所佐々真志独立行政法人港湾空港技術研究所 地盤研究領域動土質研究チーム佐々木哲也工学研究科災害制御研究センター総合技術開発部独立行政法人土木研究所 つくば中央研究所材料地盤研究グループ(土質・振動)佐藤孝次東亜建設工業㈱ 土木事業本部エンジニアリング事業部防災事業室佐藤誠一日本工営㈱ コンサルタント国内事業本部 地盤環境部佐野郁雄大阪産業大学 工学部都市創造工学科澤田豊神戸大学大学院 農学研究科 食料共生システム学専攻塩崎禎郎JFEスチール㈱ スチール研究所 土木・建築研究部塩見忠彦㈱マインド下迫健一郎独立行政法人港湾空港技術研究所 海洋研究領域末次大輔佐賀大学 低平地沿岸海域研究センター諏訪義雄国土交通省国土技術政策総合研究所 河川研究部海岸研究室高橋正美大成建設㈱ 土木本部 土木設計部 海洋設計室土田孝広島大学大学院 工学研究科社会基盤環境工学専攻寺島彰人パシフィックコンサルタンツ㈱ 大阪本社 国土保全事業部常田賢一大阪大学大学院 工学研究科地球総合工学専攻土橋和敬前田工繊㈱ 水環境保全推進部飛田哲男京都大学防災研究所二瓶泰雄東京理科大学理工学部 土木工学科野田利弘名古屋大学大学院工学研究科社会基盤工学専攻Hemanta Hazarika九州大学橋口公一九州大学原田典佳新日鐵住金㈱ 建材開発技術部 土木基礎建材技術第二室平井俊之㈱ニュージェック 港湾・海岸グループ沿岸防災チーム藤澤和謙京都大学大学院 農学研究科地域環境科学専攻松島健一独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構 農村工学研究所 施設工学研究領域松田達也豊橋技術科学大学建築・都市システム学系5 松田信彦東亜建設工業㈱ 技術研究開発センター 水圏・環境技術グループ宮本順司東洋建設㈱ 総合技術研究所 鳴尾研究所 地盤環境研究室八木宏独立行政法人水産総合研究センター 水産工学研究所 水産土木工学部 水産基盤グループ安原一哉茨城大学山田正太郎名古屋大学大学院山之口寛前田建設工業㈱ 土木事業本部 土木設計部吉田誠五洋建設㈱技術研究所 耐震構造チーム若林祐一郎基礎地盤コンサルタンツ㈱ 保全・防災センター 維持保全設計部地盤環境研究委員会【委員長】勝見武京都大学【副委員長】遠藤和人独立行政法人国立環境研究所【幹事長】乾徹京都大学【幹事委員】今西肇東北工業大学小峯秀雄早稲田大学佐藤研一福岡大学保高徹生独立行政法人産業技術総合研究所【委員】赤司有三新日鐵住金株式会社浅田素之清水建設株式会社足立達彦株式会社立花マテリアル阿南修司独立行政法人土木研究所飯塚敦神戸大学伊藤健一宮崎大学稲積真哉明石工業高等専門学校岩下信一応用地質株式会社打木弘一基礎地盤コンサルタンツ株式会社大河原正文岩手大学大塚義一株式会社奥村組大野博之株式会社環境地質大嶺聖長崎大学大山将株式会社鴻池組6 岡田朋子株式会社ボルクレイ・ジャパン小澤一喜鹿島建設株式会社風間基樹東北大学加藤雅彦岐阜大学北岡幸応用地質株式会社久保田俊美久保田リスクマネジメント研究所小竹望香川高等専門学校齋藤春佳株式会社エスイー斉藤広鹿島建設株式会社五月女寛川崎地質株式会社肴倉宏史独立行政法人国立環境研究所阪本廣行株式会社フジタ佐々木清一和歌山工業高等専門学校佐々木秀幸岩手県佐藤研一福岡大学佐藤毅東洋建設株式会社佐藤透西松建設株式会社佐藤靖彦西松建設株式会社三反畑勇株式会社安藤・間柴田英明国士舘大学島田茂富二設計コンサルティング株式会社珠玖隆行岡山大学神宮司元治独立行政法人産業技術総合研究所菅野友紀株式会社竹中土木鈴木弘明日本工営株式会社隅倉光博清水建設株式会社仙頭紀明日本大学高井敦史京都大学高尾肇日揮株式会社高畑陽大成建設株式会社中川雅夫五洋建設株式会社中島誠国際環境ソリューションズ株式会社中野正樹名古屋大学成島誠一西武建設株式会社西村修一中央開発株式会社西村伸一岡山大学7 西山畠勝栄俊郎株式会社建設技術研究所富山県立大学八村智明一般財団法人日本環境衛生センター藤川拓朗福岡大学松山祐介太平洋セメント株式会社三浦俊彦株式会社大林組水野克己大阪ベントナイト事業協同組合門間聖子応用地質株式会社山田優子応用地質株式会社山中稔香川大学山本達生前田建設工業株式会社吉野博之八千代エンジニヤリング株式会社吉村貢ソイルアンドロックエンジニアリング株式会社8
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  • ページ
  • 9〜20
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  • 2014/05/14
  • 文書ID
  • 67536
  • 内容
  • 委員会報告地盤工学会震災対応研究委員会「地盤変状メカニズム研究委員会」1.は じ め に(当研究委員会の背景と目的)/地層構成や入力地震波の影響,再液状化の可能性と将来の地盤変状予測など会長特別委員会の下に設置された「地盤変状メカニズムWG2:塑性・非塑性細粒分含有率の影響と構成式による再現研究委員会」に課せられた命題は,旧来の枠に囚われない新しい地盤力学・地盤工学の展開,つまり「学術の飛躍的‐塑性・非塑性細粒分含有率の影響のモデル化発展」であった。委員会ではこのため,次の 2 点を主たるWG3:地震中・地震後に粘性土地盤に生じる変状‐地震中・地震後に粘性土地盤に生じる変状目的として掲げた。1) 地震による地盤変状のメカニズムの解明と新しい学理WG4:造成宅地‐谷埋盛土に生じた変状の把握と再現,側方流動抑止の構築工法の検討経験に基づく多くの現行設計指針等は,想定された限定条件での現象を効率よく評価するものではあるが,これをWG5:堤防・盛土構造‐河川堤防に生じた地震による変形・破壊挙動,ため超える現象に対しては概して無力である。常時-地震中-地震後を対象に,様々な土の材料特性のあるがままのモデ池の浸透と耐震ル化に基づく地盤変状のメカニズムの解明と,将来の地盤WG6:港湾・海岸構造物‐耐津波化委員会(菊池喜昭委員長)との連携挙動を予測する新しい地盤力学の学理の構築を行う。2) 地盤変状と強震動特性の関係の分析・検討WG7:各種地盤改良・地盤補強工法・耐震メカニズム。‐密度増大工法, 排水工法, ジオテキスタイルの効果強震動特性(卓越周期,継続時間,指向性など)とそれによって変状が生じた地盤の特性(材料特性,地盤構造,境界条件,固有周期など)との関係を分析する。また,強委員会としての活動状況報告の概要3.震動履歴が地盤変状・変形(再液状化など)に及ぼす影響についても分析・検討を行う。3.1研究方針/成果目標には次の 3 点を掲げた。定例委員会定例委員会は 2011 年 9 月 20 日,第 1 回を皮切りに,21) 学学・産産はもちろん産官学共同研究の実を挙げる~3 か月に 1 度のペースで合計 13 回開催した(平均参加2) 研究者の世代交代を一気に加速させる,および者:20 名程度)。主として,前半の委員会では,東日本大3) 国際化の推進。震災における河川堤防・高速道路盛土・海岸構造物・ため池などの地盤・土構造物の被災状況や地盤改良の有効性に1)は異なる組織に所属する委員間の活発な研究交流を,2) は 40,50 代研究者が牽引する新規研究の開拓と 30 代関する講演(表 1)による情報提供と質疑応答を通じて,研究者との強力な連携による研究促進を,3)は研究成果と地盤力学・地盤工学上の課題抽出を行った。後半では,7して Soils and Foundations への積極的投稿を指す。つの WG の研究進展状況等の説明と各委員間での共有を委員会は浅岡顕委員長,風間基樹副委員長,塩見忠彦副図るため,集中討議・関連研究報告などを継続的に行い,委員長を含む 47 名(別紙の名簿参照)で構成した。委員問題点・課題の整理に役立てた。会の活動としては,東日本大震災に関係する講演企画および 7 つの WG による研究報告と質疑を行った定例委員会の表 1 講演者と講演題目ほか,震災の現地視察会,構成モデルの考え方・適用例を講演者(所属)講演題目検討する「地盤材料の構成モデルワークショップ」(中井1林健太郎氏(五洋建設)浸透固化処理工法と DEPP 工法照夫座長)を開催した。以下では,これらの概要を示す。2原田健二氏(不動テトラ)東北地方太平洋沖地震における地盤改良効果3佐々木康氏(広島大学名誉教授)河川堤防の耐震性能照査の課題4小濱英司氏(港湾空港研究所)港湾関係施設の被害5野津厚氏(港湾空港技術研究所)港湾関係施設の被害当委員会では,目的実現のために,委員会の中に次の 76川越清樹氏(福島大学)農業用ダムの被害事例つの項目の研究 WG を設置した。各 WG の研究成果は後7安部哲生氏(高速道路総合技術研究所)東北地方太平洋沖地震における高速道路の被害事例2.委員会の体制と研究テーマ述する。WG1:浦安市の埋立地盤の液状化3.2- 表層埋立土および深部粘性土の物性把握,埋立履歴東日本大震災の現地視察会第 47 回地盤工学研究発表会(八戸大会)最終日(20129 地盤工学会震災対応研究委員会「地盤変状メカニズム研究委員会」年 7 月 16 日)に松島に集合し,翌 17 日,松島~石巻市(瓦モデル,液状化流動変形時の応力~ひずみ,軟岩用 Cho礫集積)~女川町(津波被害,RC 構造物の転倒)~鳴瀬熱弾粘塑性モデル等である。各発表者の発表時間が最大1川堤防の破堤~折立団地(谷埋め盛土造成地の被害)~仙時間という短い時間であったが,モデルの特徴を分かりや台東部道路~仙台空港~JR仙台駅の工程で,現地視察会すく説明していただいた。弾塑性力学に基づくものから設を開催した。計等で用いられている応力ひずみ関係を定義するものなどさまざまであった。弾塑性や粘塑性の構成式の違い,動的から静的をいかに整合してパワフルにモデル化するかなど多くの質疑があり,真夏の2日間であったが白熱した議論が展開された。地盤の構成式についての社会的注目度が高いことが実感された。どうしても解析モデルではパラメータの設定についての話題になる。パラメータが少なくさらにそのパラメータに物理的な意味があるほど理解しやすい。第1回で抽出されたこのようなパラメータの設定について第2回の構成モデルで解説されていくことが期待された。写真 1 鳴瀬川の堤防崩壊の説明を真剣に聞く視察会参加者(2) 第2回地盤材料の構成モデルのワークショップ3.3日時:2013 年 5 月 27 日(月)成果報告・委員会活動状況報告の公表場所:地盤工学会地下会議室第 47 回地盤工学研究発表会(八戸)と第 48 回地盤工学参加者:発表者,参加者含め 65 名会研究発表会(富山)では,一般セッションでそれぞれ 8第2回目は実際の土材料の力学挙動の構成式による再編と 7 編の成果報告を行った。第 49 回地盤工学会研究発表会(北九州)でも同程度以上の成果報告を予定している。公開の場では,「東日本大震災に関するシンポジウム」現を目的に実施された。具体的に委員会から提示する次の2つの実験データを用いたシミュレーション解析である。(2012 年 4 月 24 日)では当委員会の目的などを紹介し,1.浦安市から採取した土試料の各種室内力学試験「地盤工学会特別シンポジウム-東日本大震災を乗り越え2.K 0 制御オンライン地震応答実験による地震後の残留変て-」(2015 年 5 月 14, 15 日)では委員会の活動成果とし形評価て,関連論文を 18 編投稿予定である。また,今後それら10 名の講演者により上記の再現結果について紹介があの成果をまとめ,委員が各自 Soils and Foundations への投った。紹介されたものは 1.偏差応力による主降伏曲線同定稿し,世界に発信予定である。(浦安地盤), 2. Subloading tij model(浦安地盤), 3. Cyclic3.1 で述べた委員会での質疑内容など,13 回分の委員会mobility model(浦安地盤), 4.SYS Cam-clay model(浦安地盤),5. 足立・岡モデル(浦安地盤), 6. Okaらの繰返し弾塑性モデ議事録は,地盤工学会ホームページに掲載している。ル(K 0 制御オンライン地震応答実験), 7. 下負荷面モデル4.構成式ワークショップ報告(浦安地盤), 8. ひずみ空間多重せん断モデル(カクテルグラスモデル系)(浦安地盤), 9. おわんモデル(浦安地盤), 10.定例委員会とは別に,「地盤材料の構成モデルワークシMulti-hardening model(浦安地盤,K 0 制御オンライン地震応ョップ」を3回開催した。静的・動的を問わず,様々な地答実験)であった。浦安地盤のモデル化についての発表が盤材料の構成モデルの考え方を整理し,個々の構成モデル多かったが,複雑な履歴を持つK0 制御オンライン地震応の特徴と地盤の解析への適用性を明確にすることを目的答実験の発表もあった。特に浦安地盤では粘土,シルト,とし,各種構成モデルの紹介,それらによる浦安で採取さ砂質土の排水・非排水三軸圧縮試験,液状化試験や動的三れた試料の実験結果の説明可能性および各構成モデルに軸試験,さらに粘性土では不攪乱,攪乱した圧密試験などよる浦安の液状化のメカニズムなどについて議論した。様々なデータが提供された。各参加者はその中のデータを(1) 第1回地盤材料の構成モデルのワークショップ選択してモデルと実験データの比較および解析に用いた日時:2012 年 8 月 9 日(木),10 日(金)パラメータの設定方法について説明をしていただいた。同場所:地盤工学会地下会議室じ実験データをこれほど多くの地盤構成モデルで再現し参加者:発表者,参加者含め約 100 名たものはおそらく初めてだと思われる。それぞれのモデル第1回目は地盤材料の構成モデルについて 13 名の講演についての詳細はここでは述べないが,配布資料に多くの者から解説をしていただいた。主なモデルは,tij モデル,情報を提供していただいた。質疑としては,やはりパラメSYS カムクレイモデル,関口・太田モデル,ひずみ空間多ータの設定方法について多くなされた。動的シミュレーシ重せん断モデル,拡張下負荷面モデル,マルチハードニンョンをする場合は初期剛性が重要になってくるため,ポアグメカニズムモデル,非定常流動曲面型弾粘塑性モデル,ソン比と初期剛性についての議論があった。さらに,中間液状化砂の粘性流体モデル,非線形三要素モデル,おわん主応力の適切な評価の必要性や土骨格構造の影響につい10 ての説明,繰り返し載荷後の排水に伴う体積圧縮など活発ド津波再現解析,建物転倒の数値解析などの紹介があった。な質疑が展開された。第3回は構成式による室内試験の同仙台折立地区における地震時の斜面すべりの解析を動的定がなされた後の境界値問題としての構成式の適用性にX-FEM で実施し崩壊メカニズムについての紹介があった。ついて議論することとなった。また東日本大震災に限らず,三軸圧縮試験における主降伏曲面の同定や,マクロエレメント法を用いたバーチカルド(3) 第3回地盤材料の構成モデルのワークショップ日時:2014 年 1 月 9 日(木),10 日(金)レーン工法についてのシミュレーション紹介があり,最近場所:地盤工学会地下会議室の数値解析の成果について大いに盛り上がった。参加者:発表者,参加者含め62名(4)3回の構成式ワークショップを通して第3回目は構成式の初期値・境界値問題への適用に関し液状化問題を含め地盤の変形・破壊問題を合理的に予測て実施された。テーマとして下記の2つを設定した。するためには,鋼構造などの上部構造同様,境界値問題と1.東日本大震災関係の地盤解析の紹介して地盤の変形から破壊までを一貫性をもって解析する2.その他構成式を用いた最近の解析事例必要がある。そこでは,一般的な応力条件下の地盤材料の特に,1.東日本大震災関係の解析事例では,第2回構成式力学挙動を定量的に記述できる構成式は欠かせない。あるワークショップで提供している地盤データを用いて,入力時期までこの分野の研究が日本では非常に活発であり,そ地震動,地盤の地質構成など条件を提示して各構成式がどこでは年齢を問わず活発な議論がなされていた。しかし,のような応答をするか,その特徴などを議論する方法をと近年,実験による検証を含めて,この分野で活躍する若いった。東日本大震災における浦安地盤の液状化の程度を鑑人が限られることに正直憂慮していた。しかし,3 回のワみ地盤構成を1次元モデルと基盤が傾斜する2次元モデークショップでは 50~80 名の若手から熟年までの参加がルを設定した。おおよその地盤データは第2回構成式ワーあり,そのような意味では一安心した。クショップで提供しているものである。共通データとして液状化問題はもとより,静的・動的問題の実務の設計は単位体積重量,間隙比,Vs,平均N値,細粒分含有率,透今でも地盤材料の構成式モデルがない時代の Terzaghi 型水係数を設定した。地震動は浦安から比較的近い東京都港の理論や経験則に基づいてなされている。今後,研究,実湾局で公開されている品川地震観測所の GL-36m の本震務に拘わらず地盤工学の分野でのブレークスルーは,地盤NS か EW1方向を採用した。本来地震波は観測波であり,の挙動を簡単かつ唯一的に記述できる構成モデルに基づ解析にそのまま入力するか(E+F),引き戻した地震波を作いた力学的根拠が明確な解析なしにはなしえないといえ成して入力するか(2E)の議論が必要であったが,ここではる。そのような訳で,ワークショップでは要素試験結果や観測波地震を E+F および 2E で入力して応答を比較するこ現場の現象を構成モデルやそれを用いた解析がどれだけととした。表 2 に示すような解析事例の紹介があった。多説明できるかだけでなく,その材料パラメータの唯一性やくの参加者で指摘があったのは,今回の地震では NS,EW決め方についても議論された。本ワークショップを通して,の2方向の加振の影響が大きいということである。解析参現在の構成モデルとそれを用いた地盤の変形解析の現状加者の中では1方向のみならず2方向加振の解析結果もと本当の意味での地盤工学の発展には何が必要なのか明提示され,地震時の地盤変状は2方向加振の影響が大きい確になったと言える。この分野の活発且つ真摯な学術的議という報告があった。また2次元の解析も示され,基盤の論とその発展を心より期待している。産官学を問わず特に傾斜の影響で1次元モデルとは違う地表面の液状化の程若い人たちに。度や地盤の不均質性についての報告がなされた。各WGの研究成果報告5.表 2 解析モデルと実施状況1次元加速度応答X○(E+F)YZMulti Hardening modelおわんモデル○(E+F)LIQCA○(E+F)○(E+F)○(E+F)拡張下負荷面モデル○(2E)○(2E)○(2E)ひずみ空間多重せん断モデル ○(E+F、2E) ○(E+F、2E) ○(E+F、2E)GeoASIA○(E+F、2E) ○(E+F、2E) ○(E+F、2E)張モデル○(E+F)間隙水圧XY5.1Z○○○○○○WG1(浦安市の埋立地盤の液状化)(メンバー:中野(WG 長),石丸,磯部,風間,金田,河井,菊本,桐山,小高,菅野,中井(健),永井,濁川,野田,福武,森,山崎,山田,吉田)○○(1)浦安市液状化被害の特徴と WG1 の研究目的東北地方太平洋沖地震によって,千葉県浦安市をはじめ,2次元加速度応答XYZMulti Hardening modelおわんモデルLIQCA拡張下負荷面モデルひずみ空間多重せん断モデル ○(E+F、2E) ○(E+F、2E) ○(E+F、2E)GeoASIA○(2E)○(2E)○(2E)張モデル間隙水圧XY東京湾沿岸の埋立て地盤において,広範囲にわたって液状Z化が発生した。その特徴は,①継続時間が長かったが,たかだか震度 5 程度,地表面観測記録で最大加速度 200gal○○以下の揺れであったこと,②採取した噴砂試料から,通常○は液状化しにくいとされてきた細粒分を 2~6 割含む土が液状化したこと,③比較的新しい埋立て地盤で液状化が集浦安地盤の解析の他にも,東京湾北部越中島における護中しているが,液状化被害の程度は空間的に非一様でばら岸の解析および宮城県女川町における 2D, 3D ハイブリッ11 地盤工学会震災対応研究委員会「地盤変状メカニズム研究委員会」れた土地で液状化が多く発生している。福武ら3)は,地震つきが大きいことが挙げられる。この液状化被害を受け,国土交通省は液状化対策技術検発生から数日後に浦安・新木場・辰巳の沈下量を測定し,1)討会議 を立ち上げ,代表的液状化判定法であるF L 法の精沈下分布図を作成した。その結果,同一地区でも沈下量は度を検証した(表 3)。そして液状化が発生しないと判定場所により大きく異なり,その原因として表層埋立層の土された 24 箇所全てで液状化発生はなかったことから,F L質の違いや厚さの違い,地盤改良(SCP対策に加え,圧密法による液状化判定の妥当性が確認された。しかし一方で,対策のプレロード+サンドドレーン)の有無を挙げた。液状化が発生すると判定された 88 箇所のうち,液状化が地震応答解析で用いるモデル地盤を決定するため,文献発生しなかった箇所が 35 箇所であった。このことは,液2)の土質柱状図を参考に地層構成図を作成した。図 2 は,状化発生メカニズムの更なる究明,特に液状化による地盤図 1 のX-Y断面である。地盤は,深部から洪積層,沖積粘変状に注目した発生メカニズムを解明する本研究委員会土層,沖積砂層,埋土層の大きく 4 層に分けられる。またの動機づけの一つとなっている。洪積層は陸側から海側に向かって傾斜し,それに伴い沖積そこで WG1 では,浦安市の埋立て地盤に対し,地震応粘土層厚が約 10mから 40mと厚くなっている。さらに,図答解析・模型実験を通して,液状化発生メカニズムの説明1 の点A,Bの元町と新町でボーリング調査(標準貫入試験を試みた。本報では,WG1,委員会での議論の中から,代とPS検層)を行い,埋土層,沖積砂層,沖積粘土層につい表地盤の同定,入力地震動の決定,モデル地盤に対する地て詳細な土質試験も実施した。そして沖積粘土層は状態や震応答解析の代表例,模型実験を紹介する。なお,各研究材料の違いでさらに 3 層に分けられた6)。者が提案した土の構成モデルの特徴や今回紹介していな(3)観測地震動の特徴と入力地震動の決定い解析結果等は,4 章や個々の報文などで紹介している。浦安地区で観測された地震記録としては,K-NET浦安の本震(M=9.0)と約 30 分後に発生した余震(M=7.7)の記録が有名であるが,これらは地表面の記録である。基盤波とし表 3 液状化判定結果1)を修正判定結果と発生箇所液状化発生箇所液状化( FL ≤ 1 )非液状化( FL ≥ 1 )530非液状化箇所合計ては,上記の観測記録を工学的基盤に引き戻すか,近傍の35882424基 盤 で 観 測 さ れ た 記 録 を 用 い る こ と に な る 。 KIK-netCHBH04 (GL-2300m),KIK-net CHBH10 (GL-2000m ),東京都港湾局地震観測所の観測記録7)などから,本震・余震記(2)浦安市の代表地層構成浦安市埋立て地盤の詳細な調査結果は文献 2)に詳しい。図 1 に示すように,地盤は元町から海側に向かって,中町,録のあるもの,浦安市までの距離,土質柱状図の有無などを考慮し,本委員会では,東京都港湾局の品川地震観測所のGL-36m(N値 50 以上)における観測記録を浦安地区の新町と埋立てが進行しており,1946 年以降に埋め立てら入力地震動とした。品川地震観測所はK-NET浦安地点から約 13.7km離れている。ちなみに福武ら3)は,清水建設技術研究所(浦安から約 9kmに位置)の基盤波を用いて,K-NET浦安のシミュレーションを行っており,良好な一致をみている。清水の技術研究所と品川地震観測所の基盤波のスペクトルは,両者でよく一致しており,品川地震観測所の基盤波が浦安地区の基盤波として妥当であることを示している。(4) 浦安モデル地盤に対する地震応答解析・模型実験a) 1 次元モデル地盤中井ら6)は,弾塑性構成モデルSYS Cam-clay modelを搭載した水~土骨格連成有限変形解析コードGEOASIAを図 1 浦安市の埋立履歴および液状化被害の分布 4)に加筆用いて,特に沖積粘土層厚が及ぼす液状化挙動への影響について調べた。そして粘土層が厚くなるほど地震波の長周期成分が増幅され,地表面での大きな揺れに繋がること,それに伴う大きなせん断変形によって,表層埋土層が液状化した可能性があることを示した(図 3)。福武ら3)は,構成モデルとしておわんモデルを用いた有限要素解析を行い,加速度は大きくないが繰返し回数が多いため,過剰間隙水圧上昇は緩慢となり,主要動が過ぎてもゆっくり上昇して液状化に至ったこと,その後の加振が激しい液状化を引き起こしたこと(図 4),余震によって全沈下量の 40%図 2 地層断面図(X-Y 断面)5)をもとに作成が沈下したことを示した。12 図 5 地表面における加速度応答(Z,Y 地点)図 3 Y 地点での加速度応答の増幅 6)シルト質砂(F)No.7No.13GL-0.4mGL-1.7mGL-3.8mEW成分 Max=98.4Gal地表加速度 (Gal)シルト質砂(F)No.5図 6 傾斜基端部で生成された表面波NS成分 Max=84.2Galの消散に長い時間を要するため,土粒子と水が原地盤と同砂(As)No.18GL-10.9m要素No.5GL-15.6m要素No.7じ比率で噴出する可能性のあること,その場合,従来の圧シルト(Asc)密排水に伴う噴砂,主に間隙水が噴出する現象以上に,沈No.22過剰間隙水圧比過剰間隙水圧比1.00.8下が発生する可能性があることを指摘した。要素No.135.2要素No.18粘土(Ac1)要素No.22(メンバー:仙頭(WG 長),風間,菊本,桐山,0.40.2シャヒン,張,中井(健),中井(照),中野,濁川,GL-36.7m0.0粘土(Ac2)GL-42.75m砂(基盤)(Ds)NS入力加速度 (Gal)EW成分 Max=48.3GalEWWG2(塑性・非塑性細粒分含有率の影響と構成式による再現)0.6野田,橋口,福武,森,山川,山崎,山田)NS成分 Max=55.1GalWG2 の研究テーマは,「塑性・非塑性細粒分含有率の影響と構成式による再現」であり,2 つのサブ WG(実験 WG,時間(sec)図 4 基盤と地表の加速度波形,過剰間隙水圧比波形 3)解析 WG)が活動した。解析 WG の活動については,WG1 の細粒分を含んだ浦b) 2 次元モデル地盤安土の液状化解析と内容が重複する。そのため細粒分を含浅岡ら8)は,GEOASIAを用いて,2 次元モデル地盤の地震応答解析を行い,X地点からY地点へ洪積層が傾斜し,粘土層厚が増加してゆく特徴を持つ地層構造が表層埋土む砂の構成式による表現については一斉解析において得られた様々な構成則の解析結果が得られているのでその結果を参照されたい。層の液状化変状に及ぼす影響を調べた。解析結果から,洪実験 WG については,(1)既往研究の体系化,(2)細粒分積層傾斜部のZ地点およびY地点で広範囲にせん断ひずみを含む砂の実験データの蓄積が研究方針となった。また実が非一様に分布し,時間経過とともに,表層部に高いせん験では浦安埋立地盤を想定した種々の塑性・非塑性細粒分断ひずみが拡大することを示した。浦安の中町・新町でのを含む砂質土について非排水繰返しせん断試験を行い,液状化被害の地点と一致する。地表面の加速度応答は,一液状化強度,変形特性を明らかにすることを目的とした。次元解析と同様に,Y地点へ向かうにつれ長周期成分が卓変形特性については,せん断ひずみの発達特性,ねばり強越した(図 5)。さらに,Z,Y地点においては,傾斜基端さ,残留変形量(体積ひずみ,せん断ひずみ)に着目した。部から生成された表面波の影響で主要動終了後も後揺れなお,本報告は,WG2 メンバーである東北大学グループ現象が継続する(図 6)。この傾向は 2 次元解析ではじめの研究成果11)~13)をもとに作成したものである。て得られたものである。深部に堆積する粘土層厚の差異に既往の研究成果のレビュー11)より,液状化強度に及ぼすよる加速度の増幅特性の違いおよび不整形な境界から生細粒分の影響については,細粒分含有率の増加とともに強成された表面波が過剰間隙水圧上昇の程度にも影響を与度が増加するもの,逆に強度が減少するもの,一端減少しえ,本震と余震時の液状化発生の有無にも寄与した可能性てから増加に転じる実験結果が報告されている。このことを示した9)。から,現段階で液状化に及ぼす非塑性細粒分含有率の影響c) 1G 場模型振動台実験山崎ら10)は,液状化により噴砂が発生した地盤の沈下量,については明確なコンセンサスは得られていない。一方で,液状化後の残留変形に及ぼす細粒分の影響に着特に浦安のように細粒分を多く含む地盤における噴砂が目したレビュー11)では,細粒分含有率 30%までは変形が増沈下量に与える影響を模型実験により調べた。細粒分含有加するものの,それ以上では減少するとの結果が報告され率が大きくかつ透水性の小さい砂質土では,過剰間隙水圧13 地盤工学会震災対応研究委員会「地盤変状メカニズム研究委員会」ている。Kim et al.11)はきれいな砂に質量比で 0~30%の非塑て過剰間隙水圧を発生し,地盤の長期沈下を引き起こすこ性細粒分を混合した試料について,繰返しせん断試験,単とを明らかにした。特に地表面に盛土などの局所載荷があ12)調載荷試験,再圧密試験を行う一連の試験スキーム を提る場合に,地震時における地盤のせん断破壊は助長され,案している。これにより,一つの供試体で液状化強度,靱地盤沈下は長期に亘って,しかも沈下量が大きくなること性の評価,液状化後のせん断応力回復特性,残留せん断ひが示された。先進的な地震災害の予測と言えるが,粘土地ずみ,残留体積ひずみを評価することを試みている。液状盤の沈下は砂質地盤の液状化に隠れて十分な調査が行わ化後の体積ひずみと砂の締まり具合を表す各種指標の相れておらず,予測の検証は被害事例に検証に託されている。関を比較した結果,従来利用されている,相対密度,乾燥新潟県中越沖地震(2007 年)では柏崎市の沖積粘土層で密度,間隙比よりもむしろ余裕間隙比と骨格間隙比の相関地震後の広域地盤沈下が観測された18)。図 7 は地震前後のが高いことがわかった。層別沈下計(深度 25.4m)と地下水位の状況を示すが,地これらの考察から,細粒分を含む砂の強度・変形特性を下水位に変動がないのに対して地震後に明確な沈下が生統一的に理解するためには,土の堆積構造を反映した粗密じている。地盤は沖積粘土であり,深度 14—24mのボーリ状態を定量評価する合理的な指標の選定が重要であるこングに貝殻が混入することから,深部は海成粘土と想定さとがわかった。一方,地震による繰返しせん断に対し,土れる。現地採取土の圧密試験では不撹乱試料と再構成土のの負のダイレイタンシーに起因する圧縮性を評価できれ圧縮指数比が深度 16—19mで 2.25,9—12mで 1.4 であり,構ば,液状化被害の程度を簡易に推定できる可能性がある。造がやや発達した地盤である。大塚・磯部は現地採取土のここでは基礎的な検討13)として,最大密度試験(JGS 061)静的および動的試験より,弾塑性圧密変形解析により図 8と同じ方法で打撃による外力を試料に与えて,沈下量を計の沈下予測を示した。予測は地盤定数の設定により変化す測した。きれいな砂に,粒子形状が異なる 5 種類の非塑性るが,沈下期間は極めて長期にわたる結果となった。最終細粒分を 0~50%混合して実験を行った。その結果,細粒分沈下量は山口らの阪神大震災におけるポートアイランド含有率が増加すると沈下量は増加することがわかった。まの沈下量とほぼ同様の結果となった。た,沈下量に影響を及ぼす要因として,限界細粒分含有率,-5.0粒子形状があり,細粒分粒子形状が偏平に近いほど,圧縮(メンバー:大塚(WG 長),磯部,風間,金田,仙道,竹内,田代,永井,野田,村上,山田,李) 累積収縮量 [mm]WG3(地震中・地震後に粘性土地盤に生じる変状)地下水位 [cm]0.02005.015010100155020地震後の粘土地盤の長期沈下は,古くはメキシコ地震地下水位 [cm]量が増加することがわかった。5.3250累積収縮量 [mm]0中越沖地震発生25-502006/1 2006/5 2006/9 2007/1 2007/5 2007/9 2008/1(1957,1985 年)や宮城県沖地震(1978 年)の事例があり,近年では阪神淡路大震災(1995 年)におけるポートアイラン図 7 柏崎平野の地盤沈下と地下水位18)(2007 年中越沖地震)ドの事例がある14)。いずれも地震後の地盤沈下が示されて15)れていない。阪神淡路大震災の事例は松田 による詳細な報告がある。層厚 13mの沖積粘土層が地震後に長期沈下を生じ,洪積粘土層においても若干の沈下が計測された。沖積粘土層下位の砂礫層では間隙水圧が測定されたが,地震時に大きな過剰間隙水圧を示した後,急速に消散したが,地震前の水圧に戻るのに約 3 ヶ月を要したことが示された。松田は地震応答解析に基づく最大せん断ひずみから,地震後に生じる沈下量を予測し,沖積粘土層の 90%圧密にCumulated subsidence (mm)0いるが,その現象や沈下メカニズムについては明らかにさObservaionCalculation50100150200250300306090Time (year)120150図 8 柏崎平野の地盤沈下予測18)かかる時間を約 400 日,最終沈下量を用いた地震波に応じて 7−17cmと予測した。山口ら16)は現地採取土の繰り返し東日本大震災(2011 年)では浦安市で甚大な液状化被害単純せん断試験後の沈下測定試験を実施し,ポートアイラが発生した。図 9 に示すように,同地域では地震発生時にンドの沈下を層厚 10mの粘土層で約 14mmと予測した。沈液状化に起因する即時沈下が記録されているが,その後も下量の予測値は概ね一致する結果となった。地盤沈下が継続している。濁川・浅香19)は浦安の埋立て造地震後の粘土地盤の長期沈下は,浅岡・野田17)がSYSカ成地の 2 測線について長期の地盤沈下計測を実施した。図ムクレイモデルを用いた地盤の弾塑性圧密変形解析によ10 は測線の地質断面図と地盤沈下の経時変化を示していり指摘している。特に地盤が構造を有して正規圧密曲線よる。地質図は粘土層が陸側で薄く,海側に厚く堆積していり緩い間隙状態にあると,地震により地盤の構造が破壊しる。地盤沈下は測線中央付近と海側で沈下量が大きい傾向14 が見られる。粘土層厚の影響が大きいが,陸側で地震後地として,盛土のN値が小さかったこと,粘性土地盤で地下盤沈下量の小さいことには他の要因も影響している可能水位が高かったことなどが指摘されている20)。折立地区の性が大きい。濁川・浅香は海側で沈下量の少ない地域が存被害平面図を図 11 に,推定被害断面図を図 12 に示す。在し,同地域が地盤改良域と一致することを指摘した。地盤改良は地盤の剛性を高める効果があるが,施工時には地盤をせん断破壊して,浅岡・野田の指摘する地盤の構造を低下させる効果も考えられる。図には埋め立て地の盛土位置が示されているが,地盤沈下との強い相関は見られない。多くの研究者による粘土地盤の長期沈下挙動の解析による現象の更なる解明と沈下予測精度の向上を期待する。図 11 折立地区の被害平面図19)図 9 浦安地区の地盤沈下 (2011 年東日本大震災)図 12 折立地区の推定被害断面図解析条件検討を行うにあたって,解析断面(図 12 の外形と同じ)および入力地震動のみ統一した。地震動は折立地区の北西約 2kmに設置されていた強震観測網Small-titanの栗生小学校のもの(2E波)を用いた21)。盛土の土質パラメータは,検討に用いる計算コードが様々であるため,画一的な土質パ図 10 浦安地区の地盤構成と沈下量19)ラメータは使用せずに礫混じり粘性土とだけ定めた。5.4数値計算結果の概要WG4(造成宅地)(1) 地震応答を考慮した動的 X-FEM(拡張有限要素法:(メンバー:風間(WG 長),磯部,宇野,金田,eXtended-Finite Element Method)菊本,桐山,酒井,新保,高稲,高橋,田代,辻,中野,永井,濁川,野田,福武,森,山田,渡邊)地震応答解析可能な X-FEM を用いて,小規模なすべりWG4 では,2011 年東北地方太平洋沖地震で実際に被害面を 3 つ仮定し,このすべり面を解析条件として与えて盛を受けた,宮城県仙台市青葉区折立地区の谷埋め盛土造成土頭部沈下量の再現解析を行った。事前の解析により,長宅地を対象として,変状の把握と再現,側方変位抑止工法大なすべり面を仮定すると,すべり土塊全体が水平方向にの検討を行った。変位するため小規模なすべりを仮定している。すべり面の対象とした折立地区の谷埋め盛土造成宅地の被害概要c,φのパラメータスタディを行い,その結果,盛土頭部折立地区は仙台市街地西部の丘陵斜面に位置する谷埋沈下量に関して定量的に良い一致を示した(図 13)。各すめ盛土造成宅地で 1965 年から造成が行われた。当地区はべり土塊が独立した動きを示しており,長大なすべり面を1978 年宮城県沖地震では大きな被害を受けていないが,仮定した場合には見られなかった挙動が得られている。し2011 年東北地方太平洋沖地震では谷埋め盛土部分全体にかし,沈下が卓越している法尻部分では実測と大きな差異おいて地すべり的崩壊が生じた。被害は旧谷筋縦断方向にが見られた。この原因は材料に線形等方弾性体を用いた事約 230m,横断方向に約 70mの範囲に及んだ。被害の要因で,剛なすべり変形となったためである。法尻部分ではすべりよりも沈下が卓越した変形性状である事から,定性的15 地盤工学会震災対応研究委員会「地盤変状メカニズム研究委員会」な再現性の向上のためには,弾塑性材料の考慮が必須であし,その後また造成するという手順を踏んだ。その後地震ると考えらえる。今後は,土水連成解析や弾塑性材料を用を入力した。図 15 は地震終了直後のせん断ひずみ分布でいる事で定性的な再現を行っていく。ある。造成盛土をした直下の盛土は造成中にせん断ひずみが増加していく傾向が見られ,地震中にさらに高いせん断ひずみが発生している。盛土造成時にその直下の地盤には局所的な応力増加が発生し,地震が引き金になって造成盛土の先端からすべりが発生しているのではないかと考えられ,現在さらに検討している。図 15 水~土連成有限変形解析による地震応答解析例図 13 想定すべり面と変位量の比較5.5WG5(堤防・盛土構造)(メンバー:小高(WG 長),大塚,風間,河井,(2) 土~水~空気連成の不飽和浸透流解析による盛土内菊本,酒井,佐々木,新保,高稲,高橋,土屋,水分分布の推定および有効応力地震応答解析野田,萩原,山川,山田,李)土の水分特性のヒステリシスを考慮した土~水~空気本 WG では特に河川堤防の大変状の被災事例について,連成の不飽和浸透流解析を用いて,降雨の浸透・排水によ次に示す 5 つの課題に着目して,それぞれの変状メカニズる土中の水分分布の経時変化を推定した。さらに造成宅地ムの検証を行ってきた。地盤内の水分分布と実際の被害との関係性,および,対策①粘性土基礎地盤上の河川堤防の地震前~地震中~地震工(固結工,抑止杭工)の効果について有効応力地震応答後の挙動22)解析を用いて検討を行った。土の動的変形モデルは簡便な②閉封飽和域を有する堤体の地震時挙動23)Armstrong & Frederick モデル(弾完全塑性モデル)を用い③短冊状の堤体変状に関する亀裂進展解析による検討24)た。本計算手法により,実際の推定被害領域を概ね説明で④矢板耐震対策工の効果の検証25)きる応力およびひずみ分布を得ることができた(図 14)。⑤基礎地盤に非対称な液状化域がある場合の堤体変状26)また,谷埋め盛土の水分分布の変化による地震時安定性にここでは,①~④の検討結果の概要を紹介する。差異,対策工設置後の効果の範囲・程度を視覚的に示した。①粘性土基礎地盤上の河川堤防の地震前~地震中~地震後の挙動22)粘性土基礎地盤を現地土の三軸試験結果に基づき,弾塑性モデル(SYS Cam-clay model)で忠実にモデル化し,築堤による圧密沈下から,地震による堤体と基礎地盤の変形,さらに地震後にも継続する圧密沈下について,GEOASIAを用いて検証を行った。図 16 はせん断ひずみ分布図である(赤 25%以上)。(a)は高さ 5m の堤体築堤による圧密後の状態であり,天端直下の基礎地盤で約 30cm 圧密沈下している。(b)~(d)は東北地方太平洋沖地震の観測波を入力した解析結果である。(b)300gal 近い第 1 波が作用した後の 50 秒では大きな変状は見られない。(c)第 2 波として 400gal 近い最大加速度が作用してから約 25 秒後の 125 秒では,徐々に大きなせん図 14 地下水位の高低によるせん断ひずみ分布の違い断ひずみが堤体内に発生し,(d)地震終了後には 1.5m 以上の大きな即時沈下を伴う大変状が見られる。(3) 水~土連成解析現状では粘性土基礎地盤は地震時に変形しない前提で,東日本大震災で発生した地すべりのシミュレーション堤防の変状メカニズムが検証されているが,本解析結果かを2次元平面ひずみ水~土連成有限変形解析で検討してら,粘土地盤への被災堤体のめり込みは地震前の圧密沈下いる。ここでは地盤の造成過程まで考慮する。基盤層は十だけではなく,地震時に即時沈下した部分もある可能性が分固い地盤,造成盛土は典型的な砂混じり粘土とした。造示された。成盛土は全部で 9 段で,各 2 日程度で造成し 1 カ月間放置16 展していき,最終的に盛土が分離するような破壊形態が得られている。なお,地震時の震動中の亀裂の進展も検討しているが,地震動だけでは開口型亀裂の進展可能性は低いことが確かめられた。(a)圧密終了時・地震前(b)地震発生 50 秒(a)左側亀裂が法面到達(c)地震発生 125 秒(d)地震終了時図 16 粘土基礎地盤堤防の地震時せん断ひずみ分布②閉封飽和域を有する堤体の地震時挙動23)(b)中央亀裂が天端に到達堤体下部に部分的に飽和度が高い閉封飽和域があり,そ図 18 複数亀裂の進展解析こが液状化することによって堤体全体に大きな変状が発④矢板耐震対策工の効果の検証25)生した。ここでは,不飽和堤体の地震時変状メカニズムにつ い て, 空気 ~水 ~ 土骨格連 成の 3 相 系に 拡張 した河川堤防の耐震対策としては,液状化による側方流動抑GEOASIA を用いて検証した。制を目的とした鋼管矢板による補強工法がしばしば用い地震前の圧密沈下量や地震時の即時沈下量は①で示しられる。ここでは軟弱な砂・粘土互層地盤上の河川堤防にた 2 相系の解析結果と概ね同じであったが,図 17 に示す対して,鋼管矢板による補強効果を数値的に検討した。地震時飽和度分布(赤 80~青 100%)に不飽和解析特有の図 19 は地震発生から 300 秒後のせん断ひずみ分布図で知見が得られた。(b)の地震直後の堤体は(a)に示す地震前ある(赤 30%以上)。(a)は根入れが粘性土層と浅く,(b)はの飽和度分布のまま地盤内に即時沈下している。しかし,根入れが洪積層と深い。天端の沈下量およびストレッチン地震時に形成された水圧勾配を解消するために,時間の経グ量は矢板長によらず大きな差異はない。根入れが浅いと,過とともに粘土基礎地盤から堤体内に間隙水が流入し続側方流動を抑えることができないばかりか,粘土層から発け,(c),(d)に示すように堤体内の飽和度が長期にわたり非生する滑りが矢板先端の地盤深部で発生してしまい,河床常に高くなる。被災堤防の調査において,堤体内の地下水隆起量が大きくなってしまう。一方,根入れが深いと,堤位の高さがいくつも報告されているが,本解析の事例はそ体前面での変形抑止には多大な効果を得ることができるの原因の一つと考えられる。が,逆に住居のある堤体背面側の水平変位や隆起を促進してしまう危険性を指摘した。(a)圧密終了時・地震前(b)地震直後(c)地震後 10 時間(d)地震後 50 日図 19 矢板の根入れ長が異なる時のせん断ひずみ分布5.6図 17 粘土基礎地盤上の堤防の飽和度分布③短冊状の堤体変状に関する亀裂進展解析による検討WG6(港湾・海岸構造物)(メンバー:菅野(WG 長),海野,大矢,風間,金田,菊池,小濱,野田,ハザリカ,山崎,山田,24)渡邊)基礎地盤や堤体下部が液状化して被災した河川堤防では,堤体が短冊状に分断されて崩壊した事例が多数あった。WG6(港湾・海岸構造物)では,別途同時に立ち上がっこの短冊状の破壊形態のメカニズムを検討するために,亀た地盤構造物耐津波化研究委員会(菊池委員長)と連携し裂を考慮した解析ならびにその進展解析を行った。つつ,東北地方太平洋沖地震における港湾・海岸構造物の被害事例について収集整理を行い,要因分析等を行った。図 18 は,側方流動に伴い盛土底面に引張応力の作用に伴う微小亀裂の発生を仮定して X-FEM を用いた亀裂進展港湾・海岸構造物においては,地震動による被害に加え解析(自重解析)を実施した結果である。基礎地盤に軟弱て,津波作用によると考えられる被害も多くみられ,それ層を設け,堤体下部の 2 カ所に 50cmの初期亀裂を配してらが複合して被害を大きくしたと考えられた。一例として,解析を行った結果,図に示すように亀裂が開口しながら進相馬港第一埠頭の鋼矢板式岸壁の被害27)が挙げられる(写17 地盤工学会震災対応研究委員会「地盤変状メカニズム研究委員会」真 2)。ここでは,鋼矢板壁が海側に倒壊し,法線幅約 30mことで,被災状態を説明できるかどうかを検討した。そのにわたってエプロン部が大きく陥没した。これまでの地震結果,矢板根入れ長の不足や控え工陸側斜杭の引抜き抵抗被害において控え式鋼矢板岸壁においてタイ材が切断しの超過が被災状態とはあまり合わないものの,水平震度をた事例はあまりなく,相馬港での津波の浸水高は 10m程度考慮しない場合でも背後残留水圧を少し大きくするだけあったことから,津波作用が岸壁変形に影響している可能でタイ材張力が破断張力を超過する結果となり,実際の被性が考えられた。また,他の例として,茨城港日立港区で災状態と対応した。水平震度を考慮した場合にはタイ材のは,第二埠頭と第四埠頭の隅角部において重力式岸壁のケ破断張力の超過はわずかであったこともあり,タイ材が切ーソンが流出する被害27)が見られた(写真 3)。これにおい断して矢板が倒壊した被害は地震中ではなく津波来襲時ても,地震動作用だけでケーソンが海中に流出する事例はに生じた可能性が示唆された。この控え組杭式岸壁と隣接これまでないことから,津波作用による基礎地盤洗掘の影する相馬港第一埠頭控え直杭式鋼管矢板岸壁では,矢板が響等が考えられた。完全に倒壊する被害は見られなかったが,鋼矢板頭部が最大で 2m水平に移動する変形が見られており,地盤構造物耐津波化研究委員会と合同で有限要素解析を用いた地震動及び津波作用の影響検討を行った。写真2 相馬港第一埠頭での鋼矢板式岸壁の被害27)図20 被災した相馬港第一埠頭鋼矢板式岸壁の構造断面29)5.7WG7(各種地盤改良・地盤補強工法・耐震メカニズム)(メンバー:野田(WG 長),石丸,宇野,海野,風間,桐山,酒井,佐々木,シャヒン,仙道,高稲,竹内,田代,辻,土屋,濁川,ハザリカ,福武,山田,渡邊)(1) 密度増大工法写真3 茨城港日立港区第二埠頭隅角部での重力式岸壁のケーソン流出による被害27)東日本大震災における現地調査によって,埋立地における締固めによる改良は液状化に対し有効で,地震後の変状も小さく殆ど被害が無かったことが報告されている。今回,このように,東北地方太平洋沖地震では,地震動作用だけでなく津波作用も影響していると考えられる岸壁被害現地の土質調査結果を踏まえつつ,継続時間が長い強震動が見られた。しかし,それら個別の影響の大小や,地震動が作用時の締固め改良効果を検証した。一取組として,地による液状化発生後の津波作用の影響などの作用の組合盤変形解析コードGEOASIA を用い,サンドコンパクショせの影響については明確ではない。そこで,被災事例収集ンパイル(SCP)工法による改良地盤を複合地盤としてモデに合わせて,被災形態と地震動強さ,津波高の関係が検討ル化した上で,この地盤に対して継続時間が長い地震動を28)された 。また,前述の相馬港の鋼矢板式岸壁の被害につ与え,無処理地盤の挙動との比較しつつ,地震後を含むいては,岸壁設計手法に基づいた被災要因の考察を行っSCP改良地盤の変形抑止効果のメカニズムを調べた。29)た 。被災した鋼矢板岸壁は控え組杭式であり(図 20),図 21 はWG1 で取り上げられた浦安の埋立地盤を対象と東北地方太平洋沖地震時において受けた地震動を水平震して,SCP改良地盤をモデル化し地震応答解析を実施した度として考慮し,津波作用として浸水位分の海水重量のエ結果である30)。この結果より,SCP施工によって施されるプロン上への上載荷重の加増や矢板背後地盤中の残留水砂杭や杭間の密な砂の正のダイレイタンシー特性によっ圧の加増,引き波時の矢板前面水位の低下等としてみなすて地盤の変形抑止効果が期待できることを示した。18 (3) ジオテキスタイルを用いた補強土工法ジオテキスタイルを用いた補強土工法は,盛土内にジオテキスタイルを層状に敷設して,土質材料とジオテキスタ(1) 無処理0%図21イルの摩擦による引抜き抵抗により,安定を保つ土工構造(2) SCP 改良地盤物である。補強土工法は,大規模な地震動を受けても,そ20%以上SCP 改良有無による変形特性の違いの被害は軽微であり,耐震性に優れていることが報告され(地震後のせん断ひずみ分布の比較)ている32)。一方で,2007 年能登半島地震では,能登有料道路の道路盛土が崩壊し,道路の交通機能が完全に寸断されまた,地盤工学会 浅層盤状改良による宅地の液状化対た。崩壊した盛土は,補強土工法により強化復旧された33)。策研究委員会「浅層盤状改良による宅地の液状化対策の合そこで,本WGでは,補強土工法の耐震性に着目し,補強理的な設計方法の研究」(平成 24 年 9 月)に参画し,数値土工法により復旧された道路盛土の耐震性能を検証する解析を実施した。現場調査および模型実験によって液状化ための数値解析を行った。数値解析には,GEOASIAを用対策工としての有効性が認められた浅層盤状改良工法(固いた。地震後の盛土のせん断ひずみ分布を図 23 に示す。化,締固め,排水)についてケーススタディを実施し,め数値解析の結果,補強土工法の適用により盛土の耐震性がり込み沈下量のクライテリアを満足する改良層厚,および向上し,盛土材料の締固め度が大きくなるほど盛土の変形31)改良効果に影響を及ぼす諸条件を提案した 。量が小さくなることを確認した。(2) 間隙水圧消散工法間隙水圧消散工法では,バーチカルドレーンによる排水によって地震時の水圧上昇を抑制する結果,締固めによる地表面沈下をある程度許容する。したがってこの工法では,液状化を防げるか否かという点と併せて,液状化を抑制した際に発生する沈下量の予測も重要な課題の一つとなる。図 23 盛土のせん断ひずみ分布WG では,この沈下量の定量的予測も含め,この工法の諸特性を把握すべく,GEOASIA によるこの工法の数値解6.析を行った。GEOASIA を用いた理由は,この工法では,締固め現象と液状化現象,および,地震中に発生し得る締おわりに今回の東北沖太平洋地震は,我が国,特に東日本の広域固めによる沈下と液状化後に発生し得る圧密沈下を統一にわたり,筆舌に尽くし難い厄難をもたらしました。この的に扱える必要があるためである。この工法を対象とした地震を機に,これまでの地震学に対する信頼がかなり揺ら数値計算でもう一点重要となるのは,計算効率を如何に上いでいることは,皆様も周知のとおりです。地震が来るこげる点である。地中に埋められた無数のバーチカルドレーと自身は確実ではあっても,「地震の(大きさや場所と時ンとその周辺地盤を細かくメッシュ分割すると,莫大な計期の)予知/予測」はどこまで可能なのか,専門の領域に算コストが掛かることが背景にある。このバーチカルドレーン工法に共通する課題を克服するために,圧密問題では,マクロエレメント法という一種の均質化手法がしばしば閉じこもらずに,分からないものは分からないと,国民にもっと素直な説明があってもよかったのかも知れません。しかし皆様,地震学を嗤っていて済む事態では,もちろ用いられる。本 WG では,このマクロエレメント法の動的んありません。我々の地盤力学/工学と,それを支える研問題への適用を図り,間隙水圧消散工法を対象にした場合究者,技術者も,実は同じように危うい。それはどうしてでも十分な近似精度を有することを示した。また,このマでしょう? 地震時の地盤変状について,何がわかっていクロエレメント法を適用した 1 次元メッシュを用いた計て,何はわかっていないのか,これを正直に国民に知らせ算により,ドレーンピッチや地盤の透水係数など,間隙水ることが,まだ出来ていないからです。今回の地震につい圧消散工法にとって主要な条件をパラメトリックスタデて言えば,この地震ならではの,初めて目にするよく調べィを実施し,この工法の諸特性の把握を行った。さらに盛られていない地盤変状は,あったのかなかったのか,科学的に,しかも分かりやすく国民に説明できていません。関東では液状化被害が目立ちましたが,液状化ひとつを取り上げても例外ではありません。液状化現象は土質力学の教科書の中でも,皆様が周知の圧密沈下や地盤の支持力など0の話題からは一番遠く,長い間,土質力学者の間で共通認80 [kPa]図22 過剰間隙水圧分布(盛土直下を改良した場合)識の醸成に著しく欠けていた分野でありました。「ゆるい土直下の改良を行った場合を想定した 2 次元計算により,砂の締め固め計算がまったくできないプログラムを用いこの工法の水圧上昇抑制効果と液状化発生低減による側て,長く砂の液状化の計算をしていた」と言えば,誇張に方流動などの変形抑制効果を確認した(図 22)。過ぎるでしょうか?「砂と粘土の違い」はどこまではっき19 地盤工学会震災対応研究委員会「地盤変状メカニズム研究委員会」りと分かっているのでしょう?「砂は液状化し,粘土は何も起こらない」というのは本当でしょうか? こうして地14)震時の地盤変状を考えてゆくと,地盤力学/工学が地震学を嗤えるような学問状況にあるなどとは,全くもって考え15)られないのです。特別委員会のⅠ「地盤変状メカニズム研究委員会」は,このような事情を背景に発足いたしました。この委員会は,これまでの伝統的な「土質動力学」研究の成果を尊重しつつ,しかしその延長線上の研究だけに陥る16)17)ことなく,むしろ最新の地盤力学研究を背景にして,新たな学理を構築するくらいの気概で,進めて行きたいと考えています。18)上記は,当委員会に課された「学術の飛躍的発展」という命題を踏まえ,第一回委員会開催に際し,浅岡委員長が19)委員に宛てた委員応募へのお礼の手紙の冒頭である。約 2年半を振り返ると,WG 報告に見られるようにこの趣旨に20)沿って進められたところもあれば,例えば噴砂のシミュレーションなどまだできないことも明らかになった。委員会21)はこれで閉じるが,研究は終わりではない。始まったばかりで,やってもやってもきりがないから,各自の職場に戻り,次なる飛躍に向け研究を進めていただきたいと思う。22)4. および 5.は,ワークショップや WG の長を中心に執筆いただいた。委員会のメンバー,ワークショップに参加23)いただいた方,会長をはじめ地盤工学会関係者の皆様に大変お世話になりました。心より感謝の意を表します。24)1)2)3)4)5)6)7)8)9)10)11)12)13)参 考 文 献国土交通省:「液状化対策技術検討会議」検討成果報告書, 2011.浦安市液状化対策技術検討調査報告書, 2011.福武毅芳,張至鎬:2011年東北地方太平洋沖地震における浦安地区の地盤の有効応力解析による検討,土木学会論文集 A1, Vol68,No.4, pp.293-304, 2012.日経 BP 社・日経コンストラクション編:東日本大震災の教訓-インフラ被害の全貌, 2011.千葉県地質環境インフォメーションバンク,http://wwwp.pref.chiba.lg.jp/pbgeogis/servlet/infobank.index.中井健太郎,中野正樹,野田利弘,村上孝弥,浅岡顕:原位置/室内試験結果に基づく浦安市地盤の弾塑性モデル化とその地震応答解析,地盤工学特別シンポジウム‐東日本大震災を乗り越えて‐, 2014.東京港湾局HP, http://www.kouwan.metro.tokyo.jp/business/keiyaku/kisojoho/jishindou.html.浅岡顕,中井健太郎,野田利弘,村瀬恒太郎:不整形な境界から発生した表面波によって拡大した浦安市の液状化被害,地盤工学特別シンポジウム‐東日本大震災を乗り越えて‐, 2014.浅岡顕,野田利弘,中井健太郎:東日本大震災で発生した広範な液状化被害に及ぼす本震-余震間隔の影響,地球惑星科学連合2013年大会予稿集, SSS33-P24, 2013.山崎智哉,風間基樹,河井正,森友宏,海野寿康:液状化地盤における噴砂メカニズムの実験的考察,第48回地盤工学研究発表会講演集, pp.491-492, 2013.Kim, J., Mori, T., Kawai, T. and Kazama, M., The effect of Non-plasticfines on post-liquefaction deformation, 5th KGA-JGS GeotechnicalEngineering Workshop, 2013.金鍾官,河井正,風間基樹,森友宏:液状化被害を推定するための室内試験手法の提案,大ひずみ領域を考慮した土の繰返しせん断特性に関するシンポジウム,pp.149~156, 2013.金鍾官,森友宏,河井正,風間基樹:各種指標が細粒分含有土の25)26)27)28)29)30)31)32)33)体積圧縮特性に及ぼす影響,第48回地盤工学研究発表会,pp.1853~1854, 2013.安原一哉,常田賢一,松尾修,那須誠:粘土の動的性質(粘性土の動的問題に関するケース・ヒストリ−と現象のメカニズム),土と基礎,Vol.46,No.7,pp.57-62,1998.松田博:粘土層の地震後沈下過程の推定,土木学会論文集,No.568/Ⅲ-39,pp.41-48,1997.山口晶,風間基樹,柳沢栄司:神戸ポートアイランド沖積粘土層の地震時変形挙動,第32回地盤工学研究発表会,pp.771-772,1997.Noda, T., Takeuchi, H., Nakai, K. and Asaoka, A.,Co-seismic andPost-seismic behavior of an Alternately Layered Sand-Clay Ground andEmbankment System Accompanied by Soil Disturbance,Soils andFoundations,Vol.49,No.5,pp.739-756,2009.Isobe, K., Ohtsuka, S. and Takahara, T., Study on long-term subsidenceof soft clay due to 2007 Niigata Prefecture Chuetsu-Oki Earthquake,18th ICSMGE, pp.1499-1502, 2013.Nigorikawa, N. and Asaka, Y.,Long-term Settlement of Holocene ClayGround After the 2011 Great Rast Japan Earthquake,10thCUEE,2013.東日本大震災に関する東北支部学術合同調査委員会報告書DVD-ROM, 第3部門(地盤工学) 3.3.2 仙台市(宅地保全審議会),2013.神山 眞, 荘司 雄一, 松川 忠司, 浅田 秋江, 中居 尚彦: オンラインアレー地震観測システムの構築とその記録の若干の考察,土木学会論文集, Vol.54, NO.668, pp.283-298, 2001.小高猛司,野田利弘,吉川高広,高稲敏浩,李圭太,崔瑛:粘土基礎地盤上の河川堤防の被災メカニズムに関する一考察, 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  • タイトル
  • 土構造物耐震化研究委員会 委員会報告
  • 著者
  • 土構造物耐震化研究委員会
  • 出版
  • 地盤工学会特別シンポジウム -東日本大震災を乗り越えて-
  • ページ
  • 21〜32
  • 発行
  • 2014/05/14
  • 文書ID
  • 67537
  • 内容
  • 委員会報告土構造物耐震化研究委員会• 液状化によるライフライン及び道路の被害と復旧,対1. 概要策• 液状化の実務的な予測法の見直し委員会の目的1.1一方,WG2(リーダー:古関副委員長,サブリーダー:以下に示す 4 項目を目的に委員会は設置された。1) 現行基準を満たさない既存の土構造物の耐震性能を評高橋副幹事長)は,社会基盤施設(道路・鉄道の盛土,港価する方法の確立湾施設の盛土,河川堤防,ため池堤体,電力・産業施設の• 既存の土構造物(社会基盤構造物や個人の宅地)の被盛土等)をテーマとし,対象とする地盤構造物を①線状交害と無被害の分析と検討,それに基づく耐震性能を評価通施設としての道路盛土・鉄道盛土と,②治水・利水施設する方法の確立としての河川堤防・ため池堤体の 2 つに分類して,それぞ2) 耐震強化のための各種の工法の有効性の検証と補強メれ以下の 5 項目について検討した。• 各施設の要求性能カニズムの解明• 各種の地盤改良工法,杭基礎工法,補強土工法,排水• 既設土構造物の耐震性能とその診断・評価法工法等の耐震性能を強化する工法の有効性と経済性の• 土構造物の耐震補強の効果とその評価法分析と補強メカニズムの解明の確立• 新設土構造物の耐震性能とその評価法• 復旧・復興時における土構造物の利活用3) 上記を踏まえた土構造物の耐震補強工法の確立• 今回の地震で被害を受けた現行基準を満たさない既総勢 60 名超の委員が集まって議論する場として,東日存の土構造物の合理的な(経済的で効果が高い)強化復本大震災の提言シンポジウム(2012 年 4 月 24 日・東京)旧工法の提案におけるディスカッションセッションと地盤工学研究発• 現行基準を満たさない既存の土構造物の耐震診断の表会に合わせて開催した 2 回のワークショップ(2012 年 7方法と合理的な耐震補強工法の提案月 13 日・八戸,2013 年 7 月 22 日・富山)を設けた。委• 新設の土構造物の合理的な耐震設計と施工法の提案員会のメンバー以外の一般の方にも参加できるように公4) 耐震性能が高い土構造物の復旧・復興における活用の開で行い,いずれも参加者は 100 名を超えた。さらに,浅提案層盤状改良による宅地の液状化対策研究委員会(委員長:谷幹事長)との連携については,シンポジウムやワークシ1.2ョップにおいて情報交換を行った。活動の経緯初年度に全体委員会(2012 年 2 月 4 日)を開催し,研2 つの WG の連絡・調整のために幹事会を合計 6 回行っ究委員会の活動方針として,①シンポジウムやワークショた。各 WG の活動の概要は 3 章と 4 章に記し,活動内容のップにおける全体の議論,②2 つの WG(戸建て住宅,社詳細をまとめた報告書は DVD に入れた。会基盤施設)に分かれて具体的な活動,③浅層盤状改良に表 1よる宅地の液状化対策研究委員会との連携の 3 項目を定めた。2011 年東日本大震災の地震被害の特徴公共構造物 & 大規模な建築物2011 年東日本大震災の地震被害の特徴は,表 1 にまとめたように,公共工事・大型民間工事と宅造等小規模民間所有者公的機関 & 大きな民間組織一般の市民被害近代的な構造物・建築物は、地盤の液状化皆無ないし軽微盛土・擁壁の崩壊工事の間の被害との特徴に大きな相違・落差があったことである。特に,地盤の液状化・宅造盛土に崩壊,津波によ宅地・戸建て住宅特徴‹最新の技術基準類を整備‹災害を防ぐ仕組みの欠如る被害は戸建て住宅に集中しており,公共工事・大型民間‹情報の整備‹情報の未整備工事の場合とは異なる対応が必要となる。従って,本委員‹適切に耐震診断及び耐震補強‹地盤技術者のサポートの欠如‹組織内の地盤技術者の存在会を次の 2 つの WG に分けた。WG1(リーダー:安田副委員長,サブリーダー:橋本副2. 活動の総括幹事長)は,戸建て住宅(丘陵地盛土と埋立地の宅地,及び個人正確に密接なライフライン(上下水道,電気等))2.1をテーマとし,以下の 4 項目について検討した。土構造物は重要構造物宅造盛土(埋立地を含む),河川堤防,防潮堤を含む海• 低地の液状化による宅地の被害と復旧,対策岸堤防,道路と鉄道盛土,それらに関連した擁壁,ため池• 丘陵地の造成盛土宅地の被害と復旧,対策21 地盤工学会ら堤体,フィルダム等及び切土等の土構造物は,社会に必要道路盛土では,これから脱却しようとしたのが 1960 年な重要な社会基盤構造物であり,古くから大量に建設され代の名神高速道路での盛土の締固め管理であった。すなわてきており,今後もそうであろう。例えば,河川堤防は,ち,締固め度 Dc=[現場ρd]/[室内締固め試験での(ρd)max]の管現地で利用できる土を用いて建設するのがコストから見理値(全測定値の許容下限値)と施工時含水比の許容範囲て殆どの場合で現実的である。道路・鉄道は他の交通とのを設けた品質管理方式である。これは,その後の道路盛土立体交差のために,丘陵山間部では線形維持のために高架の締固め管理の基本となった。しかし,それでも本来の性構造物が必要となる。盛土の建設費は RC ラーメン構造・能設計・性能施工には到達していない。特に,RC・鋼構橋梁よりも圧倒的に低く,トンネルや地盤・斜面掘削があ造物のような耐震設計は実施されていない。この状況は,る場合は近接盛土によって掘削土処理によるコスト増と1995 年阪神淡路大地震の前はフィルダムを除く宅造盛環境負荷増が避けられる。また,締固めが悪い泥岩材から土・河川堤防・道路・鉄道等の盛土で一般的であった。そ成る盛土等,粒子の経年劣化が生じる場合を除き,RC・鋼の理由としては,以下が挙げられる。構造物のようには経年劣化しない。これらのため,盛土と1) 対象が膨大であり,崩壊した場合に復旧する方が現実的な対応となる。それに関連した擁壁は社会の基本的な重要構造物であり2) 盛土は崩壊しても社会的影響が小さい。続けている。3) 崩壊しても復旧が容易である。盛土・擁壁等の土構造物の設計・施工は,「要求性能を満たすことを目指す性能設計」と「その実現を目指す性能4) 個々の現場での実際の盛土材の物性を簡単に把握でき施工」が本来の姿であろう。すなわち,宅造盛土は家屋をないことから,高度に未知・非一様・多様・可変・複安定に保つこと,河川堤防と防潮堤は洪水を防ぐこと,た雑である土の変形・強度特性を考慮した解析は複雑過め池堤体・フィルダムは安全に貯水を継続できること,道ぎる割には信頼度が低い。5) 耐震設計の導入は設計・施工・維持管理体系全体を変路・鉄道は長期安定性が高く,かつ残留沈下が小さくて維更する大仕事になる。持管理費を抑制できることである。特に,道路・鉄道ではRC・鋼構造物が崩壊しなくても盛土が一か所でも崩壊すこれらに関連して,盛土及び地山補強土工法で補強したると線状構造物としての機能が停止して社会的に大問題切土斜面と一定の高さ以下の擁壁に対して,常時に対してとなる。このことから,豪雨・大地震等の異常時に崩壊し適切に設計してあれば地震被害の例が少ないことから耐ないこと,できるだけ建設費が低いこと等が重要な要求性震設計は不要,と言う経験論がある。しかし,これは設計能である。このことは,同じく線形構造物である河川堤計算で明示されておらず,ランダムであり制御されていな防・海岸堤防でも同様である。い隠れた各種の余裕に頼る考え方である。耐震性と言う要しかし,現地生産物である盛土の設計・施工・維持管理求性能を満たすことを目的として安定計算で定量的にそは RC・鋼構造物とは相当異なり,今日でも設計・施工に未れを確認する性能設計と要求性能を満たすように施工管解決な課題が多い。その理由とこれらの課題について,建理する「性能施工」を実施しないことを基本方針としてし設材料としての土の特徴に基づいて設計・施工・維持管理まうと,実質的に耐震性を向上させる盛土の締固め管理のを総体として捉えて,歴史的な経緯も踏まえて議論してみ合理化・排水設備の整備や補強土等によるより合理的な構る。造形式の採用への動機が弱くなる。この点は,後でやや詳しく論じる。2.2何故,盛土の設計・施工・維持管理に課題があるのか?2.31995 年阪神・淡路大震災から 2011 年東日本大震災土構造物では,特に線状構造物である河川堤防・道路・鉄道では盛土材料は選定の自由度が低い上に,構造物に沿上記の様な歴史的な背景の中で,1995 年阪神淡路大震って土質の変化が激しい場合が多く,設計時に実際の土質災で多数の社会基盤構造物が崩壊し社会に深刻な影響をを正確に想定するのは通常は困難である。また,締固め直与えたことから,土構造物の耐震設計の流れが明らかに変後の不飽和状態での変形・強度特性の全体像の把握が容易わってきた。すなわち,社会基盤構造物に対してレベル IIではないことに加えて,設計で想定する「地震時・豪雨時設計地震動の導入が社会的に合意され,RC・鋼構造物での飽和状態での変形・強度特性」はそれとは異なっていて,は,速やかに新設構造物の耐震設計にレベル II 地震動が導その推定は更に難しい。このような事情のため,要求性能入されて,道路・鉄道等の既設の重要社会基盤施設の耐震に基づいた性能設計とそれに対応した締固め管理による診断・耐震補強も順次実施された。一方,従来耐震設計を性能施工の実施は単純ではない。したがって,フィルダム積極的に行っていなかった盛土・擁壁・切土等の土構造物では性能設計・性能施工が早くから基本であったが,道では,新設のレベル I 設計地震動での耐震設計の導入が 1路・鉄道・河川堤防等では,「このように施工すれば要求段目のジャンプ,新設のレベル II 設計地震動での耐震設計性能を満たすはずだ」と言う経験に基づく工法規定方式がの導入が 2 段目のジャンプ,既設のレベル II 設計地震動に主体であった。対する耐震診断・耐震補強の実施が 3 段目のジャンプとな22 った。また,レベル I 設計地震動に対する耐震設計を行っ場合が多いが,近代的機械化施工では Dc の平均値は容易ていた場合は,新設のレベル II 設計地震動での耐震設計のに 95%程度以上になる(図 1 の盛土 A の場合)。また,地導入が 1 段目のジャンプ,既設のレベル II 設計地震動に対震時に対しても排水条件を仮定して(τf)d を設定する場合する耐震診断・耐震補強の導入が 2 段目のジャンプとなっが多いが,密な飽和土の非排水強度は排水強度を超えるよた。これらの対応は,重要度の高い土構造物から順次実施うになり,非排水繰返し載荷による低下も小さい。この 2されてきた。しかし,その実施速度は RC・鋼構造物と比つの要因によって(τf)d が相当安全側になっていて,慣用設較するとかなり鈍かった。計法がレベル II 設計地震動に対して危険側とは限らず,こその状況の中で,2004 年新潟県中越地震では鉄道と関のような盛土はレベル II 設計地震動でも崩壊しないこと越自動車道・一般道の盛土,宅造盛土がかなり崩壊し,JRになる。このような場合,従来のままの過小評価した(τf)d東日本の信濃川発電所の 3 つのフィルダムも直下型地震を用いてレベル II 設計地震動だけを導入すると,レベル動で被害を受けた。2007 年能登半島地震でも能登有料道II に対して実際には安定を保てる盛土も崩壊することに路の高盛土が多数崩壊した。これらの地震では,幾つかのなる。従って,(τf)d として実際に即した値を用いて,安全ため池も崩壊した。2009 年 8 月 11 日の駿河湾を震源とす率ではなく残留変位量で耐震性を判断する等,実際的な設る地震では東名高速道路の吉田∼相良牧之原間で盛土の計法が必要となる。り面が崩壊して上り線が 5 日間閉鎖された。さらに,2011一方,古い時代に建設されて盛土・支持地盤がかなり緩年東日本大震災では鉄道・道路の盛土崩壊が広域・多所でく,また飽和度が高くて実際にレベル II 設計地震動を受け生じて交通網が寸断され大きな社会的影響を与えた。また,て崩壊した場合でも,レベル 1 設計地震動に対して設計せ宅造盛土も多所で多数崩壊し,河川堤防の被害も著しかっん断強度(τf)d として排水せん断強度を用いると「安定」とた。数多くのため池も被災し,藤沼ダムは越流崩壊して人判定されることがある(図 1 の盛土 B の場合)。しかし,命が失われた。この場合,飽和状態での非排水断強度は排水強度よりも小道路・鉄道等の線状構造物では,RC・鋼構造物が無被さくなる上に非排水繰返し載荷を受けて著しく低下して害でも盛土が一か所でも崩壊すれば機能を喪失し代替の流動的なすべりが生じることがある。この場合は,従来のない場合は影響が甚大となる。ため池堤体・フィルダムや設計法は荷重の過小評価と強度の過大評価によって著しゼロメートル地域を護る河川・海岸堤防盛土は,崩壊したく危険側となっている。従って,設計地震動をレベル II時の被害は甚大である。広域・多所で被災すれば復旧は容に引き上げる場合も,(τf)d に対する非排水繰返し載荷の影易ではなくなる。機械化施工が進み従来よりも遙かに大規響を考慮したより現実的な非排水せん断強度を用いて,安模な盛土が建設されてきて,崩壊した場合の復旧が困難な全率だけでなく残留変位を計算して流動破壊の程度を予場合が増えてきた。宅造盛土が崩壊すると,個人に対する測する必要がある。ダメージが深刻である。盛土のせん断強度, τfこのような経緯と状況は,盛土等の土構造物の耐震設計と耐震診断・耐震補強の実施を,重要な盛土等の土構造物実挙動を予測できる耐震性照査1) 想定する巨大地震を反映したレベルII設計地震動2) 実際的な設計せん断強度ではレベル II 設計地震動に対しての実施を後押ししてきている。2.42.4.1慣用設計:1)地震荷重は、過小評価2)土の強度は、Aでは過小評価、 Bでは過大評価実挙動と耐震設計の関係耐震設計の合理化の必要性A1A大地震時実挙動A耐震設計は,新設構造物に対して適用されるだけではなBく,地震被害を受けた構造物の復旧と既設構造物の耐震診安定断・耐震補強の目標・方法の指針・基礎となる。崩壊B安全率=強度/荷重 = 1従来,レベル I 設計地震動に対して耐震設計を実施してレベルIきた。この場合,実務の盛土の地震時安定解析では,極限レベルII地震時せん断応力, τwつり合い法によって所定の設計水平震度 kh (たとえば図 10.15)に対して求めた安全率が所定の値(例えば 1.2)以盛土のレベル II 設計地震動に対する実挙動,レベル I 設計上であることを確認してきた場合が多い。レベル I 設計地地震動を用いた慣用設計とレベル II 設計地震動に対する耐震性震動に対する耐震設計は,実際の地震動がレベル II である照査の関係場合に対して危険側である。しかし,計算された安全率は2.4.2設計せん断強度(τf)d の設定法の影響も受け,その設定には耐震設計不要論の問題点前述の様に,耐震設計は,①耐震性のある構造物の新設,通常幾つかの余裕が隠されている。すなわち,盛土では締固め度 Dc が管理値(全測定値の許容下限値,例えば標準②被害構造物の強化復旧,③既設構造物の耐震診断・耐震プロクターでの 90%)に等しいと仮定して(τf)d を設定する補強の基礎である。したがって,耐震設計を実施しない場合は,地震被害を受けた土構造物をどのように復旧するの23 地盤工学会らか,既設土構造物をどのように耐震診断して耐震補強する地震時に被災しない事例が多いこと」が挙げられている。べきか,という目標と方法論が曖昧になる。しかし,耐震このような事例の理由は,従来の設計には擁壁の安定性に設計不要論,あるいは常時設計で十分という意見は強い。関して,以下の余裕が一定程度に含まれているからである。土構造物は崩壊してもその社会的影響は小さく,復旧は1) 設計では豪雨・長期降雨・集水地形等に備えて飽和状比較的容易なので,被災したら修復すれば良いという考え態にあると想定し,不飽和状態では発揮されるサクシ方が伝統的にある。これが,耐震設計不要論の根拠の 1 つョンによる見掛けの粘着力を無視している。2) 盛土の実際の締固め度を過小評価して,設計ではせんとなっている。さらに,「耐震設計していなくても,常時断抵抗角を過小評価する傾向にある。荷重に対して適切に設計・施工してあれば耐震性は十分に3) 擁壁基礎の前面は予期せぬ掘削・洗掘があり得るので,ある」という考えかたも耐震設計不要論の根拠になってい設計では一定程度以下の根入れの効果を無視している。る。以下,この根拠は曖昧なことを示す。このような余裕は,施工が良いほど大きくなる。しかし,すなわち,図 1 で説明した枠組みは,従来耐震設計をしていなかった場合にも当てはまる。すなわち,良く締め施工者の努力によって,設計で想定しているレベルを超え固まっている盛土の場合,過小評価された (τf)d を用いたて品質の高い締固め施工がなされても,設計には反映され常時の設計で安定性が確認されていれば,実際のレベル Iていない。また,排水工の整備によって豪雨時でも盛土が地震動に対して安定を保つ可能性がある(図 2 の盛土 C飽和化しない場合でも,設計には反映されていない。逆に,の場合)。このことが,「常時に対して適切に設計・施工し締固めが不十分で,あるいは排水性が不十分,あるいは両ていれば,耐震設計は不要である」と言う意見の根拠の一方でも,上記の余裕のために常時には安定性を保っているつとなっている。しかし,盛土 C では実際の土のせん断強場合も少なくないはずである。擁壁の耐震設計不要論は,度が設計強度を超える程度はランダムであり,その差は設このようにランダムであり制御されておらず信頼性に欠計・施工で管理されていない。また,豪雨・長期降雨の後ける余裕に頼っている,と言える。やその途中に地震が来襲する場合や集水地形に建設されさらに,盛土の場合と同様に,仮に従来設計法で常時にた盛土の場合で飽和度が高くなっている場合は,実際のせ対して一定の安全率を確保した擁壁でも,設計地震動があん断強度と設計強度の差は小さくなっている。とくに,締る値以上になれば安全率は 1.0 以下になってしまう。やは固めが悪い上に飽和度が高い盛土は,常時に安定でも,レり,耐震設計をしていない擁壁が十分耐震性があることを,ベル I 地震動でも崩壊する可能性が高くなる(盛土 D)。説得力を持って示すことは難しい。すなわち,「耐震設計従って,盛土 C と D の場合,実際のレベル I の地震動でをしてない擁壁でも常時に対して適切に設計・施工されて崩壊する場合が多数出てくる。ましておや,実際のレベルいれば地震時に被災しない事例」という一定の条件での経II の地震動に対する安定性は全く保証できない。験を地盤・水理条件,盛土条件,規模,地震動特性等々異なる条件の擁壁一般に拡大して適用する経験論的手法は,盛土のせん断強度, τf常時に対する慣用設計:1)地震荷重はゼロ2)土の強度は、Cでは過小評価、 Dで は過大評価C通常の安定解析法に基づく耐震設計法と基本的に矛盾す安全率=強度/荷重 = 1ることになり,本来的に無理がある。安定盛土の締固めが悪い,排水性が低い等の理由で,常時で崩壊の余裕が実際には十分大きくなくても,常時に安定していCレベルII地震時の実挙動ればその余裕の大きさは不明である。このことから,盛土・擁壁の耐震設計不要論は,地震時では余裕が無くなるCDD常時レベルIレベルI地震時の実挙動レベルII盛土・擁壁が一定程度建設されることを許容することにな地震時せん断応力, τwる。地震動が大きいほど,崩壊する確率が高くなる。少なくない土構造物が被災する状況が無くならなくても,被災したら復旧する方針の方が全体的に見れば経済的である,図 2耐震設計をしていない盛土の地震時挙動という意見がある。しかし,機械施工が進み高盛土が増えてきて,高盛土は一度崩壊したら復旧は容易ではない。まさらに基本的なこととして,仮に従来設計法で常時に対た,崩壊したら社会的な影響が大きい重要な土構造造物もして一定の安全率を確保した場合でも,設計地震動がある増えてきて,宅造盛土では崩壊した場合の個人のダメージ値以上になれば安全率は 1.0 以下になる。耐震設計をしては大きいことから,土構造物の耐震性に対する社会的要求いない盛土が十分耐震性があることを,説得力を持って示レベルも上がってきた。特に 2011 年東日本大震災を経て,すことは難しい。「崩壊したら復旧する方針よりも,重要土構造物は適切な上記の状況は擁壁に関しても同様であり,「常時荷重に耐震設計,耐震診断・耐震補強をした方針の方が社会全体対して適切に設計・施工されていれば,一定の高さ以下ののライフサイクルコストが低くなること」が社会的にも認擁壁では耐震設計は不要である」という意見がある。この識されて来ていると思われる。ような耐震設計不要論の根拠としても,「耐震設計をして以上のことから,今日では上記の耐震設計不要論の根拠ない擁壁でも常時に対して適切に設計・施工されていれば24 2004 年新潟県中越地震では土構造物の被害が際立ったは弱くなっていて,「重要な土構造物では耐震設計が必要ことから,土木学会は被災した土構造物の「構造的に強化である」という意見が強くなっていると言えよう。して機能復旧,すなわち強化復旧」を提言した。すなわち,2.4.3盛土・擁壁の選択的な強化復旧:耐震設計の合理化の方向性道路・鉄道・宅地等耐震設計では,本来は,上記の余裕の程度を適切に評価の盛土・擁壁の復旧は,迅速な復旧を最優先にして行うし,施工上の努力(締固め施工や排水設備の設置等)が耐必要がある。しかしながら,重要度が高い施設が被災し震性能及び経済性の向上に結び付くように設計方法を改た場合,崩壊時に他施設に甚大な影響を与えた場合,大善して,施工上の努力が奨励されて実質的に耐震性の高い規模な盛土や高い斜面上の盛土のように被災時の復旧土構造物が建設されるようにすることが重要である。これが困難な場合等においては,単純な原状復旧を越えて,らの多くは今後の課題であるが,以下に示すように,これ選択的に,適切な排水処理と十分な締固めを行い,建設までも一定の前進はしてきている。コストが適切となる最新の構造形式を採用して,原状よりも構造的に強化して機能復旧に務める必要がある。従来の盛土の設計法は耐震性に関して十分ではなかったと認識して,耐震設計を導入,あるいは設計地震動をレここで言う機能強化には,防災施設(河川堤防・防潮堤ベル II に引き上げると,良く締固めた盛土では非現実的で等)での防災機能の強化も含まれる。また,補強土擁壁等不経済な構造となる。これは,1995 年阪神淡路地震後にを積極的に活用すれば,体積が大きな緩い法面の盛土やも行った道路・鉄道の既設盛土の耐震診断の結果でもあった。たれ式・重力式擁壁への原状復旧よりも安定性が増すだけその理由は,前述のように従来の設計法では地震動を過小ではなく工期が短縮し建設・維持コストが低下できること評価するとともに良く締固めた盛土ではせん断強度を過から,強化復旧=コスト増大ではないことを強調している。小評価するからであり,設計地震荷重を増加する場合は同また,「応急復旧が最優先なために強化復旧できない」と時に良く締固めた盛土では設計せん断強度の設定法と安は限らず,補強土擁壁等によって応急復旧がそのまま恒久定解析法自体を見直す必要がある。具体的には,良く締固強化復旧につながった例もある。めた盛土の場合はピーク強度(内部摩擦角φpeak)から従来の標準的せん断強度に相当する残留せん断強度(残留摩擦2.5.2角φres)に低下して行くというひずみ軟化現象が顕著であ耐震診断・耐震補強新設土構造物に対して耐震設計を実施する場合ならば,ることから,これを考慮した Newmark 法によって残留す要求レベルが低く技術レベルが低い時代に建設された土べり量を算定してレベル II 設計地震動に対する耐震性を構造物は耐震診断・耐震補強が必要となる。判定する方法が開発された。この新しい耐震設計法は高さ飽和土の地震時強度は締固めの程度により大きく変化15m 以上の高速道路の高盛土に関する設計要領・土工編し,締固め度が悪いと非排水繰返し載荷のために通常の標(2009 年 7 月)として採用されている。この耐震設計法準的な設計強度よりも小さくなる。したがって,新設盛土は,鉄道構造物等の設計標準にも適用盛土高さの制限無しの設計と共に既設盛土の耐震診断でもこの要因を考慮すに取り入れられている。また同設計標準では,擁壁の耐震る必要がある。また,性能設計では供用期間内での豪雨・性設計で用いる動土圧を,レベル II 設計地震動に対応でき長期降雨・集水地形を想定し飽和状態での安定性を検討するように物部岡部理論をφpeak とφres の値を考慮できるようるが,安全側を見て地震時にも飽和状態を想定することにに修正して求めている。なる。透水係数が低い土は締固め難く,飽和・非排水状態で等体積状態でのせん断強度(特に繰返し載荷時の強度)2.5は低い値となる。しかし,常時は不飽和状態であり非排水強化復旧と耐震診断・耐震補強でも等体積条件ではなく,飽和度が低いほどせん断強度は2.5.1排水強度に近づき,より高いサクションが作用して高い値原状復旧か,強化復旧か原状復旧は,自然災害を受けた社会基盤構造物の復旧にとなっている。盛土内の常時の飽和度は一様でも一定でも対する従来からの基本方針である。「喪失した機能を原状ないが,平均的に見て飽和度が低い方が豪雨時の飽和化がに戻すこと」の意味ならば不合理性はない。しかし,「原遅くなり地震時に飽和度が低い状態にある可能性が高い。状復旧」を「崩壊した土構造物の機能と共に構造も原状に従って,締固めが悪いほど常時に飽和度が高い状態を避け戻す」という意味で用いることが多い。その場合は,耐震る必要がある。このような締固めの影響と複合した飽和度設計を含む耐災設計をしておらず古い技術で設計・施工さの影響は現在の新設の盛土の設計では考慮していないが,れた崩壊した盛土・擁壁・切土の元の構造に戻すことにな既設盛土の耐災診断では考慮する価値がある。すなわち,るので,同様な自然災害でまた崩壊することを許容するこ新設の盛土の設計の場合とは異なり,既設盛土の耐震診断とになる。耐震設計をしないことが基本方針ならば,このでは実際の締固め度と常時での飽和度に基づいて実際の「原状復旧」は妥当と言うことになる。しかし,今日の段常時でせん断強度を推定して,既設盛土の常時での実際の階で新設ならば耐震設計をする重要な土構造物の場合は,安定性を評価して,それから地震時の安定性を推定し,そこの「原状復旧」は不合理な方針となる。れに基づいて耐震補強の有無を判断するのが合理的と思25 地盤工学会ら仮に,一定の飽和度 Sr で乾燥密度ρd が増加すると強度・われる。剛性は必ず増加する。一方,Sr と Va は,今日の社会的要求性能と技術レベルから見て締固めが不十分な場合でも,しかも盛土材が泥岩・風化凝灰岩・火Sr = 1 − Va山灰質細粒土等の問題のある透水性が低い土質の場合であっても,締固め直しや盛土材の交換はできない。この場増加する。一方,一定のρd で Sr は増加すると強度・剛性はまず有効であろう。また,地山補強土工法による盛土の補強,法尻での抑え盛土,支持地盤の改良等も有効であろう。低下する。Va=1‒(ρd /ρw)(1/Gs+w),(Gs は土粒子の比重,ρw は水の密度)の関係にあるので,一定の w で締め固めた場合は,①性能施工と締固めの設計への反映ρd の増加と②Va の減少(Sr の増加)が同時に起きる。この場合,①ρd の増加による強度・剛性の増加が②Va の減少(Sr盛土の性能施工2.6.1(1)の関係にあることから,一定のρd で Va が減少すると Sr は合,盛土からの排水性の向上による常時の飽和度の低下が2.611 − ρ d /( ρ w ⋅ Gs )の増加)による減少を凌駕している間は,締固めによって想定した要求性能は「性能設計プラス性能施工」によっ強度・剛性が増加する。この場合,「締固めによって Va がて実現することになるが,前述のように盛土の施工管理は減少するために強度・剛性が増加する」ように見えるが,RC・鋼構造物の様に直線的ではない。そのため,設計で想定した要求性能を実現するための意識的な性能施工が必これは見掛けの現象である。つまり,Va が一定の値以下に要となる。なるように締固めを管理する方法は,w 一定で締固める場合においてρd の替わりの指標として Va を用いているので現在の盛土の締固め管理は,Proctor の締固め理論を基礎あって,本質はρd の増加を確認する管理である,と理解しとしている。すなわち,図 3 を参照して締固め時の含水なければならない。比 w が所定の締固めエネルギーで最大乾燥密度(ρd)max が得また,「Va をある値以下にする」という締固め管理の規られる最適含水比(wopt)よりも低いと(より正確には,飽和定から,Va をなるべく減少させゼロまでに至るのは良い締度が(ρd)max が得られる最適飽和度(Sr)opt よりも低いと),締固め法であると誤解する場合がある。これは,Sr が最適飽固めた不飽和状態では強く硬いが,飽和化すると弱化・軟和度(Sr)opt(一定の締固めエネルギーで(ρd)max が得られる時化する。したがって,(ρd)max の実現を施工目標にする必要の飽和度で,この値は締固めエネルギーに依存しない)をがある。超えるまで Va を低下させると,エネルギーを増加させてS r一定乾燥d?,密xもρd は増加せず強度・剛性は低下する過転圧現象が生じるゼロ空気間隙率(飽和度Sr= 100 %、空気間隙率Va=0%)虞が出てくる。このことから,Va 管理を Sr が(Sr)opt に達していることを確認する方法として用いるのならば,合理的・ァ度・ρd ・」・V a 一定であることが分かる。最大乾燥密度, (?d)max室内締固め試験(1Ecの場合が多い)さらに,別途締固め土の Dc(あるいはρd)が要求される乾燥密度の管理値(許容下限値)変形・強度特性を実現できる値に達しているのかを確認する必要がある。この Dc 管理(あるいはρd 管理)は,盛土含水比一定での締固め過程最適含水比, wopt図 3の耐震性・残留沈下特性等の要求性能が向上するほど,また高盛土等の重要な盛土であるほど,重要になる。すなわ含水比, wち,要求強度・剛性に基づく Dc(ρd)管理プラス Va(Sr)管理が本来の性能施工である(なお,安定性と共に低い透水空気間隙率管理の意味性が必要な遮水盛土の場合にも,この議論は妥当である)。このような性能施工の実施は,設計で常時残留沈下特性,しかし,自然含水比が wopt よりもはるかに高い場合,締固め曲線が求め難い場合があり,近代的機械施工での締固豪雨・地震等に対する耐災性等の要求性能が設定されて初めエネルギーは Proctor の時代よりも遥かに大きくなり現めて意味を持つ。要求性能を設定しないと,施工性だけか場と室内では wopt が異なる,などの理由で上記の Proctorら施工管理法が決定される傾向になる。の方法を直接適用し難い場合が増えてきた。それを背景に,盛土の締固め管理は,「w=wopt (+α)で締固め度 Dc を所定の2.6.2盛土の締固め状態の設計への反映値以上にする管理」と「空気間隙率 Va を所定値の範囲に法勾配を持つ盛土と擁壁の耐震設計の要点の 1 つは,乾までに低下させる管理」を併用する(Va or Dc)管理方式燥密度あるいは締固めの影響を適切に考慮することであに移行して,現在は「Va を所定の値以下にまで低減する管る。すなわち,盛土の性能設計と性能施工を関連付けるの理を基本とした(Va or Dc)管理方式」も採用されている。は,所定の値に設定された強度・剛性(残留沈下特性も含しかし Va 管理法の根拠は何であろうか。その明確な説む)である(場合により透水性も)。また,変形・強度特性は締固め度に非常に敏感である。このことから,締固めが明は案外見当たらない。以下,その説明を試みる。良い盛土の地震時残留変位を Newmark 法等で算定する場26 合はφ peak とφ res を用いる必要がある。一方,耐震診断ではられるならば,N 値に依存する手法に替わる手法となる。締固めが悪い既設盛土も検討対象になる。飽和土の地震時強度は締固めの変化に非常に敏感に反応するので,まとめ2.8Newmark 法等でも締固めの影響を敏感に反映できる必要盛土・擁壁は重要な社会基盤構造物であるが,要求性能がある。非排水繰返し載荷によって発生する過剰間隙水圧に基づいた「耐震設計を含む性能設計」と「要求性能の実∆ud によって有効拘束圧が初期値σ0から減少し,それに現を目指す性能施工」の実施は単純ではない。しかし,こよって地震時のせん断強度τf が低下すると仮定して,刻々の 20 年間の地震災害を含む自然災害の経験に基づくと,のτf の値をその土に固有の cその方向に向かう必要性は明らかであり,それに向けてのとφ を用いて,τf=c +(σ0 -∆ud)tanφ努力は今後も続けていく必要がある。(2)によって算定する方法が実務で用いられている。しかし,3. WG1 の活動概要この方法はτf に対する締固めの影響を過小評価する虞がある。その理由の第一は,繰返し載荷開始時は∆ud=0 なの検討項目とサブワーキンググループ SWG3.1でτf を式(2)によって求めると排水強度となるが,排水強度WG1 では,東日本大震災で被害が顕著だった,①戸建は非排水強度と比較すると締固めの影響が小さくなるかて住宅(丘陵地盛土と埋立地の宅地),及び個人生活に密らである。加えて,地震中でも破壊時の過剰間隙水圧∆u接なライフライン(上下水道,電気等),②地盤の液状化は締固めてあるほど正のダイレイタンシーのために上記の実務的な予測法の確立を目指した検討を実施した。の非排水繰返し載荷によって発生する過剰間隙水圧∆ud よこれらの施設を対象として以下の 4 つの検討項目を設りも小さくなり,非常に密な場合は負にもなる。この場合定し,それぞれを担当するサブワーキング SWG を表 2 にもτf を式(2)によって求めると,密な土ほど非排水強度を過示すように設置して具体的な検討・とりまとめ作業を実施小評価する。むしろ,非排水繰返し載荷によって低下してした。いく非排水せん断強度を直接定式化して,そのまま用いる表 2方が締固め効果を適切に考慮できる。WG1 の 4 つの SWG と担当者委員名SWG1SWG2SWG3進[副委員長]〇〇〇〇自然地盤を対象とすると,地盤の締固め度を推定してそ橋本隆雄[副幹事長]〇〇〇〇れから液状化強度を推定する方法は間接的な方法となり,大林 淳◎主査時松孝次〇2.7安田地盤の液状化の判定について実務的にも用いられていない。中井正一〇人見 孝〇針(1972 年)がある。これは道路橋の地盤調査では支持平出 務〇地盤を調べる目的で標準貫入試験が一般的であったこと松下克也〇から,地盤の液状化の判定にも標準貫入試験による N 値を山内崇寛〇利用している。1972 年以前の設計指針では,新潟地震(1964大井昌弘〇初期の地盤の液状化の判定法として道路橋耐震設計指年)後は,液状化が激しかった新潟市内での N 値が 10 以下であったことと平均粒径が 0.35mm 程度であったことから,そのような地盤が液状化するとされていた。ところが,小椋仁志〇若松加寿江〇佐藤真吾〇◎主査沖村 孝〇東京湾岸道路のプロジェクトでは粒径が小さく細粒分含笠間清伸〇有率が高い砂地盤が多いため,その判定法を適用するとほ門田浩一〇とんどの埋立地と若い沖積砂層が液状化すると判定され森友宏〇ることになり,地盤の液状化の判定に平均粒径や細粒分含若井明彦〇有率を考慮する必要性が認識された。その点で,標準貫入足立有史試験は,乱された試料が得られるので好都合であった。一方,標準貫入試験の問題の一つは,手間と時間が掛かり,得られる情報が離散的で,同一の N 値でも年代が古くSWG4◎主査規矩大義〇佐伯英一郎〇東畑郁生〇中出 剛〇〇なるほど液状化強さが増加して行くと言う年代効果のよ塚本良道◎主査うな微妙な要因が十分に反映されていないことである。新大島昭彦〇たに提案される調査方法や判定方法が,N 値をベースとし清田 隆〇た既存の方法に依存する手法であっても良いが,連続的あ近藤 勉〇るいは大量のデータが短時間に得られて,効率的に地盤種仙頭紀明〇豊田浩史〇眞島正人〇宮本順司〇別の判定が可能であり,年代効果にも感度良く抵抗値が得27 地盤工学会ら策)1) SWG1:低地の液状化による宅地の被害と復旧,対策a) 今回の地震では多くの造成盛土宅地が種々の被害を受2) SWG2:丘陵地の造成盛土宅地の被害と復旧,対策3) SWG3:液状化によるライフライン(上下水道,ガス,けた。そこで,被害の素因(盛土材料・盛土の軟弱さ・盛土厚さ・地下水位・集水地形・排水施設等の有無等)電気,通信)及び道路の被害と復旧,対策と誘因(地震動の強さ,周期特性,継続時間)を分析し,4) SWG4:液状化の実務的な予測法の見直し被害と無被害を分けた要因を明らかにする。3.23.2.1b) 被害が広域・多所で発生したため応急危険度判定の人SWG 毎の検討方法SWG1(低地の液状化による宅地の被害と復旧,員や応急復旧の資材が不足した。また,頻発する余震に対策)対する危険度判定等,巨大地震災害故に生じた応急復旧のための調査のあり方の問題点が顕在化した。復旧までa) 液状化による戸建て住宅の沈下のメカニズムは,まだの過程の中で,これらの作業の位置付けを明確にする。完全には明らかになっていない。傾斜に関しては,隣接する建物の荷重も影響するのでさらに複雑である。そこc) 1978 年宮城県沖地震で被災し復旧した箇所のうち,今で,今回の被災事例を詳細に分析し,振動台実験や解析回被災した箇所と無被災だった箇所があった。この差異とも合わせてこれらのメカニズムの解明を行い,また,の原因を明らかにすると共に,本復旧の方法について検影響を与える要因を研究する。討する。d) 既設の造成宅地に関して,盛土範囲の調査方法,地盤b) 戸建て住宅の液状化は,法的な整備や試験制度への導入が遅れてきた。そこで,建築基準法や宅地造成等規制調査方法,耐震性の検討方法を整理する。法の関連法律における規制や,住宅の品質確保の促進等e) 造成宅地盛土の変状による家屋の被害,ライフラインに関する法律における住宅性能表示事項への地盤の液の被害のパターンを整理し,それを予測する方法を検討状化を含めた地盤の品質説明と品質確認の項目の追加,する。木造建築士の試験内容での地盤の液状化の項目の追加等に関して,国交省等に働き掛けをする。3.2.3c) 戸建て住宅の宅地用に経済的かつ精度の良い液状化にSWG3(液状化によるライフライン(上下水道,ガス,電気,通信)及び道路の被害と復旧,対策)関する調査・試験と判定方法に関する検討を行う。また,a) 今回の地震動の継続時間は長く,また 29 分後に大きな戸建て住宅の液状化については設計地震動(レベルⅠか余震が襲った。そのため,地盤が液状化した状態で大きⅡか)が定まっていない。宅地の液状化の判定のためにく長く揺すられ続けたためと思われる 揺動 が発生しも,統一的な地震荷重を検討する。たが,そのメカニズム及びそれがライフラインや道路にd) 液状化によって被災した住宅の復旧時の液状化対策,与えた影響に関して検討する。そして,これに対するラ及び液状化した地区全体で実施できる道路等と宅地一イフラインの対策方法に関して検討を行う。体型の液状化対策に関して,現在各機関で行っている技b) 平面道路に関しては,液状化に対して特に注意して設術開発を整理し,小冊子等で早くまとめて,まだ進んで計・施工されてきていない。そこで,液状化による被害いない復旧・復興に役立たせる。一方,新設の戸建て住を整理し,道路構造毎に対策の必要性を検討し,既設の宅に関し,狭隘な箇所にも適用が可能で低価格な液状化道路に対する液状化対策の技術開発の方向性を示す。対策に関して整理を行う。また,既設の戸建て住宅に対し,圧入締固め工法や薬液注入工法といった直下改良に3.2.4よる液状化対策を整理し,これらも小冊子等にまとめる。a) 今回の地震では継続時間が長かったことと 29 分後に大SWG4(液状化の実務的な予測法の見直し)なお,これらの検討にあたっては,適切な改良範囲(平きな余震が襲ったため,東京湾岸のように震央から遠く面的及び深さ)も検討し,小冊子に盛り込む。加速度振幅がさほど大きくはないのに甚大な液状化被e) 宅地の液状化の調査の必要性を判断するための予備判害が発生したと考えられる。このように巨大地震の場合定法としてハザードマップを位置付ける。各自治体等でに,地震動の長い継続時間や大きな余震の影響に関して,行われているハザードマップ作成手法を整理し,できれ室内実験や解析を基に検討を行う。そして予測方法につば標準化した作成方法を提案する。ここでは旧河道,旧いて検討する。湖沼,埋立て等の履歴を考慮する等して信頼性を高める。b) 今回の地震では,関東地方では埋立地等の若齢地盤のさらに,液状化指数 PL や液状化層厚・非液状化層厚,みが液状化し,古く堆積した地盤ではほとんど液状化し地下水位等と住民に本当に必要な情報である家屋の沈なかった。液状化の発生に与える年代効果の評価方法と下・傾斜角との関係を被害事例から明らかにし,ハザーして,標準貫入試験等のサウンディングの結果が,年代ドマップから直接家屋の被害は推定できる方法を検討効果を適切に反映しているのか否か検討する。さらに,する。地盤の液状化強度の判定の基本的な問題として,①繰返し非排水三軸試験で通常液状化の判定を行っている両3.2.2ひずみ振幅 DA= 5 %は,地盤の液状化現象を適切に表現SWG2(丘陵地の造成盛土宅地の被害と復旧,対28 d) 2013 年 10 月 30 日(水)しているのか,②液状化はもっと大きなひずみでの現象第 4 回世話役会ではないのか,③DA= 5 %だと密な地盤の強度を過小評y一般論文発表価していないか,といったことに関して検討を行う。y報告書の目次と担当者c) 今回の地震後の調査において,液状化し易い土のチュy今後のスケジュールーブサンプリングによる不撹乱試料の採取技術の継承が行われていないことが指摘された。そこで,このよう2) SWG1(低地の液状化による宅地の被害と復旧・対策)な技術の伝承のあり方とチューブサンプリングに関すa) 2013 年 4 月 24 日(水)る新たな技術開発の方向性に関して検討する。3.33.3.1活動の方法と会合の経緯第 1 回 SWG1y活動方針y検討項目・内容と役割分担y富山ワークショップb) 2013 年 12 月 13 日(金)活動の方法第 2 回 SWG1a) 各委員は,項目毎の SWG に所属して活動する。y報告書の内容と役割分担b) 各委員は,独自に行う研究及び外部で行われている研yスケジュールの確認究をとりまとめる。c) 委員の有志は,実験や解析を行う。3) SWG2(丘陵地の造成盛土宅地の被害と復旧,対策)d) 国土交通省のガイドラインで考えられた公共施設と民a) 2013 年 4 月 12 日(金)間の宅地とを一体化した「液状化対策推進事業」と意見y活動方針交換する。第 1 回 SWG2y検討項目・内容と役割分担e) 平成 23 年度第 3 次補正予算で建設技術研究開発助成制y富山ワークショップ度「既設の公共インフラ及び宅地における経済的・効果y大震災シンポジウム的な液状化対策に関する技術研究開発」に採択された機b) 2013 年 12 月 25 日(水)第 2 回 SWG2関で戸建て住宅等の液状化対策に関する研究が行われy報告書の内容と役割分担る。そのうち,「浅層盤状改良による宅地の液状化対策y大震災シンポジウム研究委員会」では地盤工学会内に検討委員会を設けられy検討内容ており,この委員会と意見交換する。f) 地盤工学会関東支部「造成宅地の耐震対策に関する研究4) SGW3(液状化によるライフライン(上・下水道,ガ委員会」では戸建て住宅の液状化対策に関して検討してス,電気,通信および道路)の被害と復旧,対策)いるので,意見交換を行う。3.3.2a) 2013 年 4 月 23 日(火)会合の経緯4 つの SWG の世話役が集まる会合を計 4 回,各 SWGの会合は計 10 回開催した。以下に各会合の日程と主な議題を示す。y幹事会報告y8 学会合同調査報告y検討内容yスケジュール確認第 1 回 SWG3b) 2013 年 6 月 21 日(金) 第 2 回 SWG31) 世話役会a) 2012 年 6 月 27 日(火)第 1 回世話役会y富山ワークショップy検討内容yスケジュール確認y各 SWG の名簿yWG1 の活動方針y報告書の内容と役割分担y各 SWG の検討内容yスケジュール確認y八戸ワークショップy今後の各 SWG 活動方針c) 2013 年 12 月 13 日(金)d) 2014 年 3 月 4 日(火)b) 2012 年 11 月 19 日(月)第 2 回世話役会y各委員会 SWG の活動報告y今後の活動計画の立案c) 2013 年 7 月 3 日(月)y報告書の内容yスケジュール確認第 3 回 SWG3第 4 回 SWG35) SWG4(液状化の実務的な予測法の見直し)a) 2013 年 4 月 19 日(金)第 3 回世話役会第 1 回 SWG4y各委員会 SWG の活動報告y報告書の内容と役割分担y富山ワークショップy富山ワークショップy報告書の書式案・目次案y大震災シンポジウムy今後の各 SWG 活動方針4. WG2 の活動概要29 地盤工学会ら4.1表 3 WG2の5つの SWG と担当者活動の目的と検討項目WG2 では,社会基盤施設の既存・新設土構造物の合理SWG的な耐震設計・性能評価法と耐震補強工法の確立を目指しA龍岡文夫[委員長]た検討を実施した。このような社会基盤施設としての土構造物は,大まかにBC○古関潤一[副委員長]◎高橋章浩[副幹事長]〇〇阿部長門〇a) 線状交通施設としての道路盛土・鉄道盛土石川敬祐〇b) 治水・利水施設としての河川堤防・ため池堤体稲川雄宣〇内山 伸〇む。また,b)では基礎地盤や堤体自体の液状化に起因する大北耕三被害とその対策も対象とする。〇大塚 悟これらの施設を対象として以下の 5 つの検討項目を設〇桑野二郎定 し , そ れ ぞ れ を 担 当 す る サ ブ ワ ー キ ン グ SWG(A)~SWG(E)を表 3 に示すように設置して具体的な検討・とりまとめ作業を実施した。〇神田政幸〇小濱英司〇SWG(B) 既設土構造物の耐震性能とその診断・評価法に関する検討SWG(C) 土構造物の耐震補強工法の効果とその評価法に〇澤田俊一〇◎高崎秀明⇒藤原寅士良〇〇田山 聡検討〇〇〇林検討〇また,WG2 のメンバー全員が集まる会合を計 9 回開催〇豪人平田和太⇒中村邦彦〇〇平野孝行し,検討成果に関する質疑と関連検討事例に関する話題提◎〇〇〇〇〇○〇藤原斉郁供を行うことで情報を共有した。◎松岡 元松島健一検討内容の概要各 SWG で実施した検討内容の概要を以下に示す。SWG(A):各施設の要求性能の整理◎〇〇西村 学SWG(E) 復旧・復興時における土構造物の利活用に関する〇〇田中俊行SWG(D) 新設土構造物の耐震性能とその評価法に関する〇三神 厚〇安福規之〇〇注:◎は主査,⇒は活動期間中に交代したことを示す。盛土をはじめとする各種の土構造物は,鉄道・道路等の線状交通施設の一部として使用する場合と,堤防・ため池価法に関する検討等の治水・利水施設の一部として使用する場合とでは,本過去の地震により,既設する土構造物は盛土の変形やす来要求される性能が異なると考えられる。例えば,地震にべり崩壊,法面や天端位置での亀裂発生被害等の数多くのよって盛土の天端が沈下する場合では,沈下量の絶対値が種類の被害を被っている。この被害を発生させる主要因と重要なケース,不同沈下量や縦断勾配の変化が重要なケーしては,地震動の慣性力によると解釈されるものと盛土自ス,あるいは沈下量よりも盛土本体の遮水性能の維持が重体もしくは基礎地盤の液状化による地盤の持つ有効応力要なケースなど,要求性能の違いに応じて,異なる指標を用いて性能の照査を行う必要が生じるものと考えられる。SWG(A)では,各施設の要求性能の整理を行い,典型的の低下が原因するものや繰返し載荷されることにより歪が増加する繰返し軟化によると解釈されるものなどがあり地震による被災要因も 1 種類ではない。な関連事例もあわせて収集・提示することで,これらの違また,被災を受けた断面の近傍には,設計時に考慮したいを明確にすることを試みた。さらに,2011 年東日本大外力を上回る地震力を受けても無被災もしくは軽微な被震災後に地盤工学会がとりまとめた第二次提言では,旧基害に収まっている事例も数多く存在している。これらの過準で設計・施工された鉄道施設に関して後記のような提言去の地震被災を受けた既設土構造物の被災事例を収集整がなされていることから,万が一被災した場合の他の施設理して統計的に考察することは,土構造物の耐震性能を論の復旧方針にも着目して,応急復旧と恒久復旧の関係を整じる上でも重要な視点となる。理した。4.2.2〇〇佐々木哲也竜田尚希関する検討4.2.1〇櫻庭拓也SWG(A) 各施設の要求性能の整理4.2E〇〇は次の 2 種類に分類できる。a)には補強土,擁壁・橋台背面盛土,路床・路盤等を含D〇SWG(B)では,既設土構造物の耐震性能に関して鉄道,道路,河川堤防,ため池,港湾,空港,その他の土木構造SWG(B):既設土構造物の耐震性能とその診断・評物の盛土と構造目的別に事例収集を行った。また,土構造30 物の耐震性能は作用側となる地震動の特性を考慮する一準・防災諸制度で想定しない地盤災害が発生することをで方では,抵抗側となる地盤自体の耐震性能の診断及び評価きる限り避ける必要があり,そのために,現行基準を必要方法も重要な視点となる。そこで,盛土自体とその基礎地に応じて適切に改定すること,既存不適格構造物を更新・盤の新しい調査技術と,既設土構造物の耐震評価事例を収改築・補強するには多大な費用が必要なことを社会的に理集した。解してもらうこと,経済的で効果的な診断と補強の技術の開発が必要であること等をまとめている。4.2.3SWG(C):土構造物の耐震補強工法の効果とその評SWG(D)では,このような背景にたち,東日本大震災を受けて,現行基準の適切性の判断の後に必要に応じてどの価法に関する検討盛土等の土構造物は,道路や鉄道,堤防,宅地等様々な様な見直しがなされてきたか,災害を通して従前以上に見インフラ施設として用いられているものの,土の特徴であえてきた課題に対する新たな動向と取組がどの様に行わる高い修復性等から他構造物に比べ耐震補強が必ずしもれてきているかを,設計・施工の両面からとりまとめた。進んでいないのが現状である。一方で,道路や鉄道等の線4.2.5状構造物においてネットワーク全体の耐震性を向上させSWG(E):復旧・復興時における土構造物の利活用に関する検討るには,他構造物と同様に土構造物箇所の耐震性も向上さ2004 年新潟県中越地震では,道路・鉄道の土構造物(盛せる必要があるのは言うまでもなく,様々な機関で土構造土や擁壁等)に大きな被害が多数生じた。これは中越地域物に対する耐震補強法の開発・検討が行われている。SWG(C)では,この土構造物を対象とした耐震補強工法が中山間地のために傾斜地盤上の盛土構造物が多かったの実態について,補強原理や補強効果,設計法や評価法等ことや,地震直前の台風による降水のために盛土の強度低を調査・整理した。実態調査の方法としては,初めに東北下が生じたことが,盛土構造物の被害を大きくした要因と地方太平洋沖地震後に地盤工学会より出された第二次提されている。しかし,阪神・淡路大震災以降,コンクリー言の巻末添付資料「地震による地盤災害の防止・減少のたト構造物の耐震性の向上は確実に進められているのに対めの工法・技術を紹介する報文集」に掲載された工法を対して,土構造物については十分な対策が行われていなかっ象に実態調査を行い,その後,随時検討対象工法を追加したことも背景としてあり,新潟県中越地震は既存の土構造つつ,これらの整理・分析を実施した。物の耐震対策が大きな課題としてクローズアップされた出来事であった。これまで,地震等の災害を受けた土構造4.2.4SWG(D):新設土構造物の耐震性能とその評価法に物の復旧は,現状復旧が基本となっていた。その理由とし関する検討て,土構造物は復旧が容易であることや,強化に対するコ地震・豪雨・洪水などの自然災害が多い我が国では,過去ストの増大を避けていたことが挙げられる。しかし,鉄道に甚大な被害を受けた災害の都度,被害原因の推定・特定に使われるような土構造物が崩壊すれば列車の脱線につや各種基準の改訂といった対策が行われてきた。近くは阪ながり人命が多数失われる可能性がある。また,重要な幹神・淡路大震災により公共インフラ等に甚大な被害を受け,線道路においては,土構造物の崩壊の程度が大きくなると耐震設計の高度化が図られてきたのもその一例である。緊急車両の通行が不可能となり,人命救助や消火活動等のしかしながら,この高度化の効果はその後に新設される災害の初動対応すら不可能な事態となる。 このような状構造物にのみ恩恵が与えられ,それ以前の基準で構築され況から,土木学会の新潟県中越地震第二次調査団がとりまた構造物は,所謂既存不適格のまま放置されることが多かとめた調査結果と緊急提言Ⅰでは,土構造物に対する強化った。東日本大震災では,阪神・淡路大震災以降で高度化復旧の必要性が提言された。された構造物には地震動による甚大な被害が発生しなかSWG(E)では,新潟県中越地震以降に地震被災を受けたったといわれているが,一方で既存不適格のまま放置され道路,鉄道,ため池等の土構造物について,強化復旧が行てきた構造物が被災した事例や,海岸防潮堤等に見られるわれた事例を収集した。また,強化復旧が本当に現状復旧ように,現行設計の想定を超えた規模の巨大津波によってよりもコストの増大となってしまうのかという課題に対設計時には想定していなかったモードで完全に崩壊したして,ライフサイクルコストの観点から試算を実施した事事例は枚挙に暇が無い。例も収集した。さらに,東日本大震災のような広域災害で外力の想定が困難な上,地球温暖化も手伝って日々そのは,膨大な災害廃棄物の処理が課題となっているため,こ巨大化が想定され,さらには既存不適格構造物が膨大に存れを土構造物に有効利用した事例の収集も行った。在する中では,今回の教訓の一つである「現行基準は万全ではない」を厳しく受け止めていかなければならない。4.3東日本大震災後に地盤工学会がとりまとめた第二次提会合の経緯WG2 の活動経緯として,会合日程と主な議題を以下に言では,現行の地盤工学・技術,関連設計基準等,防災諸示す。制度が,地盤災害を防ぎ軽減する見地から見て万全ということは決してなかったという反省に立ち,今後は設計基a) 2012 年 7 月 3 日31第 1 回 WG 地盤工学会らyH24 年度の活動方針y各 SWG からの報告y鉄道土構造物の要求性能と関連事例y報告書y道路土工の耐震性能照査における要求性能とg) 2013 年 10 月 7 日NEXCO 盛土構造物の地震検討第 7 回 WGy河川堤防の耐震性能照査における要求性能y盛土法面の品質改善に向けた締固め技術と維持管理yため池堤体(農業用利水施設)の土構造物の設計y新潟県中越地震における鉄道土構造物の被害と強化y空港施設の土構造物の設計における要求性能y土構造物としてのダムの耐震挙動(フィルダム,ロy鉱さいダムの被害状況と耐震検討方法ックフィルダム,アースダム)y港湾空港舗装の復興と空洞及び CPG による液状化復旧対策b) 2012 年 10 月 2 日y第 2 回 WG報告書の書式案・目次案ySWG(B)と SWG(C)の作業方針y東日本大震災における現代版土のう工法y河川堤防の代表被災箇所における検討事例y活動概要と今後の予定y高速道路盛土・舗装・路盤及び港湾施設の被害y新潟県中越地震における道路土構造物の被害と強化y山元町の造成宅地の被害y各種補強工法の補強原理分類表の構成c) 2012 年 12 月 17 日h) 2013 年 12 月 9 日復旧第 3 回 WGyジオテキスタイルを使用した盛土の強化・補強技術y補強土構造物の地震時挙動y鉄道擁壁・橋台の地震被害と変形レベル及び三陸鉄第 8 回 WGy災害廃棄物の利用の現状と利用技術y鉄道土構造物の耐震補強対策y東日本大震災での港湾・空港の被害y報告書の書式の修正案・目次最終案i) 2014 年 2 月 3 日y道の被害と復旧状況第 9 回 WG宮城県山元町太陽ニュータウンの宅地被害と復旧対y実地震被害データに基づく河川堤防の耐震性能評価y各種補強工法の補強原理分類表の作業結果(中間報y河川堤防の被害分析結果告 1)y静岡の地震での東名高速盛土崩壊とその後の関連調策査・点検d) 2013 年 2 月 28 日 第 4 回 WGy原形復旧・強化復旧時の費用便益分析yピエゾドライブコーンを用いた液状化判定y補強工法の整理表最新版の内容y盛土斜面の原位置孔内回転せん断試験法(BST ゾンy最終報告書デ)y震災特別シンポジウムにおける委員会活動成果報告yNSWS 試験による仙台城石垣の被災状況調査y被災した能登有料道路盛土のジオテキスタイルでの以上復旧y各種補強工法の補強原理分類表の作業結果(中間報告 2)e) 2013 年 5 月 10 日第 5 回 WGy盛土の締固めの課題y非排水繰返し載荷による強度の継続的低下を考慮した Newmark 法によるすべり変位の算定y締固め度のばらつきと自己相関特性が盛土の地震時安定性に及ぼす影響y国土交通省共通仕様書の締固め管理基準の改定y鉄道の土留め構造物の耐震設計の考え方f) 2013 年 8 月 20 日第 6 回 WGy鉄道施設の構造境界部での挙動y土を育てる:軟弱粘性土地盤の圧密促進工y傾斜打ち地盤調査事例32
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  • タイトル
  • 地盤構造物耐津波化研究委員会 委員会報告
  • 著者
  • 地盤構造物対津波化研究委員会
  • 出版
  • 地盤工学会特別シンポジウム -東日本大震災を乗り越えて-
  • ページ
  • 33〜42
  • 発行
  • 2014/05/14
  • 文書ID
  • 67538
  • 内容
  • 委員会報告地盤工学会震災対応研究委員会「地盤構造物耐津波化研究委員会」1. はじめに想の確立であり,実務に適用できる技術の創造である。2. 研究テーマの概要と活動内容2011 年の東日本大震災は,非常に大きな津波が広い範囲に襲来したことが特徴であるといえる。三陸地方ではこれまでにも大きな津波に何度も襲われており,そのための2.1対策は取られていた。釜石の湾口防波堤を例にとると,こ本研究委員会は,菊池喜昭委員長(東京理科大)およびの防波堤は明治と昭和に襲来した二つの大津波と同程度54 名の委員から構成され,2011 年 10 月から 2014 年 3 月の津波から町を守ることを前提に約 30 年の時間をかけてまでの 2.6 ヵ年で,以下の 4 つのテーマについて取り組む建設されたものである。防波堤だけでは完全な津波防御はことにした。できないので,陸に防潮堤を設置し,防波堤と防潮堤のセ1)津波による防波堤の破壊・崩壊メカニズムの解明ットで津波対策をしようとしたものである。この防波堤の研究テーマの概要・津波力による防波堤の破壊・崩壊事例の分析,メカニ建設には多くの技術者が関与し,当時の技術の粋を集めてズムの検討立派なものを建設した。しかし,結果として,2011 年の・津波による海底地盤の洗掘と堆積メカニズムの解明と東日本大震災時に襲来した津波はそれまでの想定をはるそれらが構造物の安定性に及ぼす影響の解明2)津波による防潮堤・閘門の破壊・崩壊メカニズムの解かに超える津波であったため,釜石湾口防波堤といえども最初の津波で壊されてしまった。国土交通省の釜石港湾事明務所では,地震直後から津波が襲来することを予測し,近・津波の作用力と地盤構造物の相互作用による防潮堤・所の住民に事務所への避難を呼びかけていた。幸い,この閘門の破壊・崩壊メカニズムの解明事務所では 2 階までしか浸水しなかったため,この事務所・地盤および土構造物に対する津波の浸食・吸い出し・に避難された方は全員無事であった。しかし,実際に津波洗掘作用の解明3)沿岸構造物における地震動と津波による複合災害メカが襲来していた時にはどこまで水位が増すかだれも予測できるはずはなく,多くの犠牲者が出た。助かった人たちニズムの解明も非常な不安にさらされていたことであると思う。・地震動による変状を受けた後に津波を受けた構造物の防波堤だけでなく,防潮堤についても大きな被害が出事例の分析・検討,被災の程度の分析・検討た。想定をはるかに超える津波が襲来したことによるもの・地震動による被災を受けた構造物の複合災害の事例のである。技術者には,このような事態にあっても人や町を分析・検討,変状の分析とメカニズムの解明守る防波堤,防潮堤を作る義務がある。津波による波力,掃流力については,地盤の技術者は必ずしも,熟知してい4)地盤構造物の耐津波構造の研究・上記を踏まえた地盤構造物の耐津波構造,耐津波強化るわけではないが,防波堤,防潮堤を形成する土構造物の工法の提案挙動については地盤の技術者が責任をとる必要がある。ここれら 4 つのテーマを進捗させるために,以下の 4 つののようなことから,本研究委員会では,海岸工学を中心とした水理学を専門とする技術者・研究者と地盤工学を専門ワーキンググループを作って議論を進めた。とする技術者・研究者とが情報を交換する形で研究を進め(1)津波の水理特性 WGて耐津波構造物の在り方を議論してきた。(2)洗掘と侵食 WG(3)防波堤と防潮堤の耐津波化に関する WGまた,今回の災害では特に東北南部から関東地方にかけ(4)複合災害の検討 WG(岸壁 WG)ての地域では,大きな地震動を観測し,それによる被災を受けた後に津波が襲来するという複合的な災害を受けた。このような複合災害が大規模に生じたことも今回の地震もともと,本研究委員会の議論の対象は構造物の耐津波災害の特徴であり,この課題についても,水理学と地盤工特性の把握とその強化ということであるが,その議論の前学の融合が期待される分野である。段として,津波が構造物に及ぼす水理学特性の理解が必要であるとの観点から(1) 津波の水理特性 WG を設定した。本委員会では,津波による洗掘・浸食作用と土構造物の破壊・崩壊の問題,それに対応するための地盤工学的技術この WG は主として水理学の分野の技術者・研究者が担当の開発と実務への適用を目的として 2 年半活動してきた。した。また,今回の津波被害では,防波堤周りの洗掘,越最終的に要求されるのは,耐津波構造物を整備する際の思流時の防潮堤の侵食,防潮堤背後の落掘りが大きな問題で33 地盤工学会震災対応研究委員会「地盤構造物耐津波化研究委員会」あった。このようなことから(2) 洗掘と侵食 WG を設定しし,船舶などを押し流し,海底地形を変化させた。これらた。この WG は両分野の技術者・研究者が混ざって研究をそのものも被害として重大な事象であるが,船舶などの大進める WG となった。(3)防波堤と防潮堤の耐津波化 WG型の漂流物の衝突による港湾の荷役機械の損傷,洗掘によと(4)複合災害の検討 WG は地盤工学の分野の技術者・研る構造物の倒壊や堆積による港湾機能障害などの被害と究者が主として担当したが,水理学分野の情報を仕入れないった 2 次的な被害も発生している。本節は地盤工学会のがら研究が進められた。概要報告書として津波の水理に係る事項の基本的な内容を,水理の専門家以外の人に分り易く説明することを意図2.2して取りまとめる。活動経過委員会会合は主として 2 ヵ月に1回開催し,各 WG の活動報告や今後の活動計画について討議した。また,会合で(2)津波の物理とシミュレーションは各委員が保有する研究成果や調査データをはじめ,他分ここでは,まず,浸水高と浸水深の違いなど,多くの人野で活躍される外部講師を招いた話題提供の機会を設け,が戸惑う専門用語について解説した後に,津波の発生,海最新情報の共有を図った。さらに,2011 年東日本大震災洋の伝播,そして陸上への遡上において重要な津波の物理における被災および復旧状況の視察として,見学会を開催を概説している。津波の伝播速度(波速)は水深の二乗根した。に比例し,このために水深の変化によって波の進行方向が【開催日】2012 年 12 月 11 日(火)変化(屈折)する。例えば,岬の先端部ではその周辺の水【場深の変化によって津波が集まるように伝わるため,津波が所】1) 仙台市荒浜地区海岸公園冒険広場ほか2) 福島県相馬港,(松川浦漁港)高くなる。海岸で反射された津波は水深の増大につれて屈折角が増大し,屈折角が 90°を超えたところで沖合には伝播せずに海岸線に沿うように伝播することがある。これをエッジ波と言う。さらに,津波の場合には波エネルギーの輸送速度が波速に等しいことから,波エネルギーの保存が成り立つような海洋を伝播する津波では,水深が浅くなると波高が増大(浅水変形)する。水深の変化がなくても,ホイエンスの原理にしたがって島の背後にも津波は伝わる(回折)。水深の浅い海岸線近くを伝播した津波は波高の増大に合わせて前傾化して,波の先端部がステップ形状になって段波を形成する。前傾化しすぎて波形の安定性を写真1 現場見学会の様子(相馬港)失うと砕波して砕波段波になる。緩い海底勾配が長く続く沿岸部では段波となった津波の先端部で波分裂が起こっ2.3成果の公表て短波長の波が津波に重畳して波状段波を形成する。「東日本大震災に関するシンポジウム」(2012 年 4 月津波のシミュレーションについては,断層パラメ―タ,24 日)では本研究委員会の取り組み内容を紹介し,第 48地形データなど計算のために必要なデータ,入力データの回地盤工学会研究発表会(富山)(2013 年 7 月)では,津作成および津波の伝播・越流・遡上計算の計算フローを示波に関するセッションを主催し中間報告を行った。「地盤し,各段階における内容を概説している。断層パラメータ工学会特別シンポジウムー東日本大震災を乗り越えてー」で定められる断層から海底地形の変化(津波の初期波形に(2014 年 5 月 14, 15 日)では委員会の活動成果として,等しい)を計算する解析解,津波の伝播計算をするときの関連論文 9 編の発表を予定している。現在,活動の成果を線形長波方程式,非線形長波方程式,非線形分散波方程式最終報告書としてとりまとめており,地盤工会 HP などをの特徴,津波が構造物や地形を越流・遡上するときの計算通じて公表する予定である。本報告はその抜粋版である。モデルについて概説している。3. 各 WG の研究成果報告(3)津波の波力地形の影響を受けて複雑に変化する津波の波力につい3.1津波の水理特性 WGては,これまで主に水理実験によりその特性が議論されて(メンバー:富田(とりまとめ),井上,織田,越村,桜きた。近年では計算機の能力向上により,数値計算による庭,松島,松田(達),松田(信))波力の解析技術の開発も進められているが,その精度につ(1)概要いては検証段階である。ここでは,東日本大震災の教訓を2011 年東北地方太平洋沖地震は,国や地方自治体など踏まえ,防波堤など海中構造物や陸上構造物の直立部(鉛が想定していなかった規模の大地震であり,これに伴う津直壁)に作用する津波波力について,主に水理実験の結果波は東北から関東地方の広域に甚大な災害を発生させた。に基づき提案されている評価手法を概説している。津波は広大な沿岸域を浸水しただけでなく,構造物を破壊海中構造物の直立部に作用する津波の波力の評価式は,34 「防波堤の耐津波設計ガイドライン」1)に示されるように日本大震災における気仙沼湾の事例,1960 年チリ地震津波状段波の有無や越流の有無により異なる。海中構造物で波による気仙沼湾の事例,2004 年インド洋津波によるスは構造物背面にも海水があることから,津波によって作用リランカ・ハンバントータ海岸の事例を取り上げ,その内する構造物前面の波力の他に,背面水位の変化によって作容を概説している。津波による海底地形変化の解析は掃流用する力を評価する必要がある。さらに,鉛直方向の力に砂と浮遊砂とに分けて行われることが一般的であり,そこは浮力に加えて揚力が作用する。で使用される掃流砂量モデル,浮遊砂の沈降量モデルおよ陸上構造物に作用する津波の波力を算定する場合,一般び掃流差の巻上量モデルについて,既往の幾つかの代表的には,まず津波の遡上解析により津波の浸水深や流速を評な論文に基づいて概説している。海底地形変化の数値計算価し,それらの値を使って流体力の評価式から構造物に働法については,上記の各種モデルの関連性を示しながら計く力を算定する(例えば,文献 2),3))。構造物全体に働算の流れ図としてまとめている。く荷重を求める場合には,裏側の圧力や構造物の三次元効果を評価する必要があるが,遡上した津波の第一波を対象3.2にした場合には,構造物の裏側には十分な浸水がないこと(メンバー:池谷(とりまとめ),磯部,近藤,佐々,佐津波による洗掘・侵食 WGが多いため,裏側の圧力を無視することは安全側の評価と野,澤田,塩見,末次,諏訪,常田,土橋,ハザリなる。カ ヘマンタ,橋口,藤澤,前田,宮本,安原)(1)概要最近では構造物を考慮した遡上解析結果から直接圧力を評価する手法もある。この手法では,構造物を考慮した津波による洗掘・侵食機構について,2011 年東北地方太平面 2 次元の津波遡上計算を用いて浸水深を算出し,これ平洋沖地震津波における被害の調査報告,震災を受けて実に運動量から求めた圧力を加えて津波波圧を求める。施された各種の実験・解析研究報告のレビューを行い,津波による洗掘と侵食の機構とその対策について考察した。(4)津波漂流物なお,詳細については文献 4)を参照されたい。東日本大震災で発生した津波漂流物の直接被害を,図 1に示すよう 6 種類に分類した。港湾施設などへの「衝突」,(2)洗掘と侵食とはアンローダーなどの「引きちぎり」,漂流物そのものの被ここでは,先ず「洗掘」・「侵食」の定義を示す。地盤工害としての「乗り上げ・沈没」や「流失」,陸域や海域へ学用語辞典 5) および土木用語大辞典 6) による「洗掘」・「侵の「散乱・集積」,その他に「火災・延焼」である。ここ食」の定義を表 1 に記す。これらを踏まえ,侵食現象を「水では,それぞれの被害の事例を,写真を示しながら紹介し流などにより地盤が洗い流される現象の総称」と,洗掘現ている。さらに,漂流物により港湾の啓開作業が長期化す象を「構造物の存在に起因する構造物周辺地盤の侵食現ることによって,港湾機能が低下して経済的な影響を及ぼ象」と定義し,東日本大震災以前から得られている知見のす間接被害がある。整理を行った。洗掘現象の発生機構として,構造物の存在津波漂流物の衝突力がこれまでにも実験的に研究されにより水流が局所的に加減速し,地盤表面に土砂粒子の移ており,本節では流木とコンテナ,各種形状に対して提案動限界を超えるせん断応力を発生させ,土砂粒子の移動量された評価式を紹介している。の空間的な不均衡をもたらし,その結果地形変化が発生するとする水工学的アプローチ(図 2 上参照)が用いられてきた。この考え方に従えば,洗掘現象は水流による作用が大きい場所で生ずるため,縮流,渦,乱流,砕波などが発生する堤頭部,杭,橋脚,パイプライン下,護岸前面など表1洗掘と侵食の定義の比較地盤工学用語辞典洗掘(scour)図15)「土砂が水流により洗い流されることをいう。侵食の一現象ではあるが,土木の現場では法面が雨水の流れで洗い流される現象に多く用いられる。」「流水,地下水,氷河,風,波,海流,重力などの力が地表物質を運び去る現象をい侵食(erosion) い,侵食が生じる作用を侵食作用という。多くの場合,侵食と侵食作用は同義で用いられる。」津波漂流物による被害(5)津波による地形変化ここでは,津波による地形変化に関する研究として,東35土木用語大辞典6)「深掘れともいう。流水の流れの変化や乱れ等により,河床等が侵食をうけること。」「岩石や土砂が雨,水,氷,風,波等によって削られること。」 地盤工学会震災対応研究委員会「地盤構造物耐津波化研究委員会」が洗掘を受け易い場所となる。洗掘を防止する方法としては,洗掘の発生原因となる水流を制御する方法や地盤表面を洗掘されにくい材料(被覆石,被覆ブロック,アスファルトマットなど)で被覆する方法などがあり,水中橋梁基礎,護岸前面などの水底で洗掘防止対策が施されている。(3)東北地方太平洋沖地震津波における洗掘と侵食の実態東日本大震災の津波により発生した洗掘と侵食の事例を調査した。高速流が発生する防波堤の開口部,渦の発生する防波堤や護岸の隅角部,越流水が加速される防潮堤(海岸堤防)の裏法尻周辺(落掘),加速流が発生するタンクや家屋の両側などで,大きな洗掘現象が発生したことが明らかになった。建物や橋梁基礎の底盤の下部に生じる洗掘や堤防の裏法面や被覆工の侵食など,水工学的アプローチでは説明できない現象も報告されている。津波による洗掘・侵食現象は,1)不飽和地盤である陸上に存在する構造物に遡上した津波が作用する点,2)陸上を遡上する津波のフルード数は 1 を超える場合が多く,構造物周辺で大きな水位変化が生じやすい点で通常みられる河川や海域における現象とは異なると考えられる。また,液状化の発生図2と津波の作用がほぼ同時に生じたと思われる地域として,最大余震の発生と津波の襲来の時間差が小さかった茨城津波による洗掘・侵食現象解析法の改良 4)洗掘・侵食機構および対策法に関する今後の研究課題と県沿岸の被害を検討した結果,同時発生により洗掘現象がしては,津波による洗掘・侵食現象は,間隙率,含水比,増長されたことを明示する事例は見いだせなかった。間隙水圧,有効応力などの地盤の状態変化に応じて,外力一方,有効な対策を考案するために,主に海岸堤防と落および移動を抑制する力が変化することを考慮して安定堀について,洗掘・侵食現象を低減した事例を抽出し,天性を評価することが必須と考えられる。外力として表面流端面の侵食抑制,法面の植生による被覆,補強盛土,アスによるせん断応力に加え,透水力,空気圧力などを,移動ファルト舗装などが,洗掘・侵食現象の低減に有効に機能を抑制する力としては,重力,摩擦力に加えて,透水力,したことを確認した。有効応力,間隙圧力などの影響を加味する必要がある。また,安定性だけでなく,地盤の移動量,侵食率の評価が,(4)津波による洗掘侵食に関するメカニズムとモデル化洗掘の時間発展特性を把握するために必要となる事項で津波による洗掘・侵食に関するメカニズムとモデル化にある(図 2 下参照)。津波による洗掘・侵食機構を解明するついて,震災前・後に実施された研究をレビューし,津波ための実験的な研究,メカニズムのモデル化,統合化が研による洗掘・侵食現象を理解する上での考慮すべき機構を究課題として挙げられる。調べた。その結果,津波による洗掘,侵食を考える上で考慮すべきメカニズムとして,1)不飽和地盤中への水の浸透(6)まとめ現象と空気の圧縮現象,2)防波堤マウンドへの浸透現象と津波による洗掘・侵食の実態・メカニズムと対策工に関海底基礎地盤の侵食および越流洗掘と浸透の連成効果,3)して研究現況と今後の課題について考察を行い,地盤の状液状化や水位変化に伴う間隙水圧の変化など,地盤の物理態変化を考慮することが耐津波化のカギになることを示状態が変化した際の地盤の移動・変形機構にあることが明した。対策に関するその他の研究課題としては,以下が挙らかとなった。げられる。1) 設計津波条件を超えた場合の津波に対して洗掘・侵食(5)洗掘侵食対策と今後の課題機構を反映した対策津波による洗掘・侵食への耐津波化対策について,津波2) 耐津波安定性,耐洗掘・侵食性,耐透水性,耐地震安定による洗掘・侵食機構を考慮して対策の現状をとりまとめ性など複数の機能を満足させ,その他の機能に悪影響た。海岸堤防の裏法尻の洗掘対策,堤体内の空気圧縮の低を与えない総合的な対策減のための空気抜き,網袋詰め砕石による揚圧力の低減な3) 津波が襲来する前までの健全性,メンテナンス性の確どについて研究結果を提示している。こうした対策の研究保は端緒についたところであり,今後の研究の進展が期待される。36 3.3防波堤・防潮堤の耐津波化に関する WGのを粘り強いものとすることが考えられる。報告書では,(メンバー:前田・宮田(とりまとめ),池谷,磯部,井防波堤,防潮堤に分け,それぞれ対象が新設か既設である上,上野,織田,加藤,金田,菊池,小島,佐々木,かに分類し,目的を安定性向上対策(地盤改良,構造的補佐野,澤田,塩崎,塩見,下迫,高橋,土田,常田,強),洗掘・浸食対策に区分して,具体的な技術を整理し,土橋,飛田,二瓶,野田,ハザリカ ヘマンタ,原田,特徴を詳細に記述している(表 2~5)。システム・ベースは,例えば道路や鉄道などの盛土など藤澤,松島,山田)(1)概要防波堤・防潮堤について,2011 年東北地方太平洋沖地本来の用途は耐津波構造物ではないが,津波抵抗性の効果震津波における被災を中心に,被災形態や機構を整理することにより,防潮堤としての機能を保持させる方法,単体とともに,各機関の耐津波化設計の見直し内容や考え方をの構造体(防波堤,防潮堤など)のみではなく,複数用い紹介している。また,今後十年程度の短期,または数十年,ることによる複合的な効果を考慮して,エリア全体をシス百年という中・長期における,防波堤・防潮堤の耐津波化テム的に津波に対して強くする方法がある(表 2 参照)。のための地盤技術の高度化を視野に,対策技術選定ガイド2011 年 3 月の東北地方太平洋沖地震においても,道路ライン,リスクベースの耐津波設計方法の検討結果を報告盛土や鉄道盛土が防潮堤の役目を果たし,背後の街の浸水している。を防いだ例がある。このような構造物浸水領域全体およびを考慮することや,これらの構造物を強化し耐津波化するその周辺を含めたエリア全体で既存の構造物や地形,土地(2)東日本大震災および過去の防波堤の被災概要利用などを考慮して耐津波抵抗性を向上させていく必要事例分析の結果,被災事例の分類を系統的に分類していがある。既往の構造物なども活用しながら考えていくため,る。また,代表的な被災事例をあげ,様々な視点から推定コスト面では有利になることが考えられるが,地区全体のされている被災原因についてまとめている。さらに,被災同意など時間的には長くなる可能性がある。原因究明に関する研究の概要を紹介し,耐津波設計法の見直し,確立にむけての課題と解決方法を考えるための大事(5)リスクベースの耐津波設計法の確立にむけての課題な資料と分析結果を提供している。と解決法旧来の設計方法では設計対象である構造物や地盤に作(3)各機関の耐津波化設計の見直しの概要用する外力を設定し,それに対して安全性を保つように設防波堤および防潮堤について,国土交通省,農林水産省計されてきた。津波の作用においてはその作用の不確定性等の耐津波化の設計ガイドラインの見直し内容を紹介すを考慮した対応が必要であるとともに,構造物の安定性だるとともに,その背景について解説している。また,河川けでなく,構造物の損傷に応じて生じるリスクを評価し,堤防,道路盛土,鉄道盛土などについても,共通する概念リスクベースの設計法が行われるこの必要性が解説されや構造物ごとの相違についても言及している。ている。また,リスクベースの設計法を導入し,地域の防災・減災計画との合意形成による適切な対策技術の選定が(4)地盤改良・補強技術の対策技術選定ガイドライン行われることが示されている(図 4)。巨大津波から陸地を守るには,1)防波堤や防潮堤などの想定する津波を発生頻度の高い津波と最大クラスの発なみを防護するための構造物の性能を向上させる方法と,生頻度の低い津波に分け,それぞれに,要求性能を設定す2)防波堤,防潮堤の他,他の用途の構造物を複合的に活用る考え方などが議論されている。例えば,発生頻度の高いしながらエリア全体としての耐津波性能を高めていく方津波では防災を原則とし,人命,財産,経済活動を守るこ法が考えられる。図 3 に示すような耐津波化対策の考え方とを要求性能とし,1000 年に 1 回程度の発生確率であるに基づいて,様々な地盤技術をその対策効果や課題などを津波に対しては,減災を基本として,人命を守り,経済的用途に応じて整理している。本報告では,1)の方法を構造損失を軽減し,大きな二次災害を起こさない,早期復旧を物単独の性能を基本とした対策の考え方であるとして「ス可能にすることを要求性能とする,という考え方である。トラクチャー・ベース」とし,これに対してエリア全体のまた,沿岸施設の背後地の浸水深をリスク評価の指標と耐津波化を考えていく 2)の方法を「システム・ベース」とした場合に,外力の大きさによって構造物の損傷度合や不呼ぶことにしている。対策としてはこれらのどちらか,も安定形態が異なることで,リスクが急激に高くなることなしくは複合的に用いて,効果的にも経済的にも,また時間どが解説され,ねばり強い構造物の設計における課題など的にも適切なものを選択することが望ましい。が整理されている。ストラクチャー・ベースの対策として特に重要なのは,今後の設計手法や技術開発の方向性を明確にすること既設の防波堤や防潮堤の機能や性能の向上である。これらを目的として,リスクベースの耐津波設計における問題点の補強・強化技術として,地盤工学技術が大きな役割を果や課題を系統的に整理している。主なポイントは以下のよたすと考えられる。地盤改良や抑え盛土など構造体の安定うである。性を向上する技術や補強土構造物のように構造体そのも・作用力の推定モデルと考慮すべき不確定性37 地盤工学会震災対応研究委員会「地盤構造物耐津波化研究委員会」表3・構造物が地震動によって損傷した後の津波作用によストラクチャー・ベースの対策(防波堤:盛土形式)安定性向上対策地盤改良構造的補強新 ・締固め工法・腹付けマウンド設 ・固化・注入工法・ケーソ底面の摩擦・圧密・排水工法抵抗力増加(摩擦マ・置換工法ット等)る安定照査・浸食および洗掘対策の評価法・津波頻度を考慮した構造物の長寿命化設計・地域防災・減災計画との整合性(6)まとめWG では,防波堤・防潮堤の耐津波化について,被災形態や被災機構を整理し,我が国における耐津波化の見直し内容や考え方を紹介した。また,どのような地盤工学の技術をどのように利活用するかについて,対策技術選定ガイドラインについて具体例を挙げて説明している。さらに,リスクベースの耐津波設計方法の必要性,問題や課題を挙・腹付けマウンド・ブロック・根固め工・被覆工・ケーソン上部工形状工夫・鋼矢板・腹付けマウンド・腹付けマウン・ケーソンの拡幅, ド・ブロック・根固め重量増大工・被覆工・ケーソン・鋼材を用いた工法上部工形状工夫・鋼矢・グランドアンカー板工法既 ・締固め工法(コン設 パクショングラウチング工法等)・固化・注入工法(浸透固化処理工法,バルーングラウト工法等)作用外力の不確定の考慮,ねばり強さの導入などにおいて,表4ストラクチャー・ベースの対策(防波堤:盛土形式)安定性向上対策地盤改良構造的補強新 ・締固め工法・腹付けマウンド設 ・固化・注入工法・ケーソ底面の摩擦・圧密・排水工法抵抗力増加(摩擦マ・置換工法ット等)げた。これらの問題や課題を解決することは,地域の防災・減災能力を向上させるだけでなく,地盤工学の高度化に資するものと考えている。表5新設既設耐津波化技術の基本的な考え方:ストラクチャーベースとシステムベース表2擁壁形式の防潮堤の耐津波対策技術の例安定性向上対策地盤改良構造的補強・締固め工法・杭基礎・固化・注入工法・グランドアンカー・間隙水圧消散工法工法・置換工法・締固め工法(コンパ・杭基礎クショングラウチン ・グランドアンカーグ工法等)工法・固化・注入工法(浸透固化処理工法,バルーングラウト工法等)洗掘・浸食対策・舗装・舗装システム・ベースの対策の考え方の例主防波堤防潮堤従防波堤防波堤で津波のエ防ネルギーを低下さ潮せて,防潮堤で津波堤を止める。防潮堤・防波堤洗掘・浸食対策・腹付けマウンド・ブロック・根固め工・被覆工・ケーソン上部工形状工夫・鋼矢板・腹付けマウンド・腹付けマウン・ケーソンの拡幅, ド・ブロック・根固め重量増大工・被覆工・ケーソン・鋼材を用いた工法上部工形状工夫・鋼矢・グランドアンカー板工法既 ・締固め工法(コン設 パクショングラウチング工法等)・固化・注入工法(浸透固化処理工法,バルーングラウト工法等)図 3洗掘・浸食対策大部分の津波を防波堤で吸収し,残りを防潮堤で止める。一線堤で津波のエネルギーを低下させ,二線堤で津波を止める。その他(盛土、防砂林など)地震ハザード(マグニチュード,震度,波形 etc.)大部分の津波を防潮堤で吸収し,残りをその他構造物で止める,もしくは影響を最小限に抑える。アプローチA:防波堤単独その他構造物で津波のエネルギーを低下させて,防潮堤で津波を止める。防波堤と防潮堤で津波を止めるのが基本であるが,その他構造物で,エネルギーを吸収させたり,防潮堤も超えた最終的な津波を止める。津波ハザード情報(最大波高,到達時間,継続時間 etc.)耐津波防御構造の仮定アプローチB:多重防御防波堤への作用力の評価防波堤の設計:アプローチA防波堤形式の選択と要求性能の確定防潮堤への作用力の評価断面の仮定と安定解析防潮堤形式の選択と要求性能の確定補強・改良技術の選定補強・改良技術の選定全体・詳細設計全体・詳細設計残余のリスク評価と対策の検討地域防災・減災計画との照合耐津波防御構造の決定図438リスクベースの設計方法による対策技術の選定 3.4岸壁 WG(メンバー:水野・田地(とりまとめ),池野,加藤,佐伯,佐藤(孝),佐藤(誠),菅野,高橋,寺島,飛田,平井,松田(達),八木,山之口,吉田)(1)概要東日本大震災では,地震動,地盤の液状化,津波や広域的な地盤の沈降などにより港湾施設および漁港施設に甚大な被害が生じた 7)。被害事例の中には,地震単独あるいは津波単独の作用で想定されるよりも被災程度が大きい箇所が存在した。この原因として,地震動だけではなく,地盤の液状化やその後の(または液状化継続中に)津波の図5襲来によって被害が拡大した「複合災害」の可能性が指摘複合災害の要因分析 9)されている 8)。しかしながら,津波は地震後に襲来し地震被害や液状化の痕跡を流出させてしまうため,津波襲来前に施設がどの程度損傷していたのか,地震動によりどのような被害が生じた場合にその後の津波に対する耐力が低下するのか,どのようなメカニズムで複合災害が生じるのかを現地で確認することは困難である。そこで,本 WG では,港湾および漁港における岸壁を対象として,東日本大震災で複合災害が生じたと判断される被災事例の収集を行い,被災概要の整理を行った。次に,地震単独あるいは津波単独の作用で想定されるよりも被災程度が大きな岸壁(重力式,矢板式,桟橋式)を対象とし,被災メカニズムの検討を行った。ここでは,その結果の一部を紹介する。図6津波浸水高~地表面最大加速度の関係(矢板式)9)(2)被害形態と要因分析港湾空港技術研究所による被害調査報告 9)を主体に事例複合災害の被害形態は,エプロン舗装に損傷や飛散があっ収集を行った。収集した事例数は,八戸港から鹿島港の港た施設を「●」,エプロン舗装に損傷や飛散に加えて法線湾施設 12 港 85 施設で,構造形式ごとの施設数重力式 51,のはらみだし出しがみられた施設を「□」,岸壁構造の破矢板式 24,桟橋式 7,不明 3 である。まず,表 6 に示すよう,岸壁における複合災害の被害形態を 5 つに分類した。いずれの被害形態も,地震動,液状化,津波など単独な自損や土砂の流出がみられた施設を「◇」で図示した。データにばらつきがあるものの,どの被災形態においても,おおむね津波浸水高さが 3.5~4m 以上,近傍の地表面最大加然現象に起因して発生しうるが,被害の程度から判断し単速度が 350cm/s2 以上になると,複合災害の被害形態が生じ独の自然現象だけでは被害原因が説明できないものとしていることがわかる。て位置づけた。図 5 の要因分析に示すように,例えば,エプロン舗装の(3)地震-液状化-津波による複合災害に対する検討変状(破損・飛散)に至る要因は,地震動,液状化による2011 年東北地方太平洋沖地震では,継続時間の長い強噴砂・亀裂,津波による波力などの外力の作用が挙げられ震動の作用に加え,背後地盤の液状化や津波による構造物る。前後の水圧差,その流れによる波力や洗堀の影響により,図 6 は,分析結果の一例として,矢板式構造を対象とし岸壁などの港湾構造物の被害が拡大したと考えられていて複合災害と推定できた事例を抽出し,被害形態ごとに津る。このような地震と津波の複合的災害についてのメカニ波浸水高と地表面最大加速度の関係を示したものである。表6壁,重力式岸壁,桟橋式岸壁を対象として解析な検討を行分類表 9)った。ここでは,矢板式岸壁と桟橋式岸壁について結果を被害形態分類A岸壁背後のエプロン舗装が破損・飛散B岸壁背後のエプロン舗装が破損・飛散し、さらに法線のはらみ出しありC岸壁構造が破損し,土砂流出が確認できるものD基礎マウンドあるいは海底地盤が洗掘され支持力が低下しているものEその他ズムを検討するため,被災した港湾および漁港の矢板式岸記述する。a)矢板式岸壁検討対象岸壁は,2011 年東日本大震災で被災した控え※※背後のエプロン舗装に沈下、段差が生じ,引き波が作用しやすい状況等39 地盤工学会震災対応研究委員会「地盤構造物耐津波化研究委員会」直杭式鋼矢板である。地震と津波の複合的災害について検結果の一例として,図 8 に矢板天端の残留水平変位と引討するため,まず地震応答解析(解析コード:FLIP)を実き波の水位差の関係を示す。地震直後(CASE1)での解析に施し,次に津波の引き波による構造物前後の水圧差を矢板よる矢板天端の残留水平変位は 0.27 m であり,その後,に作用させた。検討ケースを表 7 に,引き波の作用概念引き波による水圧差が矢板に作用する CASE2 では変位がを図 7 に示す。解析手法やモデル化の詳細については,文さらに増加した。特に,前面水位が低く背面水位が高いほ献 10)を参照されたい。ど矢板の変位が増加する傾向を示す。前面水位が-7.5m か表7ケース内容値 0.85m は地震時の残留変位の約 3 倍の値を示している。地震動CASE1本震のみCASE2本震 ⇒ 水圧差本震 ⇒ 水圧差(地表面まで)      +上載荷重(地表面以上)CASE3つ背面水位が+5.5m のときに矢板変位が最も大きく,その解析ケース 10)津波(引き波)水圧差図 9 に示す矢板天端の水平変位の時刻歴では,地震動が上載荷重大きくなる 50 秒および 100 秒付近で増加する傾向を示し○○○○○ている。200~210 秒の間で変位が著しく増加しているこ○とから,津波による水圧差が矢板変位を増大させる大きな要因であることがわかる。これらの結果は,地震と津波の複合作用により,矢板式岸壁の被害が拡大するおそれがあCASE2前面側引き波水位上昇+1m±0 m水位低下ることを示唆している。背面側b)桟橋式岸壁東日本大震災による杭式桟橋の被害については,渡版の水圧差流出は多く見受けられたものの,桟橋本体の被害程度は小さく,被災した施設数も少ないと言える。しかしながら,杭式桟橋の被災施設の中には,岸壁法線のはらみ出しが大きく生じるなど,地震(液状化含む)および津波による複引き波CASE3合災害が原因で被害が生じたと思われる施設も存在する。上載荷重前面側ここでは,東日本大震災で被災した漁港の杭式桟橋を対+ 1 m 背面側水位上昇±0 m水位低下象として,現行設計法 11)に基づき支持地盤の液状化と桟橋変位の関連性の検討,すなわち,現行設計法における慣用水圧差計算手法を用いて,地盤反力係数の低減が桟橋杭の変位に及ぼす影響について検討した。図 10 に検討断面を示す。検討に用いた地盤定数は,既往の報告書 12)の値を用いている。震度 0.05,0.10,0.16,変位 (m) 図7 津波の引き波による作用の概念10)0.20,0.22,0.25 の 6 段階の震度を用いて感度解析を実施した。検討は,表 8 に示すよう大きく 2 つのシナリオにつ1.0CASE1:地震直後0.8CASE2:前面水位±0 m0.6CASE2:前面水位-2 m0.4CASE2:前面水位-4 mの水平変位(mm)とし,水平方向地盤反力係数 KH の値毎CASE2:前面水位-6 mに震度と桟橋水平変位の関係を表している。また,図にはCASE2:前面水位‐7.5 m桟橋はらみ出し量の実測値(最大値,770mm)を震度 0.220.20.0345背面水位 (m) いて実施した。図 11 に解析結果を示す。図はX軸を震度,Y 軸を桟橋の線上にプロットしている。シナリオ 1 では,埋立層およ6び敷砂層の KH を計算可能な 1/10000 まで低減させても,桟橋水平変位は 45mm(震度 0.22)に留まり,実測値の図8 矢板天端の残留水平変位の比較770mm にはオーダー的にも及ばない。これは,杭の横抵10)(CASE1,CASE2)変位 (m)地震動抗の計算に寄与する層厚が相対的に薄いこと,液状化によ津波作用1.210.80.60.40.20る側方流動圧の効果が考慮されていないこと,渡版を介した土留部の側方変位が加味されていないことなど,複数の要因が考えられる。一方,シナリオ 2 について見ると,KH矢板天端控え杭天端0図9100200300400500時間 (s)600700の低減係数を 1/10 とした場合はシナリオ1の結果とほとんど変わらない。しかし,KH の低減係数を 1/100 以下にすると桟橋水平変位は増大した。震度 0.22 のケースでは,800低減係数 1/10000 とした場合に桟橋水平変位は 257mm となり,法線ずれのオーダー感としては実測値とほぼ一致し前面水位-7.5 m,背面水位+5.5 m のときの時刻歴波形(CASE2)た結果となった。10)40 これら 2 つのシナリオの比較から,現行設計法の慣用計評価するためには,粘性土の土質パラメータの設定についても重要なファクターであることが示された。算手法によって実測値をある程度再現できると考えられる。慣用計算手法で考慮できていない外力条件の寄与度を(4)まとめ分析できていないものの,沖積粘性土の地震時挙動あるいは液状化現象に類似したせん断剛性の低下が,杭式桟橋の本 WG では,東日本大震災において地震単独あるいは津変位に影響を及ぼした可能性があり,地震時の桟橋変位を波単独の作用で想定されるよりも被災程度が大きな港湾土留 渡版+2.83+0.53および漁港における岸壁(重力式,矢板式,桟橋式)につ10.0m3.5mいて事例収集を行い,被災の要因分析や被災メカニズムの上部工4.4m+2.74.4m埋立土(γ’=8kN/m3,φ=35°, N=9)検討を行った。その中でも,矢板式岸壁を対象とした解析H.W.L +1.6mL.W.L ±0.0m的な検討から,地震動だけでなくその後の津波により被害下部工(鋼管杭)基礎捨石が拡大したことを定性的に示した。今後は,津波による水-6.0敷砂(γ’=10kN/m3,φ=35°,N=9-8.50上杭:φ508×12.7t(SKK400)圧差だけでなく,洗堀や流れによる波圧などの影響につい上杭:φ457.2×12.7t(SKK400)-9.7ても検討する必要がある。さらに,遠心場模型実験などに[上部工形状]・10m×17m[杭配置]・法線平行方法:4本,@4.4m・法線直角方向:3本,@4.4m沖積粘性土(γ’=5.9kN/m3、c=24kN/m2、N=2)よる被災メカニズムの検討も合わせて進める必要があろう。-23.0下杭:φ508×9.5t(SKK400)4. おわりに下杭:φ457.2×9.5t(SKK400)-29.7 -29.7洪積砂礫土(γ’=10kN/m3、N=62)杭②杭①本研究委員会で取り扱ったテーマは全体的に難しく,ま-39.7-40.0図 10検討断面 12)表8検討シナリオ共通沖積粘性土の剛性低下シナリオ別震度共通きたことは限定的である。しかし,海岸工学を中心とした水理学を専門とする技術者・研究者と地盤工学を専門とする技術者・研究者とが情報を交換する形で研究を進めるこシナリオ1シナリオ2とができたことは,非常に有意義であった。こうした活動地盤反力係数K Hの低減で考慮地盤反力係数K Hの低減で考慮を機に,全国の同じ思いを持つ技術者の英知を結集するこ考慮しない地盤反力係数K Hの低減で考慮シナリオ埋立土・敷砂の液状化た範囲が広いため,この 2 年半の間に委員会活動だけでで杭③とでさらなる大きな成果が生み出され,研究成果が実務に役立つようになるものと期待している。k h=0.05, 0.10, 0.16, 0.22, 0.20, 0.25謝辞本研究委員会の研究を進めるにあたっては,国土交通省,桟橋の水平変位 (mm)1000農林水産省をはじめとする各機関からの情報を利用させていただいたほか,自治体,港湾管理者からも個別に情報100を提供していただいた。本委員会における研究活動を進め10るにあたり,地盤工学会関係者の皆様に大変お世話になり実測値(770mm、最大値)非液状化(KH=1500N)KH低減係数=1/10KH低減係数=1/100KH低減係数=1/1000KH低減係数=1/1000010.100.050.1(a)シナリオ 10.15震度0.20.25ました。心より感謝の意を表します。0.31)2)3)砂地盤の液状化桟橋の水平変位 (mm)10004)1005)6)7)10実測値(770mm、最大値)非液状化(KH=1500N)KH低減係数=1/10KH低減係数=1/100KH低減係数=1/1000KH低減係数=1/1000010.100.050.10.15震度0.20.258)0.3(b)シナリオ 2 砂地盤の液状化+,粘土の剛性低下図 119)深度と桟橋の水平変位の関係41参 考 文 献国土交通省港湾局:防波堤の耐津波設計ガイドライン,2013.内閣府:津波避難ビル等に係るガイドライン,2005.国土交通省:津波に対し構造耐力上安全な建築物の設計法等に係る追加的知見について(技術的助言),2011.池谷毅,佐々真志:津波による洗掘侵食機構-地盤の状態変化を考慮した洗掘侵食メカニズムの解明-, 地盤工学会特別シンポジウムー東日本大震災を乗り越えてー,2014(投稿中).地盤工学会編:地盤工学用語辞典,丸善出版,p.600, 2006.土木学会編:土木用語大辞典,技報堂出版,p.1678, 1999.ハザリカ・ヘマンタ,片岡俊一,笠間清伸,金子賢治,末次大輔:青森県・岩手県北部における地震と津波による複合地盤災害,地盤工学ジャーナル,Vol.7, No.1, pp.13-26, 2012.独立行政法人 港湾空港技術研究所:2011年東日本大震災による港湾・海岸・空港の地震・津波被害に関する調査速報, 港湾空港技術研究所資料, No.1231, 2011.地盤構造物耐津波化研究委員会岸壁 WG:東日本大震災における岸壁の被災要因に関する検討,第48回地盤工学研究発表会,2013. 地盤工学会震災対応研究委員会「地盤構造物耐津波化研究委員会」10) 吉田誠,池野勝哉,三浦智久:東日本大震災における岸壁の被災要因に関する検討, 地盤工学会特別シンポジウムー東日本大震災を乗り越えてー,2014(投稿中).11) 社団法人 全国漁港漁場協会:漁港・漁場の施設の設計の手引(2003年版).12) 水産庁漁港漁場整備部・独立行政法人水産総合研究センター水産工学研究所・株式会社アルファ水工コンサルタンツ・復建調査設計株式会社:平成23 年度水産基盤整備調査委託事業「漁港施設等設計条件見直し調査」報告書,2012.(文責:地盤構造物耐津波化研究委員会 副幹事長 田地 陽一)42
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  • タイトル
  • 地盤環境研究委員会 委員会報告
  • 著者
  • 地盤環境研究委員会
  • 出版
  • 地盤工学会特別シンポジウム -東日本大震災を乗り越えて-
  • ページ
  • 43〜53
  • 発行
  • 2014/05/14
  • 文書ID
  • 67539
  • 内容
  • 東日本大震災における地盤環境課題への取り組み地盤環境研究委員会1. 委員会活動概要を実施し(2012 年 10 月~2013 年 2 月),科学的なエビデンスを示した 3)。一斉試験の成果は環境地盤工学2011 年 3 月 11 日に発生した東北地方太平洋沖地震と大シンポジウムに論文 4)として掲載された。津波は,地盤環境に関するいくつかの課題をもたらした。3)2)の取り組みをさらに科学的に探究すべく,学校・公中でも重要なものは,災害廃棄物の問題と放射性物質によ的機関に所属する委員会メンバー18 名により環境研る汚染土壌・廃棄物の問題であろう。災害廃棄物・津波堆究総合推進費プロジェクト「災害廃棄物分別土砂・篩積物の発生量は約 3000 万トンにものぼる莫大なもので,下残渣の物性評価と,戦略的有効利用に向けた基準化津波の破壊力により様々なものの混合物として我々の前(研究代表者:勝見に立ちはだかった。災害廃棄物には膨大な量の土砂が含まと連携をはかりながら 2015 年度までの予定で研究活れることから,土砂を適切に分離して再生土砂あるいは分武)」が採択され,委員会活動動を進めている。別土砂として有効利用を進めることは地盤環境工学上の4)同じく 2)に関連し,復興における資材利用への提言を重要な貢献となっており,現地でも関係者の多大な尽力に行うべく,国立環境研究所の受託により「災害からのより有効利用が進められてきた。この取り組みを技術・学復興における災害廃棄物,建設副産物及び産業副産物術の観点からとりまとめることは,将来の大災害への対応の有効利⽤のあり方に関する提言検討委員会(略称:に寄与するだけでなく,平時における地盤環境工学上の課復興資材提言検討委員会)」が学会に 2013 年度設置さ題への取り組みにも重要な示唆を与えるものである。一方,れた。この復興資材提言委員会は 2013 年度末に「災原子力発電所事故に伴う放射性汚染物質の拡散の影響を害からの復興における社会基盤整備への復興資材等受けた地域では,除染や建設工事・災害復旧工事により発の利用のあり方に関する提言」5)を公表した。生する土砂・廃棄物への対応や除染物の保管,さらには福5)宮城県では災害廃棄物の処理過程で発生する焼却灰島県以外の広い地域でも問題となっている放射性物質をの有効利用が不可避であったが,そのための制度・枠含む一般廃棄物焼却灰の埋立処分の問題などに,やはり地組みとして本委員会が「災害廃棄物焼却主灰を原料と盤環境工学からの貢献が求められている。する再生資材の地盤材料利用を対象とした物性評価地盤環境研究委員会は,東日本大震災における地盤環境スキーム 第一版(概要版)」6)を作成し,一つの方向課題とその対応に関する学術・技術上の知見を取りまとめ性を示した。その内容は web 公開するとともに,環境るとともに,現地の復旧・復興のため進められている災害地盤工学シンポジウムにて論文発表 7)を行った。廃棄物処理や放射性物質汚染への対応等に関して様々な6)除染作業により多量の放射性汚染土壌・廃棄物が発生形で貢献すべく活動を行ってきた。委員会で取り上げるテする。また,道路整備事業等でも放射性汚染土壌・廃ーマとして設立当初には,(1) 災害廃棄物の処理と有効利棄物が発生するが,この土壌・廃棄物については環境用,(2) 放射性汚染土壌・廃棄物への対応,(3) 復興への省所管の除染事業ではないため,現状では事業者が自グランドデザイン,の 3 つを挙げ,活動期間中に委員会内ら対応を迫られている。そのため減容化の適用が必須で議論を行いながら軌道修正も加えつつ(1)と(2)に活動をとなるが,減容化技術を評価するための基本的枠組み集中させてきた。取り組み・成果の主なものを列記するとが必要であり,「放射性セシウム含有土壌の土壌洗浄下記の通りである。法の適用性評価試験方法(案)」8)を提示した。その内1)津波堆積物の物性評価に関して,福島県内自治体の津容は web 公開するとともに,環境地盤工学シンポジウ波堆積物処理の方針立案に貢献すべく現地調査・一斉ムにて論文発表 9)を行った。試験を委員のボランタリーベースで行った(2011 年12 月~2012 年 3 月)。面積約 802)km2 にわたる7)放射性汚染廃棄物を貯蔵・埋立処分する際の遮水材の158 地性能を検証すべく,国立環境研究所が実施しているジ点 1400 検体の試料による土質特性の成果で,学術成オシンセティッククレイライナー(GCL)の現地テス果は地盤工学ジャーナルに論文トサイト試験に参画した。また,「除染仮置場基盤整1)として掲載された。備」に関する提案も行い,実務に反映されている。災害廃棄物から再生された資材の有効利用に関して,「岩手県復興資材マニュアル」2)の策定(2012年 7 月)8)岩手県,宮城県,福島県,復興庁,国土交通省,農林と改訂(2013 年 2 月)にあたり委員会として監修に水産省(林野庁),環境省の担当者とそれぞれ数次に参画した。特に改定に際してはボランタリーベースでわたって委員長を含む幹事団が協議を行い,協議の一分別土砂の物理化学特性・工学特性に関する一斉試験部については前述の災害廃棄物復興資材の有効活用43 地盤工学会ら表1地盤環境委員会の開催状況回 開催日時・場所講演・話題提供者(敬称略):タイトル2011 年 10 月 20 日1各委員のショートプレゼンテーション地盤工学会阪本廣行(フジタ):災害廃棄物・津波堆積物に関する環境法令佐藤靖彦(西松建設)・鈴木弘明(日本工営):災害廃棄物の物性の特徴について吉野博之(八千代エンジアリング):阪神淡路大震災と東日本大震災の災害廃棄物処理大嶺 聖(長崎大)・水野克己(大阪ベントナイト事業組合):災害廃棄物の有効利用について2012 年 1 月 20 日 小澤一喜(鹿島):有機物の含有が地盤工学特性に及ぼす影響東北工業大学加藤雅彦(岐阜大):分別土に望まれる化学性遠藤和人(国環研):災害廃棄物処理の現状と問題点、コスト21 世紀の新しい地 大野博之(日本環境衛生センター):仮置き場の有効利用2 盤環境問題の解決 八村智明(日本環境衛生センター):放射性物質汚染土壌・廃棄物に関する法令および埋立処分に係る研究と留意点などについて方策に関する研究 遠藤和人(国環研):除染関係・廃棄物関係ガイドラインについて委 員 会 ・ 地 盤 環 境 中島 誠(国際環境ソリューションズ):放射性汚染土壌の調査と現状企画委員会との合 伊藤健一(宮崎大):土壌分級洗浄による放射性セシウム含有土壌等の減容化の検討同委員会肴倉宏史(国環研):放射性セシウムの溶出と吸着三浦俊彦(大林組):汚染土壌の分級洗浄試験保高徹生(産総研):放射性物質に汚染された土壌の対策について成島誠一(西武建設):放射性物質を含有する廃棄物・土壌の埋立について小峯秀雄(茨城大):放射性物質を含有する廃棄物・土壌の埋立について青山正信(応用地質):岩手県における災害廃棄物処理の現状大塚義一(奥村組):山田町での災害廃棄物処理プロジェクトの現状について中野正樹(名古屋大):津波堆積物等の地盤材料への有効利活用のための基礎研究と分別技術の紹介/津波堆積汚泥の地盤材料への転化高井敦史(京都大):福島県津波堆積物調査 調査・分析結果報告遠藤和人(国環研):災害廃棄物,放射性物質対策の現状2012 年 5 月 11 日 勝見 武(京都大):災害廃棄物の有効利用や広域処分に関する指針等の動向について3岩手大学小峯秀雄(茨城大):放射性廃棄物の中間貯蔵における地盤工学的課題高尾 肇(日揮):低レベル放射性廃棄物処分場の検討例大山 将(鴻池組):放射性セシウム含有土壌の土壌洗浄処理に関する検討飯塚 敦(神戸大):低レベル放射能汚染の除染-期待とジレンマ-保高徹生(産総研):放射性物質汚染土壌への対応の課題と、震災対応委員会としての取組みの可能性川端淳一(鹿島建設):放射性物質による汚染への対応状況遠藤和人(国環研):災害廃棄物焼却灰埋立における個別評価について2012 年 7 月 13 日高井敦史(京都大):フランスにおける低レベル放射性廃棄物埋立4 八戸地域地場産業中川雅夫(新日鐵住金):津波ヘドロの有効利用技術振興センター吉野博之委員(八千代エンジニアリング):無線通信技術を利用した空間線量率モニタリングシステム2012 年 10 月 5 日5福島県土木部:福島県下での復旧工事に伴う放射性物質を含む土壌,建設廃棄物等への対応福島県教育会館山際勝治(岩手県):災害廃棄物の復興資材への活用状況と課題2012 年 12 月 7 日6大久保英也(大成建設):釜石市災害廃棄物処理の概要説明岩手大学松山祐介(太平洋セメント):大船渡工場における瓦礫の除塩分級によるセメント資源化と土工資材化について2013 年 3 月 15 日 武田節朗(国交省):仙台湾南部海岸堤防復旧プロジェクト7東北工業大学佐々木源(宮城県):宮城県の震災廃棄物と津波堆積物の有効利用の現状肴倉宏史(国環研):災害からの復興における災害廃棄物,建設副産物及び産業副産物の有効利用のあり方について赤司有三(新日鐵住金):木くず混じり津波堆積土の特性(実験結果中間報告)遠藤和人(国環研):災害廃棄物中の有機物の示差熱分析結果(中間報告)千葉祐太朗(東北工大):津波堆積土などの粒度試験方法(続報)2013 年 5 月 17 日 野々山栄人(名古屋大):分別土 B 種の力学挙動に及ぼすコンクリートダスト添加の影響8コラッセふくしま水野克己(大阪ベントナイト)中性領域で分級効率を高める素材の研究開発遠藤哲郎(西武建設):小鶴沢処理場震災廃棄物(ばいじん)埋立処分業務委託概要金松雅俊(国環研):福島県の廃棄物の現状と課題について小峯秀雄(茨城大):放射性物質汚染土の中間貯蔵施設の遮水工設計における放射性廃棄物処分技術の観点からの研究展望勝見 武(京都大):岩手県における災害廃棄物の処理・利用の状況2013 年 7 月 25 日 第 48 回地盤工学研究発表会のディスカッションセッション内で発表及び討議(計 17 編)、各タスクフォースの成果報告9富山国際会議場高畑 修(福島県):福島県内の道路事業における放射性物質汚染の影響と課題遠藤和人(国環研):中間貯蔵施設の全体概要/示差熱分析による分別土 B 種の木材混入率の評価阿部 誠(秋田県立大):津波堆積物の環境影響(リスク)評価三村 卓(西武建設):岩手県利用自粛牧草ペレット化業務の実施例佐藤研一(福岡大学):福島県沿岸部の災害廃棄物処理等の状況2013 年 10 月 4 日10高畑 陽(大成建設):津波堆積物の改質材を用いる分別効率の改善岩手大学赤司有三(新日鐵住金):鉄鋼スラグ改質した津波堆積物による盛土の経時変化西村伸一(岡山大):分別土 C 種の植栽への利用遠藤秀則氏(岩手県環境生活部):災害廃棄物に由来する復興資材の活用状況について櫻井秀明氏(岩手県県土整備部):県土整備行政の概要佐々木源(宮城県):震災がれきの復興資材有効利用の状況仙頭紀明(日本大):放射性物質汚染土壌減容化に関する事例紹介吉川謙造(日本技術士会):震災復興と技術士会の取り組み遠藤和人(国環研):山田町分別土試験盛土実施状況/仮置場標準工法について2013 年 12 月 6 日11肴倉宏史(国環研):災害からの復興における災害廃棄物、建設副産物及び産業副産物の有効利用のあり方に関する提言検討 進捗状況報東北工業大学告(実証盛土関係)保高徹生(産総研):福島県道路維持管理事業から発生する放射性物質汚染土の分級洗浄試験結果(速報)/除染の効果と費用について水野克己(大幸工業):乾式選別処理における歩留まり向上を目的とした添加材の検討小峯秀雄(茨城大):最近の地盤環境問題における基本的な土質力学的視点の欠如と土木技術者としての責任の再確認西村伸一(岡山大):分別土 C 種の植栽土壌としての利用今西 肇(東北工大):津波堆積土の密度試験と粒度試験中野正樹(名古屋大):分別土砂の締固め度,木片混合率に着目した力学挙動の把握藤川拓朗(福岡大):災害外廃棄物処理過程において発生する分別土の含水比測定方法の検討高井敦史(京都大):災害廃棄物から分別した土砂の土質特性に及ぼす木片比率の影響遠藤和人(国環研):山田町試験盛土について2014 年 3 月 14 日12風間基樹(東北大):分別土砂の地盤工学特性に関する研究日本大学勝見 武(京都大):環境研究総合推進費『災害廃棄物分別土砂・篩下残渣の物性評価と、戦略的有効利用に向けた基準化』実施状況と今後の展望/『災害からの復興における災害廃棄物、建設副産物及び産業副産物の有効利用のあり方に関する提言検討委員会』の状況大嶺 聖(長崎大):放射性セシウムの土壌吸着特性について山本達生(前田建設工業):真空加圧脱水固化処理工法による除染廃棄物に含まれる放射性物質の固定化・減容化同時処理技術の実証遠藤和人(国環研):福島県内の指定廃棄物埋立について安藤淳也(福島県):福島県内の道路維持管理における放射性物質汚染の影響と課題について44 2. 災害廃棄物等の処理と復興資材への利用や仮置場返還などについての技術支援となった。9)地盤工学会誌 2013 年 2 月号「特集汚染土壌・廃棄物等の処理」に総説 1 編と報告 6 編を執筆した。2012東北地方太平洋沖地震で発生した膨大な量の災害廃棄年 3 月には「災害廃棄物と放射性物質汚染土壌の処物・津波堆積物の処理は,被災地の復興における最重要課理・処分講演会」で 7 件の講演を行った。そのほか,題であった。国(環境省)は分別と処理のリサイクルを基岩手県主催セミナーや地盤工学会を含む学協会主催本方針として掲げの講演会などにも貢献している。2 回の地盤工学研究害廃棄物等処理事業が実施された。また,災害廃棄物を処発表会(2012 年 7 月八戸市,2013 年 7 月富山市)で理して得られた資材の有効利用の受け皿として,復興におはそれぞれディスカッションセッションを行い,岩手ける公共工事の役割が期待され,復興資材活用に関するガ県や福島県の担当者からの特別報告を頂くとともにイドラインや通知も示された 12)~15)。委員内外からの論文発表と議論を行った。10), 11),多くの地域で国の補助による災平成 7 年兵庫県南部地震での経験も踏まえて,東日本大10) 委員会開催は活動期間の 2 年半で 12 回にのぼった。震災の災害廃棄物処理にも 3 年間という時限が定められ,委員会開催に併せて 20 ヶ所以上の現地視察を行った。岩手・宮城の両県ならびに福島県の一部の地域では 2013委員会の開催状況を表 1 に,現地視察先を図 1 に示し年度末までにほぼ事業が完了している。処理の方法は地区た。環境地盤工学,地盤防災工学,地質学,廃棄物工ごとに特徴あるものとなっているが,それは災害廃棄物の学,土壌学,環境リスク学など様々な専門のバックグ種類と発生量,仮置きや処理に利用できる土地面積とそのランドを持つ委員が意見交換・情報交流を行うことで環境上の制約,そして事業を実施している各 JV 企業の技委員各自の自己研鑽にも寄与した。研究発表会やシン術上の工夫の結果である。図 2 は,全地区の処理の流れをポジウムなどで委員による多くの論文発表がなされほぼ包括するようまとめたものである。ているが,それらには委員会での議論が一定の貢献をこのような我が国初の取り組みを通して得られた知見果たしていると考えられる。をまとめることは技術上・学術上有意義である。さらに,次章以下には上記の内容をより詳しく記す。それぞれの学術的知見に基づいて現地の実務に貢献することも,地盤さらなる詳細な内容は,末尾のリストにある発表論文や資工学・地盤環境工学の専門家に求められていた。特に,津料等を参照いただきたい。波によって多量にうちあげられた土砂すなわち「津波堆積物」を土砂として廃棄物から分離し,復興資材として有効活用を進められれば処分量の低減にも寄与することから,実務上の重要な課題となっていた。本委員会では,このような課題に対して,津波堆積物の現地調査・物性評価,災害廃棄物分別土砂の物性評価,災害廃棄物焼却灰処理物の評価スキームの提示,復興資材活用に向けた提言,といった活動を実施した。図22.1災害廃棄物処理の基本的な流れ 16), 17)津波堆積物津波により発生した「津波堆積物」と呼ばれる土砂への対応は,我が国ではこれまで問題とされてこなかったもの図中に示したもの以外: 高岡市環境クリーン工場,富岩運河(富山県)であった。津波堆積物には廃棄物が混じっていたり,混合状態の災害廃棄物の中に津波堆積物が相当量含まれてい図1地盤環境委員会で実施した現場視察45 地盤工学会ら表 2 津波堆積物の分析項目と数量 1)たりした。処理対象である災害廃棄物・津波堆積物の約 3分の 1 が土砂であり,土砂を再生して有効利用することは分析項目処分量低減の点で有意義であるが,有効利用にあたっては,土の強熱減量試験方法110津波堆積物がどのような土砂であるかをまず知る必要が土懸濁液の pH 試験方法122311土懸濁液の電気伝導率試験方法122312土の粒度試験方法92207土粒子の密度試験方法92207土の水溶性成分試験方法1841あった。そこで本委員会では 2011 年 12 月 20~22 日に福島県沿岸部の東西約 7 km×南北約 12 km,面積約 80 km2 の津波地点数験体数318浸水範囲で計 158 地点を現地踏査し,当該地から 1400 検体の試料を採取して物理化学特性に関する室内試験を実表 3 津波堆積物の層厚と地点数 1)施した 1)。対象地は従前は耕作地域で田圃が広がる一帯で津波堆積物の層厚 (cm)あったが,津波による冠水後は放置され,津波によって運0ばれてきた津波堆積物がそのまま残っていた状態であっ0−511た。ただし,表層部分が乾燥収縮していた地点,塩分が析5−1035出していた地点など状況は様々であった。採取試料の室内10-1537試験の項目は表 2 に示した通りで,得られた主な成果は以15-2018下の通りである。20-30261)津波堆積物の層厚は表 3 に示す通りであった。写真 1に津波堆積物の堆積状況の例を示すように,全地点で地点数 (地点)2330-2耕作等により撹乱済6計158原地盤の上に砂と粘土の二層に区別できる津波堆積物の層がみられており,これらの層厚を計測するとともに,それぞれ区別して試料採取を行い,室内試験に供した。2)砂分は比較的に早期に沈降が起こるため,粘土分に比粘土層べ堆積範囲は小さい傾向にあった。また,砂分の層厚が大きくなるほど全津波堆積物の層厚も大きくなる傾向にある。一方,粘土分については,地盤沈降箇所砂層や盛土手前部など海水が長期間滞留したと推察される箇所で特に堆積しており,海岸線からの距離に関係原地盤なく局所的に層厚が大きい。3)電気伝導率(EC)は,砂層では 300 mS/m 以下の試料がほとんどであった。一方,表層の粘土層は,海水の滞留や乾燥による塩濃縮などにより高い値のものが多く,最大で EC = 2030 mS/m であった。塩化物含有写真 1 津波堆積物の堆積状況の例 1)量も EC と同様の傾向で,砂層で低く粘土層および原(粘土層厚:10.0 cm,砂層厚:11.0 cm)地盤で高かった(図 3)。また,表層の粘土層ではばらつきがみられるものの,EC と塩化物含有量に概ね30正の相関が確認できた。4)20度数結晶水・吸着水が,原地盤では従前の農地利用時の耕地に含まれていた有機物が寄与し,砂層と比べて高い15強熱減量であった。強熱減量と土粒子密度の関係は図104 に示す通りで,砂層については強熱減量が低いと土5粒子密度が高いが,粘土層と原地盤では必ずしもこの00.0傾向にない。5)津波堆積物(粘土)津波堆積物(砂)原地盤25粘土層では,海底質由来の有機物ならびに細粒分中の2.04.06.08.010.012.0塩化物含有量 (mg/g)図 5 に示すように,全ての津波堆積物ならびに原地盤が砂質土もしくは細粒土に分類された。トラフィカビ図 3 各層における塩化物含有量 1)リティや盛土としての安定性,圧縮性の観点から,地盤材料として利用するためには適切な粒度調整が必要と考えられる。4614.0 くず」に分類している。分別土 A 種と B 種は木くず等の3土粒子密度 (g/cm3)混入が少なく,地盤材料としての適用が進められてきた。2.8一方,ふるい下くずには細かい木くずの混入が多いこと等の理由から実際にはセメント原料とされたが,地盤材料と2.6しての特性の評価は今後の同様の材料への対応を考える上で重要である。「土砂混合くず」は,ふるい下くずを得2.4津波堆積物(粘土)津波堆積物(砂)原地盤2.2る前処理段階である振動ふるいのみを通過したもので,高度選別処理を行う前段階のものであるにも関わらず,ふるい下くずと比べて木くずの混入が少ない。したがって,土20481216砂混合くずは,性状判定の結果次第では分別土 B 種と同様強熱減量 (%)に地盤材料として活用するよう上記のマニュアルに記さ図 4 強熱減量と土粒子密度の関係 1)05G)(F(FG)(FG-S)分)F-S))(Gの試料もよく似た組成を有しており,質量比で 2 mm)) (%F)礫により選別することにより行った。土砂混合くずはど満( SF-G(SFG)( SF(GFS)燃性廃棄物・不燃性廃棄物・土粒子の各画分に手作業m未5m)07(0.)-G(FSG)細粒分を洗い流した後,炉乾燥させた試料を対象に可分mm) (%)粒(FS(FS75た。すなわち,2 mm ふるい上で水洗いして付着した細(F-SG)以上の可燃物が 5~7%,不燃物が 2~5%含有されてい-F)-FS(G(G5(GS)15(SG)50(S-G)85る。一方,ふるい下くずの組成はばらつきが大きく,F)0(SG-F)(GS-F)( S-9515)FG(S-)85100 (G)(G-S)組成分析については定まった試験方法が確立されていないことから,文献 19)で提案されている方法によっ8550(G1))(2 ~100(F)S(F-50果を以下に要約する。津波堆積物(粘土)津波堆積物(砂)原地盤9515れている。表 4 は実験項目の一覧であり,得られた主な成52 mm 以上の可燃物が最大 18.1%混入しているものも(S)095 100見られるなど,可燃物量が多い。砂分 (0.075~2 mm) (%)2)図 7 に示すように強熱減量値は可燃物混入率と概ね相関がある。JIS 規格に準拠して測定した土砂混合く図 5 津波堆積物および原地盤の粒度と土質区分 1)ずの強熱減量は 7~17%の値を示した。試料全量を分2.2析に用いた全量分析法では,分別土砂中の粗大な木く災害廃棄物からの分別土砂ず等が影響するため,より大きい強熱減量を示した。災害廃棄物や津波堆積物は,様々な設備や系統を導入した処理が実施され,適切な分別を行い,種目に応じて積極有姿試料 の水 溶性有機 炭素 (TOC)は 0.07~0.18的な利活用が進められた。しかし,分別土砂中には災害廃mg/g-dry と極めて低く,バイアル培養試験でも顕著な棄物等を起源とする微細な木くず等が混入するなど,純粋ガスの発生は確認されず(図 8),分別土砂からの可な土砂とは異なる性質を有していることから,有効利用を燃物の分解による硫化水素ガスの発生は僅かである図る上で地盤工学特性を把握しておく必要があった。また,と考えられる。なお,表 5 には各分野における強熱減災害廃棄物そのものの地域性や,処理設備,処理システム量試験に関する考え方を整理した 20)。3)の差異に起因して,各現場で発生している分別土砂の性状締固め曲線は図 9 に示す通り,土砂混合くずは締固め18)。分別土砂の特性を広域的に評性が良く,高い最大乾燥密度を示している。最適含水価し,体系的なとりまとめを行うことは,今後同様の巨大比は試料によらず約 20%で,最大乾燥密度は 1.40~災害発生時に迅速な復旧を実現する上でも重要な知見と1.45 g/cm3 である。一方,ふるい下くずの締固め特性なりうることから,本委員会では岩手県沿岸部の 5 現場かは現場によってばらつきが大きく,山田のように土砂ら 2012 年 9 月に分別土砂を採取し,計 14 機関で物理特性,混合くずと同等の最大乾燥密度を有する試料が存在化学特性の評価を行った4)。岩手県環境生活部では災害廃する一方で,宮古や大槌のように締固め曲線が極めて棄物からの分別土砂の有効利用を推進すべく,その取り組なだらかで,締固めが困難な試料も存在した。可燃物みの一つとして「岩手県復興資材活用マニュアル」2)を作含有率が大きいほど最大乾燥密度が小さくなる傾向が異なる可能性もあったも明らかとなっている。成されたが,本委員会のこの一斉試験はマニュアルの改定にあたり監修の一環としても実施したものでもある4)3)。分別土砂の pH は中性域であるものの,EC や塩化物含有量は海水の影響を受けていることから,前述の国試験で対象としたのは,「土砂混合くず」と「ふるい下土交通省の復興資材に関するガイドライン混合くず」である。図 6 は岩手県での災害廃棄物等の処理14)で示されている品質基準を超過するものも存在した(図 10)。フローの概略で,「岩手県復興資材活用マニュアル」では災害廃棄物由来の分別土砂は,一般的な土質材料とは異分別土砂分を「分別土 A 種」,「分別土 B 種」,「ふるい下47 地盤工学会ら6行うと,本来求めたい有機物混入量や強度特性,粒度分布,吸水膨張量等を評価していない。したがって,一斉試験の結果を受け,分別土砂固有の特性を踏まえた,材料品質評価手法を確立する必要があり,本委員会のメンバーを中心に災害廃棄物分別土砂の試験方法に関する研究性評価に関する研究21), 22),物硫化水素濃度(ppm)なる性質を有しているため,現行の基準に準拠して試験を23),有効利用法に関する研究 24)~26),420処理システムの観点からみた分別土砂のマネジメントに関する研究宮古山田大槌051015202530培養期間(日)27), 28),などが実施されている。環境研究総合図8推進費プロジェクト「災害廃棄物分別土砂・篩下残渣の物硫化水素濃度の経時変化 4)性評価と,戦略的有効利用に向けた基準化(研究代表者:勝見武)」とも連携をはかっている。土砂混合くずふるい下くず宮古山田大槌宮古山田大槌一次仮置場1.6ロ可燃系混合物ゼ空気不燃系混合物津波堆積物間二次仮置場乾燥密度 (g/m3)0)10r=土砂混合くず(S分別土B種線分別土A種高度選別処理曲一次ふるい隙1.4高度選別処理1.210.8ふるい下くず本研究での対象範囲0.6020図9分析項目および試験方法 4)組成分析手選別による組成分析(試験基準なし)強熱減量JIS A 1226 : 2009粒度分布JIS A 1204 : 2009粒子密度JIS A 1202 : 2009液性限界・塑性限界JIS A 1205 : 2009pHJGS 0211-2009電気伝導率(EC)JGS 0212-2009塩化物含有量JGS 0241-2009JGS 0241-2009硫化水素ガス発生ポテンシャル締固め特性JIS A 1210 : 2009コーン指数JIS A 1228 : 2009吸水膨張・修正 CBRJIS A 1211 : 2009200土砂混合くずふるい下くず10000分野と規格地盤工学(JIS A 1226)強熱減量 (%)10廃棄物(環整 95 号)土砂混合くず(JIS法)土砂混合くず(全量分析)ふるい下くず(JIS法)ふるい下くず(全量分析)01520工業廃水(JIS K 0102)可燃物混入率 (%)図734EC と塩化物含有量の関係 4)表 5 強熱減量の考え方 20)15102塩化物含有量 (mg/g)セメント51図 10200分別土砂の締固め曲線 4)30025580400EC (mS/m)試験基準・方法バイアル培養試験(試験基準なし)60500分析項目水溶性有機炭素量(TOC)40含水比 (%)図 6 岩手県の災害廃棄物処理フローの概略 4)表4野田釜石VS(Volatile Solid)可燃物混入率と強熱減量の関係 4)48分析方法と目的750±50℃で 1 時間強熱。主に土壌中の揮発成分(有機物と結晶水,結合水が対象)を測定することが目的。975±25℃で強熱。高炉セメントの場合は 700±25℃。不純物含有量(クリンカーや水和物等からの脱水,石灰石の脱炭酸,石こう結晶水の脱水が主な要因で最大 4.78%の減量値)を測定することが目的。600±25℃で 3 時間強熱。名称は「熱しゃく減量」。焼却残さの燃え残りを評価することが目的。埋立基準は熱しゃく減量 15%。平成 10 年の環境庁告示第 34 号にて工作物の新築,解体由来の安定型産業廃棄物の埋立基準 5%の方法としても利用。600±25℃で 30 分間強熱。名称は「強熱残留物」。工業排水中の強熱による非揮発性残留物量(無機物)を測定することが目的。550℃で 15~30 分強熱。諸外国における一例。 2.3物に該当しないとされ,その他の災害廃棄物由来の再生資災害廃棄物焼却灰東日本大震災では,災害廃棄物の処理によって発生した材についてはその物の性状,排出の状況,通常の取扱い形処理物の行き先が課題ともなった。その一例として,破態,取引価値の有無及び占有者の意志等を総合的に勘案し砕・選別後の可燃性残渣や木くずの焼却処理によって発生て判断することとしている。した焼却残渣(焼却主灰,焼却飛灰)が挙げられる。すなそこで,焼却主灰再生資材についても,この環境省通知わち,宮城県では仮設焼却炉を設置して焼却処理を進めたを骨子とし,一定の要件を満たすこととした。しかしながが,焼却残渣の最終処分容量を全て賄うことが可能な最終ら,その他の災害廃棄物由来の再生資材に対する条件とし処分場の確保が困難との見通しから,特別管理廃棄物であては,特に,取引価値の有無等,満足することは非常に困る焼却飛灰を優先的に最終処分し,有害性は相対的に低い難なものであることが予想された。また,焼却主灰性状のが発生割合の多い焼却主灰については,可能な範囲で地盤予備的な調査検討結果から,鉛含有量が土壌汚染対策法の材料として利用することとし,再生資材化のための処理が含有量基準を超過する場合のあることが確認された。以上進められた。のことから,焼却主灰再生資材の有効利用では,事業者(市宮城県が沿岸部市町より受託した二次仮置き場以降の町村や県)が責任を持って管理することが必要と考えられ処理は 4 ブロック・8 処理区に分かれて進められ,ストーた。また,長期間の利用の間の散逸を防止するために,あカー式焼却炉とロータリーキルン式焼却炉を中心に,26る程度以上の量を一括して活用すること,将来的に大規模機の仮設焼却炉が稼働した。各処理区では 2 機以上の焼却な形質変更や掘削を受けない用途へ活用することとし,こ炉が設置され,うち 5 処理区ではストーカー炉とロータリれにより焼却主灰を再生資材として利用することを提案ーキルン炉を併設し,廃棄物の種類ごとに投入する焼却炉することとした。また,関係者より寄せられた情報から,焼却主灰再生資を分けたケースが多い。発生する焼却主灰のほとんどは再生資材化処理され,仮置き養生後,利用先へ搬出された。材の有力な用途として,盛土材,嵩上げ材,路盤材,海面再生資材化処理の工程は次の通りである。まず,焼却炉埋立材料等が挙げられていることが把握された。そこで,底部から排出された焼却主灰は,必要に応じて,磁力選別これらの用途に対する要求品質として,共通のものと個別によって鉄等を,浮力選別(水浸)によって未燃物を,そのものに分けて記述することとした。特に鉛含有量の観点れぞれ除去した後,トロンメル等の篩い選別によって大塊から,焼却主灰再生資材は表面露出の可能性がない部分に物を除去する。除去した大塊物は破砕し,ふたたび篩い選使用しなければならず,特に,再利用の可能性がある路盤別機へ投入する。最終的には粒径数十 mm(例えば 30 mm)利用では含有量基準を適用する必要がある。また,溶出リのふるいを通過したものについて,物性,力学特性およびスクの観点からは周辺土壌や地下水,海水への影響に十分環境安全品質等の改善を目的として,薬剤と水を添加して配慮した環境安全品質が必要である。混練機で混練する。混練後は,仮設テントまたは屋外ヤー以上の考え方に基づき,本委員会では「災害廃棄物焼却ドにて養生する。添加される薬剤の種類では,主たる薬剤主灰を原料とする再生資材の地盤材料利用を対象としたとしてセメントまたは酸化マグネシウム系固化材のいず物性評価スキーム(第一版れかが用いられた。また,補助的な薬剤としてキレート剤を表 6 に示す。本スキームの詳細ならびに環境安全品質試が用いられた場合があった。験と物理・力学特性試験の概要は,文献 7)を参照されたい。概要版)」6)を提案した。目次以上のように,焼却廃棄物の種類,焼却炉形式,再生資材化のための前処理工程,添加薬剤の種類等が様々であり,さらに,それぞれの工程において変動要因が存在する。し表 6 「災害廃棄物焼却主灰を原料とする再生資材の地盤材料利用を対象とした物性評価スキーム(第一版 概要版)」6)の目次章たがって焼却主灰再生資材のリサイクルにおいては,用途ごとの要求品質を満足し,安定した性状であることを確認することが重要である。第 1 章 総説このような背景から,本委員会では焼却主灰再生資材の物性評価スキームの提案を目指し,まず,基本的な考え方について検討を行った。焼却主灰自体は災害廃棄物を由来とするため,有効利用するには廃棄物という制度上の課題第 2 章 共通事項が解決されなければならない。平成 24 年 5 月 環境省より発出された「東日本大震災からの復旧復興のための公共工事における災害廃棄物由来の再生資材の活用について(通第 3 章 土工材料としての利用(盛土材,嵩上げ材の内部)第 4 章 道路材料としての利用(路盤材)第 5 章 海面埋め立て材料としての利用知)」(以下,環境省通知という)12)では,東日本大震災により発生した津波堆積物,ガラスくず,陶磁器くず,又は不燃混合物の細粒分に由来する再生資材のうち,一定の要件を満たすと市町村や県が確認したものについては廃棄49節1.11.21.31.41.51.62.12.22.32.42.52.63.13.24.14.25.15.2現状と課題目的(適用範囲)基本的な考え方用語の定義と解説(略)評価の流れ関係法令等有効活用の限定有効活用の記録・保管環境安全性放射性物質の影響検査の頻度についてその他留意すべき事項留意事項要求品質留意事項要求品質留意事項要求品質 地盤工学会ら2.4況を踏まえ,東日本大震災からの復興における資材の利用復興資材の活用への提言災害廃棄物処理が本格的となった 2012 年度初頭から分に関する提言を行っている 5)。オブザーバーとして復興庁,別土砂の有効利用が議論されるようになったが,その時点国土交通省,環境省,農林水産省のほか岩手県・宮城県・では建設サイドで必ずしも積極的に有効利用を進めよう福島県の環境部局・土木部局の参画も得て,表 7 に示すよという雰囲気ではなかった。物性が明らかで環境安全性のうな骨子の提言を 2013 年度中に公表したところである。点でも問題が少ない例えば購入土砂の方が使いやすく,さらに事業単体で考えれば災害廃棄物由来の材料を使うこ復興資材・循環資材の利⽤の推進とのメリットは示しにくく,インセンティブが弱い。2.2復興資材循環資材新材で述べたように,分別土には除去しきれない不純物,特に木くずなどが混入しているものがある。そのような分別土で盛土を構築すると,木くずの混入により充分な締固めが法令・指針、予算確保、⼯事間調整、ストックヤード確保、コスト縮減、できない場合もある。経時的な有機物の分解によるガス・CO2削減、ガイドラインの整備総和としての浸出水の発生や地盤沈下の可能性も踏まえて分別土砂の最適化特性が正しく理解され,評価試験方法と品質基準が確立される必要があり,本委員会でも取り組みを進めてきた。津波堆積土砂には,フッ素などの土壌環境基準を超過すA⼯事D⼯事るものがみられるようである。これらの多くは自然由来と考えられるレベルであったり,津波で海水をかぶったことB⼯事C⼯事によるものと考えられる。このような土砂の中には,締固強靱な社会基盤の整備め特性に優れるなど土質材料として優れた性質を示すも図 11 復興事業における資材活用のイメージ 5)のも含まれている。地域固有の土砂であることを鑑み,適切なリスク評価に基づき,施工性,耐久性,利用環境にお表7ける環境安全性,経済性などの観点を踏まえて「土の総合地盤工学会「災害からの復興における社会基盤整備への復興資材等の利用のあり方に関する提言」に示す基本方針 5)的マネジメント」を進めていく必要がある。このような分(1) 強靭な社会基盤の整備東日本大震災からの復興に関して現在多くの社会基盤整備事業が実施されているが,これらの事業では,今後再び来るであろう災害への備えも考慮し,将来世代への負担を減らすためにも,安全で品質の良い強靭な社会基盤を残していく必要がある。(2) 復興資材等の利用の推進社会基盤整備事業そのものが環境負荷を生じうることに鑑み,可能な限り環境負荷を少なくする取り組みが求められる。そのために,「分別土砂」や「コンクリート再生砕石」などの災害廃棄物を処理した材料や,発生土や産業副産物などの循環資材を積極的に利用することが推奨される。また,資材の運搬等による環境負荷も考慮し,地産地消を進めることが推奨される。(3) 複数事業の総和としての最適化を目指す取り組み復興のための社会基盤整備事業は様々な事業主体により行われている。一方,復興資材の製造や発生土・副産物の発生も,異なる事業主体によって行われている。それぞれ個別の事業の最適化を目指すだけではなく,地域で行われている複数の事業の「総和としての最適化」を目指す取り組みが必要である。別土は公共工事で優先的に使われることがのぞましく,津波の被害を受けた沿岸域での道路かさ上げや海岸公園の再整備などに分別土砂を確実に利用する取り組みを行っている自治体もあり,運搬距離の観点からも,また被災地の社会基盤の再整備・強化という点からも合理的と考えられる。分別土が有効利用されることでもって初めて災害廃棄物処理の完了と言えるとの考えから,自治体の環境部局はじめ廃棄物処理に携わる技術者が分別土の受入先の確保に尽力されてきた。災害廃棄物処理は福島県の一部の地域を除いて 2013 年度末で終了したが,土砂の利用は 2014 年度以降の工事でも行われるため,自治体によってはストックヤードの確保が必要となっている。分別土の利用は復興工事で発生する掘削発生土との競合にもなることから,環3. 放射性汚染土壌・廃棄物への対応境,建設,農林などの管轄を超え,関係機関の連携のもと,復興資材も含めた資材のマネジメントを総合的に行っていくことが重要であり(図 11 参照),関係者間で議論が進原子力発電所事故による放射性物質汚染は,我が国の放められてきた。被災地で復興事業として大量につくられて射性物質管理の考え方について,従来は放射性物質を利用いく社会基盤は強靭なものでなければならないという前する施設内(放射性廃棄物埋設施設も含む)を対象として提を踏まえつつ,できる限り環境負荷を少なくするよう資いたものを一般環境にまで拡大するとともに,その観点も材の賢明な分配が実行される必要がある。本委員会の活動作業者の被爆から環境中の物質挙動評価にまで広げるこを受け,地盤工学会では(独)国立環境研究所の受託業務ととなったとして(一社)泥土リサイクル協会の協力を得て「災害かに「放射性汚染廃棄物」および「放射性汚染土壌」を扱うらの復興における災害廃棄物,建設副産物及び産業副産物こととなり,これまでの制度・枠組み・考え方では対処しの有効利用のあり方に関する提言検討委員会」を設置し,きれない問題に対して関係機関が引き続き対応に取り組分別土砂や各種副産物の利用状況,土砂の必要性などの状まれているところである 31)。5029), 30)。対象も従来の「放射性廃棄物」とは別 ない」ために「水に触れさせない」、仮に溶出しても「土3.1放射性汚染土壌・廃棄物の保管壌層で吸着して固定する」ことが重要である。廃棄物を焼除染とは,放射性物質を含む土壌や草木類などを我々の却する際に発生する灰には焼却灰と焼却飛灰とがある。焼生活圏から排除することによって放射線量を減少させ,被却灰からは放射性セシウムは溶出しにくいとされているばく量を低減させることである。帰還困難区域,居住制限が,焼却飛灰では 80%近い溶出率のデータが示されている区域,ならびに昼間は立ち入ることのできる避難指示解除33)。したがって,溶出率を低下させる方策をとるとともに,準備区域では国の事業として除染が実施されている。除染これらの廃棄物を遮水性や吸着性能を期待できる土壌層により放射性物質を含む廃棄物や土砂が多量に発生する。で封じ込めることが必要である。既存の処分場の中に封じ政府の方針では,除染により発生する土壌・廃棄物は仮置込め機能を有する埋立セクションを設けることから,不同き場での保管(3 年程度)の後,中間貯蔵施設で保管(30沈下や水みちを考慮した,遮水層あるいは吸着層として機年以内)され,福島県外の処分場にて最終処分することと能する土壌層についての設計手法の確立が求められ,地盤なっている。仮置き場はあくまでも仮置き場であることか工学・地盤環境工学からの取り組みが必須である。ら,水処理施設を有しないなど封じ込めという観点からは一定の制約がある。一方で,フレキシブルコンテナや遮水3.2シートなどで膨大な量の資材が用いられていることを鑑除染によって発生する土壌・廃棄物は莫大な量となるこみると,適切な機能を発揮させるべく設計・施工がなされとが推定されており,仮置き場容量や中間貯蔵施設容量へることが重要である。利用できる土地の制約から,軟弱地の負荷軽減,仮置き場から中間貯蔵施設への移動負荷の軽盤上に仮置き場を設けざるをえないことも考えられるが,減,廃棄物自体の安定化の観点から,大量に発生する放射仮置き場という条件のもとで,保管物の崩壊や汚染物質の性物質含有土壌や可燃物の保管量減少を目的とした減容漏出などのリスクを防ぐべく,適切な事前調査と施工管理化が必要となる。表 8 には現行の土砂に対する処理基準・を行うことが重要となってくる。本委員会では,このよう考え方を,図 12 には減容化技術の課題を示した。な放射性汚染土壌の保管について,「除染仮置場基盤整備」放射性汚染土壌減容化技術の評価可燃物の減容化は焼却により技術的には可能であるが,など指針への反映や実務への適用をはかるべく地盤工社会受容性の観点から施設設置が進まない。一方,汚染土学・地盤環境工学の観点から議論・提案を行っている。壌等の不燃物の減容化は,湿式分級法,熱処理法,酸洗浄中間貯蔵施設については,2013 年 12 月に環境省から「除法等が検討されているが,いずれも実証試験レベルにとど去土壌等の中間貯蔵施設の案について」32)が出され,施設まっており,適用可能土壌種,減容化率,コスト等が大き群の一つの形が案として示された。この施設に貯蔵するもく異なる。以下に各技術の特徴を示す。のとしては,(1) 仮置き場などに保管されている除染に伴1)湿式分級法は,放射性 Cs 濃度が高い細粒分を除去し,い発生した土や廃棄物,(2) 100,000 Bg/kg を超える放射能放射性 Cs 濃度が低い粗粒分を回収する方法である。濃度の焼却灰,などとされている。土壌の貯蔵施設の構造砂質土には高い減容化率を示すが,細粒分が多い土壌も,I 型とされる遮水工を有しない 8000 Bq/kg 以下の土壌には適用できない。を対象とする施設,8000 Bq/kg を超える土壌を受け入れる2)熱処理法は,土壌を 1300℃以上の温度にし,放射性ための遮水対策等を施した II 型とされる施設,100,000Cs を気化分離させ,バグフィルター等で回収する方Bq/kg を超える廃棄物を対象とする遮蔽効果を有する建屋法である。細粒分が多い土壌にも適用可能であり,放での保管,といった案が示されている。2000 万 m2 を超え射性 Cs 除去率は高いが,コストが高い等の課題があるとも言われる量の土壌等を受け入れるため,空間・時間る。スケールを考慮しロジスティックスの観点を踏まえた,除3)染と排出物管理に関する俯瞰的な議論が必要である。酸洗浄法は,土壌にシュウ酸等の酸,溶離促進剤を添加し,加熱をすることで土壌から放射性 Cs を分離する方法である。土壌種類により浄化効率が異なること,我々の生活圏における物質フローの最下流である廃棄酸を使用したプラントの安全性確保が必要である。物や下水汚泥の焼却灰には,環境中から放射性物質が集められ濃縮されて残存する。放射性セシウム濃度が 8000これらの不燃物への減容化技術については,(1) より詳Bq/kg を超えるものは「指定廃棄物」として国が処理処分細な技術評価(減容化率・再資源化率・コスト等),(2) 浄を行うこととなっているが,8000 Bq/kg 以下であれば通常化土壌の有効利用先の確保(性状、用途、法令、社会受容の一般廃棄物処分場での埋立処分が可能とされており,こ性),(3) 濃縮物の性状評価(溶出特性、濃縮率),(4) 減のような廃棄物は福島県以外にも存在している。一方,我容化実施地点の検討(仮置き場/中間貯蔵施設),を多面的が国の廃棄物処分の考え方は,降水を受け入れて洗い出しな視点から検討し,減容化自体の必要性も含めた議論が必と準好気環境を促進し,廃棄物の安定化をはかるものであ要である。った。放射性物質を含む廃棄物を処分場に受け入れるにあ地盤工学研究委員会の減容化技術への貢献の一つとしたっては,既存の水処理施設では放射性セシウムが除去でて,土壌洗浄法の事前評価法の構築と福島県土木部へのサきないことから,放射性セシウムを処分場内で「移動させポートがあげられる。除染により生じた廃棄物や土壌は国51 地盤工学会らのために本委員会で提案した試験方法のフローで,福島県が処理を担うが,災害復旧工事・建設工事等からの発生土表8現在の土砂に対する処理基準・考え方の整理 34)放射性セシウム濃度の範囲の実務に一部取り入れられており,事前の適用性試験およ現時点での処理基準・考え方100,000 Bq/kg 超特定廃棄物処分基準8,000 Bq/kg 超 100,000 Bq/kg 以下指定基準びそれに基づく実証試験が行われている 8), 9), 35)。4.おわりに3,000 Bq/kg 超 8,000 Bq/kg 以下100 Bq/kg 超 3,000 Bq/kg 以下(400 Bq/kg 以下)30cm 以上の覆土等により利用可(環境省 除染等工事共通仕様書 客土の基準)100 Bq/kg 以下クリアランスレベル本委員会が対象としてきた課題のうち,災害廃棄物の処理と復興資材への活用については一定の方向性でもって事業が進められており,次のステップとして将来の災害対応に活用できるよう学術上の体系化が求められている。また,放射性汚染土壌・廃棄物への対応については引き続き減容化技術【課題2】浄化土壌の有効利用可能性評価性状・用途・法令土壌洗浄法酸抽出法高温焼成法国をあげて課題に取り組まなければならない状況である。そのようなことから,本委員会は当初の期間(2011 年 10浄化土壌月~2014 年 3 月)を一年延長して活動することを理事会圧縮成形法【課題1】 技術評価減容化率・再資源化率・コスト・適用可能な濃度レベル・対象土質濃縮物にて認めて頂いた。引き続き学術成果の蓄積と現地実務へ【課題3】濃縮物の性状評価溶出特性・濃縮率の支援に取り組んで参りたい。末尾ながら,本委員会の活動について多くの方々からご【課題4】 減容化の適用性・必要性の検討図 12支援を頂いた。地盤工学会の日下部治前会長,末岡徹現会減容化技術の課題長,龍岡文夫元会長,京谷孝史調査研究部長には,委員会運営に多大なご指導とご配慮を頂いた。技術普及委員会と原土壌学会誌編集委員会の各位にはそれぞれ講習会と学会誌特・放射性Cs濃度測定・含水比・粒度分布(篩のみ)前処理(粗大有機物等の除去)集号の機会を与えて頂いた。事務局の方々のサポートも重要であった。岩手県,宮城県,福島県,復興庁,国土交通湿式分級試験(0.075mmふるい水洗い)使用水量:土壌重量の1‐5倍浄化土壌性状評価濃度・回収率省,環境省,農林水産省,仙台市,さらには災害廃棄物処濃縮物性状評価濃度・発生率ふるい残留試料土の粒度試験2mm, 850μm, 250μm遠心分離固相分2mm, 850μm, 250μmそれぞれ放射性Cs濃度分析理や除染事業の担当の各社をはじめとする機関の関係各ふるい通過試料乾燥位には情報提供・意見交換・試料提供・現地視察など様々上澄みな局面で大変にお世話になった。記して謝意を表する。0.45μmろ過参 考 文 献1) 高井敦史・保高徹生・遠藤和人・勝見 武・東日本大震災対応調査研究委員会地盤環境研究委員会(2013):東日本大震災における津波堆積物の分布特性と物理化学特性,地盤工学ジャーナル,Vol.8, No.3, pp.391-402.2) 岩手県(2013):岩手県復興資材活用マニュアル 改訂版.3) 公益社団法人地盤工学会東日本大震災対応調査研究委員会地盤環境研究委員会(2013):災害廃棄物処理過程で発生する分別物の物理化学特性評価 中間結果報告書.4) 大河原正文・大塚義一・阪本廣行・高井敦史・今西 肇・遠藤和人・大嶺 聖・風間基樹・加藤雅彦・小竹 望・珠玖隆行・鈴木弘明・中川雅夫・中野正樹・西村伸一・藤川拓朗・松山祐介・山中 稔・勝見 武(2013):災害廃棄物処理過程で発生する分別土砂の特性評価,第10回環境地盤工学シンポジウム発表論文集,地盤工学会,pp.355-360.5) 公益社団法人地盤工学会(2014):災害からの復興における社会基盤整備への復興資材等の利用のあり方に関する提言,https://www.jiban.or.jp/index.php?option=com_content&view=article&id=1540&Itemid=1486) 公益社団法人地盤工学会東日本大震災対応調査研究委員会地盤環境研究委員会(2013):災害廃棄物焼却主灰を原料とする再生資材の地盤材料利用を対象とした物性評価スキーム 第一版(概要版),http://geotech.gee.kyoto-u.ac.jp/JGS/Scheme_abstract01.pdf.7) 肴倉宏史・小澤一喜・三浦俊彦・乾 徹・阪本廣行・佐藤 毅・中野正樹・吉野博之(2013):災害廃棄物焼却主灰を原料とする再生資材の地盤材料利用を対象とした物性評価スキームの提案,第10回環境地盤工学シンポジウム発表論文集,地盤工学会,pp.419-426.残留物ろ液混合・質量測定・放射性Cs濃度測定放射性Cs分析Cs溶出試験図 13放射性セシウム含有土壌の土壌洗浄法の適用性評価に資する試験方法のフロー8), 9), 35)の処理は地方公共団体等の事業者が負うこととなっていることから,福島県内では県・市町村など事業者が道路等現場内に放射性物質を含む土壌や廃棄物の仮置きのスペースをつくって保管している状況がみられ,維持管理や跡地利用上の課題が指摘されるとともに,復旧工事そのものの実施にも支障が生じうる状況である。保管する土砂の量をできる限り減らすために土壌洗浄などの減容化の方法が有効だが,減容化の効果を評価するためには放射線量の低減だけでなく,母材となる土砂の基本特性(特に粒度や有機物含有量)などを踏まえた技術的な考察,さらには浄化土壌の有効利用先の確保が必要である。すなわち,土壌洗浄法の放射性セシウムの除去率および減容化率は常に一定ではなく,粒度分布,粒度区分ごとの放射性セシウム濃度,再利用可能な放射性セシウム濃度基準によって変化する。したがって,減容化の効果を評価するための評価手法の確立が必要である。図 13 は土壌洗浄法の適用性評価52 8) 公益社団法人地盤工学会東日本大震災対応調査研究委員会地盤環境研究委員会(2013):放射性セシウム含有土壌の土壌洗浄法の適用性評価試験方法(案),http://geotech.gee.kyoto-u.ac.jp/JGS/Soilwashig_draft.pdf.9) 保高徹生・大山 将・佐藤 透・地盤環境研究委員会 TF-N1(2013):放射性セシウム含有土壌の土壌洗浄法の適用性評価試験,第10回環境地盤工学シンポジウム発表論文集,地盤工学会,pp.301-306.10) 環境省 (2011): 東日本大震災に係る災害廃棄物の処理指針(マスタープラン).11) 環境省 (2011): 東日本大震災津波堆積物処理指針.12) 環境省(2012):東日本大震災からの復旧復興のための公共工事における災害廃棄物由来の再生資材の活用について(通知).13) 国土交通省 (2012): 東日本大震災からの復興に係る公園緑地整備に関する技術的指針.14) 国土交通省 (2012): 迅速な復旧・復興に資する再生資材の宅地造成盛土への活用に向けた基本的考え方.15) 林野庁(2012):海岸防災林造成に当たっての災害廃棄物由来の再生資材の取り扱いについて(事務連絡).16) 勝見 武(2014):災害廃棄物の処理と土砂の再生に挑む,土木学会誌,Vol.99, No.3, pp.26-29.17) 勝見 武(2013):災害廃棄物の処理と土木資材への有効利用,地盤工学会誌,Vol.61, Nos.11-12, pp.53-54.18) 山際勝治・宮城英徳・八村幸一・佐藤靖彦・小嶋平三・大塚義一(2013):災害廃棄物の対応の状況,地盤工学会誌,Vol. 61,No.2,pp.8-11.19) 勝見 武・森田康平・高井敦史・乾 徹(2012):地震・津波に伴い発生した廃棄物混じり土砂の地盤工学的特性,第 10 回地盤改良シンポジウム論文集,日本材料学会,pp.91-96.20) 遠藤和人・鈴木弘明・勝見 武(2014):災害廃棄物処理残さにおける木くず含有量の判定に関する一考察,第 35 回全国都市清掃研究・事例発表会.21) 今西 肇・千葉祐太朗(2013):津波堆積土の密度試験および粒度試験方法の提案,第10回環境地盤工学シンポジウム発表論文集,地盤工学会,pp.361-366.22) 藤川拓朗・佐藤研一(2013):災害廃棄物処理過程において発生する分別土の含水比測定方法の検討,第48回地盤工学研究発表会発表講演集,pp.87-88.23) 高橋正孝・森 友宏・風間基樹・河井 正(2013):宮城県石巻市における震災廃棄物分別土砂の物理・化学特性,第10回環境地盤工学シンポジウム発表論文集,地盤工学会,pp.367-370.24) 野々山栄人・中野正樹・酒井崇之・岡野雄馬・荒木 毅・岡崎 稔・大塚義一・濱谷洋平・中島典昭(2013):災害廃棄物の地盤材料としての有効活用法に向けた検討,第10回環境地盤工学シンポジウム発表論文集,地盤工学会,pp.385-390.25) 大嶺 聖・杉本知史・中川雄介・幸 諭志(2013):災害廃棄物や津波堆積物の地盤材料としての活用技術,第10回環境地盤工学シンポジウム発表論文集,地盤工学会,pp.409-414.26) 山根華織・勝見 武・高井敦史・乾 徹・森田康平(2013):地震・津波で発生した災害廃棄物処理物の物性に及ぼす再ふるいの影響,第10回環境地盤工学シンポジウム発表論文集,地盤工学会,pp.371-376.27) 田中靖訓・三嶋大介・北垣 剛・勝見 武(2013):地震・津波により発生した災害廃棄物処理システム構築に関するマネジメント論的考察,第10回環境地盤工学シンポジウム発表論文集,地盤工学会,pp.397-404.28) 大塚義一・岡崎 稔・濱谷洋平・勝見 武(2013):地震・津波による災害廃棄物の処理実務とその考察,第10回環境地盤工学シンポジウム発表論文集,地盤工学会,pp.391-396.29) 勝見 武(2013):放射性汚染廃棄物・土壌への対応と展望,土木学会誌,Vol.98, No.9, pp.40-43.30) 勝見 武(2014):東日本大震災による地盤環境課題への対応―災害廃棄物分別土砂と放射性汚染土壌・廃棄物―,基礎工,Vol.42,No.3, pp.22-25.5331) 例えば 河西 基・藤塚哲朗・吉原恒一・勝見 武・朽山 修(2013):福島第一原子力発電所事故に伴う放射性物質による環境汚染対策と放射性廃棄物処理・処分への取組み,日本原子力学会誌,Vol.55, No.8, pp.435-444.32) 環境省(2013):除去土壌等の中間貯蔵施設の案について,http://josen.env.go.jp/soil/pdf/draft_131214.pdf33) 国立環境研究所(2014):放射性物質の挙動からみた適正な廃棄物処理処分(技術資料 第四版)修正版.34) 宮口新治・上堂薗四男・門間聖子・大野敦史・奥山博樹・竹本麻理子・安藤淳也・高畑 修・保高徹生・小峯秀雄(2014):放射性セシウム含有土砂への土壌洗浄技術の事前適用性評価試験 -道路維持管理に伴い発生した土砂の減容化に向けて-,第49回地盤工学研究発表会.35) 高畑 修・安藤淳也・磯松教彦・松﨑信彦・保高徹生・小峯秀雄(2013):福島県内の道路維持管理における放射性物質汚染の影響と課題,そして地盤工学的解決の方向性,第48回地盤工学研究発表会,pp.135-136.
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  • タイトル
  • 高比重変形追従材を用いた放射能汚染貯蔵技術の開発
  • 著者
  • 稲元祐二・成島誠一・長江泰史・水野正之・氏家伸介
  • 出版
  • 地盤工学会特別シンポジウム -東日本大震災を乗り越えて-
  • ページ
  • 55〜59
  • 発行
  • 2014/05/14
  • 文書ID
  • 67540
  • 内容
  • 地盤工学会特別シンポジウム-東日本大震災を乗り越えて-1高比重変形追従材を用いた放射能汚染貯蔵技術の開発稲元裕二 1,成島誠一 1,長江泰史 1,水野正之 1,氏家伸介 11NB 研究会概要:本論は放射能汚染された土壌,廃棄物,汚染水などを長期保管するフォールトトラレンスを考慮した貯蔵技術について遮蔽と遮水及び移動などの向上を目的とした高比重変形追従材を用いた知見について論ずる。キーワード:遮水、遮へい、高比重変形追従材、(5 つ以内)1.はじめに汚染水タンクの要求事項は以下通りである。・タンクのリプレイスを加速するため,部品納入&現地施昨年,廃炉・汚染水対策関係閣僚等会議にて,「廃炉・工期間が現状と比較して短期間であること(目標:発注か汚染水問題への対応方針と具体的なアクション」が提示さら現場設置まで約 5 ヶ月以内)れ,「国内外の叡智を結集するためのチームを立ち上げ,・汚染水(Cs137:104Bq/l オーダー,Sr90:108Bq/l オーダ広く対応策を募集し汚染水処理対策委員会を中心に精査ー)を貯留できることすることが決定した。具体的な作業としては,検討チーム・タンク内面からの点検&補修せずに 10 年以上漏えいをにおいて,集める技術スペックに関する技術提案等の内容防止できることについての 6 分類の整理を行い,汚染水処理対策委員会に・有限の敷地内に効率的に貯留できる構造であること(標報告を行った。本論では,6 分類の中でも汚染水貯蔵(以準:円筒鋼製 1000 トンタンク)下汚染水タンク)についてフォールトトラレンスを考慮し・相当程度(少なくとも 0.36G)以上の地震に対し漏えいた構造システム 1」を提示することを目的としている。その防止機能を維持できること特徴は,タンクからの汚染水漏水を防ぎかつ遮蔽が向上す・可能であれば,タンク内で発生する制動 X 線を抑制できる構造システムでその要となるのが高比重変形追従材でる遮蔽機能を有することある。2.2 構造システムのコンセプト2.要求事項と構造システムのコンセプト構造システムの基本コンセプトは,汚染水を長期貯蔵するあたり万が一遮水構造が破損しても貯蔵機能を保持し2.1 汚染水タンクの要求事項かつ遮蔽性能がある汚染水タンクを提供することにある。高比重変形追従型遮水遮蔽材径13m径13m径12m50cm空隙汚染水内タンク径12mh=11m 50cm汚染水内タンク空隙h=10mh=11mh=10m図 1 二重化された汚染水タンク概念図55高比重変形追従型遮水遮蔽材空隙充填 その仕様は一例として,二重化された空隙幅 50cm のタなお,水位差は通常変水位透水試験で行う h=1.5m 程度でンク内径 12m 外径 13m 内タンク高さ h=10m 汚染水容量透水係数を確認した後,h=10m 相当の水圧を載荷して各水1,000 ㎥鋼製タンクの空隙に高比重変形追従型遮水遮蔽材位差における遮水性能を比較した。試験は,JIS A 1218 土を充填することで迅速な設置及び遮蔽 99.99%かつ遮水性の透水試験(変水位)に準じて行った。実験結果を図 3 に示-9能透水係数 k=1.0×10 m/sec 以下の性能を有する図 1 に示す。す汚染水タンクである。その主な特徴は,汚染水タンク内径部から漏水した場合,高比重変形追従型遮水遮蔽材が機能し,即時的な漏水を防止する。日々の点検,メンテナンス時など高線量汚染水のシールド性能として遮蔽 99.99%の表面線量の減衰する性能を有する。万が一,外径部が破損した場合,高比重変形追従型遮水遮蔽材が汚染水との比重差により高比重変形追従型遮水遮蔽材が先に漏えいし汚染水を地盤へ浸透することを抑えることが可能である。この高比重変形追従型遮水遮蔽材の主な特徴は以下の通りである。①最大比重 2.60(ℊ/㏄)で任意の比重に調整可能②塑性流動,塑性体の性状を有し,変形追従して割れ,破図 3 経過時間と透水係数の関係壊を発生しない③透水係数 10-7~10-9m/sec の低透水性を達成水位差 h=1.5m では測定開始より約 5 日経過後,定常状④充填性が良く均一な遮水壁躯体が設置できる態となり k15=1.0×10-10(m/s)付近で推移した。その後,水⑤無機鉱物のみで構成された遮水材のため長期安定性に位差を h=10m 相当とし透水量を測定した結果,透水係数優れている(腐敗分解がない)k15=7.4×10-11~8.9×10-11(m/s)とやや低下する傾向を示した。最大水位差 h=10m 条件における水位上昇に伴う透3.高比重変形追従材の性能水係数低下の要因として,水位増加とともにその水圧が高比重変形追従型遮水遮蔽材に対し加圧する状態となり,見3.1 遮水性能かけ上圧縮され透水量が減少したものと考えらる。また,汚染水タンクの高さ約 10m を想定し,最大水位差 h=10m長期的な遮水性能を確認するため,測定開始より約 4 週相当の水圧(σ=100kN/m2)を載荷することで,本条件にお間計測を行った結果,最終的な透水係数(代表値)はいての遮水性能を確認した。透水試験の実験概念図を図 2k15=7.5×10-11(m/s)を示した。以上のことから,今回試験を行った高比重変形追従型遮に示す。水遮蔽材は k≦10-10(m/s)を示すものであり難透水性を十分に満たしているといえる。3.2 遮蔽性能高比重変形追従型遮水遮蔽材の遮蔽性能を以下の方法で検証した。まず円筒形状のアクリル製の水槽に高比重変形追従型遮水遮蔽材を充填する。次に水槽中心部において高比重変形追従型遮水遮蔽材内にガンマ線源となるステンレス鋼棒を挿入し位置がずれないように固定する。その後、容器外部へ漏えいするガンマ線量の測定を行った。なお高比重変形追従型遮水遮蔽材の層厚と遮蔽性能との関係を明らかにするために水槽の外径は 10cm,20cm,30cm,50cm(うち 1cm がアクリル水槽壁)の 4 種類について測定を行った。またバックグラウンドや測定する方角の影響を低減させるため東西南北の 4 方向から測定し、測定値を平均化した。また比較のため遮蔽材がない場合(空気のみ)及び遮蔽材に水を使用した場合についても同様の測定を行った。実験概念図を図 4 に示す。また,遮蔽材がない状態(空気のみ)を 1.0 として,水と高比重変形追従型遮水遮蔽材をそれぞれ遮蔽材としておいた場合のガンマ線透過率の図 2 透水試験の実験概念図56 4.比率を図 5 に示す。実規模実験と導入事例4.1 高比重変形追従材の作液事例2013 年 11 月,高比重変形追従型遮水遮蔽材を製造する際の作業性を確認するため小規模での作液実験を実施した。作液にはハンドミキサーを使用し,水道水 10ℓを入れた容器内に各材料を決められた順序で投入し所定の時間撹拌することで作液した。作液時の写真を写真 1 に,作液配合を表 1 に示す。表 1 作液配合水道水ベントナイト1007(単位:wt%)硫酸バリウム400作液した高比重変形追従型遮水遮蔽材は比重 2.59,テ図 4 遮蔽試験の実験概念図ーブルフロー値(15 回振動後)300mm 以上であり高い比重と流動性を合わせ持つものである。また撹拌後の容器底部には沈降もなく均一化が非常に容易であることが確認された。4.2 導入事例2013 年 12 月,福島県田村郡三春町の放射能汚染土仮置場にて放射性物質で汚染された土砂について福島県発注の減容化実証実験が行われた。この際発生した放射性物質を濃縮した脱水ケーキを安全な状態で長期保管するため高比重変形追従型遮水遮蔽材を用いた以下の手法で保管準備を行った。図 5 ガンマ線透過率と遮蔽体厚さの関係手順 1:脱水ケーキを封入した容量 100ℓのケミカルドラム缶(以下内缶という)を容量 200ℓの鋼製ドラム缶(以下外缶測定の結果,ガンマ線透過率は遮蔽材幅の増加とともにという)に挿入し、さらに両容器間にスペーサー(コンクリ指数関数的減衰を示し遮蔽体厚さ 24.5cm で比較すると,ート製)を設置して上面及び側面において高比重変形追従高比重変形追従型遮水遮蔽材を充填した場合の透過率は型遮水遮蔽材の充填スペースを確保した上で外缶の天蓋水のおよそ 15 分の 1,空気の 34 分の 1 であった。また,を閉じる。今回の実験結果から得られたガンマ線透過率と遮蔽体厚手順 2:外缶の天蓋に設置された直径 6cm の注入口から高さの間で成り立つ近似式より,本論で一例としてあげた二比重変形追従型遮水遮蔽材を注入して内缶と外缶の間の重化された空隙幅 50cm のタンクの場合,高比重変形追従スペースに完全充填し,その後注入口の蓋を閉じて完全密型遮水遮蔽材をこの空隙に充填することでガンマ線透過閉する。率を充填前のおよそ 1000 分の 1 にまで減少させることが手順 3:外缶の上面及び側面において放射線量を測定し高できると推測される。比重変形追従型遮水遮蔽材の遮蔽効果を検証する。手順 1:ベントナイト投入撹拌手順 2:硫酸バリウム投入撹拌写真 1 作液手順57手順 3:最終撹拌 実際の施工及び放射線測定時の写真を写真 2 に,また高比重変形追従型遮水遮蔽材を充填する前後での外缶外壁部での放射線測定値を表 2 に示す。表 2 外缶外壁部での放射線測定値遮蔽材充填前(単位:μS/h)遮蔽材充填後容器上面側面上面側面11.031.440.500.5821.392.200.790.8731.451.750.450.56図 7 外缶側面での放射線量の推移高比重変形追従型遮水遮蔽材を充填した場合の放射線量は充填前と比べて平均 59%減少した。なお上面では高比重変形追従型遮水遮蔽材との比重差によって内缶が浮結果,施工日での測定結果と比較して局所的な遮蔽効果のき上がりスペーサーを介して外缶上面に密着する仕組み低減がないことが確認された。これらの測定結果より少なになっている。それゆえ上面では高比重変形追従型遮水遮くとも 3 ヶ月程度の保管であれば遮蔽効果を十分維持す蔽材の厚さはスペーサーの厚さ 5cm に近い厚さになってることができると考えられる。いる。この部分においても放射線量は充填前と比べて 50%5.以上低下しており高比重変形追従型遮水遮蔽材に高い遮今後の課題と展望蔽能力があることが確認された。本論で示した高比重変形追従型遮水遮蔽材は汚染水をさらに 2014 年 3 月,高比重変形追従型遮水遮蔽材の長期安定性を調査するため表 2 で示した鋼製ドラム缶につ貯蔵するという目的上,長期保管の際に容器全体で密度がいて再度放射線量を測定した。容器上面での測定結果を図均一であることが求められる。こうした中で固形分の沈降6 に,容器側面での測定結果を図 7 に示す。は遮蔽材中の密度分布を不均一にし局所的に遮蔽効果を低下させるため好ましくない。このため,現在福島県田村郡三春町において保管している高比重変形追従型遮水遮蔽材を充填した鋼製ドラム缶に関し,今後も定期的に放射線量の測定を行い,また内部に充填された高比重変形追従型遮水遮蔽材の充填状況についても同時に確認し長期安定性について継続して評価を行っていく。6. 参考文献1)成島誠一 汚染水問題への対応についての技術提案募集結果 添付資料 1 分野 1 102 技術研究組合 国際廃炉研究開発機構,1, 2013図 6 外缶上面での放射線量の推移工程 1:ケミカルドラム缶設置工程 2:遮蔽材充填写真 2 高比重変形追従型遮水遮蔽材充填作業58工程 3:放射線量測定 The development of storage technology for radioactive pollutant by means ofhigh-specific-gravity and flexible materialsYuji Inamoto1,Seiichi Narushima1,Yasushi Nagae1,Masayuki Mizuno1,Shinsuke Ujiie11The meeting for the study of Natural Blanket MethodAbstractThis paper deals with the technology for the long-term storage of radioactively-contaminated soil, waste and water inconsideration of fault tolerance, and high-specific-gravity materials in order to improve radiation shielding, watershielding and transportation.Key words: water shielding, radiation shielding, high-specific-gravity and flexible materials59
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  • タイトル
  • 太平洋上に流失した震災瓦礫の漂着調査-小笠原諸島硫黄島・南鳥島-
  • 著者
  • 山口晴幸
  • 出版
  • 地盤工学会特別シンポジウム -東日本大震災を乗り越えて-
  • ページ
  • 60〜68
  • 発行
  • 2014/05/14
  • 文書ID
  • 67541
  • 内容
  • 地盤工学会特別シンポジウム-東日本大震災を乗り越えて-2太平洋上に流失した震災瓦礫の漂着調査-小笠原諸島硫黄島・南鳥島-山口晴幸 11防衛大学校・建設環境工学科概要震災域から太平洋上に流失した震災瓦礫は 150 万tに達するとされている。大規模な漂流帯が形成され,深刻な海洋・海岸被害をもたらすことが指摘されている。本研究では,小笠原諸島硫黄島と南鳥島での調査成果に基づいて,両島での震災瓦礫の漂着実態について報告すると共に,その対策や課題などの主要な事項について論述している。キーワード:震災瓦礫,太平洋,放射線量,漂着ゴミ1.常でも,太平洋上の島々やカナダ・アメリカ西岸域では,はじめに生活・漁業廃棄物の漂着で深刻な海岸汚染に曝されている大地震直後に襲来し,東北・北関東太平洋沿岸域に壊滅海岸がかなりあることなどから,漂流シミュレーション結的な破壊を齎した高さ 10m~20mを超える大津波は建果の提示に留まらずその予測分析を活用して,我が国から物・家具・家財・車両・船舶など,あらゆる物を呑み込み,流失した震災瓦礫の洋上漂流の実態検証や漂着確認のた多くの物を海に引きずり込んだとされている。海洋に流失めの現地調査を早急に実施し,震災瓦礫の漂流・漂着実態し瓦礫と化した大量震災ゴミは海水の汚染,漁場の破壊,の状況等を正確に把握し,実践的な対応・対策を早急に確船舶航路の妨害など,環境汚染や危険性を齎すことが懸念立することに迫られた。されている。また太平洋上を漂流した膨大な震災瓦礫は,アメリカ・カナダ等の他国の海岸域に打ち上がり,景観破2.漂着実態調査の重要性壊や沿岸域の動植物生態系の攪乱など甚大な海洋・海岸汚染を誘発する危険性が指摘され,洋上震災瓦礫の予測・監環境省 5)は,2012 年 3 月に太平洋に流失した震災瓦礫の視体制や回収撤去・処理処分対策などに関する情報の入手推定量を公表している。岩手・宮城・福島の 3 県での震災や方策を確立することが重要視された。瓦礫の総量は約 2253 万トンとの推定で,我が国の一般廃日米共同機関である国際太平洋研究センターのシミュ棄物量の約半年分に相当している。そのうち海に流失したレーションによれば,太平洋上を漂流した大量の震災瓦礫震災瓦礫は約 480 万トン(約 2 割)とみられているが,そのは,2012 年 3 月頃にはハワイ諸島周辺に到達し,2014 年約 7 割は港湾・漁港などの沿岸海底域に沈積したとされて3 月頃にはカナダバンクーバ~アメリカ西海岸に漂着し,いる。家屋残骸,生活関連物,流木など,現在,洋上漂流2016 年 3 月には西方に向きを変え,再びハワイ諸島周辺瓦礫は,海に流失した震災瓦礫の約 3 割に当たる約 150 万を漂流するという予測結果が報告された 1)。また環境省トンと推定され,2)では,膨大な洋上震災瓦礫は,2012 年 5 月初旬にハワイ膨大な規模の震災ゴミ帯となって漂流しているとされている。諸島の北方を通過し,10 月頃にはアメリカ・カナダの西このようなことから,太平洋上に流失した震災瓦礫の漂海岸に漂着する予測を公表している。漂流予測によるとさ流実態の痕跡を直接確認することが可能か否かを検証すらに西海岸を南下し,2013 年 6 月にはメキシコ周辺に到ることも含め,震災後の 2011 年に小笠原諸島硫黄島と南達するとされた。しかしこれらの予測と大きく外れ,2012鳥島で調査を開始し,震災瓦礫の漂着実態の確認検証とそ年 3~5 月に掛けて,アラスカ湾沖合などに津波で流失しの漂着状況を把握するための現地調査を毎年一度継続した漁船等3),4)の大型漂流物が既に確認された。しかしプラてきた。スチック製などの構造的に弱い生活関連の震災瓦礫などここでは,両島での震災瓦礫に関する漂着調査の結果にの大半は,遠距離漂流過程で破砕し細片化する可能性が極ついて報告すると共に,これまでの十数年間に亘る硫黄めて高く流出源の特定が難しくなること,木柱・木板等の島・南鳥島での漂着ゴミに関する特徴的な調査知見を踏ま流木関連の震災瓦礫は沈積する可能性が高いこと,また通えて,漂流震災瓦礫に対する対応・対策や課題・問題点な60 どの主要な事項について論述する。硫黄島と南鳥島の位置と調査時期3.震災沿岸域から太平洋沖合に大量流失したとされる震災瓦礫の遠距離漂流の実態痕跡を検証するための調査を2011 年より開始している。<硫黄島調査>①1 回目:2011 年 9 月中旬調査海岸長約 11.2 ㎞②2 回目:2012 年 8 月初旬調査海岸長約 8.7 ㎞③3 回目:2013 年 7 月初旬調査海岸長約 5.55 ㎞写真 1(a) 火山島の黒い硫黄島<南鳥島調査>①1 回目:2011 年 12 月下旬調査海岸長約 3 ㎞②2 回目:2012 年 11 月下旬調査海岸長約 1.8 ㎞③3 回目:2013 年 8 月初旬調査海岸長約 6 ㎞東京35°N写真 1(b) さんご礁の白い南鳥島1,800km30°N.1300km太平洋父島硫黄島25°N1,280kmM136°E140°E145°EN南鳥島150°E155°E図 1(a) 洋上約 1300km に硫黄島,さらに東方 1280km に我が国最東端の南鳥島が浮かぶミッドウェー島日本硫黄島写真 2 硫黄島の海岸線南鳥島ハワイ諸島グアム島太平洋ハワイ島図 1(b) 太平洋上に浮かぶ主要な島々写真 3 南鳥島の海岸線0.5m の高さの津波が押し寄せたが被害はなかったとされ図 1(a)と図 1(b)に示すように,硫黄島は小笠原諸島父島ている。の約 300km 南方にあり(写真 1(a)),東京から太平洋沖合約1300km に浮かぶ絶海の孤島である。南鳥島は硫黄島のさ4.らに東方約 1280km に位置し,我が国の最東端島である(写真 1(b))。なお南鳥島からさらに東方約 2900km にはアメリ震災瓦礫の漂着確認の検証方法家屋・家財道具・車両類等からの大型の震災瓦礫類の流カ領ミッドウエー諸島がある。失を考慮して,震災瓦礫の確認検証は,家屋建材類を主体著者は,小笠原諸島硫黄島・南鳥島での漂着ゴミ調査をに,主に下記に示す漂着ゴミを対象に現地での目視観察に十数年程以前から継続している。これまで硫黄島には毎年よった。1度,南鳥島には 5 度上陸して,島を周回しながら海岸域①での漂着ゴミ調査を試みてきた(写真 2,写真 3)。ちなみに木材関連類:木柱片類,木板片類,丸太類(主に電柱用),流木類最高海抜7m の平坦な南鳥島では,今回の大地震では,約②61生活用品関連類:プラスチック容器類,ビン・缶類, 類などの通常の主要な漂着ゴミは,材質・大きさ・形状・類,屋根瓦・トタン類比重などに左右されるが,太平洋岸から流出した場合には,漁業関連類:プラスチックブイ類,発泡スチロールブ概ね数ヶ月でハワイ諸島周辺などの海域に到達するとさイ・容器類,漁網・ロープ塊類,漁仕掛け具類れていることから,1 回目の硫黄島・南鳥島の調査時点で粗大物体類:家電製品類,家具類,ガスボンベ・ドラは,震災瓦礫の漂着の可能性は十分に考えられると判断しム缶類,タイヤ類た。③靴・サンダル類,畳・ゴザ・シート類,雑貨・遊技具④⑤記念・貴重・表示品類:アルバム・写真・絵画類,表札・看板・標識類⑥その他(特定・推定可能な物品)また下記の事項が確認できる漂着ゴミについては,それらを参考に震災起源のものか否かを特定するのに活用した。①漂着ゴミのラベル・印字・刻字等の標記文字②漂着ゴミの種類・特徴・国籍③漂着ゴミの付着物(貝・海藻類等)④その他写真 5(a) 2012 年 8 月の硫黄島調査で,初めて洋上漂流した流失震災瓦礫の漂着確認写真 4 硫黄島・南鳥島での漂着ゴミの放射線量の計測なお 2011 年 3 月 11 日の大津波発生後,原発施設内で数日間に 3 度の爆発事故が発生し,長期間に亘って高濃度のしかも膨大な量の放射性物質が大気に排出された。さらに大量の高濃度(基準値の 1000 万倍)や低濃度(40~500 倍)の汚染水が海に放出・漏出した経緯がある。そのため海に流失して間もない膨大な震災瓦礫は,当然,洋上で大量の放射性物質を浴びて汚染した可能性が極めて高いと考えられる。そこで震災域からの流失瓦礫と判断する目安にする写真 5(b) 2013 年硫黄島調査で漂着建材類は約 244 本確認,と共に,放射能汚染物体の遠距離漂流の可能性を検証する短柱の角柱材が多いために,木材類や漁具類などの典型的な漂着ゴミについて,2011 年の 1 回目調査では,それぞれ硫黄島では約 11.2表面約 1cm の高さでの空間放射線量の簡易計測を試みたkm,南鳥島では約 3kmの海岸距離を踏査し,打ち上が(写真 4)。5.った漂着ゴミの目視検証を実施したが,家屋建造物用等の大型木柱・木板類,丸太類(電柱用),家財道具類,破船関震災瓦礫の漂着確認連物体など,震災瓦礫に関連すると思われる漂着ゴミを明確に判別確認することはできなかった。震災沿岸域から流失した大量瓦礫の漂流痕跡を辿ることと,漂着ゴミの中から震災瓦礫を判別することが可能かしかし 2012 年 8 月初旬の 2 回目の硫黄島調査では,明否かを,探ることを主要な目的とした小笠原諸島硫黄島・らかに震災瓦礫と思われる木材類の漂着が確認された(写南鳥島での踏査では,上述したように目視観察ではあるが,真 5(a))。調査海岸距離約 8.7kmで確認された漂着数は 2504 節で挙げた漂着ゴミの標記文字・付着物や種類的な特徴本で,海岸長 1km当りに換算すると約 29 本であった。及び放射線量の計測などに基づいて,震災瓦礫に関連するさらに 2013 年 7 月初旬の 3 回目の調査では,調査海岸距漂着ゴミの識別や痕跡を把握するために,かなり入念な確離 5.55 ㎞で程同数の 244 本(1 ㎞当り約 44 本)の木材類(写認検証を実施した。真 5(b) )を確認した。だが毎年の漂着ゴミ調査で確認され2011 年 9 月中旬の 1 回目の硫黄島調査は震災から約 6る圧倒的な数量のブイ等の漁具類など,他の種類の漂着ゴヶ月,同年 12 月下旬の南鳥島調査は約 11 ヶ月経過した時ミに比較して,漂着量は非常に少なかった(表 1 参照)。漂点であった。プラスチック容器・ビン・缶類や漁業用ブイ着状況は,帯のような大量漂着の状況は確認されず,むしろ個々に点在した状態で漂着していた。木材類の大半は,62 家屋建造用に使用されていたと思われる人工的に成型された角柱材類である。寸法は太さ数 cm~十調査総ゴミに対する比率(0.71%)(0.97%)数 cm,長さ十数 cm~数 m 範囲のものが多く,溝や切り込み,ボルトや釘が残っているものもあっ(0.22%)た。(1.02%)一方,南鳥島での 2012 年 11 月下旬の 2 回目の調査では,調査海岸距離 1.8 ㎞の範囲で,本数は非常に少なかったが,同類の角柱材 4 本(長さ約 1.5~2.5m,太さ十数㎝)に加え(写真 7(a)),角柱片・木板震災建材類の確認漂着数(本)片 9 本(長さ約 0.5~1m)と丸太片 3 本(長さ約 1.5~3m,太さ約 20~30 ㎝)を含め(写真 7(b)),震災瓦礫図 2 震災建材類の漂着状況の比較と思われる 16 本程度の木材類の漂着を確認している。他にホイール付タイヤ,サッカーボール,金属バットなどの漂着を確認したが(写真 8),恒常的な漂着ゴミとの区別が難しく,震災瓦礫の漂着として特定することはできなかった。以上,2012 年 8 月初旬と 11 月下旬及び 2013 年 7 月初旬と 8 月初旬にそれぞれ両島で実施した 2 度の調査で確認した震災建材類は非常に少なかったが(図 2),震災瓦礫が太平洋上を漂流している証を初めて実証したものと言える。写真 7(a) 南鳥島(2012.11.28&29)での漂着木材類:硫6.黄島でのものと類似の角柱材類遠距離漂流震災瓦礫の空間放射線量原発事故区域やその周辺地区などの震災域からの流失丸太材丸太材測定海岸漂着ゴ ミのタイプ丸太材写真 7(b) 南鳥島(2012.11.28&29):震災瓦礫と思われる漂着建材類角柱材角柱材角柱材角柱材角柱材角柱材角柱材角柱材角柱材角柱材角柱材角柱材角柱材角柱材流木角柱片材木片流木流竹片木板片角柱片材丸柱片材丸柱材角柱材角柱材角柱材角柱片材木片角柱片材角柱材角柱片材角柱片材角柱材角柱片材角柱片材流木角柱材角柱材角柱片材流木角柱材角柱片材角柱材角柱材角柱材角柱材角柱材人工丸柱角柱材丸柱材角柱材角柱材角柱材角柱材角柱片材角柱片材角柱材角柱片材角柱片材角柱材角柱材角柱片材角柱材角柱材角柱片材角柱材木板角柱片材角柱材角柱材木片流木流木角柱片材木片木片角柱材角柱片材木片流木角柱片材角柱材角柱材流木流竹角柱片材角柱材角柱片材流木角柱材角柱片材角柱片材流竹角柱材流木平均値0.062硫黄島海岸2 0 1 2 年8 月調査漂着木材類高さ1cm計測0写真 8 南鳥島(2012.11.29):震災瓦礫と判断するのが難0.040.08漂着木材類の放射線量(μ Sv/ h )しい漂着ゴミの一例図 3 漂着震災建材類の放射能量(硫黄島 2012 年 8 月)63 瓦礫を判断する目安のためと,放射能汚染瓦礫の洋上遠距10離移動(漂流)の可能性を検証するために,震災瓦礫と思わ9測定地点番号プ ラ スチ ック ブ イ (橙 )プ ラ スチ ック ブ イ (黒 )プ ラ スチ ック ブ イ (黄 )プ ラ スチ ック ブ イ (黄 )プ ラ スチ ック ブ イ (黒 )プ ラ ス チ ッ ク サ ン ダルプ ラ スチ ック ブ イ (橙 )プ ラ スチ ック ブ イ (橙 )プ ラ スチ ック ブ イ (橙 )酒ビ ンプ ラ スチ ック ブ イ (橙 )ウ レ タン 片プ ラ スチ ック ブ イ (黄 )プ ラ スチ ック ブ イ (橙 )ガラ ス ブ イ漁網塊発 泡 スチ ロ ー ル ブ イガラ ス ブ イ発 泡 スチ ロ ー ル ブ イプ ラ スチ ック ブ イ (黒 )発 泡 スチ ロ ー ル ブ イプ ラ スチ ック ブ イ (黄 )プ ラ スチ ック ブ イ (黄 )酒ビ ン酒ビ ンプ ラ スチ ック ブ イ (黒 )プ ラ スチ ック 容 器プ ラ スチ ック ブ イ (黒 )発 泡 スチ ロ ー ル ブ イガラ ス ブ イプ ラ スチ ック ブ イ (橙 )プ ラ スチ ック ブ イ (黄 )プ ラ スチ ック ブ イ (黒 )プ ラ スチ ック 浮 きプ ラ スチ ック ブ イ (黒 )プ ラ スチ ック ブ イ (黒 )プ ラ スチ ック ブ イ (黄 )プ ラ スチ ック パ イ ププ ラ スチ ック ブ イ (黄 )プ ラ スチ ック ブ イ (黄 )プ ラ スチ ック ブ イ (黄 )プ ラ スチ ック ブ イ (橙 )テレビタイ ヤタイ ヤプ ラ スチ ック ブ イ (橙 )プ ラ スチ ック 容 器ポ リ タン クタイ ヤプ ラ スチ ック パ イ ププ ラ スチ ック ブ イ (黄 )プ ラ スチ ック ブ イ (黒 )ゴム 板プ ラ スチ ック ブ イ (緑 )プ ラ スチ ック ブ イ (橙 )ポ リ タン クポ リ タン クプ ラ スチ ック ブ イプ ラ スチ ック ズ ックプ ラ スチ ック スノ コプ ラ スチ ック ブ イ (緑 )発 泡 スチ ロ ー ル ブ イタイ ヤプ ラ スチ ック ブ イ (黒 )プ ラ スチ ック 容 器プ ラ スチ ック ブ イ (橙 )発 泡 スチ ロ ー ル ブ イプ ラ スチ ック ブ イ (黒 )漁網塊プ ラ スチ ック ブ イ (橙 )プ ラ スチ ック ブ イ (橙 )プ ラ スチ ック 容 器プ ラ スチ ック 靴プ ラ スチ ック 容 器プ ラ スチ ック ブ イ (橙 )布グ ツ電球ウ レ タン 片電球プ ラ スチ ック ブ イ (黒 )プ ラ スチ ック ブ イ (黒 )プ ラ スチ ック ブ イ (黄 )プ ラ スチ ック 容 器プ ラ ス チ ッ ク サ ン ダルプ ラ スチ ック ブ イ (黄 )酒ビ ンプ ラ ス チ ッ ク サ ン ダルプ ラ ス チ ッ ク サ ン ダルプ ラ スチ ック 容 器食料ビ ン発 泡 スチ ロ ー ル ブ イプ ラ スチ ック ブ イ (黒 )プ ラ スチ ック 容 器プ ラ スチ ック ブ イ (橙 )スプ レ ー 缶酒ビ ンプ ラ スチ ック ブ イ (黄 )金属柱プ ラ スチ ック ブ イ (黒 )プ ラ スチ ック ケ ー スプ ラ スチ ック ブ イ (黒 )プ ラ スチ ック ブ イ (黒 )酒ビ ンガラ ス ブ イプ ラ スチ ック ブ イ (黄 )プ ラ スチ ック 片プ ラ スチ ック ブ イ (黄 )布グ ツ金板発 泡 スチ ロ ー ル ブ イ酒ビ ンスプ レ ー 缶酒ビ ンプ ラ スチ ック ブ イ (黄 )発 泡 スチ ロ ー ル ブ イプ ラ スチ ック ブ イ (橙 )発 泡 スチ ロ ー ル ブ イ酒ビ ン酒ビ ンペ ット ボ ト ル発 泡 スチ ロ ー ル ブ イ酒ビ ンペ ット ボ ト ルペ ット ボ ト ル酒ビ ン発 泡 スチ ロ ー ル ブ イ酒ビ ン酒ビ ンプ ラ スチ ック ブ イプ ラ スチ ック 容 器テレビ酒ビ ンプ ラ スチ ック 船 部 材タイ ヤ発 泡 スチ ロ ー ル ブ イ食料ビ ン酒ビ ンタイ ヤプ ラ スチ ック ブ イ (橙 )ペ ット ボ ト ルペ ット ボ ト ル蛍光灯管プ ラ スチ ック ブ イ救命衣プ ラ スチ ック ヘ ル メ ットプ ラ スチ ック ブ イ (黒 )ポ リ タン ク酒ビ ンポ リ タン ク87 測定高さ ■1cm ■50cm □100cm654硫黄島道路上の地表面土砂2 0 1 2 年8 月初旬3210平均値0.0650 .0 5地表面土砂の空間放射線量(μ Sv/ h)高さ1cm 計測00.030.060.09海岸漂着ゴミの空間放射線量(μ Sv/h)図 4 各種漂着ゴミの放射線量(硫黄島 2012 年 8 月).発泡スチ ロ ー ルブ イ発泡スチ ロ ー ルブ イプ ラ ス チ ッ クブ イ (日 )プ ラ ス チ ッ クブ イ (日 )ポ リ タ ン ク(韓 )ウ レ タン 片タイ ヤタイ ヤポ リ タ ン ク(韓 )漁網塊ポ リ タ ン ク(中 )ポ リ タ ン ク(韓 )漁網塊発泡スチ ロ ー ルブ イプ ラ ス チ ッ クブ イ (日 )プ ラ ス チ ッ ク台プ ラ ス チ ッ ク容 器プ ラ ス チ ッ クブ イ (日 )プ ラ ス チ ッ ク容 器発泡スチ ロ ー ルブ イプ ラ ス チ ッ クブ イ (中 )漁網塊流木冷蔵庫扉タイ ヤゴム シー トプ ラ ス チ ッ クブ イ (日 )流木プ ラ ス チ ッ ク容 器三 角 コー ン漁網塊プ ラ ス チ ッ クブ イ (日 )タイ ヤプ ラ ス チ ッ クブ イ (中 )プ ラ ス チ ッ ク容 器漁網塊プ ラ ス チ ッ クブ イ (日 )プ ラ ス チ ッ クブ イ (日 )漁網塊発泡スチ ロ ー ルブ イプ ラ ス チ ッ クブ イ (日 )プ ラ ス チ ッ クラ ッ クプ ラ ス チ ッ クブ イ (中 )漁網塊漁網塊プ ラ ス チ ッ クザ ル (韓 )発泡スチ ロ ー ルブ イ流木プ ラ ス チ ッ クブ イ (日 )プ ラ ス チ ッ クブ イ (日 )ヌ タ ウ ナ ギ 筒 (韓 )プ ラ ス チ ッ クラ ッ クプ ラ ス チ ッ クシ ー トポ リ タ ン ク(韓 )発泡スチ ロ ー ルブ イプ ラ ス チ ッ クブ イ (日 )プ ラ ス チ ッ クブ イ (台 )発泡スチ ロ ー ルブ イジ ャ- ポ ッ ドプ ラ ス チ ッ ク容 器プ ラ ス チ ッ クパ イ ププ ラ ス チ ッ クブ イ (日 )漁網塊プ ラ ス チ ッ クブ イ (日 )プ ラ ス チ ッ クブ イ (日 )プ ラ ス チ ッ クブ イ (日 )ヌ タ ウ ナ ギ 筒 (韓 )発泡スチ ロ ー ルブ イプ ラ ス チ ッ クブ イ (台 )プ ラ ス チ ッ クブ イ (韓 )プ ラ ス チ ッ クブ イ (中 )ヌ タ ウ ナ ギ 筒 (韓 )酒ビ ンプ ラ ス チ ッ ク片⑤- 3南鳥島海岸域地表面1cm2011 年 12 月0立岩鼻海岸  ⑤- 20.0050.01海岸漂着ゴ ミ の空間放射線量(μ Sv/ h )⑤- 1④- 3④- 1測定海岸漂着ゴ ミ のタイプ 測定高さ ■1cm ■50cm □100cm井戸ヶ浜  ④- 2調査海岸0 .1図 6 硫黄島陸域の地表面土砂の放射線量硫黄島2012年8月測定海岸漂着ゴ ミのタイプ測定海岸漂着ゴ ミ のタイ プれる漂着建材や典型的な漂着ゴミについて,表面高さ 1cm③- 3沈船・ 群西海岸  ③- 2③- 1②- 3二ツ根浜  ②- 2硫黄島地表面土砂2 0 1 2 年8 月初旬            ②- 1        ①- 3翁浜  ①- 2        ①- 100.05海浜砂の空間放射線量(μ Sv/ h )0.1角板片発 泡 スチ ロ ー ル ブ イ漁網塊タイ ヤタイ ヤプ ラ スチ ッ クブ イ (黒 )発 泡 スチ ロ ー ル ブ イ丸太片プ ラ スチ ッ クブ イ (橙 )プ ラ スチ ッ クブ イ (橙 )ロ ープ 塊タイ ヤ流木プ ラ スチ ッ クブ イ (黒 )ロ ープ 塊木柱片角柱材プ ラ スチ ッ クパ イ ププ ラ スチ ッ クブ イ (橙 )太ロ ー プ丸太タイ ヤプ ラ スチ ッ ク片発 泡 スチ ロ ー ル ブ イロ ープ 塊発 泡 スチ ロ ー ル ブ イ流竹角板片角柱材角柱材プ ラ スチ ッ クブ イ (黒 )流木発 泡 スチ ロ ー ブ イ南鳥島海岸域地表面1 c m2012 年 11 月00.0050.01海岸漂着ゴ ミ の空間放射線量(μ Sv/ h )図 7 南鳥島での漂着ゴミの放射線量(2011 年 12図 5 硫黄島海浜域の海浜砂の放射線量月と 2012 年 11 月計測)での空間放射線量の簡易測定を実施した。の現地計測を試みている(図 3)。計測値は 0.044~0.074μ2012 年 8 月初旬に実施した 2 回目の硫黄島調査で確認Sv/h 範囲にあり,平均値は 0.062μSv/h であった。また同した震災建材類 250 本のうち約 100 本について,放射線量64 様に,プラスチックブイや発泡スチロールブイなどの漁具1) 構造的に弱い軟質プラスチック類ゴミの大半のもの類,ポリタンク・プラスチック容器などのプラスチック類は,遠距離漂流過程で波風作用や紫外線による劣化作を始め,ビン・缶類,タイヤ,ガスボンベなど,島内一円用を受け,破砕・破損を繰返し,細片化した状態で漂に打ち上がった約 150 サンプルの多種類の漂着ゴミにつ着するため,原形すら確認できなくなる(写真 9)。いてランダムに計測した値は 0.043~0.084μSv/h 範囲にあ2) 原形を留めているものの大半は,構造的に強い硬質プラスチック類の大型ブイ・フロート,漁網・ロープ塊地上100cm地上50cm地上1cm⑥測定地点⑤等の漁具類ゴミとガラス玉やビン類ゴミである(写真10)。3) 原形を留めたものも含め大半のものは,ラベル・標記④文字等が消失・欠損しており,国籍・生産地・流出源等に関する特徴的情報を得ることが不能となる(写真③10)。②4) 長年の調査より,硫黄島・南鳥島での漂着ゴミの大半南鳥島海岸域①00.0050.01海浜砂の空間放射線量(μ Sv/ h )図 8 南鳥島での海浜砂の放射線量(2011 年 12 月計測)り,平均値は 0.065μSv/h と,震災建材類とほとんど差異のない値であった(図 4)。しかも海岸域 16 地点で計測した地表面より高さ 1cm での海浜砂の放射線量の平均値はいずれも 0.062~0.085μSv/h 範囲にあり(図0.072μSv/h で,硫黄島5),また陸域 10 地点で計測した地表面高さ 100cm で計測した放射線量は 0.057~0.074μSv/h 範囲で,平均値は 0.068μSv/h であった(図 6)。海浜砂や陸域での放射線量は硫黄島での自然界の値(バックグランド値)とみなせる。このバックグランド値と比較して,打ち上がった震災建材類を含め計測した漂着ゴミ類(ほぼ海浜砂の値を検出している)では,特別に高い値と判断されるものは検出されなかった。なお 2011 年の 1 回目の硫黄島と 1 回目・2 回目の南鳥島の調査でも同様の計測結果が得られている。ちなみに南鳥島では計測した漂着南鳥島ゴミ(1 回目 74 サンプル,2 回目 32 サンプル)と 6 地点での写真 9 遠距離漂流した漂着ゴミの細片化海浜砂すべてが 0.01μSv/h 以下で,平均値が 0.005μSv/hと極めて低い放射線量であった(図 7,図 8)。硫黄島以上,硫黄島・南鳥島での漂着震災建材類や漂着ゴミな南鳥島どの放射線量の計測結果から,洋上を千 km・2 千 km と,遠距離移動した震災瓦礫は,たとえ高い放射線量を浴びたとしても漂流過程での海洋洗浄作用によって除染されるものと思われ,汚染瓦礫のまま遠距離移動して漂着している実態は検証されなかった。7.遠距離漂流ゴミの漂着状況3 度の両島での調査でも同様であったが,十数年に亘る写真 10 原型を留めた漂着ゴミの不明ゴミ化これまでの全国各地での海岸漂着ゴミ調査の経緯から,硫黄島や南鳥島などへの漂着のように,千 km・2 千 km あるは,太平洋上の漁業活動に起因したものと推察していいはそれ以上と,洋上を長期間・遠距離漂流して漂着するる。2011 年の 1 回目調査では,それぞれ硫黄島では海岸長ゴミの場合には,その漂着状況に関して,概ね下記に要約約 11.2km の踏査で 18576 サンプル,南鳥島では約 3km のする特徴的事項がわかっている。65 表 1 硫黄島・南鳥島での 3 年間の確認漂着ゴミの分類一覧2011 年調査調査年2012 年調査日本製2013 年調査調査月9 月下旬12 月下8 月初旬11月下旬7 月初旬8 月初旬島名硫黄島南鳥島旬硫黄島南鳥島硫黄島南鳥島調査海岸長(㎞)11.238.71.85.5561857652292451764652518411837139422416952511912448372271318452プラスチック類(個)1626047302189959482236811057漁網・ロープ塊(個)1797511410317697確認漂着ゴミ数(個)ビン類(個)缶・金属類(個)種類別プラスチックブイ(個)60413863285539125発泡スチロールブイ102401064710558日本製ゴミ(個)(個)9274889523531404673国籍別漁具類4.8%外国製ゴミ(個)148761914765251975791不明ゴミ(個)1616241222208955872180510373ビン類7.5%缶類0.2%漁具類3.5%ビン類6.9%缶類0.3%漁具類3.3%ビン類7.6%プラスチック類89.3%硫黄島2011年9月中旬87.66.7硫黄島2013年7月初旬5.686.67.8南鳥島2012年11月下旬5.586.48.1硫黄島2012年8月初旬3.990.1南鳥島2011年12月下旬9.3硫黄島2011年9月中旬漁具 ビン類類4.3%4.8%缶類0.4%漁具 ビン類類3.6% 3.9%缶類0.5%11.887.020408.06080100各漂着ゴミの比率(%)図 10 硫黄島・南鳥島での漂着ゴミの国籍分析南鳥島2013年8月初旬缶類0.3%1973硫黄島2013年7月初旬45383592硫黄島2012年8月初旬硫黄島2013年7月初旬2818南鳥島2011年12月下旬1743硫黄島2011年9月中旬1659硫黄島での漂着ゴミの種類分析(a)6.078.85.00プラスチック類88.8%硫黄島2012年8月初旬外国製5.7南鳥島2012年11月下旬プラスチック類87.5%不明南鳥島2013年8月初旬0漁具 ビン 缶類類 0.4%類2.4% 3.8%1000200030004000海岸長1km当りの漂着ゴミ数(個/km)5000図 11 硫黄島・南鳥島での漂着ゴミ量の推移旬),2818 個/km(2012 年 8 月初旬),4538 個/㎞(2013 年 7プラスチック類90.5%南鳥島2011年12月下旬(b)プラスチック類92.0%南鳥島2012年11月下旬月初旬),南鳥島の場合はそれぞれ 1743 個/km(2011 年 12プラスチック類93.4%月下旬),3592 個/㎞(2012 年 11 月下旬),1973 個/㎞(2013年 8 月初旬)で,両島での 2013 年の漂着ゴミ量はそれぞれ南鳥島2013年8月初旬2011 年の約 2.7 倍と約 1.1 倍となっていた。2012 年と 2013年の調査では震災建材類の漂着が確認されていることか南鳥島での漂着ゴミの種類分析ら,判別・識別不能な不明ゴミや破砕・細片化したプラス図 9 硫黄島・南鳥島での漂着ゴミの種類分析チック類ゴミなどの中にも,当然,震災域から流失したも海岸長で 5229 サンプル,また 2012 年の 2 回目調査では,のが含まれている可能性は高い。しかしこれらの漂着ゴミ硫黄島では 8.7km の海岸長において震災建材類 250 本の漂から震災ゴミを区別することは難しい。着確認に加え 24517 サンプル,南鳥島では海岸長約 1.8 ㎞以上,硫黄島・南鳥島での分析結果より,震災瓦礫の漂範囲で木材類の漂着は十数本程度であったが 6465 サンプ着状況については,下記のように要約される。ル,さらに 2013 年の 3 回目調査では硫黄島と南鳥島でそ1) 硫黄島・南鳥島での 2012 年と 2013 年の調査結果から,れぞれ 21805 と 10373 サンプルの漂着ゴミについて目視検震災瓦礫と思われる漂着建材類が僅かではあるが確証を実施し,それぞれ種類・特徴分析を試みている(表 1)。認されたことから,他の流失ゴミも漂流・漂着してい2012 年と 2013 年に硫黄島と南鳥島でそれぞれ漂着を確認した震災建材類は,確認漂着ゴミ数の 1%程度以下で,数量的には僅かであることがわかる。両島での漂着ゴミのる可能性は高い。2) 構造的に強い漁具類ブイ等の硬質プラスチック類やビン類ゴミなどは原形を留めて漂着している場合が分析図では(図 9~図 11),いずれも漂着ゴミの約 90%はプ多いが,ラベル・標記文字等が消失しているものが大ラスチック類ゴミが占め,しかも破砕・細片化やラベル・半で,震災起源のものとして特定することは極めて難標記文字等の消失などのため,国籍・流出源等を判別・識しい。別することが困難な不明ゴミが 80~90%と大半を占めて3) 構造的に弱い軟質プラスチック類ゴミ等の大半は,破いることがわかる。このような分析傾向は遠距離漂流して砕・細片化して漂着しているので,このような状況で漂着するゴミの共通的な特徴であり,これまでの毎年の調の漂着ゴミについては,震災起源のものであるか否か査傾向とほとんど相違はなかった。を特定することは全く困難となる。なお両島での調査海岸長 1km 当りに換算した漂着ゴミ量は,硫黄島の場合はそれぞれ 1658 個/km(2011 年 9 月中66 8.対応と課題ミッドウエー諸島,ハワイ諸島,マリアナ諸島などの他国の島々への大量漂着による被害報告や,航海船舶などから我が国では,黒潮海流が面する沖縄県琉球列島や,対馬流失した膨大な量の震災瓦礫が長大な漂流帯を形成して海流が北上する長崎県対馬や山陰地方などの日本海沿岸洋上を漂流しているという確かな目撃情報も未だによせは,中国・台湾・韓国などの近隣アジア諸国からの外国製られていないようである。硫黄島・南鳥島で確認した建材ゴミの漂着が特異な海岸域となっている。しかしこれらの類の漂着数も他の漂着ゴミ数に比較すると極めて少ない。海岸域への海洋越境ゴミの漂着に対しては,国際的には,広大な浜に点在し,入念な踏査をしないと見逃してしまい排出者責任を問うルールにはなっていないことから,我がそうな漂着状況であった。国で処理処分を実施しているのが現状である。即ち,処理これまでの硫黄島・南鳥島での漂着ゴミ調査を通し,遠処分経費に関する国際的な取り決めはなく,通常,漂着し距離漂流する洋上ゴミの特徴から推察すると,大規模な洋た海岸国が負担するのが通例となっている。上漂流帯として存在している可能性よりも,むしろ「大半その大きな要因としては,多種類の越境漂着したゴミにの震災瓦礫は漂流過程で沈積(海底・海中ゴミ化)した可能対応して、処理負担の責任を課す排出者を的確に特定する性が高いのではないか」,しかも「大破・破損し砕片化(原ことが困難なため,また海岸域や時期・期間等によって,形を認識できない)して広域に拡散漂流している可能性が越境ゴミの漂着量を定量的に把握し処理経費を適切に評高いのではないか」と思われる。このようなことから,膨大な量の震災瓦礫が大規模な洋価することが難しいため,と推察される。洋上を漂流する震災瓦礫の漂着に関しても同様の解釈上漂流帯を形成して,実際に漂流しているのか否かを,検が適用される。しかし今回の震災瓦礫の場合には,明らか証し明らかにすることが重要と思われる。その上で,漂流に我が国の震災域から流失したものであること,しかもア帯の規模(長さ・幅)・数や位置,また漂流帯を形成していメリカ・カナダの太平洋岸に漂着する瓦礫は類例のない膨る震災瓦礫の量や種類などについて,漂流シミュレーショ大な量となることから,当初,我が国による処理処分経費ン結果を活用した科学的な洋上調査の必要性が求められの負担問題が指摘された。る。いずれにせよ膨大な量の流失震災瓦礫は,細片化を繰今回の硫黄島・南鳥島調査では,明らかに震災瓦礫と思り返し広範な海域に拡散漂流し,しかも沿岸域への漂着はわれる建材類の漂着ゴミを確認することはできたが,数千長期に及ぶものと推察されることから,今後,監視体制のキロと遠距離漂流する過程で破砕し,細片化するゴミや原長期的な継続が重要となる。形を留めていても識別不能となった震災ゴミの漂着もか参考文献なりの量に上ると思われる。この問題に対して,政府は処1) 読売新聞社:震災のがれき1年後ハワイ,読売新聞,2011 年 1理処分経費を負担することで,両国へ協力することを表明月 14 日発行,2011.したことは適切な対応といえる。2) 読売新聞社:漂流がれき 10 月頃北米に,読売新聞,2012 年 4だが震災以前から,大量漂着ゴミに悩まされている海岸月 7 日発行,2012.域はアメリカ・カナダの太平洋岸には多い。すべての漂着3) 読売新聞社:津波で漂流の船沈没処理,読売新聞,2012 年 4ゴミが我が国からの震災ゴミとみなされる可能性がある月 6 日発行,2012.ことから,漂着震災瓦礫の判別も含め,震災ゴミを妥当に4) 読売新聞社:漂着ハーレー持ち主判明,読売新聞,2012 年 5評価することが望まれる。月 3 日発行,2012.9.5) 読売新聞社:がれき 480 万トン海に流出,読売新聞,2012 年 3おわりに月 10 日発行,2012.20012 年の硫黄島・南鳥島調査で初めて家屋建材類の漂着を確認することができ,洋上を漂流している震災瓦礫の(????。 ??。 ?? 受付)痕跡を検証することができた。これまでにアメリカ・カナダの太平洋岸への大型漂流物などの単発的な漂着報告はなされているが,しかし太平洋上の我が国の島々を始め,67 Field investigation on Tohoku earthquake rubbles drifting away to the Pacific Ocean- Iwo-Jima Island and Minami-Tori-Shima Island of Ogasawara Islands -Hareyuki YAMAGUCHI11National Defense Academy, Department of Civil and Environmental EngineeringAbstractRubble caused by the 2011 Tohoku earthquake and tsunami is estimated to reach 1.5 million tonnes。It has beenpointed that the rubble drifting away to the Pacific Ocean is enormously large and it causes serious marine and coastaldamage。In this study, field investigations were carried out on Iwo-Jima Island and Minami-Tori-Shima Island ofOgasawara Islands located in the north-western Pacific Ocean。 The study reports actual situation of the rubble in bothislands, and discusses measures and challenge against the rubbles drifting in the Pacific Ocean。Key words: earthquake rubble, the Pacific Ocean, radiation levels, marine litter/drifted wastes68
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  • タイトル
  • 東日本大震災による津波災害廃棄物の発生原単位と発生量推定手法
  • 著者
  • 山中稔・豊田尚也・野々村敦子・長谷川修一
  • 出版
  • 地盤工学会特別シンポジウム -東日本大震災を乗り越えて-
  • ページ
  • 69〜73
  • 発行
  • 2014/05/14
  • 文書ID
  • 67542
  • 内容
  • 地盤工学会特別シンポジウム-東日本大震災を乗り越えて-3東日本大震災による津波災害廃棄物の発生原単位と発生量推定手法山中 稔 1,豊田尚也 2,野々村敦子 1,長谷川修一 11香川大学・工学部安全システム建設工学科2香川大学大学院・工学研究科概要2011 年 3 月 11 日の東日本大震災に伴う津波で発生した災害廃棄物は,その膨大な量のために被災地域の復旧・復興の大きな妨げとなった。そして災害廃棄物処理・処分計画の重要性が再認識され,廃棄物処理計画の見直しが課題となっている。本研究では,東日本大震災によって生じた津波による公表被害データから,津波浸水深さと家屋の被害程度との関係を明らかにし,被害程度と災害廃棄物発生原単位を算出した。さらに,GIS を援用して津波浸水深より津波災害廃棄物発生量を推定する手法を提案した。キーワード:災害廃棄物,発生原単位,浸水深1. は じ め にいて,南海トラフ巨大地震における災害廃棄物の発生量を推定することは,被災地の迅速な復旧・復興に向けて極め東北地方のみならず我が国に甚大な被害を及ぼしていて重要である。る東日本大震災では,津波により 13 道県 239 市町村で約内閣府中央防災会議は南海トラフ巨大地震を想定した2,000 万トンという莫大な量の災害廃棄物が発生し,津波被害想定及びその手法を公表し,それに基づき各自治体は堆積物は 1,089 万トンに上る被害となり,全国規模での広市町村毎の被害想定を発表している 1)。しかし,国の被害域処理が必要となる未曽有の大災害となった。また,東日想定に用いられている推定手法は家屋等の地震動による本大震災では様々な災害廃棄物が混ざり合い,その性状も倒壊が主であり,津波による災害廃棄物の発生量の推定と量も従来の災害をはるかに超えて広範囲に被害が発生しは異なっている。たため,災害廃棄物の仮置き場の確保や広域処理の受け入また,首藤ら 2)は過去の津波被害から津波高と家屋,漁れ先の調整に難航し,災害廃棄物の処理及び復旧・復興に船,養殖筏被害との関係を示す津波強度指標を提案してい遅れが生じた。る。平山ら 3)は,阪神淡路大震災や 2004 年新潟県中越地我が国では,災害対応指針として 1998 年 10 月に震災廃震等を対象に,災害廃棄物の発生原単位や発生量推定式を棄物対策指針を策定しているが,これは阪神・淡路大震災見出している。また,越村ら 4)はスマトラ島沖地震津波をによる家屋の倒壊等による災害廃棄物の発生を念頭に策事例として,リモートセンシングや現地調査から得られた定したものであり,東日本大震災のように津波による家屋津波被害情報を地理情報システム(GIS)に統合することの流出による災害廃棄物の発生は想定されていない。自治で,津波による家屋被害や人的被害の程度を被害率として体が作成する災害廃棄物処理計画において,廃棄物発生量確率的に表現する津波被害関数を構築している。しかし,を推定し,その後の処理計画に反映させることは,災害か津波の挙動は完全に把握することが困難であるとともに,らの復旧や復興に極めて重要であるにも関わらず,災害廃建物の破壊形態も多種多様であるために,地域性を踏まえ棄物処理計画を設けている自治体が多いとは言えず,災害て被害の大きさの幅をもたせた津波による建物の被害率廃棄物の処理を記載したとする地域防災計画あるいは廃を求める必要性があると考える。棄物処理計画においても内容は不十分なことが多い。本研究では,東日本大震災によって生じた津波による公一方,四国が近い将来に被害を受けることが危惧されて表被害データを基にして,津波発生時の災害廃棄物発生量いる南海トラフ巨大地震では,地震動の大きさや想定されの推定手法を構築し,さらに求めた手法を用いて津波到達る津波高さおよび地形的要因からも,東日本大震災に匹敵高さに応じた浸水域及び災害廃棄物発生量の推移を明らする膨大な災害廃棄物の発生が予想される。災害廃棄物のかにした。仮置き場や移送アクセス道路が不足する四国の現状にお69 5,000R² = 0.9049R² = 0.93923,0002,000全壊+半壊+一部損壊全壊+半壊全壊1,000R² = 0.96654,000災害廃棄物発生量(千t)4,000災害廃棄物量(千t)5,000R² = 0.94513,0002,0001,00000020,00040,00060,000080,0001,0002,0003,0004,0005,000災害廃棄物推定量(千t)被害棟数(棟)図 1 被害区分別棟数と災害廃棄物量との関係図 2 災害廃棄物量の推定値と実測値との比較3. 木造建物の津波被害関数の構築2. 津波災害廃棄物の発生原単位と発生量推定式災害廃棄物の発生量は建物被災棟数に大きく影響し,発図 3 に,市町村別に分けた浸水深と木造全壊率 6)の関係生原単位は建物被害区分によって異なる。ここで,東日本を示す。地域によってばらつきがあるものの,浸水深が深大震災で被害を受けた 35 の市町村に対して,建物の被害くなるにしたがい全壊率は高くなることがわかる。状況と災害廃棄物量 の関係について重回帰分析を行った。そこで本研究では,浸水深毎の破壊率のばらつきが正規なお,従属変数である災害廃棄物量と説明変数である建物分布に従うものと仮定し,正規確率プロットをもとに目視被災棟数との関連性から,モデルは線形回帰モデルとした。で線形であることを確認した上で,上下端 5 %を外れ値と図 1 に,被害区分別棟数と災害廃棄物量との関係を示す。して除外した。そして,浸水深毎の破壊率の下端,上端そ5)全ての関係式の決定係数は 0.9 以上と高く,相関が高いことれぞれを結ぶ曲線で非線形回帰分析を行い,浸水深に対応がわかる。発生原単位においては全壊,半壊,一部損壊それする全壊率,半壊率,一部損壊率の回帰曲線を求めた。なぞれに値を持たせる場合と,全壊,半壊に値を持たせる場合,お,回帰曲線のプロットには,自由度 39 に対して,残渣全壊のみに値を持たせる場合の 3 パターンで解析を行った。標準誤差が 5 %以下となるように留意した。表 1 に,相関性の検定結果を示す。発生原単位は全壊で100木造建物の全壊率 (%)85.4t/棟,半壊で 62.1 t/棟となり,全壊に関しては既往の災発生原単位 3)に近い値を示した。標準誤差は,一部損壊を除くことによって全壊+半壊では小さくなっている。災害廃棄物発生原単位の検定では,構造別ではデータ毎の多重共線性によって評価が困難となること,一部損壊棟数は誤差が大きく生じ,また推定式への影響度が小さいことがわかった。以上のことから津波に伴う災害廃棄物量推定式を次式のように決定した。806040200Yi  85 .4 X 1i  62 .1 X 2 i    (1)0510152025浸水深 (m)ここに,Yi は津波災害廃棄物発生量(t),X1i は全壊棟数(棟),X2i は半壊棟数(棟)である。なお,ここでの,発生原単位は建物構造種別に分かれていないことに留意のこと。図 4 に,木造建物における浸水深と破壊率の関係を示す。図 2 に,災害廃棄物発生量と,上述の原単位を用いて推全壊率の分布は,浸水深 4 m 程度までは変動幅が大きいが,定した災害廃棄物発生量との相関図を示す。推定量は若干浸水深 8 m 以上となるとほぼ 100 %となっている。半壊率実測量よりも低めの値となっているが,相関係数は 0.966は浸水深が深くなるにしたがい低下する傾向にあるが,半と高く,推定式によって精度良く再現出来ていると考えら壊率の最大値の挙動は浸水深 2 m でピークを迎え,その後れる。表1標準誤差(t)(t)全壊85.44半壊62.08被害減衰している。一部損壊率は,浸水深 0.5 m では 50 %以上1 棟当たり発生原単位の検定結果発生原単位t値P 値(>|t|)6.6212.8983.20E-148.857.0175.93E-08図 3 地域毎での木造建物の津波浸水深と全壊率の関係の割合を占めているが,浸水深 4 m 付近になるにしたがい0 %に近づいており,一部損壊被害は浸水深 4 m 程度でなくなると考えられる。70 木造建物の破壊率(%)10080全壊max全壊min半壊max半壊min一部損壊max一部損壊min604020002468101214161820浸水深(m)図 4 建物被害区分別破壊率の変化10060半壊全壊402000246810 12 14 16 18 20浸水深(m)10080一部損壊60半壊80一部損壊60半壊破壊率(%)一部損壊破壊率(%)80破壊率(%)100全壊全壊40402020000246810 12 14 16 18 2002468浸水深(m)(a) 被害Ⅰ(b) 被害Ⅱ図510 12 14 16 18 20浸水深(m)(c) 被害Ⅲ各被害ケースにおける木造建物の被害率と浸水深との関係また,得られた破壊率の近似曲線から,被害ケースの組5,000y=1.107xR² = 0.9602率は最小となる場合),被害Ⅱ(全壊被害が最小となる時に半壊率が最大となる場合),被害Ⅲ(全壊被害が最小となる時に一部損壊率が最大となる場合)の 3 ケースとした。図 5 に,各被害ケースにおける木造建物の被害率と浸水推定量(千t)み合わせを,被害Ⅰ(全壊被害が最大となる時に一部損壊4,0003,000y=0.990xR² = 0.9602y=0.814xR² = 0.96022,000深との関係を示す。求めた被害ケース別津波被害関数を用被害Ⅰいて,東北地方被災地の浸水域にかかる建物棟数から全壊,被害Ⅱ1,000被害Ⅲ半壊,一部損壊棟数を算出し,被害区分別棟数から災害廃棄物発生量を求め,公表された災害廃棄物量と比較した。図 6 に,東日本大震災によって発生した災害廃棄物量と001,0002,0003,0004,0005,000発生量(千t)本研究で推定した災害廃棄物量との関係を示す。各被害ケ図 6 被害関数を用いた災害廃棄物推定量の相関ースにおいて相関係数は 0.96 と高い値を示している。推定量が実際の発生量に最も近いのは被害Ⅱの場合であり,被害Ⅰはより多く推定し,被害Ⅲは逆により少なく推定し震から得られた浸水域データを GIS ソフト(Arc Map)を用いて,浸水域と建物データを重ね合わせて浸水建物棟数ている。このことから,被害ケースで分けた津波被害関数を推定した。使用した建物データは,国土地理院基盤地図を用いることで,地域によるばらつきを踏まえた推定がで情報ダウンロードサービスの 2,500 分の 1,地形図の建築きることが確認できた。物の外周線データを用いた。また,浸水域は,津波浸水域図(作成:日本地理学会災害対応本部,都市環境デザイン4. 被災棟数の算出と比較会議関西ブロック)から浸水域部を抽出した。抽出した浸水域をポリゴンデータに変換して,建物棟数のポリゴンデ津波による被害は陸域および浅海域での広い範囲に及ータと重ね合わせることにより,浸水域内の被災棟数を算ぶ。GIS を用いた既往の研究では,家屋被害に関して,1出した。対象地は宮城県沿岸の 10 市町村を選定した。こメッシュあたりの被害家屋数を家屋占有率を元に概算すこで,浸水棟数判読において,建物の一部が浸水域に触れる方法が提案されている 7)。しかし,被害棟数と津波浸水ている場合に,個々を一棟と認識してしまう問題がある。深を関連付ける場合には,建物毎の浸水深の把握が必要でそこで,本研究では 20 m2 未満のポリゴンデータを除外しあり,家屋占有率メッシュを用いた場合にはばらつきが大た。この数値は総務省統計局の香川県の宅地面積表を参考きく出る可能性がある。本研究では,東北地方太平洋沖地に決定した。71 60,000浸水棟数 (棟)15,00010,0009,000被害Ⅰ公表データ8,000被害Ⅱ50,0007,000被害Ⅲ6,00040,0005,00030,0004,0003,00020,0005,0002,00010,0000災害廃棄物発生量(千t)浸水棟数解析結果20,000被災棟数(棟)10,00070,00025,0001,000001.01.52.02.53.03.54.0到達津波高さ(m)図 9 高松市における到達津波高さと浸水棟数および図 7 被害棟数の算出結果の比較災害廃棄物発生量の関係図 7 に,各市町村における GIS で推定した被災棟数と公6. おわりに表された浸水域内の被災棟数を示す。東松島市と仙台市といった被害規模の大きい地域では,推定地と実測値に大き本研究により,以下のことが明らかとなった。な差が生じているが,その他の地域では同程度のデータを1) 東日本大震災を対象として津波災害廃棄物の発生原得ることができた。また,解析結果と公表データの決定係単位を求めた結果,全壊家屋 85.4 t/棟,半壊家屋 62.1数は R2=0.98 と高く,精度の高い推定ができたと考える。t/棟を得た。2) 被害Ⅰ,被害Ⅱ,被害Ⅲの各被害ケースの津波被害関5. 提案手法の適用事例数を用いることによって地域による被害程度の差を踏まえた推定ができることが確認できた。提案手法による津波災害廃棄物の発生量推定の適用事3) GIS を用いて浸水域にかかる建物被災棟数を推定し例として,高松市において到達津波高さの違いに応じた災た結果,浸水域にかかる被災棟数を精度よく推定する害廃棄物発生量の違いを考察する。ことができた。図 8 に,到達津波高さを T.P.+3.0 m とした場合の,高4) 提案手法を高松市沿岸部に適用した結果,被害Ⅰのケ松市沿岸部の浸水域図を示す。図中の凡例は津波浸水深ースにおいて,到達津波高さが 50 cm 高くなると津波(m)を示している。津波浸水域が内陸部まで広がり,高松災害廃棄物量が約 100 万 t 増加する結果が得られた。市中心市街地付近で浸水深が 2 mを越える箇所が生じてこれは,高松市の一般ごみ年間処理量(約 21 万 t)以いることが分かる。上の災害廃棄物が増加することが判明した。図 9 に,高松市の到達津波高さと浸水棟数及び災害廃棄5) 防潮堤の建設等で侵入津波高さを 50 cm 低下させる物発生量の関係を示す。到達津波高さが高くなるにしたがことで,建物の被害棟数を減少させ,発生する災害廃い,浸水棟数が増加し,浸水棟数は到達津波高さが 3.0 m棄物量を大幅に抑えることができると考えられる。では約 4 万 8 千棟が浸水域に入る推定となっている。また,建物棟数から全壊,半壊,一部損壊棟数を算出し,被害ケース毎に災害廃棄物発生量を求めているが,被害Ⅰ(全壊1)被害率が最大で一部損壊率が最小となる場合)において,到達津波高さが 50 cm 高くなる毎に,津波災害廃棄物量が2)約 100 万 t 増加する結果となっている。3)4)5)6)7)図8参 考 文 献中央防災会議:南海トラフ巨大地震の被害想定について(第一報告), 防災対策推進検討会議南海トラフ巨大地震対策検討ワーキンググループ,2012.8.29.首藤伸夫:津波強度と被害,東北大学津波工学研究報告,第9号,pp.101-136, 1992平山修久, 河田惠昭, 奥村与志弘:東日本大震災における災害廃棄物量の推定と災害対応,廃棄物資源循環学会誌, Vol.23, No.1,pp.3-9, 2012.越村俊一, 行谷祐一, 柳澤英明:津波被害関数の構築, 土木学会論文集, Vol.65, No.4, pp.320-331, 2009.総務省統計局:東日本大震災地域のデータ及び被災関係データ「社会・人口統計体系」, 2013.5.20公表分国土交通省:東日本大震災の津波被災現状調査結果(第2次報告),都市局,2011.10.4公表小谷美佐, 今村文彦, 首藤信夫:GIS を利用した津波遡上計算と被害推定法, 海岸工学論文集, Vol.45, pp.356-360, 1998.(2014. 3. 31 受付)高松市沿岸部の浸水域解析図(到達津波高さ T.P+3.0 m)72 Per Unit Generation and Estimating Method of Amount of TsunamiDisaster Wastes based on Published Data of the 2011 off the Pacific Coastof Tohoku EarthquakeMinoru YAMANAKA1,Naoya TOYOTA2,Atsuko NONOMURA1,Shuichi HASEGAWA11Engineering, Kagawa University2Graduate School of Engineering, Kagawa UniversityAbstractA huge amount of disaster wastes was generated along coastline areas of the Tohoku region by tsunami during the2011 off the Pacific Coast of Tohoku Earthquake. The total amount of tsunami disaster wastes was estimated to be 20million tons. Because these vast disaster wastes were very different from other wastes as for these characteristics andquantity, it was very difficult to treat and dispose these wastes safety and efficiently. Therefore it is very important toestimate an amount of tsunami disaster wastes as for quick recover and revival of damage areas.This paper describes the estimating method of amount of disaster wastes based on some published data and GISanalysis. Firstly the estimation formula of tsunami disaster wastes were built by investigating the relationshipbetween number of building and amount of disaster wastes. Secondly some equations between damage of buildingsand tsunami depth were proposed. Next the method for estimating number of buildings in submerged area by tsunamiwas developed by GIS analysis. And finally we could estimate the amount of tsunami disaster waste consideringNankai Trough great earthquake using this proposed method.Key words: Disaster wastes, Per unit generation, Tsunami depth73
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  • タイトル
  • 災害廃棄物の流動化処理土への利用に関する研究
  • 著者
  • 柴田英明・田中正智・韓涛・岡野剛
  • 出版
  • 地盤工学会特別シンポジウム -東日本大震災を乗り越えて-
  • ページ
  • 74〜78
  • 発行
  • 2014/05/14
  • 文書ID
  • 67543
  • 内容
  • 地盤工学会特別シンポジウム-東日本大震災を乗り越えて-4災害廃棄物の流動化処理材への利用に関する研究柴田英明 1,田中正智 2,韓涛 3,岡野1,2,3国士舘大学・理工学部理工学科まちづくり学系4東京測機研究所概剛4要2011 年 3 月の東日本大震災による災害廃棄物の分別処理は 2014 年 3 月現在で岩手、宮城でほぼ 95%終了しているが、分別後の復興資材等はかなりの量が仮置きされたままの状態であり、これからの被災地の復旧復興に向けた取り組みへの大きな妨げとなっている。本研究では、以前から産業廃棄物の再利用について、流動化処理土への適用に関する検討を進めてきたが、今回、これらの災害廃棄物を同様に流動化処理土への適用に関する実験を行う機会が得られたので、ここに報告するものである。材料は宮城県(A)地区の津波堆積物、岩手県(B)地区(c)地区の災害廃棄物(復興資材と呼ぶ)の 3 地域のものである。実験結果として、次のような結果が得られた。(1)B 地区の復興資材(B 種,C 種)については、ブリージングについて考慮すればそのままでも十分流動化処理土の土質材料として利用することができると判断できる。さらに、締固めを充分に行うことにより埋め立て処分が可能であると判断できるが、木片等の影響についてはさらに検討する必要がある。(2)津波堆積物は関東ロームを 20-30%ほど混合すれば十分流動化処理土の骨材として使用できることが判った。キーワード:流動化処理材、一軸圧縮強さ、フロー値表 - 1 材料の工学的性質1.は じ め に密度ρs(g/cm3)2011 年 3 月の東日本大震災による災害廃棄物の分別処均等係数Uc(%)含水比ω(%)A地区2.5434030理は 2014 年 3 月現在で岩手、宮城でほぼ 95%終了していB地区(B種)2.5412040るが、分別後の復興資材等はかなりの量が仮置きされたまB地区(C種)2.5922418まの状態であり、これからの被災地の復旧復興に向けた取C地区2.5575833り組みへの大きな妨げとなっている。災害廃棄物の大半が関東ローム2.8195077今後埋立て処分される予定であるが、災害廃棄物個々の物高炉セメント3.04----性の把握が終わっていない状況である。本研究では、以前100から産業廃棄物の再利用1)2)へ90の適用に関する検討を進めてきたが、今回、これらの災害80通過質量百分率 (%)について、流動化処理土廃棄物を同様に流動化処理土への適用に関する実験を行う機会が得られたので、ここに報告するものである。材料は宮城県 A 地区の津波堆積物、岩手県 B 地区(B 種、C種)と C 地区の災害廃棄物(復興資材と呼ぶ)の 4 種類である。70A地区B地区(B種)B地区(C種)C地区60504030201000.0010.012.災害廃棄物の流動化処理土への適用に関する実験0.1110100粒径 (mm)図-1 材料の粒度分布2.1 材料の工学的性質方、粘土分はそれぞれ 3%以下と非常に少ない材料だった。表‐1に各材料の工学的性質として密度、均等係数を、復興資材は木片等の有機物が多く含まれているが、なるべまた図‐1に粒度分布を示している。密度はどの地区の材く取り除かないでそのままの状態で実験を行うこととし料も 2.54~2.59g/cm3 と一般の砂よりも小さい値を示してた。なお、各材料の準備として 110°C で乾燥させたものいる。粒度については、最大粒径が 19.1mm であり、どのについて実験を行った。またそれぞれの最大粒径を 5mm材料も礫分が多く、C 地区の材料は 60%を占めていた。一として実験を行った。74 表 - 2 配合表(地区別)3密度 (g/cm3)材料セメント2.5433.042.5433.042.5573.042.5573.042.5573.042.5413.042.5413.04泥水密度質量 (1m あたり)3材料(kg) セメント(kg) 水(kg)(g/cm )1.6661.035585741.6911.0151185641.362777676741.6349071226051.6618891525931.591869976271.537747124665材料A地区A地区B地区B地区B地区C地区C地区水1111111体積比 (1m3あたり)材料(kg) セメント(kg) 水(kg)0.4070.0190.5740.3990.0370.5640.3040.0220.6740.3550.0040.6050.3480.050.5930.3420.0320.6270.2940.0410.665一軸圧縮強さ qu (kN/m2)7日28日ブリージング(%)(mm)3h20hA地区2102204.50--19.113.6A地区2001981.93.838.448.753.356.2B地区2452441.64.2B地区2402405950.4150.7450.1592.858.964.5322349B地区2052055.77.3277333513551C地区2152174.4C地区17718046.69.359.4825.425.747.749.7126.829.3フロー値 (mm)フロー値材料250600240500400230300220200210100200022050215402103020520200101951.661.681.691.41.61.8図-4 配合設計基準図 (B地区)1001.671.2泥水密度 (g/c㎥)ブリージング (%)60一軸圧縮強度 (kN/㎡)フロー値 (mm)1225一軸圧縮強度 (kN/㎡)表 - 3 実験結果(地区別)1.7泥水密度 (g/c㎥)図-2 配合設計基準図 (A地区)864200ブリージング (%)50.511.52泥水密度 (g/c㎥)4図-5 ブリージング (B地区)3した。品質項目は、強度(一軸圧縮強さ)、密度、流動性2(フロー値)、ブリージングで評価した。12.4 配合実験結果01.662.2 項の結果をもとに各地域別に流動化処理土の配合実1.671.681.69験を行った。固化材として高炉セメントを使用した。表‐1.72に配合表を表‐3に実験結果を示している。泥水密度 (g/c㎥)A 地区の材料については、セメント量 58kg/m3(泥水密度図-3 ブリージング (A地区)1.666g/cm3)、118 kg/m3(泥水密度 1.691 g/cm3)の 2 種類で2.2 泥水の可能性実験を実施した。図‐2,3より、フロー値はそれぞれはじめに各材料についてそのままで泥水が作れるかど200~220mmを示し、十分ポンプ圧送可能な配合であるが、うかについて調査した。A 地区の材料では水 1 に対して材強度はほとんど出ず、このまま流動化処理土の材料として料が 1.7 倍の混合比率でフロー値が 250mm程度の泥水を使用することができないことがわかった。作ることができた。B 地区の材料は水 1 に対して、重量比B 地区の材料については、セメント量 67kg/m3(泥水密度で材料が 1.3~1.5 倍の混合比率でフロー値が 260mm程度1.362g/cm3)、122kg/m3(泥水密度 1.634g/cm3)、152kg/m3(泥の泥水を作ることができた。C 地区の材料では水 1 に対し水密度 1.661g/cm3)の 3 種類で実験を試みた。図‐4,5て材料が 1.38 倍の混合比率でフロー値が 230mm程度の泥より、フロー値についてはいずれも 200mm以上を示して水を作ることができた。おり、ポンプ圧送が可能な配合であった。ブリージングに2.3 品質基準の設定ついては 5~9%と多い値を示しており、何らかの調整が流動化処理土の品質基準は、各機関によって異なる。本研究では、東京都と国交省の用途別要求品質必要であることがわかった。強度試験については、少ない10)を参考と75 表 - 4 配合表(津波堆積物)質量(t/㎥)泥水密度(g/c㎥)津波堆積物 関東ローム津波堆積物+関東ローム密度(g/c㎥)セメント水津波堆積物 関東ローム体積(1㎥)セメント水津波堆積物 関東ロームセメント水1.6290.6230.2650.1160.6222.5432.8193.0410.2450.0940.0380.6221.6530.6080.2590.1730.6112.5432.8193.0410.2390.0920.0570.611表 - 5 実験結果(津波堆積物)18120h1807日17928日2.172.9921.2319.828.0331.6717400224236.41467.4506.82503020029150281002750264001771763002001751001.6251.631.6351.641.6451.6501.655泥水密度 (g/c㎥)図-8 配合設計基準図(津波堆積物混合土)250350251.541.561.581.6泥水密度 (g/c㎥)図-6 配合設計基準図 (C地区)300200250150200100150100508ブリージング (%)178173フロー値 (mm)01.52500174一軸圧縮強度 (kN/㎡)180174フロー値 (mm)175600一軸圧縮強さ (kN/㎡)3h一軸圧縮強さ(kN/㎡)01.396501.41.4141.421.43一軸圧縮強さ (kN/㎡)(mm)ブリージング(%)フロー値 (mm)フロー値01.44泥水密度 (g/c㎥)図-9 配合設計基準図 (B種)261.541.561.581.6ブリージング (%)01.52泥水密度 (g/c㎥)図-7 ブリージング (C地区)セメント量では 100kN/m2 以下の値であるが、他のセメン422ト量では 300~500kN/m とかなり固い材料となることがわかった。01.393C 地 区 の 材 料 で は 、 セ メ ン ト 量 97kg/ m ( 泥 水 密 度3331.591g/cm )、118kg/m (泥水密度 1.537g/cm )の 2 種類で1.41.411.421.431.44泥水密度 (g/c㎥)図-10 ブリージング(B種)行った。図‐6,7より、フロー値は他の地区の材料に比べてやや小さい値 180~220mmであるが、ポンプ圧送可のままでは流動化処理土が作成できないことが分かった能な配合であると判断できた。ブリージングについては 4ので、本研究室の過去の経験~6%を示している。強度試験については今回のセメントを添加して配合実験を行うこととした。関東近辺では、建配合量では 7 日強度で 7~9 kN/m228 日強度で 25~29設工事にともない、大量の関東ロームが建設残土として排kN/m と非常に弱い強度であり、このままでは流動化処理出されるので、今回、細粒分として関東ロームを使用する材として利用することは難しいことがわかった。こととした。重量比で 30%程津波堆積物に混合して配合以上の各地域別の配合実験より、B 地区の復興資材につい実験を行なった。配合表と実験結果を表‐4,5に示しててはそのままでも流動化処理土の骨材として利用できるいる。図‐8より、津波堆積物混合土については、ブリーことがわかったが、A 地区 C 地区の材料についてはそのまジングはほとんど生じず、フロー値が 170mm 以上、一軸圧ま利用することは難しいことが判った。縮強度が 300kN/㎡以上と高強度で流動性に富み、高密度3. 津波堆積物の利用についてを持つ流動化処理土を作製できることが判った。2A 地区の津波堆積物については 2.4 項の実験結果よりそ7611)から津波堆積物に細粒分 表 - 6 配合表(B種 ・ C種)復興資材3泥水密度3材料(g/cm )B種1.3961.4141.4321.6051.6261.646C種3質量(t/m )セメント0.6120.6070.5990.9450.9310.918水0.0340.0670.0990.0450.0880.1293密度(g/cm )材料0.7480.7410.7330.6160.6070.598セメント2.5572.5572.5572.5922.5922.592体積(1m )水3.043.043.043.043.043.04材料111111セメント0.2390.2370.2340.3690.3640.359水0.0110.0220.0330.0150.0290.0430.7480.7410.7330.6160.6070.598表 - 7 実験結果(B種 ・ C種)フロー値(mm)208200178208208170ブリージング(%)3h20h3.253.2544553.445.172.044.083.044205186167215200180400300250150200100150501005001.61.611.621.631.6413.72231.49291.5818.85329.42341.026ブリージング (%)350200一軸圧縮強さ (kN/㎡)フロー値 (mm)250一軸圧縮強さ(kN/㎡)7日28日7.5320.3314.35166.63160.18259.81178.66200.59303.835.535.2119.91247236.74317.97259.12224.8317.784201.6501.61.611.621.631.641.65泥水密度 (g/c㎥)泥水密度 (g/c㎥)図-11 配合設計基準図 (C種)図-12 ブリージング(C種)を示しており、一方ブリージング率が 2~4%であった。B4.復興資材の利用について種に比べて密度が高く強度が大きくなることから、埋戻し2.4 項の実験結果より B 地区の復興資材(B 種)は十分材として利用できると判断できる。流動化処理土として利用出来ることが分かったので、今回は採取したままの状態で配合実験を行うこととした。なお、B 地区より復興資材を2種類(B 種、C 種)採取出来たので、この2種類の復興資材について配合実験を行なった。B 種は不燃系混合物を分別処理し 50mm 下の土砂を含むも5.結論上記の実験結果より下記のことが得られた。1.ブリージングに対する工夫が必要であるが、B 種,C 種ともに採取した状態のままでも、裏込め土や埋戻し土としてのであるが、今回使用したものはほとんどが20mm 下のの流動化処理材の骨材として利用することができる。もので自然含水比が40%程ある試料であった。C 種は可2.津波堆積物も細粒土を 30%混合することにより、流動化燃系混合物を分別し、20mm 以下のものであり、自然含水処理材を作製することができる。比が 18%であった。表‐6に配合表を、表‐7に実験結果を示している。図―9、10 より、B 種は湿潤密度が謝辞1.41~1.43g/cm3 の範囲でまたセメント量が 55~120kg/㎥の本実験における材料の採取に際し、西松建設範 囲 で フ ロ ー 値 が 170mm 以 上 、 一 軸 圧 縮 強 度 が氏、 奥村組150~300kN/㎡を示しており、一方ブリージング率が 3~5%た、論文の作成において福岡大学であった。このことから、B 種はブリージングに対する工佐藤靖彦大塚義一氏にご協力をいただきました。ま藤川拓郎氏に多数のご助言を賜りました。ここに記して謝意を表します。夫は必要であるが、地下空隙の充填材として利用できると参考文献判断できる。図‐11、12 より C 種は湿潤密度が 1.615~1.6451)g/cm3 の範囲でまたセメント量が 60~120kg/㎥の範囲で、地盤環境工学:嘉門雅史,大嶺聖,勝見武2010.11.252) 流動化処理土利用技術マニュアル:独立行政法人土木研究所/フロー値が 170mm 以上、一軸圧縮強度が 200~330kN/m2株式会社流動化処理工法総合管理 編772008.02.01 A study on the use of disaster waste as liquefied soil stabilization materialsHideaki SHIBATA1, Masatomo TANAKA2, Han TAO3, Tuyoshi OKANO41 2 3 Kokushikan University,4Tokyo Sokki KenkyujoAbstractThe sorting of the disaster waste produced during the Great East Japan Earthquake of March 2011 is nearly 95% complete as ofMarch 2014 in Iwate and Miyagi. The sorted materials for reconstruction have been left placed temporarily in large quantities. Thisgreatly hampers the restoration and reconstruction in the affected areas. The authors have long been considering the reuse ofindustrial waste as liquefied soils. The authors were provided with an opportunity to conduct experiments for applying disaster wasteas liquefied soils. This paper describes the results of the experiments. Used as materials were the tsunami sediments obtained indistrict (A), Miyagi Prefecture and the disaster waste (referred to as reconstruction materials here) produced in districts (B) and (C) inIwate Prefecture. The following results were obtained. (1) The reconstruction materials obtained in district B (classes B and C) canbe used as soil materials without any modification as long as consideration is given to bleeding. If they are compacted sufficiently,the materials can be used for landfill. The influences of the pieces of wood should be examined. (2) Tsunami sediments can be usedadequately as aggregate of liquefied soil if they are mixed with 20 to 30% of Kantoh loam.Key words: liquefied soil stabilization materials, unconfined compressive strength, flow value78
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  • タイトル
  • 中性領域で効率的な脱水を行うことを目的とした、加圧濾過方式(フィルタープレス)を用いた脱水の評価事例
  • 著者
  • 水野克己・和田克彦・藤原照幸・田村明・乾徹・勝見武
  • 出版
  • 地盤工学会特別シンポジウム -東日本大震災を乗り越えて-
  • ページ
  • 79〜85
  • 発行
  • 2014/05/14
  • 文書ID
  • 67544
  • 内容
  • 地盤工学会特別シンポジウム-東日本大震災を乗り越えて-5中性領域で効率的な脱水を行うことを目的とした,加圧濾過方式(フイルタープレス)を用いた脱水の評価事例水野克己 1,和田克彦 2,藤原照幸 3,田村 明 4,乾1大阪ベントナイト事業協同組合2(株)三央3(財)地域地盤環境研究所4MT アクアポリマー(株)5徹 5,勝見 武 5(独)京都大学大学院・地球環境学堂概要土壌などの湿式分級処理で発生する泥水中の細粒分は,処理する土砂の種類により塑性の低いシルトが優勢なものから、スメクタイト系粘土鉱物を含む粘土を多く含むものまで様々である。また,災害などで発生した廃棄物を洗浄した場合には、有機汚泥などを含むこともある。水処理施設などでは,凝結剤であるポリ塩化アルミニウムとアニオン系高分子凝集剤を用いた凝結・凝集処理が行われることが一般的であるが,汚泥の性状の違いで加圧濾過方式を用いた脱水処理では効率的に処理できない事例もあった。本論では,凝結剤と高分子凝集剤の他に,新たにカチオン系低分子凝結剤を用いて,中性領域で効率的な脱水についての研究をおこなった。キーワード:Disaster waste,Dewatered cake,Pressure filtration system1.はじめにあり、それでも脱水効率が悪ければ、高アルカリ性の石灰を添加し、脱水時間の短縮を図っているのが一般的である。災害などで発生した廃棄物を再生し,復興資材として有しかし、中性領域で脱水を行うためには、高アルカリ性の効利用しようとした場合,湿式分級処理を行い効率的に粒石灰の使用ができない。このため、効率的な脱水ができな径別に選別する必要がある。湿式の分級工程では,凝結剤い理由となっている。このため,汚泥の性状の違いで効率(無機凝集剤)であるポリ塩化アルミニウム(PAC)とアニオ的な脱水を行うことためには,脱水ケーキの製造と脱水性ン系高分子凝集剤を用いた凝結・凝集処理が行われる。しの評価方法の確立が課題である。本件では、除塩を目的とかしながら,凝結・凝集処理した汚泥の中には,加圧濾過方した災害廃棄物の湿式分級脱水実績やスメクタイト系粘式(フイルタープレス)等を用いた機械的脱水では効率的に土鉱物が含まれる濃縮泥水の脱水実績から,中性領域での脱水できないものもある。この理由は、凝結・凝集で見か効率的な脱水ケーキの製造・評価の目安となる CST 値とけのフロックを大きくさえすれば効率的に脱水が可能でCST/ds 値を求めたので報告する。図1一般市販品の凝結剤や凝集剤の適用領域図279脱水工程の簡略図 図3一般的な凝結と凝集状態図4凝結と凝集したフロックにカチオン系低分子凝結剤を添加しフロックが再編成した状態2. 中性領域での効率的な脱水を行うための方法し,見かけフロックが小さい,水抜けして締まった疎水性フロックは,アニオン高分子の電荷が中和され収縮するので,水を抱えられず水量が最小化しているため再編成しやす図 1 に一般市販品の凝結剤や凝集剤の適用領域を示す。い。よって,フィルタープレスで効率的に脱水ができるよ図 2 に一般的な凝結・凝集した汚泥の脱水工程の簡略図を示す。ポリテツ,PAC,硫酸バンドなどの無機凝結剤を加え,うになる。言い換えれば、親水性フロックと疎水性フロッそのあとにアニオン系やノニオン系やカチオン系の高分クの水インピーダンスの違いと考えられる。子凝集剤で凝集沈殿させ,貯留タンクにてスラリーを濃縮3.カチオン系低分子凝結剤を使用した中性領域で脱水ケーキを製造した事例させ,フィルタープレスにて絞り,脱水ケーキとろ過水に分離する。一般的に効率的な脱水とは,脱水時間(フィルタープレスのプレスサイクルタイム)が 30~80 分で,脱水ケーキの含水率が 30~40%前後である。そして,濃縮した泥水中性領域で脱水ケーキを製造した事例を写真 1~写真 6がコーン指数がおおむね 400kN/m2 以上であり,埋め戻し土に示す。写真 1 は大和川シールド工事で発生した建設汚泥や流動化処理土だけでなく植栽などの農業分野まで用途を分級して砂を回収し,写真 2 に示すように濃縮したスラ利用が拡がる。ッジは写真 3 に示すフィルターで脱水し,写真 4 に示すよ一般的に pH を無視して効率的な脱水を行うときには,うな脱水ケーキを埋め立て資材として使用した事例(O 組脱水助剤として消石灰などを使用する。しかし,中性領域合)である 2)3)。写真 5 は,東北震災で発生した津波で生じたでの効率的な脱水を行うためには,新たに脱水助剤として災害廃棄物に含まれる塩分を除く除塩設備で使用した事分子量が 7 万程度のカチオン系低分子凝結剤との併用で例(RI 社)である 4)。写真 6 は,汚染土壌を水で洗浄する洗効率的な脱水ケーキを製造する研究開発を行った。一般的浄・分級施設で使用した事例(DA 社)である 5に低分子量の有機凝結剤は,図 1 に示すように分子量が約7 万から 50 万程度であり,主に下水汚泥で生物処理後の余3.1室内試験結果と実証実験結果剰汚泥の脱水に使用されている 1)。そして,汚泥に対し帯電写真 1~写真 6 で示した O 組合と RI 社と DA 社の濃縮中和と架橋によるフロック化の両作用することが特徴でスラッジの性状とカチオン系低分子凝結剤の添加量を変ある。本論で使用したカチオン系低分子凝結剤とは,固有化させた条件での室内試験結果と,フィルタープレスを使粘度 0.1~3.0dl/g(30℃,1NNaNO3)を有する,ジアルキル用した実証実験結果を表 1~表 3 に示す。室内では,凝集剤アミノアルキル(メタ)アクリレートの4級アンモニウムの最適添加量の決定法の一つとして用いられているCS塩またはジアルキルジアリルアンモニウム塩のホモもしT試験結果から得た CST 値と CST/ds 値で評価した 6)。くはコポリマー等から選ばれたカチオン系低分子凝結剤を用いた。通常,強撹拌などで集合したフロックを分散さ3.2せて壊すことは「フロックの破壊」と呼ぶ。そして,フロCST試験の方法の概要を図 5 に示す。CST試験の方ックを収縮して,フロック周囲に抱える余分な水を,予め離法は,概略,ろ紙上の筒に汚泥を含む調整試料を入れ,毛細水させることを「フロックの収縮」と呼ぶ。このフロック管吸引現象によって水分がろ紙に吸引され円周方向に拡の収縮,すなわちフロックが抱えた水を離水し,フロックが大して,同心円の2点間を通過する時間(CST値,単位:小さくなることをフロックの再編成と呼ばれている 1)。図CST試験の方法の概要秒)を計る方法で行われる。調整試料は,通常,汚泥を含む3 に示すように見かけフロックが大きい,水膨れした親水試料に,所定量の凝集剤水溶液を加えて攪拌することによ性フロックは,高分子が水を抱え,フロックの内部も周囲もって調製される。こうして得られるCST値は,濾過比抵水量が最大化しているためフロックが再編成しにくい。こ抗の指標となるもので,通常は汚泥の性状把握,高分子凝集のため,図 4 に示すようにカチオン系低分子凝結剤を添加剤添加量の判定に用いられている 6)80 建設汚泥を分級して砂を回収した施設 2)3)写真 1写真 3写真 5写真 2砂を回収した後の濃縮スラッジ 2)3)加圧濾過方式(フイルタープレス) 2)3)写真 4 脱水ケーキ 2)3)災害廃棄物に含まれる塩分を除く除塩施設 4)図5写真 6汚染土壌を洗浄・分級施設 5)CST試験(Capillary Suction Time)の方法の概要81 3.3フィルタープレスを使用した実証実験下になると泥水が「○ 効率的に絞れる」ことが判る。よ脱水ケーキは,集積され廃棄物として最終処分場に搬出って泥水性状から得られる固形分濃度と CST 試験から得されるのが一般的であるが,また,一定条件を満足したものられる CST 値から,脱水ケーキの性状の評価が可能であるは埋め戻し土や流動化処理土や植栽土壌として再生利用知見が得られた。なお,事例 1(O 組合)の泥水には,粉末 Xされている2)3)4)。一定条件とは,脱水ケーキに含む有害金線回析試験結果よりスメクタイト系の粘土が多く含まれていた 2)。属類等が環境基準値以下であることが条件であり,他に2pH が中性領域で,コーン指数が 400KN/m 以上などの用途4.別に条件が異なる。脱水ケーキの製造を行うには,フィルタープレスでの加圧圧入時の圧力,脱水時間,ろ布の強度特コンシステンシーの異なる工業品を使用した再現試験性や通気性,そして湿式分級前の土のコンシステンシーと,湿式分級後の濃縮泥水の固形分濃度などに影響される。一湿式分級で対象とする土質の範囲は広く,砂質からスメ般的に効率的な脱水とは,脱水時間(プレスサイクルタイクタイトを含む粘土まである。また,災害などで発生したム)が 30~80 分で,脱水ケーキの含水率が 30~40%前後が廃棄物を洗浄し湿式分級後の濃縮泥水などがある。このた目安とされる。よって,本実験では,脱水時間(プレスサイクめ,中性領域での脱水ケーキの再生利用を高め,流動化処理ルタイム)が 30~80 分で,脱水ケーキの含水率が 30~40%土や植栽などの農業用分野まで利用用途を広げるために前後を「○は,CST試験などの簡単な試験方法を用いた製造・評価効率的に絞れる」それ以外を「×絞れない」とした方法の確立が課題である。よって泥水性状から得られる固形分濃度と CST 試験から得られる CST 値から,脱水ケーキ3.4脱水ケーキの性状の評価結果の性状の評価が可能であることを立証するためにコンシ表 1 に,事例 1(O 組合)として建設汚泥を分級して砂を回ステンシーの異なる工業用のベントナイト類,粘土類(以下,収した施設での室内試験結果と実証実験結果を示す。表 2工業品と呼ぶ)を使用してCST試験機による再現試験をに,事例 2(T 社)として災害廃棄物に含まれる塩分を除く除行った。塩施設での室内試験結果と実証実験結果を示す。なお,添加量はカチオン系低分子凝結剤の粉末換算の値である。表3 に汚染土壌を洗浄・分級施設での室内試験結果と実証実験結果を示す。表 1~表 3 に示すように,CST/ds 値が 10 以表1表2建設汚泥を分級して砂を回収した施設での室内試験結果と実証実験結果災害廃棄物に含まれる塩分を除く除塩施設での室内試験結果と実証実験結果表3汚染土壌を洗浄・分級施設での室内試験結果と実証実験結果82 表4コンシステンシーの異なる工業品を使用したCST試験機による再現試験結果注記)写真 74.1CST の測定不能;ろ紙上の計測範囲まで水の浸透が認められず,測定不能とした。CST 試験装置(毛管吸引試験)写真 8コンシステンシーの異なる工業品試料ニオン高分子凝集剤を使わないでカチオン系低分子凝結コンシステンシーの異なる工業品を使用した再現試験内容剤の脱水効果を知るために,ブランクにおいてカチオン系試料には,USA 産ベントナイト(TB-S),群馬産ベントナイ低分子凝結剤 3%溶解液を 2ppm 添加し CST 試験を行い,ト (TB-300),岡 山 産笠 岡粘 土 ,USA 産 ジ ョ ー ジア カ オ リブランク時との比較をおこなった。次に,ブランクの各試ン,DL クレーを使用した。各工業品の液性限界は,文献より料に対しポリ塩化アルミニウムを 200ppm とアニオン高分USA 産ベントナイトの WL =615.5%,群馬産ベントナイト子凝集剤を 15ppm 添加し,カチオン系低分子凝結剤 3%溶の WL =360.1%,USA 産ジョージアカオリンの WL =46.7%,解液を 2ppm 添加した試料と無添加の試料の CST 試験を笠岡粘土の WL =63.0%,DL クレーの WL =NP である。各試行った。写真 7 に使用したCST試験を示す。写真 8 に使料は固形分濃度を 20%,10%,5%に設定し希釈による脱水用したコンシステンシーの異なる工業品試料を示す。性効果の違いを計測した 7)8)9)。ポリ塩化アルミニウムやア83 4.2まず湿式分級する前の,土の性状(コンシステンシー)の違コンシステンシーの異なる工業品を使用したいで三通りの凝結・凝集する方法がある。一つは,①岡山再現試験結果表 4にコンシステンシーの異なる工業品を使用した産笠岡粘土,USA 産ジョージアカオリン,DL クレーなど液CST試験機による再現試験結果を示す。固形分濃度が同性限界が低い工業品は,ポリ塩化アルミニウムやアニオンじでも液性限界が高い USA 産ベントナイト(TB-S)や液性高分子凝集剤を使用しなくてもフィルタープレスで効率限界がやや高い群馬産ベントナイト(TB-300)では測定不的な脱水が可能である知見が得られた。能であり,固形分濃度を少なくすることで,CST 値と CST/ds次に,②液性限界がやや高い群馬産ベントナイト値が低下していく様子が読み取れる。また,岡山産笠岡粘(TB-300)では,あらかじめポリ塩化アルミニウムとアニオ土,USA 産ジョージアカオリン,DL クレーなど液性限界がン高分子凝集剤を使用した後に,カチオン系低分子凝結剤低い工業品は,ポリ塩化アルミニウムやアニオン高分子凝を使えば効率的な脱水が可能である知見が得られた。さら集剤を使用しなくてもフィルタープレスで効率的な脱水に,③凝結・凝集させた濃縮泥水の固形分濃度が多いと脱が可能である知見が得られた。なお,液性限界がやや高い水できない場合があり,固形分濃度を少なくすると,CST 値群馬産ベントナイト(TB-300)では,あらかじめポリ塩化アと CST/ds 値が低下し効率的な脱水が可能である知見が得ルミニウムとアニオン高分子凝集剤を使用した後に,カチられた。オン系低分子凝結剤を使えば効率的な脱水が可能である知見が得られた。1)5. まとめ2)3)水処理施設では,一般的に凝結剤(無機凝集剤)であるポリ塩化アルミニウム(PAC)とアニオン系高分子凝集剤を用参 考 文 献田村 明(2008):最近の凝集剤について,非鉄精錬・リサイクル技術講座 排水コース.大阪ベントナイト事業協同組合(2012):大和川シールド発生土再生活用事業「再生利用施設」の取り組み地域地盤環境研究所(2012):硬質な粘土を多く含む土砂の解泥・分級に関する研究 (試験結果報告書)4) 地盤工学会(2013):大船渡工場における瓦礫の除塩分級によいた凝結・凝集処理が行われる。しかし,加圧濾過方式(フるセメント資源化と土工資材化について,東日本大震災対応イルタープレス)を用いた脱水が効率的にできない事例が調査研究委員会地盤環境研究委員会あった。カチオン系低分子凝結剤は,主に下水汚泥で生物第 7 回委員会資料より処理後の余剰汚泥の脱水に使用されている。本件では,凝5) 株式会社三央 ホームページ http://www.san-oh.co.jp/結剤と高分子凝集剤の他に,新たにカチオン系低分子凝結より剤を用いた用途利用の研究をおこなった。6) 日本下水道協会 1997 年 下水道試験法 第4章 一般汚泥経験値から、見かけフロックが小さい方より大きい方が試験 第14節脱水試験 3.CSTテスト脱水効率が良いとされてきた。しかし、見かけフロックが7) 水野克己(2001):ベントナイトの特性と環境汚染分野への大きく水膨れした親水性フロックより、見かけフロックが応用,土と基礎,地盤工学会,Vol.49,No.2,pp.29-32.小さく,水抜けして締まった疎水性フロックの方が脱水効8) 水野克己(2003):各種ベントナイトのコンシステンシー特性率が良い知見が得られた。また、室内試験結果と実証実験およびその他の基礎的特性に関する研究(総論),粘土科学結果より,建設汚泥を分級して砂を回収した残りの泥水や,第 43 巻,第 1 号,日本粘土学会,pp.1-13.災害廃棄物に含まれる塩分を除いた後の泥水や,汚染土壌9) 水野克己(2004):コンシステンシー限界を用いた粘土のを洗浄・分級時に発生した泥水に,カチオン系有機凝結剤難透水性の解明,第 59 回年次学術講演会,土木学会,CD-ROM.の適用利用が可能である知見が得られた。特に、カチオン系低分子凝結剤を添加すると,凝集フロックがやや小さい大きさにフロックが再編成され,フロック周囲水の水離れが良くなったことによる導水作用(微細繊維質のようなミズミチの発生)で効率的な脱水方法が可能となった。湿式分級などで発生する泥水の土質の範囲は広く,砂質からスメクタイトを含む粘土まである。また,災害などで発生した廃棄物を洗浄した濃縮泥水などがある。このため,中性領域での脱水ケーキの再生利用を高め,盛り土や流動化処理土だけで無く,植栽などの農業用分野まで新たな利用用途を広げるためには,CST試験などの簡単な試験方法を用いた製造・評価方法の確立が課題であった。このため,コンシステンシーの異なる工業品を使用してCST試験機による再現試験を行った。pH が中性領域で,コーン指数が 400KN/m2 以上となる脱水ケーキの製造を行うには,84 Manufacturing of dehydratedsoil cakeKatsumi Mizuno1, Yoshihiko Wada2, Teruyuki Fujiwara3, Akira Tamura4,Toru Inui5, Takeshi Katsumi51Osaka Bentonite Co-op2Sanoh, Inc.3MT AquaPolymer, Inc.4Geo-Research Institute5Kyoto UniversityAbstractThe fine particle in sludge, which is generated through wet classification of soil, varies widely from low plasticity siltto clay containing smectite clay minerals, due to the soil properties which are treated. In addition, in the case of wastetreatment caused by a disaster, the soil can include organic sludge.In a water treatment facility, any sludge is aggregated and coagulated, generally by polyaluminum chloride andanionic high-molecular coagulating agent. Due to the difference in sludge properties, however, there was a casewhere dewatering by filtration under pressure could not performed efficiently.This paper describes a research on efficient dewatering in a neutral domain with the use of the cationic low-molecularcoagulating agent as well as a coagulating agent and a high-monocular coagulating agent.Key words: Disaster waste,Dewatered cake,Pressure filtration system85
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  • タイトル
  • 津波堆積物のような木くず混入土の粒度試験方法に関する一提案
  • 著者
  • 千葉祐太朗・今西肇
  • 出版
  • 地盤工学会特別シンポジウム -東日本大震災を乗り越えて-
  • ページ
  • 86〜92
  • 発行
  • 2014/05/14
  • 文書ID
  • 67545
  • 内容
  • 地盤工学会特別シンポジウム-東日本大震災を乗り越えて-津波堆積物のような木くず混入土の粒度試験方法に関する一提案6千葉祐太朗 1,今西1(株)復建技術コンサルタント2東北工業大学肇2工学部都市マネジメント学科概要津波堆積土は、土砂以外に木くずやプラスチックくずなどを含んでいる。しかしながら、津波堆積土のような密度が異なる粒状物質混合土を粒径加積曲線に示しても,現場の見た目ほど粒度の違いを表現できていない。そこで,粒径加積曲線を質量百分率ではなく,体積百分率で表現した方法を試みた。その結果,土粒子以外の密度を考慮することで、見た目の粒度に近い粒度分布を示すことができた。キーワード:津波堆積物,粒度試験,密度試験,木粒子1. はじめに東日本大震災に伴い発生した津波は,内陸部まで来襲し,広範囲に海底の土砂などが堆積した。これらの堆積物は,津波堆積物(津波堆積土)と呼び,仮置き場にて分別処理後,復旧・復興資材として有効利用されている。(写真‐1)これまで,津波堆積物のような木くず混入土をいくつか粒径加積曲線(通過質量百分率)に示しても,実際の見た目ほど粒度の違いを表現できていないと考え,粒度試験方法に関する研究を進めてきた。2)3)4)5)(写真‐2)また,その研究内容の中で,津波堆積土を土粒子+木粒子,土粒子単体,木くず単体(以後、木粒子と呼ぶ)の 3 種類に分別し,粒径別の密度試験を行ったところ,木粒子の密度が粒径によって変化した。(木粒子の見かけ密度と呼称している 3))本研究は,土粒子と木粒子の密度の違いに着目して,粒度分布表現で用いられている粒径加積曲線を,従来の通過質量百分率から通過体積百分率で表現しようと試みた。写真‐2 土粒子と木粒子の見た目と質量の違い(土粒子200g:木粒子20g)写真‐1 仮置場での津波堆積物分別作業写真‐3 砂が大部分を占める津波堆積物86 を,二次仮置き場にて分別した 20mm 篩下残渣を使用した。試料採取の手順を以下に示す。1) 篩下残渣を試験室内に持ち込み,四分法(JIS A 1204)による試料の分取を行った。2) 分取された試料を土の粒度試験方法(JIS A 1204)にしたがって,ふるい分けを実施した。3) 各ふるい(75µm,106µm,250µm,425µm,850µm,2.0mm,4.75mm,9.5mm)に残留した試料は,それぞれ土粒子と木粒子により構成されていることを,目視および実体顕微鏡にて確認した。(写真‐5,写真‐6,写真‐7)4) 土粒子と木粒子の混合土に対し,土粒子単体,木粒子単体とするため,選別ならびに目視による手選別を加えた。5) 土粒子と木粒子の混合土から,木粒子のみ取り出す方法として,試料に水を注入し,浮遊している試料を木粒子とし写真‐4 砂以外の混入物がある津波堆積物た。採取後の木粒子を実体顕微鏡にて確認したものを写真‐7 に示す図‐1 津波堆積土の粒度分布(通過質量百分率)写真‐5 津波堆積物のふるい分け後(土粒子+木粒子)2. 津波堆積土津波堆積土の状態を写真‐3,写真‐4 に示す。これは,福島県相馬市の海岸線より300m内陸部の農地に堆積した津波堆積土の写真であり,大部分が砂で構成されている。(写真‐3)一方,都市部の津波堆積土は砂の他に,倒壊家屋の木材や生活用品などのプラスチックが混入している。(写真‐4)集積された場所により津波堆積土と同じ名称がついても構成する物質が大きく異なる。図-1 は,津波堆積土を用いて土の粒度試験(JIS A 1204)を実施し,粒径加積曲線を示した図である。粒度分布に大きな違いは見られない。しかし,これらの津波堆積土に含有している木粒子の混入量は全て異なっており,見た目も違う。これは,土の粒度試験(JISA 1204)で規定する粒径加積曲線(通過質量百分率)は,測定した土粒子密度が一定であると仮定して表現しており,密度が異なる土粒子以外の粒状体を考慮していないことに起因する。すなわち現状では,津波堆積土などの密度が異なる粒状物質混合土の粒度分布表現方法に課題が残る。3. 試験試料の準備試験材料は,岩手・宮城の太平洋沿岸地域に堆積した津波堆積物87写真‐6 津波堆積物を水分別した後(木粒子) 水を注入した際,浮いてしまうと想定され,金網を用いて包み込んだ測定方法を試みた。しかし,金属製網ふるいの目開きが小さかったため,十分に内部の気泡を取り除くことができなかった。だが,木粒子単体をピクノメーター内で湯せんしたところ,全て沈降したため,金属製網ふるいを用いた方法では行わなかった。なお,煮沸時間に関して,「一般の土で 10 分以上,高有機質土で約40 分,火山灰質土で 2 時間以上必要である」と記載がある。1)そのため,本試験で用いた土粒子および木粒子の混合体,木粒子単体の煮沸時間は,空気を多く含んでいる可能性があるので,2 時間以上行った。(a)土粒子+木粒子(a) 煮沸前(木粒子)(b)土粒子(b) 煮沸後(木粒子)写真‐8 フラスコを用いた密度測定4.1 土粒子および木粒子の粒径別密度試験結果と考察(c)木粒子図‐2 に,土粒子および木粒子の混合体,土粒子単体,木粒子単体写真‐7 実体顕微鏡による観察の密度試験結果を示す。土粒子密度(図中の表記:■)は,2.65g/cm3から 2.90g/cm3 であり,粒径に関係なくほぼ一定の値を示した。また,土粒子および木粒子の混合体の密度(図中の表記:○)は,粒4. 密度試験径の小さいところでは土粒子密度とあまり変わらない値を示したが,粒径が大きくなるにつれて密度が小さい値を示した。これは,密度試験は,ふるい分けされた各試料から,土粒子と木粒子の混 含有している木粒子の影響によるものと推察される。合体,土粒子単体,木粒子単体の 3 種類について土粒子の密度試験しかしながら,木粒子の密度(図中の表記:▲)は,土粒子およ方法(JIS A 1202)に準じて実施した。また,粒度の大きい試料(9.5mm, び木粒子の混合体と土粒子単体の密度の傾向と大きく異なり,明ら4.75mm 残留試料)は,ピクノメーターに入らないため,フラスコ かに粒径が大きくなると小さくなっている。また,9.5mm の粒径でを使用した。(写真‐8)ここで,木粒子はピクノメーター内に蒸留 は 1.4g/cm3 だが,75µm の粒径では 2.00g/cm3 から 2.5g/cm3 と大きい88 値を示した。木そのものの密度が,桐 0.31g/cm3,杉 0.4g/cm3,松0.52g/cm3,栗 0.60g/cm3,ケヤキ 0.70g/cm3,黒檀 1.1 から 1.3g/cm であり,それらの 2 倍以上の密度試験結果が得られた。今回の密度試験は,MA,MB,MC,SB,NB の 5 種類の試料により行ったが,5 種類ともに同じような傾向を示す結果となった。木粒子の密度が,粒径ごとに変化があることは今まで知られていない。木そのものの組織は,植物細胞壁を構成する主要成分であるセルロース,ヘミセルロースとリグニンにより形成されている。セルロース,ヘミセルロースの密度は一般的に 1.3g/cm3 から 1.5g/cm3 程度であることから,今回の試験結果によると,木粒子の粒径が小さいところでは,セルロースの密度を超えているので,植物細胞壁内に微細な土粒子が入り込んでいる可能性も考えられ,測定された値を「木粒子の見かけ密度」と呼ぶこととする。3)(b)100 倍(c)500 倍図‐2 津波堆積土を3 種類に分別した際の粒径別密度分布4.2 走査電子顕微鏡(SEM)による観察木粒子の粒径が小さくなるにつれて密度が大きくなることから,木くずの間隙内に土粒子などの粒子が混じりこんでいないか調査するため,走査電子顕微鏡(SEM)を用いて観察した。写真‐9 に木粒子単体の SEM 画像を示す。写真‐9 は(a)50 倍,(b)100 倍,(d)1000 倍写真‐9 SEM 画像(木粒子)(c)500 倍,(d)1000 倍となっている。画像を見る限り,土粒子のような物質が木粒子間隙内に入り込んでいることを確認できなかった。しかし,木粒子表面には木粒子以外の物質が付着しており,SEM ではその物質を特定できないため,次に X 線分析顕微鏡を用いて定性分析を試みた。(a)50 倍89 4.3 X 線分析顕微鏡を用いた定性分析今回比較対象とした試料であるアカマツの密度は,一般的に気乾密度 0.528)である。密度試験の結果を図‐5,図‐6 に示した。その図‐3,図‐4 に木粒子の定性分析結果を示す。この結果から, 結果,粒径 9.5mm~75µm の密度はすべて 1.5g/cm3 程度となった。26Fe,20Ca の反応が確認できた。また微量ではあるが,19K の反 これは,セルロースなどの密度が 1.5g/cm3 程度であることから,一応も見られた。図‐3(木粒子:425µm)と図‐4(木粒子:75µm) 般的なアカマツの密度ではなく,植物細胞壁の密度ではないかと考を比較すると,粒径が小さくなると 26Fe の反応が大きくなってい えられる。ることが分かる。この変化は,密度変化要因の一つとして可能性があると考えられる。なお,今回の試験で使用した X 線分析顕微鏡 4.5 超音波を用いた洗浄による付着物分離試験(XGT-2000W)の仕様では,測定元素が 11Na~92U となっており,実体顕微鏡を用いて木粒子を観察したところ,表面部に付着物が6C や 8O といった元素は反応しない。そのため,1H~111Rg など 付いていることを確認できた。そこで,木粒子から付着物を分離さの元素を考慮した場合とでは,土粒子,木粒子の構成元素に変動が せることで,木粒子の見かけ密度が変化すると考え,超音波を用いあると考えられ,今後,検証を行う予定である。て津波堆積土中の木粒子を洗浄する方法を試した。その際,超音波次に,津波堆積土中の木粒子表面に付着している粒子を分離処理 周波数が 42KHz で,約 10 分間の洗浄後,粒径別に密度試験を実施した後の密度試験と,木そのものの密度試験を試みた内容を示すした。結果を図‐5 に示す。この結果では,洗浄前と後で密度が変化せずほぼ同程度の分布を示した図‐3 定性分析(木粒子:425µm)図‐5 超音波を用いた洗浄後の木粒子の密度分布4.6 過酸化水素水を用いた付着物分離試験超音波を用いた洗浄とは別に,木粒子付着物の分離方法として,過酸化水素水を用いた方法も試みた。試験試料は,超音波を用いた分離試験で用いた津波堆積土に含まれている木粒子とは,異なる地区で採取したものを使用した。試験手順は,JIS A 1204(試料の分散)に準拠して実施している。試験内容は,過酸化水素水注入し,放置せずに撹拌した後,密度試験を行ったものと,20 時間放置した後の 2 通りで行った。その結果を図‐6 に示す。過酸化水素注入後,放置せずに試験を行ったものは,通常の津波堆積土中の木粒子の見かけ密度分布と差はなかったが,20 時間放置した試料は下方図‐4 定性分析(木粒子:75µm)に位置し,アカマツの密度分布と同程度の分布となった。4.4 粒径別に作成したアカマツの木粒子密度試験これまで,津波堆積土中の木粒子密度変化の要因について調査した内容を述べた。次に,津波堆積土中に含まれている木粒子の見かけ密度と比較するため,木そのものの粒径別密度試験を実施した。今回,比較対象としてアカマツの枝を粒径別に伐採・粉砕したものを試験材料とした。試料作成の手順を以下に示す。1)アカマツの枝を試験室内にて,ノコギリやナタを用いて破砕を実施した。2)850µm 以下の木粒子を作成する手段として,乳鉢を用いてすり潰し,細かい粒径になるよう調製した。3)ふるい分けを行い,各ふるいに残留した試料で密度試験を実施した。図‐6 過酸化水素水を用いた分離試験前後の木粒子の密度分布90 5. 粒度試験試験材料は,岩手・宮城の太平洋沿岸地域に堆積した津波堆積物を用いている。粒度分布を粒径加積曲線上に示す際,必要となる質量百分率・体積百分率の計算で使用する質量は,強熱処理後の各ふるいの質量(土粒子単体の質量)を,もとの土粒子と木粒子の混合体の質量から,差し引くことによって算出した値を木粒子の質量として使用した。5.1 試験結果と考察図‐7(試料 MC),図‐8(試料 NB)は通過質量百分率と通過体積百分率で表示した粒径加積曲線である。通過質量百分率は,JISA1204 を用いて結果を得た。通過体積百分率は,土粒子単体の質量図‐8 粒径加積曲線(試料NB:通過質量・体積百分率)と木粒子単体の質量を,図‐2 で得られた土粒子単体の密度分布と木粒子単体の密度分布をそれぞれ考慮して体積を算出した。図‐7,図‐8 を比較すると,どちらの試料も粒径 9.5mm~850µm にて通過体積百分率のほうが,通過質量百分率より下方に位置している。さらに通過体積百分率を用いた粒径加積曲線の変化は,通過質量百分率粒径を用いた粒径加積曲線より,曲線の変化量が粒径によって異なっているのが分かる。これは,木粒子の混入量の違いによるものである。図‐9 に土粒子と木粒子の質量および,木粒子密度を任意で変化させた感度分析結果を示す。粒径加積曲線は,通過体積百分率で表現している。感度分析では,粒径 2mm 以上の木粒子混入量を多図‐9 感度分析(試料NB:通過体積百分率)くした場合,その混入量が増加するごとに,粒径加積曲線がより下方に位置する示す結果となった。しかし,粒径 850µm 以下の木粒 1) 津波堆積土に含まれる木粒子の密度は,粒径が小さいほど大子混入量を変化させた場合,混入量の増加に関わらずほぼ一定の曲きくなる。(見かけ密度)線を示す結果となった。また,木粒子の密度を変化させて行った場 2) 木粒子の密度変化は,付着物が要因であることが分かった。合,見かけ密度もしくは木そのものの密度のどちらを用いても,数 3) 通過質量・体積百分率の粒径加積曲線を比較すると,粒径に値(土粒子と木粒子の混入量)を変化させていない粒径加積曲線とよって通過体積百分率表示の変化量に差があることを示した。同じ曲線を示す結果となった。これらの感度分析結果より,細粒分これは,木粒子の混入量の違いによるものである。(425µm 以下)が多い場合では,木粒子の混入量に関わらず粒径加 4) 感度分析より,混合土の木粒子細粒分(425µm 以下)混入量積曲線に変化は見られなかった。しかしながら,粗粒分(850µm 以が増加しても,粒径加積曲線(通過体積百分率)は大きく変上)が多い場合は,木粒子の混入量の増加に伴い,数値を任意に変化しない。化させていない粒径加積曲線より下方に変化することを確認した。 5) 感度分析より,混合土の木粒子粗粒分(850µm 以上)混入量が増加すると,粒径加積曲線(通過体積百分率)が粒径によって変化する。謝辞本研究を進めるにあたって,地盤工学会・地盤環境研究委員会の委員各位には,貴重なご助言などを賜りました。ここに記して感謝の意を申し上げます。参 考 文 献1) 地盤工学会:地盤材料試験の方法と解説, 2009, 1156 pp.2) 今西肇・千葉祐太朗:津波堆積土などの粒度試験方法の提案, 第 48 回地盤工学研究発表会講演概要集, 2013.3) 今西肇・千葉祐太朗:津波堆積土の密度試験および粒度試験方法の提案, 第10 回環境地盤工学シンポジウム, pp.361-366, 2013図‐7 粒径加積曲線(試料MC:通過質量・体積百分率)4) 千葉祐太朗・今西肇:超音波を用いた津波堆積土中の木粒子の洗浄に6. おわりによる粒径別密度試験について, 平成 25 年土木学会東北支部技術研究発本研究では,津波堆積物のような木くず混入土の粒度分布を,より明確に表現するため,粒径加積曲線を質量表示から体積表示にする表現方法について研究を進めてきた。得られた主な結果を以下に表会講演概要集, Ⅲ-36, 2014.5) (財)日本木材総合情報センター :http://www.jawic.or.jp/kurashi/jtree/s1-akamatsu.php記す。91 A proposal of test method particle size distribution of the Tsunami sedimentsYutaro CHIBA1, Hajime IMANISHI21 Fukken Gijutsu Consultant2 Tohoku Institute of Technology, Department of Civil Engineering and ManagementAbstractTsunami sediments consist of fragments of plastic, wood debris and soil particles. However, the grain size accumulation curvecannot express the difference of the real grain size distribution, because the curve is expressed by the mass percentage increaseagainst the grain size. In facts, the density of wood particles is less them the density of soil particles. Therefore, the volume percentincrease (VPI) instead of mass percent increase (MPI) adopt to the grain size accumulation curve was given in consideration. At theprocess of finding VPI in grain size accumulation curve, it was found that the density of wood debris was depending on the particlesize, using this result and applying the calculation of VPI in grain size accumulation curve. It was found that VPI can express the readgrain size distribution.Key words: Tsunami sediments, grain size analysis, density test, wood debris92
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  • タイトル
  • 震災がれきおよび津波堆積物由来の木屑混じり発生土の有効利用のための土質力学特性の評価
  • 著者
  • 風間基樹・森友宏・大沼清孝・大山浩一・相川良雄
  • 出版
  • 地盤工学会特別シンポジウム -東日本大震災を乗り越えて-
  • ページ
  • 93〜101
  • 発行
  • 2014/05/14
  • 文書ID
  • 67546
  • 内容
  • 地盤工学会特別シンポジウム-東日本大震災を乗り越えて-7震災がれきおよび津波堆積物由来の木屑混じり発生土の有効利用のための土質力学特性の評価風間基樹 1,森友宏 1,大沼清孝 2,大山浩一 2,相川良雄 21東北大学大学院2三菱マテリアル株式会社工学研究科土木工学専攻概要2011 年東日本大震災では,震災廃棄物が混入した土砂や津波堆積土砂が大量に発生した。新たな環境負荷を生まないためにも,これらの発生土砂を建設用地盤材料として有効利用することは,復旧復興のために重要である。しかし,これらの発生土砂には木屑等の有機物が大量に含まれており,地盤材料(例えば建設用盛土材料)として利用するためには,その土質力学特性の評価を行い,適切な用途・箇所に用いる必要がある。また,場合によっては土砂の改質が必要となる。本報告では,大量の木屑が含まれる震災廃棄物混入土砂および津波堆積土砂に,現場と同等の分別方法を用いて粒度分布や有機物含有量が異なる土砂を作成した後,それぞれの土砂に対して盛土材料としての使用可能性を吟味するための土質試験を行った。その結果,適切な対処をすれば,建設地盤材料として実際に利活用できることを示した。キーワード:震災廃棄物混入土砂,木屑,有機物,締固め特性,有効利用1. は じ め に2011 年東日本大震災では,震災廃棄物混入土や津波堆積土が大量に発生した。発生土は,海岸防災林・宅地造成地等の盛土材への利活用が考えられているが,発生土には木屑などの有機物が大量に含まれており,使用に際しては,その力学的特性を評価するとともに,施工時の品質管理基準を定めておく必要がある。本研究では,発生土および発生土にふるい分け分別を行った土に対して物理・力学試験,CBR 試験・コーン貫入試験等を行い,強度特性と土の締固め度との関係を明らかにし,発生土を建設材料として用い図 1試料の採取場所(石巻ブロックの分別処理サイト)図 2廃棄物混入土砂分別フローにおける「原土」の採取箇所るときの品質管理基準の検討を行った。また,土砂の改質材としてセメント系固化材を用いた時の強度発現特性の評価も行った。2. 試料採取および試料の調整方法2.1試料の採取位置本研究では,宮城県石巻市の石巻ブロック災害廃棄物処理業務廃棄物混入土砂ストックヤード から採取した土(以下,「原土」と呼ぶ)を試料として用いた(図 1 参照)。この原土は,宮城県石巻市周辺に発生した震災廃棄物混入土砂を仮置きストックヤードに集積し,破砕選別された後,乾式で 30 mm ふるいを通過した,いわゆるふるい下土砂2.2試料の調整方法原土には多量の有機物やその他廃棄物が混入しているである(図 2 参照)。ため,本研究ではさらに二段階のふるい分け工程を加えて,93 原土から有機物等を分別した土砂を作成した(図 3 参照)。まず一つめが「5 mm ふるい下」と呼ぶ土砂で,原土をφ5 mm のパンチ穴の振動ふるい選別機(原田産業製)にかけて,ふるいを通過したものである。二つ目が「3 mm ふるい下」と呼ぶ土砂で,「5 mm ふるい下」の土砂を,さらにφ3 mm のパンチ穴の特殊ふるい選別機(風力選別)にかけて,ふるいを通過したものである。原土に含まれる無機物・有機物の割合,および粒径分布の割合は表 1 の通りである。写真 1本研究で用いた試料3. 試験結果と考察3.1実施した試験項目本研究では,対象土を建設用盛土資材として利活用するための検討を行うために,それぞれの土に対して表 2 に示図 3試料:「5mm ふるい下」「3mm ふるい下」の作成方法表 1「原土」に含まれる無機物・有機物量と粒径分布の割合す 10 種類の試験を行った。本研究では,対象土を建設用盛土資材として利活用するための検討を行うために,それぞれの土に対して表 2 に示す 10 種類の試験を行った。(重量比)無機物86.9%5~30mm 3~5mm 0~3mm69.6%2.0%15.3%有機物( 強熱減量分,650℃)13.1%5~30mm 3~5mm 0~3mm10.4%1.2%1.5%表2本研究で実施した試験項目地盤にかかわる問題求めるもの試験安定地下水環境有機物含有量強熱減量試験●----締固め特性締固め試験●----ク災害廃棄物処理業務廃棄物混入土砂ストックヤードに圧縮性圧密試験-●●--搬入された津波堆積土砂を水洗いして粒径 2 mm 以下に分透水性透水試験---●●粒度試験●----土粒子密度試験●---●液性・塑性限界試験●----一軸圧縮試験(セメント固化処理土)-●●--三軸圧縮試験-●●--溶出試験----●その他に,対照試料として,宮城県石巻市の石巻ブロッ別した「洗い砂」(図 4 参照),宮城県亘理町の海岸付近に物性堆積した津波堆積土砂「亘理砂」を用いた。強度特性含有重金属材料支持力分類: 地盤工学会 土質試験基本と手引き より3.2粒度分布それぞれの試料の室内ふるい分け試験による粒度分布を図 5 に示す。原土は粒径 5 mm 以上の粒子が約 60%含まれている。この値は前述の表 1 の値とは異なるが,表 1 はふるい選別機により分別された土砂の質量比であり,ふるい選別機を通過している時間が 5~10 秒ほどであるため,図4廃棄物混入土砂分別フローにおける「洗い砂」の採取箇所室内ふるい分け試験に比べて,ふるい通過質量が小さくなっている。5 mm ふるい下と 3 mm ふるい下は粒径加積曲原土,5 mm ふるい下,3 mm ふるい下の試料は震災廃棄線上ではそれほど大きな違いには見えないが,実際の試料物混入土砂を起源としており,多量の木屑等の有機物を含の写真 1 を見ると,3 mm ふるい下の方では大きな木片が有しているのに対し,洗い砂と亘理砂は津波堆積土砂を起ほとんど取り除かれていることがわかる。粒径加積曲線に源としており,大きな木片等は含まれていない。これらの大きな違いとなって現れないのは,木片の質量が土粒子の調整後の試料を写真 1 に示す。それより小さいため,除去された木片の体積のわりには,94 通過質量百分率に反映されないからである。最も細粒なのくなっていることから,5 mm ふるい下から 3 mm ふるいが洗い砂で,質量比で 80%が 0.425 mm 以下の粒子であっ下の試料を作成する際に用いた特殊ふるい選別機(風力選た。別)により,有機物分が選択的に除去されていることがわかる。洗い砂は水浸による有機物の除去が行われていることから,強熱減量は最も小さかった。3)液性限界・塑性限界原土,5 mm ふるい下,3 mm ふるい下の液性限界はいずれも 30%代前半で,ふるい分けによる大きな違いは見られなかった。また,いずれの試料においても塑性限界は計測できず,非塑性(NP)であった。4)締固め試験(最大乾燥密度,最適含水比)原土の最大粒径は 30 mm であったため,φ15 cm の締固めモールドを用いて B-a 法(2.5kg ランマー,3 層 55 回締図 5試料の通過質量百分率固め,乾燥法非繰返し法)で試験を行った。その他の試料は最大粒径が 19 mm 以下であったので,φ10 cm の締固め3.3試料の物性・特性値モールドを用いて A-a 法(2.5kg ランマー,3 層 25 回締固それぞれの試料に対して行った試験より得られた物性,め,乾燥法非繰返し法)で試験を行った。最大乾燥密度とおよび,特性値を表 3 に示す。最適含水比の値を表 3 に,試験結果の詳細を図 6 に示す。1)図 6 の結果を見ると,最大乾燥密度の点における空気間隙土粒子密度g/cm3原土の土粒子密度は 2.601であった。大きな木片率(va)は,原土で 9%,5 mm ふるい下で 5.5%,3 mm ふが目立つことから土粒子密度は小さくなると思われたが,るい下で 4.5%と,ふるい分け分別を進めるごとに締固めそれほど小さな値にはならなかった。一方で,5 mm ふる特性が向上している。原土は,混入している大型の木片やい下,3 mm ふるい下の土粒子密度は土としてはかなり小ガレキ類のために締固めによる乾燥密度のばらつきが大さい部類に入る。洗い砂の土粒子密度は 2.696 g/cm3 と大きい。洗い砂は写真 1 で見ると,一見扱いやすい一般的なきな値となったが,他機関で計測された土粒子密度も同程砂のように見えるが,最大乾燥密度の点における空気間隙度の値となっていることから,誤計測では無いと思われる。率(va)は 14%と大きいうえに,最適含水比を超えてから洗い選別中に砂鉄などの比重の大きな粒子が集まり,結果の乾燥密度の低下が著しく,締固め管理の難しい材料であとして土粒子密度が大きくなっていると思われる。る。また,最大乾燥密度の点における飽和度が 65%程度で2)あることも管理を難しくさせており,ストックヤードで仮強熱減量強熱減量(650℃)による質量減少率は,原土で 13.11%,置きされていた洗い砂を使用する際には,材料の乾燥が必5 mm ふるい下で 13.37%,3 mm ふるい下で 8.90%,洗い要となるか,風雨にさらされない場所での保管が必要とな砂で 7.42%であった。原土と 5 mm ふるい下は強熱減量がる。亘理砂は粒径が揃っている材料の特徴そのままに,締ほぼ同じである一方で,3 mm ふるい下の強熱減量は小さ固めにくい性質である。表3試料の物性・特性値原土5mmふるい下3mmふるい下洗い砂亘理砂( g/cm )2.6012.5272.5342.6962.596強熱減量(%)13.1113.378.907.42未計測液性限界(%)33.731.732.0NPNP塑性限界(%)NPNPNPNPNP項 目単位土粒子密度33締固め最大乾燥密度( g/cm )1.461.471.561.591.67最適含水比(%)23242117151.2×10-5未計測未計測8.0×10-6未計測未計測上値下値透水係数三軸圧縮試験( cm/s )( cm/s )39.7×10-68.4×10-63.9×10-32.9×10-32.0×10-61.5×10-6乾燥密度( g/cm )1.4491.3971.4701.479未計測未計測含水比(%)24.216.723.619.7未計測未計測c'( kPa )505040未計測未計測φ'(度)43~5132.838.2未計測未計測※三軸圧縮試験はいずれも最大乾燥密度の時の値95 5)定しないためである。5 mm ふるい下のφ´は 32.8°,3 mm透水係数ふるい下のφ´は 38.2°となった。原土,5 mm ふるい下,3 mm ふるい下のいずれの試料においても,最適含水比付近の含水比で十分に締め固められた試料であれば,透水係数は 10-6 cm/s のオーダーであっ3.4圧縮特性3 からそれぞれの試料において圧密試験を行い,試料の圧縮性1.397 g/cm3 になると,透水係数が 10-6 cm/s オーダーからについて検討を行った。原土は最大粒径が 30 mm であるた。しかし,原土のケースでは乾燥密度が 1.449 g/cm10-3 cm/s オーダーに急増しており,注意が必要である。ため,通常の圧密試験容器(φ6 cm×高さ 2 cm)では試験6)が行えない。そのため,原土の試験用に新しくφ10 cm×三軸圧縮試験原土ではφ10cm×高さ 20 cm の再構成供試体,5 mm ふ高さ 8 cm の圧密試験容器を作成して試験を行った。原土るい下,3 mm ふるい下ではφ5 cm×高さ 10 cm の再構成以外の試料に関しては,通常の圧密試験容器(φ6 cm×高供試体を用いてCU単調圧縮試験を行い, c´,φ´を求めた。さ 2 cm)で試験を行った。試験は,最大圧密応力を 157 kPaいずれの試料も最適含水比で締固め,それぞれの試料の最としたものと,基準通り 1256 kPa としたものの二種類を大乾燥密度となるように供試体を作成した。原土のφ´は行った。最大圧密応力を 157 kPa としたのは,これらの試礫分が含まれることから 43~51°と大きくなった。φ´の料を建設用盛土資材として用いる時の最大盛土厚さを 10値に範囲があるのは,原土が不均質であるために強度が安m と仮定したことによる。なお,原土は圧密容器の直径が図6試料の締固め曲線原土:φ15 cm モールド B-a 法(2.5kg ランマー,3 層 55 回締固め,乾燥法非繰返し法),その他の試料:φ10 cm モールド A-a 法(2.5kg ランマー,3 層 25 回締固め,乾燥法非繰返し法)96 表4各試料の圧密降伏応力と圧縮指数5mmふるい下項目単位原土pc,dry(kPa)pc,w et3mmふるい下洗い砂亘理砂(1)(2)(1)(2)(1)(2)(1)(2)28160170140150120160220160(kPa)62150130170130280280260260Cc,dry(-)0.2800.4100.4200.4500.4400.0870.1000.0580.033Cc,w et(-)0.3600.3700.3600.3700.3500.1190.1250.0520.028大きくなっていることから,所有している圧密試験装置でを示していると考えられる。これは洗浄処理を施したためは 1256 kPa の圧力を載荷できないため,最大圧密応力 157に含有有機物の種類が異なる洗い砂の圧縮指数 Cc,wet がkPa の試験だけを行っている。異なることからも示唆される。今回用いた試料には,それぞれ有機物が混入しているこ次に,157 kPa までの圧密降伏応力の範囲における間隙とから,乾燥状態と湿潤状態における圧縮性の違いを観察比の変化を図 7 に示す。原土の圧密降伏応力だけが小さいするために,試験ではまず,乾燥状態の試料(気乾試料)ため,157 kPa までの圧密降伏応力の範囲でも大きく沈下を圧密,除荷した。その後,水を加えて飽和させ,通常のしており,間隙比の変化は約 0.45 である。5 mm ふるい下,圧密,除荷,再圧密を行った(図 7 参照)。3 mm ふるい下は圧密降伏応力が 150 kPa 付近にあるため,表 4 に乾燥試料の圧密降伏応力(pc,dry),湿潤試料の圧157 kPa の圧密応力の範囲ではそれほど大きな沈下は生じず,間隙比の変化は約 0.18 であった。密降伏応力(pc,wet),乾燥試料の圧縮指数(Cc,dry),湿潤1256 kPa までの圧密降伏応力の範囲における間隙比の試料の圧縮指数(Cc,wet)を示す。なお,これらの値は一般的な粘性土の圧密降伏応力などとは意味合いが異なり,変化を図 8 に示す。同図中には 157 kPa までの試験結果もどの程度の圧密応力から沈下が急増していくのかの指標併記してある。各試料とも,圧密降伏応力を超えると沈下としての意味であることに留意していただきたい。が大きくなっている。湿潤圧密開始から再圧密後までの間原土の圧密降伏応力はひときわ小さく,pc,dry で 28 kPa,隙比の変化量は,5 mm ふるい下で約 0.44,3 mm ふるい下pc,wet で 62 kPa であった。これは,原土内に含まれる大型で約 0.40,洗い砂で約 0.10 である。157 kPa までの圧密応の木質の有機物に局所的に応力が加わり,小さな圧密応力力の場合には,除荷前と再圧密後の間隙比が異なっているでも変形が進行しているからである。一方で,5 mm ふるが,1256 kPa の圧密応力の場合には除荷前と再圧密後の間い下と 3 mm ふるい下では,pc,dry,pc,wet ともに 150 kPa隙比程度で原土に比べると大きくなっている。これは,試料にが等しくなっていることから,試料中の有機物等の圧縮が含まれる有機物の粒径がふるいによって均質化されるこ完了しているものと推察される。各試料の強熱減量の値ととによって,有機物に局所的な応力が加わらず,有機物お間隙比の変化量の間には関係がみえるものの,5 mm ふるよび土粒子に加わる圧密応力が平準化していることによい下,3 mm ふるい下と洗い砂は全く違う傾向を示している。湿潤試料の圧縮指数 Cc,wet に関しては,原土,5 mmることから,強熱減量と間隙比の変化量を単純に関係付けふるい下,3 mm ふるい下ともに大きな違いは無いことかることはできない。ら,圧縮指数 Cc,wet は試料に含まれる有機物の圧縮特性図7圧密応力 157 kPa までの範囲における各試料の間隙比の変化97 図8圧密応力 1256 kPa までの範囲における各試料の間隙比の変化98 表5土試料検体数溶媒pHホウ素カドミウム砒素セレン鉛六価クロムシアン基準値 ( μg/ℓ )基準値 ( μg/ℓ )基準値 ( μg/ℓ )基準値 ( μg/ℓ )基準値 ( μg/ℓ )基準値 ( μg/ℓ )基準値 ( mg/ℓ )1,0001010101050不検出最大平均3mmふるい下洗い砂54244.5255.8~6.3223.56511166.6854141.8655.8~6.3223.561153.5最大平均最大平均最大平均最大最大平均平均最大平均最小最小最小最小最小最小最小252<0.0312.321.38.15<0.24<0.05<0.03233236.8211.7194153.9147.4137236.8211.7194166.68基準値超過の有無環境省告示 46 号試験における重金属溶出量153.9<0.03<0.03<0.03<0.03<0.03<0.03<0.03<0.03<0.03<0.03<0.03<0.03<0.03<0.03<0.03<0.03無12.0811.9312.5111.9110.4920.8219.3616.412.281.971.822.352.131.885.554.21無3.28有1.130.97<0.96<0.96<0.961.341.171.01<0.96<0.96<0.96<0.96<0.96<0.96<0.96<0.96<0.96無7.265.957.387.046.793.342.131.724.82.390.621.190.720.38<0.03<0.03<0.03無<0.24<0.24<0.24<0.24<0.24<0.24<0.24<0.24<0.24<0.24<0.24<0.24<0.24<0.24<0.24<0.24<0.24<0.05<0.05<0.05<0.05<0.05<0.05<0.05<0.05<0.05<0.05<0.05<0.05<0.05<0.05<0.05<0.05無<0.05無重金属溶出試験試料から溶出する重金属量を把握するために,環境省告示第 46 号による溶出試験を行った。原土,5 mm ふるい下,3 mm ふるい下はもともと同じ試料を起源としているため,最も細粒の 3 mm ふるい下に関して溶出試験を行った。また,対照試料として,水洗いが施された洗い砂に関しても試験を行った。検体数は各ケース 5 体とした。溶出試験の結果を表 5 に示す。3 mm ふるい下の試料で,砒素の溶出量が溶媒の pH によらず基準値 1)を超過したが,その量は僅かであり,他の土材料との混合で対処できる。その他の重金属の溶出量は基準値を大きく下回っていた。洗い砂は,選別時に水洗いされているため,3 mm ふるい下の試料と比べて全体的に溶出量が少なかった。4. セメント固化処理土の強度特性試料をセメント固化したときの強度特性を調べるために,表 6 の条件でセメント固化材を添加して供試体を作成し,一軸圧縮強度を求めた。セメント固化材には,ユースタビラー10(一般用固化処理材),ユースタビラー50(六価クロム対策用固化処理剤),高炉セメント B 種を用いた。これらの固化材を各土試料に添加混合した後,モールドにタッピング法で充填した。原土にはφ10 cm×高さ 20cm のモールド,5 mm ふるい下,3 mm ふるい下,洗い砂にはφ5 cm×高さ 10 cm のモールドを使用した。供試体作成時の湿潤密度の平均値は表 6 の通りである。表6項 目図9各試料の湿潤密度と含水比単位原土5mmふるい下3mmふるい下洗い砂セメント固化処理土の一軸圧縮強度図 9 にセメント固化材ごとの 28 日強度を示す。全体的湿潤密度( g/cm )1.3011.4361.4371.722に,洗い砂,5 mm ふるい下,3 mm ふるい下の順に一軸圧含水比(%)22.321.420.6021.2縮強度が大きくなった。原土は固化材の添加量を多くして399 図 10 締固め曲線~CBR 値~コーン指数の関係(φ15cm の CBR 試験用モールド,4.5kg ランマー)図 11 CBR 値~コーン指数の関係6. まとめも強度の上昇量が少ない。この要因として,原土には大きな粒径の土粒子や木片などが多く含まれているために,固化材による接着面積が小さいことが考えられる。全体として,試料の土質力学的特性とふるい分けの手間を勘案した場合,5mm ふるい下が最も効率的であると考5. CBR 試験,コーン貫入試験えられる。原土をふるい分けて 5mm ふるい下とすることで,圧密降伏応力が大幅に増加し,10 m 程度の盛土厚であCBR 試験 2)3)4)およびコーン貫入試験を行い,締固め曲線れば大きな沈下が生じなくなる。また,セメント固化処理との比較を行った。原土,5 mm ふるい下,3 mm ふるい下土の性能も大きく向上する。一方,5 mm ふるい下をさらのそれぞれの試料に対して,φ15cm の CBR 試験用モールに風力選別でふるい分けて 3 mm ふるい下とすることのメド,4.5 kg ランマーを用いて,最適含水比に調整した試料リットはそれほど大きくない。三軸圧縮試験によるφ’がに対して 3 層 92 回,47 回,17 回の締固めを行い,4 日間増加するものの,圧縮特性や締固め特性は 5 mm ふるい下の水浸を行った後,CBR 値を求めた。コーン貫入試験にも,と 3 mm ふるい下ではほとんど変わらず,セメント固化処CBR 値を求めるのと同一の方法で作成した供試体を用い理土の強度はやや小さくなっている。風力選別によるふるた。図 10 に締固め曲線~CBR 値~コーン指数の関係を示い分けには多大な時間とコストがかかるにもかかわらず,す。最大乾燥密度時の CBR 値は,原土,5 mm ふるい下,改善される項目が小さい。洗い砂は圧密降伏応力が大きく,3 mm ふるい下において,それぞれ 14.6,20.1,25.8%であ圧縮沈下量も小さく,圧縮特性は良好である。しかし,締った。5 mm ふるい下,3 mm ふるい下は,ほぼ同一の乾燥固め特性に関してはやや注意が必要で,含水比を最適含水密度~CBR 値関係を持っていることから,粒度分布の違比に近づけてもそれほど乾燥密度が大きくならず,最適含いによる最大乾燥密度の値が異なるだけで,土が持ってい水比を超えると急激に乾燥密度が低下する特性がある。まる支持力特性は同等と考えることができる。原土は乾燥密た,最大乾燥密度の点でも空気間隙率が 14%と大きい。洗度の増加量に対する CBR 値の増加量が小さく,支持力がい砂はセメント固化処理土の強度が良好であるので,盛土増加し難い材料であるといえる。一方,最大乾燥密度時の材料として用いる場合にはセメント固化処理土等としてコーン指数は,原土,5 mm ふるい下,3 mm ふるい下にお用いることが望ましい。6000,6300,9050 kN/m2 であった。コーンいずれの試料も用途に応じた要求品質を満たすように指数では,同じ締固め回数において原土と 5 mm ふるい下適切な取扱い処理を行えば,建設用地盤材料として利用でのコーン指数に大きな違いが表れなかった。この原因は,きるものと考えられる。原土に含まれるガレキ類にコーン先端が当たり,貫入抵抗謝辞:本研究を行うにあたり,環境省環境研究総合推進費・が増加したためと考えられる。図 11 に CBR 値~コーン指補助金および(一社)東北地域づくり協会の技術開発支数の関係を示す。乾燥密度が大きくなると試料の違いによ援を頂きました。関係機関に深く謝意を表します。いて,それぞれる CBR 値とコーン指数との差が生じるが,コーン指数参3000 kN/m2 より小さい範囲では試料の違いによる差は小さい。文献土壌環境基準別表,環境省告示第 46 号,1991.いずれの試料を用いても締固め度 90%を確保すること2) (公社)地盤工学会:地盤材料試験の方法と解説で,CBR 値で 5%以上(路床として使用可 3)4)),コーン指数で考1) 環境庁:土壌の汚染に係る環境基準についてCBR 試験,(公社)地盤工学会,pp.393-404,2009.400 kN/m2 以上(造成宅地盛土として利用可)を確保3)できたが,利用に際しては,土に含まれる有機物の経年劣日本道路協会編:舗装の構造に関する技術基準・同解説,pp.80-89,2001.化による強度低下の影響も加味する必要がある。4) 東・中・西日本高速道路(株)編:設計要領第一集土工編,pp.248,2006.100(2014.3.31 受付) Quality evaluation of the soil generated from disaster waste and tsunami deposition soilwhich include wood waste - for effective use as a construction earth material -Motoki KAZAMA1,Tomohiro MORI1,Kiyotaka ONUMA2,Kouichi OYAMA2,Yoshio AIKAWA21Tohoku University, School of Engineering, Department of Civil and Environmental Engineering2Mitsubishi Material Co., Ltd.AbstractSoils including disaster waste and tsunami deposition soils were generated in large quantities. In order not to induce anew environmental impact, it is important for restoration and revival work to use these soils effectively as an engineeredfill materials for construction. Organic matters, such as wood waste, are contained in these soils in large quantities, andin order to use as an engineered fill material for construction, it is necessary to evaluate the soil mechanical propertiesand to use for suitable purpose at suitable place. Moreover, depending on the case, the soil improvement is needed. Inthis study firstly, soil specimen was prepared through the same separation treatment as that conducting at the actualwaste treatment site. Using the specimen with different wood waste percentage, the availability of soils as a constructionmaterial was evaluated. The result showed that these soils can be available as a construction material with appropriatetreatment method.Key words: disaster waste, wood waste, organic matter, compaction property, effective use101
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  • タイトル
  • 腐朽過程を考慮した木片混じり土の力学特性の把握に関する研究
  • 著者
  • 野々山栄人・中野正樹・新木毅・浜島圭佑・岡崎稔・大塚義一・濱谷洋平・中島典昭
  • 出版
  • 地盤工学会特別シンポジウム -東日本大震災を乗り越えて-
  • ページ
  • 102〜108
  • 発行
  • 2014/05/14
  • 文書ID
  • 67547
  • 内容
  • 地盤工学会特別シンポジウム-東日本大震災を乗り越えて-8腐朽過程を考慮した木片混じり土の力学特性の把握に関する研究野々山栄人 1,中野正樹 1,新木毅 1,浜島圭佑 1,岡崎稔 2,大塚義一 2,濱谷洋平 2,中島典昭 31名古屋大学・社会基盤工学専攻2奥村組・東北支店土木部3日本国土開発概要東北地方太平洋沖地震の際に発生した災害廃棄物の処理物(分別土 B 種)は,木片の腐朽による沈下等が懸念され,その多くは復興資材として有効利活用されずにいる。本研究では,分別土に含まれる木片に着目し,木片混合率および締固め度を変化させて,各種室内試験を実施し,その力学挙動や腐朽過程を考慮した強度特性の把握を行った。今回作製した試料程度の木片であれば,木片混合率に関係なく,締固め度が高い試料ほど高い強度特性を示した。また,腐朽過程を乾燥密度一定と仮定した場合に,腐朽が進行するにつれて強度が低下することを示した。キーワード:災害廃棄物,力学特性,木材腐朽1. は じ め に試験を実施し,腐朽が促進した分別土の強度特性の把握を試みた結果についても報告する。以上,一連の実験から,東北地方太平洋沖地震が発生して 3 年が経過した現在木片の混合率に着目し,木片が腐朽する前段階からその後でも災害廃棄物の処理物(分別土 B 種)は,復興資材としての腐朽進行過程についての木片混じり土の力学特性の把有効利用されることは少なく,その多くが処分されている。握を行う。要因として,分別土 B 種には多種多様な物質が混在してお2. 試験試料についてり,その性状が不明瞭であることや,長期的な視点で木片が混入した土砂の土構造物への適用を考えた場合,現状では木片の混入が力学特性に与える影響を十分に把握でき本研究では 3 種類の試料を用いた。1 つは岩手県山田地ておらず,土に含まれる木片の腐朽による沈下等が懸念さ区で採取された 40mm 以下の災害廃棄物の処理物(分別土れていることが挙げられる。したがって,将来,発生が予B 種)を回転式工法2)を用いて破砕混合し,9.5mm までふる想される南海トラフ巨大地震に向けても,今回発生した災い選別した試料(T9.5)である。残りの 2 つは,T9.5 に同地害廃棄物の品質評価指針および活用方針の確立が急務で区で採取された可燃混合物(木片)を 4.75mm 以下まで破砕あると言え,その確立によって災害廃棄物の処理・有効活し,乾燥重量比で 2.0%および 4.0%追加した試料(W2.0,用を円滑に進めることが可能になる。W4.0)である。なお,実施する室内試験の許容最大粒径をこのような背景の下,これまでに,分別土 B 種に改質材考慮して,各試料は 9.5mm 以下としている。としてセメントやコンクリートがらを添加することで,改良効果が得られるという知見が得られている1)。本研究で3. 分別土の物性ならびに締固め特性の把握は,まず,分別土に含まれる木片の混合率に着目し,分別土 B 種および B 種に木片を加えた試料に対し,木片混合各試料の物性ならびに締固め特性を把握するために,粒率および締固め度の違いという観点から,各種室内試験を度試験(JIS A 1204),土粒子密度試験(JIS A 1202),締固め試実施し,その強度特性の把握を行う。次に,木片の腐朽が験(JIS A 1210)を実施した。なお,締固め試験について強度特性に与える影響を把握するために,木片の腐朽は分は,9.5mm 以下の試料に対して,乾燥・繰り返し法(a 法)別土の木片混合率が減少し,しかも腐朽進行中に分別土のを採用し,締固め方法は A 法を用いた。また,各試料に乾燥密度は変化しないと仮定して各種力学試験を実施し,含まれている可燃系混合物の割合を調べるために,強熱減その力学特性の把握を行う。さらに,木材腐朽菌によって量試験を実施した。JIS 基準では,2mm ふるい通過分の試土中の木片の腐朽を促進させた供試体を用いて一軸圧縮料に対し試験を行うことになっているが,本研究では,木102 片の混入量を調べる目的もあり,9.5mm 以下の試料をすり1.70つぶし,2mm 以下にして試験を実施した。この点以外は,1.603Dry density d (g/cm )JIS A 1226 に準拠して実験を行っている。図 1 に粒径加積曲線を,表 1 に得られた粒径組成,均等係数 Uc および曲率係数 Uc’,工学的分類,土粒子密度s,強熱減量値 Li,図 2 に締固め曲線をそれぞれ示す。図 1 に示すように,試料による粒径分布の違いはほぼなかった。これは木片は密度が小さく,同体積で比べた場合にその質量が小さいためである。表 1 に示した,均等係数 Uc および曲率係数 Uc’から,T9.51.501.40W2.01.301.20W4.01.101.000今回の試料はいずれも粒径幅が広く,粒度がよい土であり,粗粒分が 50%以上であるため,細粒分まじり砂(SF)に分類102030Water content w (%)図 2 締固め試験結果される。土粒子密度s は木片混合率が高い試料ほど小さい値となった。これは,木片の密度は土粒子の密度に比べ小4. 分別土のせん断変形・強度特性の把握さいため,木片の割合が多い試料ほど土粒子密度s が小さくなったと考えられる。また,どの試料も木片を含んでい4.1るため,得られた土粒子密度s は通常の土3)に比べて低い試験条件と試験方法について各試料の変形・強度特性の把握のために,一軸圧縮試験,値と言える。強熱減量値 Li は木片混合率が高い試料ほど大三軸圧縮試験を実施した。一軸圧縮試験では T9.5,W2.0,きくなった。ただし,震災時に災害廃棄物が発生した地区で採取された分別土の強熱減量試験結果4)と比較しても,W4.0 について,三軸圧縮試験では T9.5,W4.0 について,概ねその範囲内の値であった。それぞれ締固め度を変化させて試験を実施した。両試験と図 2 に示すように,木片混合率に着目すると,木片混合も,最適含水比 wopt に試料を調整し,締固め度 Dc100%お率が高い試料ほど,最大乾燥密度dmax は小さく,最適含水よび Dc90%の 2 ケースとした。供試体は,直径 5cm×高比 wopt は大きくなった。また,本研究では実施していないさ 10cm の鋳物製のモールドに,3 層で突き固めて作製した。表 2,表 3 に両試験の試験条件をまとめた。三軸圧縮5)が,既往の研究結果 から,W4.0 よりも木片を多く追加す試験の拘束圧は,98.1kPa および 196.2kPa の 2 ケースとしると締固め難くなることが予想できる。た。それぞれ,締固め度や試料の違いについて比較を行う。以下では,得られた締固め特性の結果をもとに締固め度なお,三軸圧縮試験については,供試体内部まで圧密前にDc を変化させて各種力学実験を実施した。脱気水で飽和させ,飽和過程では二重負圧法により B 値を95%以上まで上昇させ,各拘束圧でそれぞれ 24 時間等方Percent passing (%)100圧密し,圧密の終了を確認した後,せん断速度 0.014%/minで非排水単調せん断試験を行った。8060表 2 試験条件(一軸圧縮試験)40試験試料T9.5W2.020W4.000.00010.0010.010.1110100T9.5W2.0W4.01000目標締固め度Dc100%Dcv99.01.75100.61.7898.41.95目標締固め度Dc90%Dcv92.31.8891.61.9592.02.08Grain size (mm)図 1 粒径加積曲線表 3 試験条件(三軸圧縮試験)表 1 物理・化学試験結果試験試料T9.5W2.0W4.0礫分(%)7.78.28.6砂分(%)66.267.164.0細粒分(%)26.124.727.4UcUc’工学的分類28.128.323.61.32.31.2SFs3(g/cm )2.652.632.60Li(%)7.18.213.6試験試料T9.5W4.0103目標締固め度Dc100%拘束圧拘束圧98.1(kPa)196.2(kPa)DcDcvv97.61.74100.31.68100.51.90102.01.80目標締固め度Dc90%拘束圧拘束圧98.1(kPa)196.2(kPa)DcDcvv90.21.8890.11.8190.52.0789.82.03 4.2縮試験における拘束圧 98.1kPa の最大軸差応力 qmax は約一軸圧縮試験結果260kPa で,ともに比体積は 1.75 と 1.74 でほぼ等しい。qmax図 3 に得られた結果(応力~ひずみ関係)を示す。どのケースも締固め度が大きいほど,一軸圧縮強さ qu が大きくは,qu の約 3 倍で,拘束圧の影響で違いが現れている。同なった。また,木片混合率の違いで比較すると,締固め度様に,W4.0(Dc90)について,一軸圧縮強さ qu は約 30kPa,によらず,木片混合率が高くなるにつれて一軸圧縮強さ三軸圧縮試験における拘束圧 98.1kPa の最大軸差応力 qmaxqu および初期剛性は低下するものの,延性的なせん断挙動は約 125kPa であり,こちらのケースも比体積は約 2.1 でを呈している。なお,締固め度 90%のケースについては,ほぼ等しいにもかかわらず,qmax は,qu の 4 倍以上となっW2.0 と W4.0 で一軸圧縮強さ qu は同程度であった。ている。「強度」はともに,拘束圧の影響を受けているが,木片を混合した試料 W4.0 の方が,より影響が大きい。図 4 より,比体積 v(=1+e)が 1.95 で同程度だった W4.0と W2.0 を比較する(表 2 中の赤字および青字)。比体積 vまた,同じ拘束圧 98.1kPa で,比体積が約 1.9 で同程度が同程度の場合,木片混合率が高いほど,高い強度特性をだったケース(表 3 中の赤字および青字)で比較すると,一示した。すなわち,木片混合率の異なる供試体の一軸圧縮軸圧縮試験と同様に,木片混合率の高い供試体の最大軸差強さ qu は,比体積 v ではなく,締固め度 Dc の影響を受け応力 qmax が大きくなった。る。図 2 にに示すように,W4.0 と W2.0 では,最大乾燥密W2.0W4.036Axial strain εa (%)90000(a) Dc100%36Axial strain εa (%)9Compressive stress σ (kPa)20000200400M ean effective stress p(kPa)2540020000図 4T9.5(Dc100%)W4.0(Dc100%)T9.5(Dc90%)W4.0(Dc90%)(a) 拘束圧98.1kPa10000510 15 20Axial strain a (%)400(b) Dc90%図 3 一軸圧縮試験結果4.3200Deviator stress q (kPa)00100400Deviator stress q (kPa)100Deviator stress q (kPa)T9.5Compressive stress σ (kPa)Compressive stress σ (kPa)Dc100%,W2.0 は 90%となる。)Deviator stress q (kPa)(度dmax が異なり,したがって同じ比体積 v でも,W4.0 は510 15 20Axial strain a (%)2540020000200400M ean effective stress p(kPa)(b) 拘束圧196.2kPa36Axial strain εa (%)9図 5 三軸圧縮試験結果一軸圧縮試験結果5. 腐朽進行を仮定した分別土のせん断変形・強度特性の把握三軸圧縮試験結果図 5 に各拘束圧における三軸圧縮試験の結果(軸差応力q~せん断ひずみs,軸差応力 q~平均有効応力 p’)を示す。既往の研究 1)や 4 で示したせん断変形・強度特性では,試料や拘束圧によらず,締固め度が高いケースほど,明確木片の腐朽過程を考慮していない。つまり,得られた強度に軸差応力 q が増加する結果となった。有効応力経路に着特性は,土構造物の施工時を想定している。冒頭でも述べ目すると,締固め度 Dc100%のケースでは,試料,拘束圧たが,災害廃棄物を有効利活用するためには,長期的な視によらず,平均有効応力 p’が一度減少した後,平均有効応野で,土中に含まれる木片の腐朽の影響を検討することも力 p’は増加に転じ(変相し),それに伴って軸差応力 q も増極めて重要である。そこで,以下では木片の腐朽がせん断加する過圧密土のような挙動が顕著に見られた。また,試変形・強度特性に与える影響について検討してゆく。料の違いで比較すると,4.2 の一軸圧縮試験と異なり,締固め度が等しい場合,木片混合率の高い W4.0 の方が大き5.1い最大軸差応力 qmax を示した(例外は,拘束圧 196.2kPa,試料は,4 と同様に 3 種類(W4.0,W2.0,T9.5)を用い試験方法・試験条件た。図 6 に示すように,木片混合率の最も高い W4.0 をDc100%のケース)。その原因の一つに,拘束圧の影響が挙げられる。T9.5Dc100%で締固めた状態を初期状態とし,木片の腐朽過程(Dc100)について,一軸圧縮強さ qu は約 90kPa,三軸圧を,分別土の乾燥密度d は 1.36g/cm3 のまま変化せずに,104 木片混合率が減少してゆくと仮定した。すなわち,木片の5.3腐朽に従って,W4.0 が W2.0,T9.5 と変化するとした。な図 8 に各ケースの三軸圧縮試験の結果(軸差応力 q~せんお W2.0,T9.5 の最大乾燥密度の違いから,それぞれの締断ひずみs,軸差応力 q~平均有効応力 p’)を示す。軸差応固め度は 92.2%,88.8%となる。いずれも最適含水比 wopt力 q に着目すると,拘束圧によらず,一軸圧縮試験と同様三軸圧縮試験結果で締固めて供試体を作製した。表 4,5 に一軸圧縮試験おに,最大軸差応力 qmax は W4.0 が最も大きく,順に W2.0,よび三軸圧縮試験の試験条件をそれぞれ示す。なお,一軸T9.5 となった。有効応力経路については,W4.0 では過圧圧縮試験,三軸圧縮試験に用いた供試体の作製方法,試験密が卓越しているが,W2.0,T9.5 へ木片の腐朽が進行す方法については,4 と同様であるため省略する。るに従い,過圧密が解消し,最大軸差応力 qmax が低下していくのが確認できる。W4.0W2.0T9.5Dc88.8%www腐朽過程40020000多小木片混合量土粒子密度少大Deviator stress q (kPa)表 4 試験条件(一軸圧縮試験)目標締固め度Dc(%)100.092.288.8W4.0W2.0T9.5dDc(g/cm )98.493.789.51.341.381.37400T9.5W2.0W4.020000200400M ean effective stress p(kPa)25(a)拘束圧98.1kPa図 6 腐朽過程のイメージ試験試料510 15 20Axial strain a (%)3Deviator stress q (kPa)Dc92.2%Dc100%Deviator stress q (kPa)ρdDeviator stress q (kPa)ρdρd40020000510 15 20Axial strain a (%)2540020000200400M ean effective stress p(kPa)(b)拘束圧196.2kPa表 5 試験条件(三軸圧縮試験)試験試料目標締固め度Dc(%)W4.0W2.0T9.5100.092.288.85.2拘束圧98.1(kPa)Dcd(g/cm3)100.51.3693.81.3889.71.37図 8 三軸圧縮試験結果拘束圧196.2(kPa)Dcd(g/cm3)102.01.3994.31.3990.01.386. 木材腐朽菌を用いて腐朽促進を試みた分別土のせん断変形・強度特性6.1試験方法と試験条件5 では,腐朽進行過程を乾燥密度一定のもと,最適含水一軸圧縮試験結果比,木片混合率の減少と仮定して,力学挙動を説明した。図 7 に得られた各試料の試験結果(応力~ひずみ関係)しかし厳密には,乾燥密度や含水比は変化すると考えられを示す。図 7 より一軸圧縮強さ qu は W4.0 が最も大きく,る。本節では,木材腐朽菌を用いて,実際より土中の木片順に W2.0,T9.5 となった。この結果から,木片の腐朽が腐朽を促進させ,腐朽進行に伴う分別土のせん断変形・強進行する過程で一軸圧縮強さ qu が徐々に低下していくこ度特性への影響を確認した。とがわかる。また,木片混合率が高いケースほど,延性的以下,試験方法を説明する。まず木材腐朽菌については,なせん断挙動を呈したことも確認できる。腐朽試験(JIS K 1571)で標準菌として使用されているカCompressive stress σ (kPa)ワラタケを用いた。試料は,木片混合率が高い W4.0 を用いた。供試体は,4 の試験と同様に,最適含水比 wopt,T9.5100W2.0Dc100%で締固めて作製した。次に,木材腐朽菌を接種すW4.0るための準備として,締固めて作製した供試体およびモールドをガラス製の培養瓶にいれ,アルミ箔で密閉し,120度,20 分間オートクレーブによる高温・高圧での滅菌処00理を行った。これは,接種するカワラタケ以外の菌の影響36Axial strain εa (%)9を取り除くためである。滅菌処理後に,無菌室内にて,供試体の上端中央にカワラタケを接種し,26 度一定に保っ図 7 一軸圧縮試験結果105 た培養室で所定期間放置した。その後,放置した供試体を100%の供試体においては,菌糸が浸入困難である可能性用いて,一軸圧縮試験を実施し,腐朽過程を考慮した強度も視野に入れるべきである。今後長期間にわたって継続的特性の把握を行った。試験条件を表 6 に示す。に,力学特性の変化を調査していく必要がある。現在継続して実験を行っているため,途中経過については発表で示す予定である。表 6 滅菌処理の有無による含水比の変化滅菌処理 無試験試料目標締固め度Dc(%)W4.0100.06.2腐朽菌 無(0 日)Dc98.4w28.6Dc97.8滅菌処理 有腐朽菌 有(2 ヶ月)w28.6Dc98.5以上より,土中の木片の腐朽を促進させた実験が,木材が混入した土構造物の腐朽過程に対応するのであれば,長期にわたり実施することで,含水比や締固め度によってはw28.8木片の腐朽が進行しない状態を調べることができる。さらに,木片腐朽を促進させる方法として,予め木片のみを腐朽させて,その腐朽木片と土を混合することにより,分別高温高圧での滅菌処理による影響について土の力学挙動を把握することも検討してゆく。木材腐朽菌を接種するために行った滅菌処理が土供試体のせん断挙動に与える影響を確認するために,締固めてCompressive stress σ (kPa)作製した供試体に滅菌処理を実施したケースとそうでないケースについてそれぞれ一軸圧縮試験を実施した。表 7 に滅菌処理前後の含水比を示し,図 9 に得られた一軸圧縮試験結果を示す。表 7 に示すように,滅菌処理した供試体の試験後の含水比は,約 2%減少していた。これは,滅菌処理する際に,供試体の水分が大きく変化しないよう滅菌処理なし(0日)滅菌処理あり(0日)滅菌処理あり(2ヶ月)100003にアルミ箔を用いて密閉するが,供試体中の水分の沸騰により,含水比が変化したと考えられる。69Axial strain εa (%)12図 9 一軸圧縮試験結果図 9 に示すように,滅菌処理した供試体の一軸圧縮強さqu は,滅菌処理しなかった供試体と比較して,わずかに増加し,より延性的なせん断挙動を呈していることがわかる。菌体+寒天培地表 7 滅菌処理前後の含水比の変化滅菌処理 有6.3試験試料目標締固め度Dc(%)W4.0100.0腐朽菌無(0 日)滅菌処理 前w30.9滅菌処理 後w28.6菌糸木材腐朽菌接種から 2 ヶ月経過後の試料との比較写真 1 腐朽菌の繁殖の様子表 7 には 2 ヶ月経過後の含水比の変化,図 9 に木材腐朽菌の接種から 2 ヶ月経過した試料の一軸圧縮試験結果も7. まとめ示した。写真 1 には木材腐朽菌接種から 2 か月後の供試体上端の様子を示す。6.2 で述べたように滅菌処理では含水比は減少するが,本研究は,木片混合率の異なる T9.5,W4.0,W2.0 の 3表 6 に示すように,2 ヶ月間の放置期間では含水比に変化つの試料に対し,締固め度が及ぼす強度特性への影響を調は見られないことから,放置することでの含水比への影響べた。また,木片の腐朽過程を考慮した分別土の強度特性は現時点で少ないことがわかった。また,写真 1 に示すよを把握するために,乾燥密度一定という条件下での試験なうに,腐朽菌の成長が僅かではあるが確認できる。しかしらびに木材腐朽菌を用いた試験を実施した。以下に得られながら,菌糸が供試体内部に入り込んでいる様子は見られた知見をまとめる。ない。図 9 に示すように,腐朽菌の有無や 2 ヶ月経過による強度の変化がみられなかったことから,放置期間 2 ヶ月 分別土の物性および締固め特性から,木片混合率が高ではせん断特性への影響はないと言える。また,試験前後いほど,土粒子密度s および最小乾燥密度dmax の値はで計測した含水比と土粒子の質量も変化していなかった小さく,最適含水比 wopt および強熱減量値 Li は大きくことから,腐朽を促進させても放置期間 2 ヶ月では,強度なった。また,粒度試験の結果から,木片混合率は異特性に影響を及ぼすほど,供試体に接種した木材腐朽菌がなるものの,試料による差はほとんどなく,どのケー十分成長していないことが考えられる。また締固め度スも細粒分まじり砂(SF)に分類された。106  腐朽進行過程を考慮せずに,せん断特性・強度特性にる裏付けをしてゆく必要がある。また,今回の試験ケース着目した試験結果から,木片の混合率が高くなるにつでは締固め度を 100%と 90%の二通り実施した。実際の施れて,初期剛性は低下するものの,延性的なせん断挙工では室内よりも密に締固めることが可能であるため,動を呈した。木片混合率の等しい試料の比較では,締100%以上の締固め度での挙動を確認してゆく。さらに,固め度が大きいほど,高い強度特性を示し,同一の締木材腐朽菌を用いた実験を継続的に実施し,その腐朽が強固め度の比較では,一軸圧縮試験では木片混合率が小度に与える影響を把握してゆきたい。さい T9.5 の一軸圧縮強さ qu が最も大きく,一方,三軸謝辞圧縮試験では木片混合率が大きい W4.0 の最大軸差応力 qmax が最も大きくなり,その原因の一つに,拘束圧本研究は,日本学術振興会科学研究費補助金(挑戦的萌の影響が挙げられる。これの結果より,今回試験に使芽研究・25630199,代表:中野正樹)の助成および環境省用した木片混合率程度であれば,十分締固めることで,の環境研究総合推進費(3K133003,代表:勝見武)の支援を沈下がある程度許容できる土構造物に対して,復興資受けたものです。また,本研究を行うに当たって,京都大材として使用できる可能性を有していると考えられる。学生存圏研究所吉村剛教授には木材腐朽菌に関する有益 腐朽進行過程を仮定した分別土のせん断変形・強度特なご助言を頂き,居住圏劣化生物飼育棟の実験施設を提供性から,腐朽進行とともに強度が低下する。また,木して頂いた。岐阜大学加藤雅彦助教には,強熱減量試験を片混合率が高くなるにつれて,延性的なせん断挙動を実施して頂いた。ここに記して,ここに感謝の意を表しま示したことから,木を混入することで粘り強い材料にす。なると逆に,腐朽しても十分な強度を保つように,W4.0 での締固めを決めることも可能となる。1) 木材腐朽菌を用いて腐朽促進を試みた分別土のせん断変形・強度特性から,滅菌処理によって含水比は減少するが,2 ヶ月間の放置期間では木材腐朽菌の影響に2)よる含水比や強度に変化は見られなかった。2 ヶ月という期間では,供試体に接種した木材腐朽菌が十分成長していないことが考えられる。今後長期間にわたっ3)て継続的に,力学特性の変化を調査していく必要があ4)る。今後の研究として,締固められる限界の最大木片混合率を調べ,限界を超える分別土への対応策,たとえば木片が5)混入していない土との混合によって木片混合率を低下させる方法や改質材を添加する方法などを検討し,実験によ107参 考 文 献野々山栄人, 中野正樹, 酒井崇之, 岡野雄馬, 新木毅, 岡崎稔, 大塚義一, 濱谷洋平, 中島典昭: 災害廃棄物の地盤材料としての有効利活用法に向けた検討, 第10回環境地盤工学シンポジウム論文集, pp.385-390, 2013.二宮康治, 赤神元英, 尾山利彦, 宮本光則: 回転式破砕混合工法を用いた事前混合処理工法の実施例, 土木学会第1回土木建設技術シンポジウム, pp.1-8,2002.公益社団法人地盤工学会, 土質試験基本と手引き, 第二回改訂版, 2011.地盤工学会 東日本大震災対応調査研究委員会 地盤環境研究委員会: 災害廃棄物処理過程で発生する分別物の物理化学特性評価 中間結果報告書, 2013.森田康平, 勝見武, 高井敦史, 乾徹: 地震・津波に伴い発生した廃棄物混じり土砂の締固め特性, 第47回地盤工学研究発表会,pp.1953-1954, 2012. Mechanical properties of disaster waste considering process of the wood decayHideto NONOYAMA1,Masaki NAKANO1,Takeru ARAKI1,Keisuke HAMAJIMA1,Minoru OKAZAKI2,Yoshikzu OTSUKA2,Youhei HAMAYA2,Noriaki NAKAJIMA31Nagoya University, Department of Civil Engineering2Okumura Corporation, Tohoku Branch3JDC CorporationAbstractThe Great East Japan Earthquake generated a huge amount of disaster waste. There are growing concerns about thesettlement due to the wood decay if the disaster soil with wood chips is used as the soil structure. In this study, aseries of laboratory tests are carried out using the disaster waste soil with varying degree of compaction and mixingrate of wood chips. The unconfined compression strength and maximum deviator stress were increased in intensitywith degree of compaction regardless of mixing rate of wood. The strength was decreased with progression of wooddecay in view of the progress of wood decay.Key words: Disaster waste soil, Mechanical property, Wood decay108
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  • タイトル
  • 震災復興資材(分別土C種)の植栽土壌としての利用
  • 著者
  • 西村伸一・後藤丹十郎・山本千絵・村上賢治・珠玖隆行
  • 出版
  • 地盤工学会特別シンポジウム -東日本大震災を乗り越えて-
  • ページ
  • 109〜113
  • 発行
  • 2014/05/14
  • 文書ID
  • 67548
  • 内容
  • 地盤工学会特別シンポジウム-東日本大震災を乗り越えて-9震災復興資材(分別土 C 種)の植栽土壌としての利用西村伸一 1,後藤丹十郎 1,山本千絵 1,村上賢治 2,珠玖隆行 11岡山大学大学院環境生命科学研究科2石川県立大学生物資源環境学部概要本研究では,津波堆積土の中で,分別土 C 種を対象として,これの植栽土壌としての利用を考察している。津波堆積物は,塩分および有機物(主に木片)を多量に含んでいるため,骨材,あるいは地盤材料としての利用が困難である。そこで,有効な再利用法として,植栽土壌としての利用法が考えられる。ここでは,栽培植物として,コマツナを採用した。コマツナは,生長が速い葉物作物であり,この様な実験の基準植物としては適切である。他の土と比較した場合,分別土は,植栽に適切ではないが,十分にコマツナが発芽・生育できる培養土にはなり得ることが明らかとなった。キーワード:津波堆積物,分別土 C 種,植栽土壌,コマツナ1.はじめに第一に,分別土の植栽土壌資材としての適性を確かめるために,溶出試験を実施し,化学分析を行った。第二に,東日本大震災時の津波堆積土の利用に関する研究を行実際の栽培実験を行って,発芽および生育を確かめた。実っている。とくに,津波堆積土の中で,分別土 C 種を対象験は,3 通りの環境下(実験 1, 実験 2, 実験 3)で行ってとして,これの植栽土壌としての利用を考察している。堆いる。実験 1 は春蒔き,実験 2 は秋蒔き,実験 3 は,秋期積土を一度に多量に処理するためには,一般的には地盤材に温度が制御された環境下で実施された。料として用いるのが有効である。あるいは,セメントの骨2. 分別土 C 種の物理化学特性材として用いられる場合もある。しかし,ここで対象としている分別土は,塩分および有機物(種に木片)を多量に2.1 資材の概要含んでいるため,骨材,あるいは地盤材料としての利用が資材は木片を中心に多くの夾雑物を含んでおり,組成は,困難である。そこで,有効な再利用法として,植栽土壌としての利用が考えられる。本研究では,栽培植物として,表-1に示すとおりである。夾雑物を取り除くと大半は,コマツナ 照彩小松菜 を供試した。コマツナは,生長が速い葉物作物であり,この様な実験の基準植物としては適切である。著者らは,従来から,浚渫土を用いたコマツナの栽培実験を行ってきており,土壌の物理化学特性について,様々な問題点を考察してきた 1)。今回の対象資材は,塩分の含有と木片の混入が重大な影響要因となると考えられる。木片の混入は,地盤材料としては不利であるが,植栽土壌としては,土壌に空隙を作り,利点となることも期待される。写真-1 分別土 C 種表-1 分別土 C 種の粒度夾雑物含有率(試料全体を 100%とする)夾雑物(%)試料可燃物C種不燃物2mm 残留土砂(%)2mm 通過試料(%)強熱減量Li(%)JISJIS規格外20mm5.61.4615.5777.379.63514.4510mm5.640.68.7984.979.53520.1955mm1.510.176.0492.289.7214.765写真-2 分別土 C 種から除去した不燃物109 2mm 以下の土砂である。また,木片を多く含む関係で,2013 年 4 月 30 日に播種し 10 日間育苗した 200 穴セル強熱原料が,10%弱である。栽培には,夾雑物中の不燃物苗を 5 月 9 日に 8 L 入れたプランターに定植した。処理区を含んだ状態と取り除いた状態で比較試験を行う。木片をは,分別土 C 種(そのまま利用),分別土 C 種(不燃物除含んだ土砂と不燃物の様子は,それぞれ,写真-1, 2 に示す去),まさ土,岡大培養土の 4 区を設けた。分別土 C 種 10とおりである。L に不燃物 1 L 含まれていた。各処理区あたりプランター1 個とし,1 プランターあたり 8 個体とした。 1/3 濃度の2.2 資材の溶出試験結果大塚 A 処方培養液を 2 日に 1 回,1 プランター当たり 1.7 L第一に,資材から溶け出す物質を明らかにするために,(5 月 25 日からは 1 プランター当たり 2.5 L)与え,温室pH 試験,EC 試験およびイオン分析を行った。pH およびで収穫適期まで生育させた。5 月 20 日(10 日目)に葉長・EC 試験の結果を表-2 に示している。試験体としては,分草丈・葉数を,5 月 28 日(20 日目)に葉長・草丈・葉数・別土 C 種を土懸濁液の状態にしたものと,6 時間振とうしSPAD・生体重・乾物重をそれぞれ調査した。た濾液の二種類について調べた。また,比較対象とするた(2) 実験 22013 年 10 月 9 日に播種し 12 日間育苗した 200 穴セルめに,岡山県児島湖の底泥についても調べた。児島湖は,淡水化によって生まれた湖であり,現在の湖底は,海底で苗を 10 月 21 日に 8 L 入れたプランターに定植した。処理あったため,塩分を多く含んでいると考えられる。区は,分別土 C 種(不燃物除去),まさ土,岡大培養土の濾液の作成方法は,以下の通りである。3 処理区を設けた。各処理区あたりプランター1 個とし,1i)試料(単位 g)と蒸留水(単位 ml)とを重量体積比 10%のプランターあたり 8 個体とした。 1/3 濃度の大塚 A 処方割合で混合し,かつ,その混合液が 1000ml となるように培養液を土が乾いたら与え,温室で収穫適期まで生育させする。た。 11 月 10 日(21 日目)に葉長・草丈・葉数・SPAD・ii)調製した試料液を常温常圧で振とう機(振幅 42mm,生体重・乾物重をそれぞれ調査した。振とう速度 200 回/min)を用いて,6 時間連続して振とう(3) 実験 3する。直接土に播種して初期の生育を調べる試験と,育苗したiii)操作によって得られた試料液を 30 分程度静置後,苗を土に移植し収穫適期まで栽培する試験を行った。基本用土にはまさ土を用い,分別土 C 種を体積比で 30%混合ろ過してろ液を取り,検液とする。試験結果によると,分別土の土懸濁液もしくは濾液は,したときの影響を調べた。栽培は,雨よけのため,ビニーほぼ中性である。湖底土は,パイライトによって弱酸性をルハウス内で行った。示している。EC 値は,いずれの試験体も 250mS/m 以上と1) 発芽・初期生育試験非常に高く,一般に農作物被害を及ぼす濃度を超えている。直径 10.5 cm ポットに,まさ土に分別土 C 種を体積比で30%混合した用土を 0.4L 入れた。対照区はまさ土 100%と表-3 は,濾液のイオン分析結果である。塩分を多く含んでいるため,ナトリウムと塩素イオン濃度が高いことが分した。処理区当たり 6 ポットとし,ポット当たり 5 種子をかる。また,硫酸イオン,炭酸イオンが支配的で,カルシ2013 年 12 月 13 日に播種した。昼(6 時 00 分∼18 時 00ウムも多く含まれる。この傾向は,分別土 C 種でも,児島分)28℃一定,夜(18 時 00 分∼6 時 00 分)15℃一定に制湖底質でも同様である。リン酸や,アンモニア態および硝御した温室内に置き,水道水で適宜かん水し,播種後 1 週酸態窒素など,肥料由来となる物質は全く含まれていない間目に発芽個体数および苗の地上部生体重を測定した。ことが分かる。2) 生育試験3. 植栽実験ルトレイに播種し,標準濃度の園試処方培養液を適宜施与2013 年 11 月 1 日にバーミキュライトを入れた 200 穴セした。播種後 21 日目の 11 月 22 日に,本葉 4 枚に生育し3.1 実験材料および方法た苗を,混合土を 0.6L 入れた 12cm 径ポットに 1 株ずつ移(1) 実験 1植した。用土には,まさ土に分別土 C 種を体積比で 30%表-2 分別土 C 種および児島湖底質の化学特性pHC5.947.85EC[mS/m]2632574.86315表-3 抽出液のおけるイオン濃度 (mg/l)LiCNa0 64.150.065 70.6NH4 KMg0 18 134.10 5.4 122CaPO4 F368307110ClNO2 Br NO3 SO40 0.1 55000 108 9.3500HCO3 TDS0 1001 674.2 2313.540 1011 257.2 1890.48 混合した。対照区はまさ土 100%とした。昼(6 時 00 分∼18 時 00 分)28℃一定,夜(18 時 00 分∼6 時 00 分)15℃一定に制御した温室内に置き,1/3 濃度または標準濃度の園試処方培養液を 1 日 1 回施与して栽培した。処理区あたり 6 ポット栽培した。12 月 26 日に地上部生体重,葉数,最大葉の葉長を測定した。3.2 実験結果(1) 実験 1 中間調査では,葉長および草丈は岡大培養土で有意に大となり,次いでまさ土,分別土 C 種の順だった。分別土 C写真-3 分別土 C 種の利用がコマツナの生育に及ぼす影響種において,そのまま利用したものと不燃物を除去したも(2013.5.20)のとで有意差は見られなかった。葉数は処理区による差は見られなかった(写真-3, 表-4)。 収穫調査では,葉長は岡大培養土で有意に大となった。草丈および生体重は岡大培養土で有意に大となり,次いでまさ土,分別土 C 種の順だった。葉数および SPAD は岡大培養土およびまさ土で有意に大となった(写真-4, 表-5)。(2) 実験 2 葉長および草丈,葉数,生体重は岡大培養土で有意に大となり,次いでまさ土,分別土 C 種の順だった。SPAD は処理区による差は見られなかった(写真-5, 表-6)。(3) 実験 3分別土 C 種を 30%混和した用土では,播種後 1 週間目写真-4 分別土 C 種の利用がコマツナの生育に及ぼす影響での発芽個体割合が少し低下し,播種後 1 週間目での発芽個体の地上部生体重の値が小さくなった(写真-6, 表-7)。(2013.5.28)発芽や初期生育が若干抑制された理由としては,資材に含まれる塩分の影響が考えられた。セルトレイ育苗した苗を移植して生育させた結果,分別土 C 種の混和は,いずれの調査項目でも有意な影響はなかった(写真-7,表-8)。培養液濃度は,地上部生体重と最大表-4 分別土 C 種の利用がコマツナの生育に及ぼす影響(2013.5.20)(cm)CC6.5a6.5a7.4b8.3c(cm)11.0a10.7a12.0b14.1c5.0a5.2ab5.6b5.6ab写真-5 分別土 C 種の利用がコマツナの生育に及ぼす影響表中の異なる文字間では Tukey の HSD 検定で有意差があることを示す(P<0.05)表-5 分別土 C 種の利用がコマツナの生育に及ぼす影響(2013.5.28)処理区葉長(cm)草丈(cm)葉数SPAD生体重 乾物重(g)(g)分別土 C 種(そのまま)11.1a21.8a8.4a39.3a17.1a1.2分別土 C 種(不燃物除去)11.3a22.2ab8.6a38.4a18.3a1.3まさ土11.7a23.7b9.8b42.7b23.7b1.9岡大培養土14.0b14.1c10.2b41.1ab37.6c2.6写真-6 分別土 C 種の混和がコマツナの発芽におよぼす影響表中の異なる文字間では Tukey の HSD 検定で有意差があることを示す(P<0.05)左,無混和; 右,復興資材を体積比30%で混和111 表-6 分別土 C 種の利用がコマツナの生育に及ぼす影響(2013.11.10)葉長(cm)処理区草丈(cm)葉数SPAD生体重(g)乾物重(g)分別土 C 種(不燃物除去)7.8a13.9a5.6a33.4a5.7a0.4まさ土9.5b16.5b6.5b34.2a10.1b0.66岡大培養土11.9c20.9c7.6c31.9a19.7c1.17表中の異なる文字間では Tukey の HSD 検定で有意差があることを示す(P<0.05)表-7 分別土 C 種混和がコマツナの発芽および播種後1週間目の生育に及ぼす影響写真-7 分別土 C 種の混和がコマツナの生育におよぼす影響1.無混和‐1/3濃度園試培養液施与発芽割合(%)地上部生体重(mg)分別土 C 種無混和96.779分別土 C 種 30%混和86.7692.分別土を体積比30%で混和‐1/3濃度園試培養液施与処理区3.無混和‐標準濃度園試培養液施与4.分別土を体積比30%で混和‐標準濃度園試培養液施与*有意性葉の葉長には有意な影響はなかったが,葉数は培養液を*は分散分析により 5%水準で有意性あり (n=6)1//3 倍濃度にすると少なくなった。いずれの調査項目でも交互作用には有意性がなかったが,1/3 倍濃度の培養液では地上部生体重や最大葉の葉長(2) 分別土 C 種を利用して,コマツナの栽培実験を実施しの値がやや大きくなった。このことは,分別土 C 種に含また。実験は,3 通りの環境下(実験 1, 実験 2, 実験 3)でれていた無機成分の肥料効果によると考えられるが,化学行った。実験 1 は春蒔き,実験 2 は秋蒔き,実験 3 は,秋分析の結果はリン酸やアンモニア態窒素,硝酸態窒素など蒔きで,温度が制御された環境下で実施された。分別土 C 種を 100%用いた場合では,まさ土や培養土とは検出されなかったので,詳細は不明である。以上の結果より,分別土 C 種の 30%混和は,発芽には比較して,生育に抑制が見られた。これは,塩分が影響し若干の抑制効果があったが生育には抑制効果はみられず,ていると考えられる。また,分別土混合率を 30%に押さえ十分にコマツナが発芽・生育できる培養土にはなり得るこた場合でも。発芽特性に抑制効果が見られた。しかし,生とが示された。育には違いが見られなかった。総合すると,分別土を用いると,生育が抑制されるが,4. まとめ十分にコマツナが発芽・生育できる培養土にはなり得ることが示された。とくに,別の土と混合することによって問(1) 分別土 C 種の溶出試験を実施し,化学分析を行った。題なく,植栽土壌として使用できることが明らかとなった。その結果,溶出液は,一般に,農作に適する限度より塩分濃度が高いことが明らかとなった。また,イオン分析を実参 考 文 献1) 滝澤倫顕・村上 章・西村伸一・村上賢治:まさ土へのため池底泥の混合が植物の発芽・生育に及ぼす影響,農業農村工学会論文集,第263号,pp.501-507, 2009施したが,リン酸や,アンモニア態窒素,硝酸態窒素など,肥料由来と考えられる物質は含まれていないことが分かった。表-8 分別土 C 種混和と液肥濃度がコマツナの生育に及ぼす影響処理区施与培養液濃度地上部生体重(g)葉数最大葉葉長(cm)分別土 C 種無混和1/3 倍濃度園試処方17.08.526.8分別土 C 種 30%混和1/3 倍濃度園試処方18.08.829.2分別土 C 種無混和標準濃度園試処方17.99.525.9分別土 C 種 30%混和標準濃度園試処方18.39.827.0資材の混和NSNSNS培養液濃度NS**NS交互作用NSNSNS有意性**は分散分析により 1%水準で有意性あり; NS は分散分析により 5%水準で有意性無し112 Agricultural use of recycled soil Type C from tsunami depositShin-ichi NISHIMURA1,Tanjuro GOTO1,Chie YAMAMOTO1,Kenji MURAKAMI2and Takayuki SHUKU11Okayama University, Graduate School of Environmental and Life Science2Ishikawa Prefectural University, Faculty of Bioresources and Environmental SciencesAbstractThis paper deals with the agricultural use of recycled soil Type C from the tsunami deposit. Because the soil involvesmuch salt due to the sea water, and plenty of wood chips from tsunami rubbles, and it is not acceptable for the use asconstruction materials, e.g., concrete aggregates, fill material, etc.As an agricultural soil, it might be accepted,since the wood chips wok well to increase voids in the soil space, and enhance plants grow. Here, Japanese MustardSpinach has been selected as an experimental plant, because it grows very fast, and the nature is convenient for theexperiments. In conclusion, it has been clarified that although the recycled soil Type C is not best for plant to grow updue to its salinity, it is acceptable enough as an agricultural soil in comparison with other soils.Key words: tsunami deposit, Type C recycled soil, agricultural soil, Japanese Mustard Spinach113
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  • タイトル
  • 浦安市地盤の地層構成・物理特性・力学特性の把握
  • 著者
  • 中井健太郎・野田利弘・中野正樹・村上孝弥・浅岡顕
  • 出版
  • 地盤工学会特別シンポジウム -東日本大震災を乗り越えて-
  • ページ
  • 114〜122
  • 発行
  • 2014/05/14
  • 文書ID
  • 67549
  • 内容
  • 地盤工学会特別シンポジウム-東日本大震災を乗り越えて-10浦安市地盤の地層構成・物理特性・力学特性の把握中井健太郎 1,野田利弘 2,中野正樹 1,村上孝弥 1,浅岡顕 31名古屋大学大学院・工学研究科2名古屋大学・減災連携研究センター3地震予知総合研究振興会概要本稿ではボーリング調査結果および室内試験結果をもとに浦安市地盤の地層構成,物理特性および力学特性の把握を試みた。その結果, 浦安市地盤の工学的基盤面は陸側から海側に向かって緩やかに傾斜する埋没平坦面を形成していること,その上部には大別して,洪積土 D 層・沖積粘土 Ac 層・沖積砂 As 層・埋立土(浚渫土)B 層が堆積しており,沖積粘土 Ac はその状態から更に 3 層に分割することができることを把握した。また,各層の不攪乱試料および攪乱試料を用いて,単調載荷試験,繰返し載荷試験,変形特性を求めるための繰返し試験を実施し,浦安市地盤のモデル化のための基礎データを蓄積した。キーワード:浦安市,ボーリング調査,室内試験,地層構成,物理特性,力学特性1. は じ め にていた地域で非液状化だった地点が 40%ほどを占め,精度の高い予測とはなっていない。この要因としては,液状化層の細粒分含有率の影響や深部の地層構成の違いが厳密東北地方太平洋沖地震(2011)では,浦安市をはじめとには考慮されていないなどの問題点が指摘されている。して,東京湾沿岸部の埋立地盤において広範囲に液状化現象が発生した。液状化被害の特徴としては,①震源から離れており,震度 5 程度(周辺の K-net などの地表面観測記録で最大 100~200gal 程度)の揺れであるにもかかわらず,甚大な液状化被害が発生したこと,②液状化地域周辺から採取した試料の粒度特性が,従来は液状化しにくいと考えられてきた細粒分を多く含む土であったこと,③液状化地点と非液状化地点が面的に不均一・非一様に分布していたこと,が挙げられる。図 1 は,浦安市内の液状化被害の有無を示したものである1)。浦安市内では広範囲に液状化被害が発生したが,その被害は中心部から南東にかけての比較的新しい埋立地に集中しており,北西の古い地盤では液状化被害がほとんど発生していない。その要因としては,地盤の材料や内部状態の不均一性,つまり,埋立て年代に伴う密度の違いや地盤改良の有無が挙げられている。これら指摘は甚大な液状化被害が発生した理由としては確かに正しいが,細粒分を多く含む土が液状化したメカニズム図1や非一様に発生した液状化被害の十分な説明にまでは至埋立て年代と液状化発生の有無っていない。こうした液状化被害を受け,国土交通省は液表1状化対策技術検討会議2)を立ち上げ,代表的液状化判定法液状化対策技術検討会議による液状化被害の検証液状化箇所非液状化箇所液状化発生個所と FL 値の検討を行ったところ,液状化しFL≦1(液状化)5335ないと判定されていた地点が液状化したような「見逃し」FL>1(非液状化)024である FL 法の精度を検証している。表 1 に示すように,がなかったため,現行 FL 法は直ちに見直す必要性は低いと考えられているが,その一方で,液状化すると判定され114 こうした背景のもと,名古屋大学では,浦安市で観察さここで,先に示した実際の液状化被害に照らし合わせるれた液状化被害の特徴と液状化発生要因の詳細な検討をと(図 1 参照),液状化被害が軽微/見られなかった陸側進めるための基礎データ蓄積のため,浦安市内の南北 2 地の元町エリアは N 値≒0 の軟弱粘土層厚が薄く,液状化被点(図 1 中の A 地点,B 地点)において,ボーリング調査害が観察された中町・新町と,海側に行くにしたがって粘および不攪乱試料の採取を行った。液状化というと表層の土層厚が厚くなるということができる。砂質土ばかりが注目されがちであるが,ここでは,深部に堆積する粘性土の特性把握も重要であると考え,表層の埋立土,沖積砂だけでなく,浦安地盤に厚く堆積する軟弱な沖積粘性土も対象としている。本稿では,これら浦安市 2地点のボーリング調査結果および採取試料の室内試験結果を示し,浦安市地盤の特徴を把握することを目的とする。2. 浦安市地盤の地層構成の把握図 2 は浦安市地盤の工学的基盤上面の標高分布を示す3)。工学的基盤は大局的にみると,陸側から海側に向かって緩やかに傾斜する埋没平坦面を形成し,北端部では T.P.-20mの基盤標高は,南端部では概ね T.P.-60~80m にまで達す図3る。局所的には 0~30m 程度の標高差を持つ埋没谷も見る浦安市の X-Y 測線における地質断面図ことができ,工学的基盤の起伏に伴い上部の表層地盤の層3. ボーリング調査厚(沖積層厚)がエリアによって大きく異なることが,浦安の工学的基盤の特徴といえる。軟弱粘土層厚が薄く液状化していない内陸部(図 1 中のA 地点)および軟弱粘土層厚が厚く噴砂被害の見られた海岸部(図 1 中の B 地点)でボーリング調査および不攪乱試料の採取を行った。図 4 と図 5 にそれぞれ A,B 両地点で実施したボーリング(標準貫入試験および PS 検層)の結果を示す。図2浦安市地盤の工学的基盤上面の標高分布実際に,埋立て年代の新しい X 地点から埋立て年代の古い/自然地盤である Y 地点に向かって既往のボーリングデータ4)をもとに作成した地質断面図を図 3 に示す。浦安の表層地盤は,軟弱な沖積層からなる沖積低地と海水面を大規模に埋め立てた埋立地からなっており,柱状図から浦安地盤は大別して 4 層に分割することができ,深部から洪積土 D 層,沖積粘土 Ac 層,沖積砂 As 層,埋立土(浚渫土)B 層で構成される。地層境界に着目すると,沖積砂層と沖積粘土層の境界はほぼ水平だが,図 2 からも明らかなように,沖積粘土層と洪積層の境界は X 地点(陸側,旧埋立地)から Y 地点(海側,新埋立地)に向かうにしたがって厚くなっている。またこの沖積粘土の N 値は 0~1 程度で分布しており,非常に軟弱な状態にあることが図4わかる。115A 地点のボーリング柱状図 図6表3B 地点のボーリング柱状図沖積粘土層の N 値は,陸側も海側も 0~2 程度と軟弱である。また上述の通り,陸側では沖積粘土(シルト)層厚が 10m と薄いのに対して海側では 50m と非常に厚い。また PS 検層結果から,A 地点では表層から G.L.30m 付近まで,B 地点では表層から G.L.60m 付近までの沖積層でせん断波速度 Vs が 200m/s 以下と小さく,軟弱であることがわA 地点の物理特性深度(m)ρs9.0~9.92.783―16.4~17.32.670100.8wLwpIpemaxemin――1.3500.83239.960.9―――20.0~20.82.689106.653.952.7―24.0~24.82.69789.235.353.9―――26.0~27.02.740NPNPNP―28.5~29.32.75444.421.223.2――31.0~31.92.73158.223.934.3――表4図5粒径加積曲線B 地点の物理特性深度(m)ρswLwpIpemaxemin5.0~5.92.67735.423.212.21.6370.90314.0~14.92.787―――1.3880.84424.0~24.92.69095.240.854.4―――28.0~28.92.695124.149.374.8―32.0~32.82.68674.145.828.3――40.0~40.82.75385.953.932.0――44.0~44.92.73172.940.432.5――48.0~48.92.77073.630.643.0――52.0~52.92.70856.133.422.7――かる。また,それより深部の洪積層では次第に Vs が大き各試料の特徴を簡潔に示すと,以下のとおりである。埋くなっており,A 地点では G.L.45m 付近で,B 地点では立土は,工学的分類では【粘土質砂:SC】 に分類される。G.L.70m 付近で Vs=400m/s を超える。なお,柱状図や室内試験結果から B 層,As 層,Ac 層,D 層の 4 つに分類し,Ac 層については状態の違いから更細粒分含有率は約 45%と多く,粘土分がその内の 20%程度を占める。材料的には液状化しにくい土と判断されるが,東日本大震災では噴砂試料の調査から細粒分を多く含むに 3 層に分割した。それぞれの層の物理・力学特性を以下土が液状化したことが報告されている。物理特性は B 地点に示す。の 1 深度でしか実施していないが,埋立土は同じサンプラーでも場所によって状態や種類のばらつきが大きい。沖積4. 物理試験砂は,工学的分類では,【シルト混じり砂:S-M】 に分類される。細粒分含有率は 14%程度と比較的少なく,材料的最初に A, B 両地点から採取した土試料を用いて物理特には液状化しやすい土と判断される。しかしながら,採取性の把握を試みた。図 6 に粒径加積曲線を表 3 と表 4 にそ箇所での N 値は 20 程度と比較的大きい(※他の原位置調れぞれ A 地点と B 地点の採取試料を用いて実施した物理査では 10 を下回る箇所も存在している)。A, B 両地点で物試験のまとめを示す。B 層と As 層は各層の中央部で,層理試験を実施したが物理特性はよく似ており,同一層内で厚の厚い Ac 層は堆積状態を把握するために複数地点で実あれば採取場所が異なっても同じ材料であると見なすこ施している。とができる。沖積粘土は,工学的分類では,【粘土(高液116 性限界):CH】 に分類される。採取深度によって異なるDeviator stress q (kPa)が,細粒分含有率は 60~100%(粘土分含有率は 30~50%程度)と大きい。端部を除いて N 値が 0~2 程度と小さく,圧縮性が高く非常に鋭敏な粘性土である。浅部の Ac1,2 に不純物は少なかったが,深部の Ac3 は有機物や貝殻の混入200Deviator stress q (kPa)200100100率が高く,液性限界・塑性限界も上部と比べて小さい。05. 力学試験0510Axial strain εa (%)015地盤の力学特性の把握を試みた。力学試験実施の際は,原位置からできるだけ乱さないように採取した「不攪乱試料」だけでなく,不攪乱試料を一度乱して作成した「練返し試料」「再構成試料」「攪乱試料」も用いた。各試料の供試体-20240作成方法は表 5 に示すとおりである。510Axial strain εa (%)図8拘束圧は K0=0.6 を考慮した土被り圧相当とし,複数試料で実験可能な際は拘束圧を 2 倍あるいは 1/4 倍にして実100Mean effective stress p' (kPa)2000100Mean effective stress p' (kPa)2002.6Specific volume vB 地点から採取した土試料の力学試験を実施して,浦安Volumetric strain εv (%)-402.42.215攪乱試料の排水三軸圧縮試験100100状化試験は 0.05Hz,変形特性を求めるための繰返し試験は0.1Hz の正弦波形で応力振幅一定の繰返し載荷を与えた。不攪乱練返し再構成攪乱5.1試料の準備方法液性限界の 2 倍のスラリー状になるように含水比調整し,撹拌・脱気した後で一次元圧密して作成した試料。粘性土のみ。試料を低温で乾燥させた後,モールド内で再堆積させて作成した試料。所定の密度となるように投入質量を計測しておき,モールド側面を叩いて,締め固めて作成した。砂質土のみ。00-500510Axial strain εa (%)図950Mean effective stress p' (kPa)100050Mean effective stress p' (kPa)1002.62.415攪乱試料の非排水三軸圧縮試験50500510Axial strain εa (%)150100Mean effective stress p' (kPa)Deviator stress q (kPa)Deviator stress q (kPa)Deviator stress q (kPa)1000-4250-25-303Axial strain εa (%)250-25-5060255075Mean effective stress p' (kPa)100200図 10不攪乱試料の非排水繰返し三軸試験①2.820510Axial strain εa (%)図7152.62.40100Mean effective stress p' (kPa)50Deviator stress q (kPa)0Deviator stress q (kPa)50-2Specific volume vVolumetric strain εv (%)02.8-50-6401550-100502001000510Axial strain εa (%)100埋立土 B 層の力学試験結果200Deviator stress q (kPa)0自然堆積の状態からできるだけ乱さないように準備した試料。B 層および As 層は,トリプルチューブサンプリングで不攪乱試料を採取したのち,すぐに凍結させ,凍結したままダイヤモンドカッターを利用して成形した。Ac 層はシンウォールサンプリングにて試料採取し,トリミング法で供試体作成した。液性限界に含水比調整し,捏ねくりかえした試料。粘性土のみ。Excess pore water pressure ue (kPa)表550Specific volume v粘性土は 0.0056%/min の軸ひずみ速度一定で載荷した。液Deviator stress q (kPa)Deviator stress q (kPa)施した。単調載荷試験においては,砂質土は 0.05%/min,250-25250-25200-50-6不攪乱試料の排水三軸圧縮試験-303Axial strain εa (%)図 111176-500255075Mean effective stress p' (kPa)不攪乱試料の非排水繰返し三軸試験②100 50沖積砂 As 層の力学試験結果5.2500-25-50-6-303Axial strain εa (%)図 120-25-506800250255075Mean effective stress p' (kPa)Deviator stress q (kPa)25Deviator stress q (kPa)Deviator stress q (kPa)Deviator stress q (kPa)80040010000不攪乱試料の非排水繰返し三軸試験③510Axial strain εa (%)015Volumetric strain εv (%)-4Specific volume v020510Axial strain εa (%)図 15Deviator stress q (kPa)Deviator stress q (kPa)0510Axial strain εa (%)02拘束圧圧密前 v圧密後 v排水三軸不攪乱402.6642.627排水三軸攪乱402.4492.390非排水三軸攪乱402.5722.528液状化①不攪乱402.3062.299液状化②不攪乱402.0072.002液状化③不攪乱402.7182.707変形特性不攪乱402.6372.6260510Axial strain εa (%)図 160510Axial strain εa (%)Excess pore water pressure ue (kPa)いにもかかわらず液状化に達しており(過剰間隙水圧比≧0.95),その液状化強度比は 0.31 である。ただし表 6 からもわかるように,埋土層は試料のばらつきが大きいので注意が必要である。4000400Mean effective stress p' (kPa)8000400Mean effective stress p' (kPa)8002.21000-100-2000510Axial strain εa (%)図 17118100200300Mean effective stress p' (kPa)400015200かがえる。液状化試験結果からも細粒分含有率が 45%と高08004000埋土 B 層の単調載荷挙動は体積収縮(負のダイレイタン800攪乱試料の排水三軸圧縮試験800シー)傾向にあり,さほど締まった状態ではないことがう400Mean effective stress p' (kPa)21.815Deviator stress q (kPa)供試体02.2Specific volume v試験400015-24埋立土 B 層の試験条件一覧Deviator stress q (kPa)表6100200300Mean effective stress p' (kPa)400Specific volume vVolumetric strain εv (%)不攪乱試料の変形特性を求めるための繰返し試験0800-4図 14800不攪乱試料の排水三軸圧縮試験4000400Mean effective stress p' (kPa)21.815800不攪乱試料の液状化強度曲線02.2-24図 134001521.8攪乱試料の非排水三軸圧縮試験 400-40-80-8-404Axial strain εa (%)図 180-4004080120Mean effective stress p' (kPa)160不攪乱試料の非排水繰返し三軸試験①Deviator stress q (kPa)80400-40沖積砂 As 層の試験条件一覧試験供試体拘束圧圧密前 v排水三軸排水三軸圧密後 v不攪乱801.8491.838不攪乱1601.9121.891排水三軸攪乱801.8911.883排水三軸攪乱1601.8881.874非排水三軸攪乱801.8811.869非排水三軸攪乱1601.8781.858液状化①不攪乱801.9421.937液状化②不攪乱801.9171.905液状化③不攪乱801.9501.945変形特性不攪乱802.0021.98940-80880Deviator stress q (kPa)表780Deviator stress q (kPa)Deviator stress q (kPa)80400沖積砂 As の単調載荷挙動は体積膨張(正のダイレイタンシー)傾向にあり,やや密に締まった状態にある。また,-40液状化強度比は 0.34 と埋土よりもやや大きい。図 1984080120Mean effective stress p' (kPa)160400Deviator stress q (kPa)80400-40沖積粘土 Ac2 層の力学試験結果5.3不攪乱試料の非排水繰返し三軸試験②804040030020010000-40510Axial strain εa (%)-8004080120Mean effective stress p' (kPa)160不攪乱試料の非排水繰返し三軸試験③30020010000510Axial strain εa (%)図 234000100200300Mean effective stress p' (kPa)400300Deviator stress q (kPa)Deviator stress q (kPa)100200300Mean effective stress p' (kPa)不攪乱試料の非排水三軸圧縮試験200100200100不攪乱試料の液状化強度曲線00510Axial strain εa (%)01520010000510Axial strain εa (%)図 24不攪乱試料の変形特性を求めるための繰返し試験1190100200Mean effective stress p' (kPa)3000100200300Mean effective stress p' (kPa)4004Specific volume v300図 2203215300図 211004Specific volume v図 208Excess pore water pressure ue (kPa)-404Axial strain εa (%)200015400-80-83000Excess pore water pressure ue (kPa)Deviator stress q (kPa)0Deviator stress q (kPa)-404Axial strain εa (%)-80Deviator stress q (kPa)-80-81532再構成試料の非排水三軸圧縮試験 表8図 25沖積粘土 Ac2 層の試験条件一覧試験供試体拘束圧圧密前 v非排水三軸非排水三軸圧密後 v不攪乱502.9612.917不攪乱1003.0502.976非排水三軸不攪乱2003.4083.238非排水三軸不攪乱4003.2212.694非排水三軸再構成200液状化①不攪乱1802.9482.793液状化②不攪乱1802.9582.828液状化③不攪乱1803.0432.999変形特性不攪乱2003.0442.936練返しおよび不攪乱試料の標準圧密試験沖積粘土 Ac2 層の非排水せん断挙動は塑性圧縮を伴う軟化挙動( p 減少を伴う q の減少)を示し,一次元圧縮100Deviator stress q (kPa)Deviator stress q (kPa)1000挙動は初期比体積が大きく,練返し圧縮線の外側に「嵩張っている状態5)」にある。これらはともに構造高位5)で鋭敏な粘性土の特徴である。繰返し載荷によって有効応力が0減少するものの,砂質土のように液状化にまでは達しない。-100-100-6-4-2024Axial strain εa (%)図 2660100200Mean effective stress p' (kPa)5.4 沖積粘土の採取深度・採取位置の比較Ac 層の深度方向の状態を標準圧密試験結果から比較す300不攪乱試料の非排水繰返し三軸試験①る。図 30~図 32 に A, B 両地点から採取した不攪乱試料および練返し試料の標準圧密試験結果を示す。Ac1 と Ac2を比較すると,練返しの圧縮線は等しく同じ材料として扱100Deviator stress q (kPa)Deviator stress q (kPa)1000-100えることがわかる。先述のとおり,Ac2 は初期比体積が大きく,練返し圧縮線の外側に嵩張っている状態にあるのに0対し,Ac1 は圧密降伏応力を迎えた後は練返しの圧縮線とほぼ一致し嵩張った状態にはない。一方,Ac3 を見てみる-100と,練返しの圧縮線の勾配が Ac1, Ac2 と比べて小さく,-6-4-2024Axial strain εa (%)図 2760100200Mean effective stress p' (kPa)300初期比体積も小さい。深部の粘性土は試料抜出時にも有機質が多く含まれていた。Ac3 は Ac1, 2 と比べて圧縮性の小不攪乱試料の非排水繰返し三軸試験②さい粘性土だと考えることができる。続いて,A 地点と B地点で比較してみると,相対的に同じ位置から採取した試100Deviator stress q (kPa)Deviator stress q (kPa)1000-100-6料同士の圧縮挙動はよく似ている。以上から,沖積粘土Ac 層はその状態から 3 層に分割することができ,相対的0に同じ深さにある場合は同じ状態量にあることが推定される。-100-4-2024Axial strain εa (%)図 2860100200Mean effective stress p' (kPa)300不攪乱試料の非排水繰返し三軸試験③図 30図 29不攪乱試料の変形特性を求めるための繰返し試験120Ac 層上部(Ac1)の圧縮特性の比較 沖積砂で 0.34 であった。表層土の液状化強度特性は各機関で調査されているが,例えば浦安市液状化対策技術検討調査では,図 33 が示されている。採取場所によるばらつきが予想されるが,本研究で求めた値とほぼ同値であることがわかる。このような他機関の実験結果も含めて検討することで,精緻なモデル化に繋がると考えている。図 31Ac 層中部(Ac2)の圧縮特性の比較図 33地震後に実施された液状化試験結果7. 謝辞図 32Ac 層下部(Ac3)の圧縮特性の比較地層断面の把握のためには千葉県地質環境インフォメ6. おわりにーションバンクのボーリングデータを利用した。深く感謝の意を表する。また本研究は,地盤工学会東日本大震災対本稿ではボーリング調査結果および室内試験結果をも応調査研究委員会「地盤変状メカニズム研究委員会(委員とに浦安地盤の地層構成,物理特性および力学特性の把握長:浅岡顕)」に関連する研究報告である。を試みた。その結果, 浦安市地盤の工学的基盤面は陸側から海側に向かって緩やかに傾斜する埋没平坦面を形成参 考 文 献1) 東日本大震災の教訓(インフラ被害の全貌), 日経コンストラクション編, pp.102-116, 2011.2) 液状化対策技術検討会議検討成果報告書, 国土交通省, 2011.3) 浦安市液状化対策技術検討調査報告書, 浦安市, 2011.4) 千葉県地質環境インフォメーションバンクhttp://wwwp.pref.chiba.lg.jp/pbgeogis/servlet/infobank.index5) Asaoka, A., Noda, T., Yamada, E., Kaneda, K. and Nakano, M.: Anelasto-plastic description of two distinct volume change mechanisms ofsoils, Soils and Foundations, Vol.42, No.5, pp.47-57, 2002.していること,その上部には大別して,洪積土 D 層,沖積粘土 Ac 層,沖積砂 As 層,埋立土(浚渫土)B 層が堆積していること,沖積粘土 Ac 層はその状態から更に 3 層に分割できることを把握した。また,各層の不攪乱試料および攪乱試料を用いて,単調載荷試験,繰返し載荷試験,変形特性を求めるための繰返し試験を実施し,浦安市地盤のモデル化のための基礎データを蓄積した。本研究で採取した試料での液状化強度は,埋立土で 0.31,121 Understanding the stratigraphic composition, physical and mechanical properties ofUrayasu city soilsKentaro NAKAI1,Toshihiro NODA2,Masaki NAKANO1,Takaya MURAKAMI1,Akira ASAOKA31Nagoya University, Department of Civil Engineering2Nagoya University, Disaster Mitigation Research Center3Association for the development of earthquake predictionAbstractThis paper tried to understand the stratigraphic composition, physical properties and mechanical properties of theUrayasu city soils. The results showed that the engineering bedrock of the Urayasu is loosely declined from land-sideto ocean-side. Diluvial deposit, alluvial clay, alluvial sand and reclaimed soil (or dredged soil) is located above it andalluvial clay can be divided to 3 parts depending on the deposited condition. Moreover, fundamental dates for theUrayasu city modelling were accumulated through the monotonic loading tests and repeated shear tests usingundisturbed and disturbed soil samples.Key words: Urayasu, boring survey, laboratory test, stratigraphic composition, physical property, mechanical property122
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  • タイトル
  • 不整形な境界から発カした表面波によって拡大した浦安市の液状化被害
  • 著者
  • 浅岡顕・中井健太郎・野田利弘・村瀬恒太郎
  • 出版
  • 地盤工学会特別シンポジウム -東日本大震災を乗り越えて-
  • ページ
  • 123〜131
  • 発行
  • 2014/05/14
  • 文書ID
  • 67550
  • 内容
  • 地盤工学会特別シンポジウム-東日本大震災を乗り越えて-11不整形な境界から発生した表面波によって拡大した浦安市の液状化被害浅岡顕 1,中井健太郎 2,野田利弘 3,村瀬恒太郎 21地震予知総合研究振興会2名古屋大学大学院・工学研究科3名古屋大学・減災連携研究センター概要浦安市内で実施されたボーリング調査および室内試験結果をもとに浦安市地盤の弾塑性モデル化を行い,地震応答解析を通じて,東日本大震災で見られた浦安市の甚大かつ非一様な液状化被害の発生要因を地層構成に着目して考察した。その結果,1)液状化層以深に堆積する軟弱粘土層の存在が地震波をやや長周期の範囲で増幅させ,これに伴って生じる大きなせん断変形によって液状化しにくい中間土を液状化させたこと,2)基盤の傾斜によって不整形な境界から表面波が生成されることによって傾斜部直上では加速度が局所的に大きくなると同時に,主要動終了後も比較的強い揺れが継続して液状化が発生・拡大すること,3)表面波と下部からの実体波が複雑に干渉することで,均質な地盤材料・状態を仮定しても地表面の変状が大きくばらつくこと,などを示した。キーワード:浦安市,地震応答解析,地層構成,表面波,液状化た水~土骨格連成有限変形解析コード GEOASIA2)である。1. は じ め に東日本大震災において,浦安市で観測された液状化被害の特徴として,1)震源から離れており,震度 5 程度(周辺の K-net などの地表面観測記録で最大 100~200gal 程度)の揺れであるにもかかわらず,甚大な液状化被害が発生したこと,2)液状化地域周辺から採取した試料の粒度特性が,従来は液状化しにくいと考えられてきた細粒分を多く含む土であったこと,3)液状化地点と非液状化地点が面的に不均一・非一様に分布していたこと,が挙げられる。浦安市内では広範囲に液状化被害が発生したが,その被害は中心部から南東にかけての比較的新しい埋立地に集中しており,北西の古い地盤では液状化被害がほとんど発生していない(図 1)。その要因として,地盤の材料や内部状態の不均一性,つまり,埋立て年代に伴う密度の違いや地盤改良の有無が挙げられている。これら指摘は甚大な液状化被害が発生した理由としては確かに正しいが,細粒分図1を多く含む土が液状化したメカニズムや非一様に発生し埋立て年代と液状化発生の有無3)た液状化被害の十分な説明にまでは至っていない。本稿で2. 浦安市地盤の弾塑性プロファイルの同定は,ボーリング調査および室内試験結果に基づいて浦安市地盤の弾塑性モデル化を行うとともに,陸側から海側へと基盤層が傾斜している浦安市の地層構成に着目して多層自然に堆積した土は実験室で人工的に作成した土とは系地盤の地震応答解析を実施し,浦安市で発生した甚大か異なり,構造・異方性・過圧密などいわゆる「骨格構造」つ非一様な液状化被害の要因について検討する。用いた解が発達していることがよく知られている。そこで,練返し析コードは,砂から中間土,粘土までを同じ理論的枠組で正規圧密土の力学挙動を表す Cam-clay model を土台にして,土粒子が構成する骨格構造の概念とその働きを塑性変1)記述する弾塑性構成式(SYS Cam-clay model )を搭載し123 形と関連づける発展則の導入により,骨格構造の発達した飽和土の弾塑性構成式 SYS Cam-clay model を構築している。このモデルに従うと,粘土と砂の差異は単位塑性変形あたりの骨格構造の変化のしやすさ(骨格構造の発展則)で表すことができ,粘土から砂までを連続的に取り扱うことができるのが特徴である。ここでは,浦安市地盤から採取した土の力学挙動を SYS Cam-clay model で再現することで,浦安地盤の弾塑性プロファイルを同定する。土の弾塑性パラメータを特定するためには,まず,骨格構造ができるだけ現れない状態(例えば,練返しの状態)を室内試験機で再現する必要がある。次に発展則パラメータを特定するためには,骨格構造が発達した試料の複数の試験結果を一組の材料定数群で再現できるように,骨格構造の初期値とともに試行錯誤的に求める。しかし,いくら室内試験結果を再現して室内試験開始時の状態を把握することができても,地盤堆積時の状態を知ることはできな図3埋立土の排水せん断挙動とその再現図4沖積砂の排水せん断挙動とその再現い。ここでは「室内試験はサンプリング時から始まっている」という考え方に基づき,いくつかの室内試験結果を再現することから地盤の初期値を決める 1 つの方法を示す。すなわち,室内試験結果の再現の際は,原則として,現地盤での堆積時の状態を初期状態に取り,すなわち図 2 で示すように,採取土の土被り圧と土の骨格構造の初期状態を仮定して,エレメント性が保持されるようなサンプリング→試験機セット→試験までの理想的な一連の過程を再現し,定ひずみ速度圧密試験と非排水三軸試験の結果をいずれも満足するように試行錯誤的に決定する4)。このことによって土の乱れの影響までも考慮して行うため,力学試験の再現を通じて,堆積時の地盤の初期状態の推定も可能となる。図 3~図 5 に図 1 中 A 地点および B 地点で採取した浦安市地盤の埋立土,沖積砂,沖積粘土の力学試験結果5)の再現例を示す。実験結果と再現結果を比較すると,いずれもよい対応が取れている。再現から得られた各土材料の材料定数を表 1に,堆積時の初期状態を表 2 に示す。浦安市の特徴とも言える厚く堆積した沖積粘土層については,深度ごとの圧縮特性の比較から 3 種類に分割している 5)。非排水三軸試験の場合原位置~室内試験の再現試験機へセット三軸試験機の中で1.0kPaまで圧密過程 (D)試験開始時(C)所定の拘束圧まで室内試験等方圧密等方除荷非排水せん断サンプリング原位置の含水比を保持したまま等方応力状態までのDeviator stress q (kPa)降伏面(下負荷面)(B)20q=Mp'10(A)原位置0(C)(B)(D)非排水除荷0102030Mean effective stress p' (kPa)(A)原位置図2図5計算過程のイメージ図124沖積粘土の非排水せん断挙動とその再現 表1一次元モデルと同じ地層構成となるように線形的な地層浦安地盤の材料定数勾配を設定した。水理境界は,地表面が水位面と一致するBAsAc1,2Ac3限界状態定数 M1.401.431.401.40NCL の切片 N~圧縮指数 2.452.012.822.00に関しては表 2 をもとに,深さ方向に比体積(密度),構塑0.090.070.2800.115造の程度,応力比および異方性の程度は均一であると仮定性膨潤指数 ~0.0050.0020.020.012し,土被り圧に応じて過圧密比を分布させた。入力地震波ポアソン比 0.100.250.100.104444 Dv と D s p の割合 c s0.801.000.400.40構造劣化指数 a (b  c  1.0)0.108.000.650.65の全節点の水平方向に等しく入力した。地震時は境界両側正規圧密土化指数 m8.008.0020.020.0端で側方境界要素単純せん断変形境界を設定するととも回転硬化指数 br0.503.000.200.20に,地盤底面に Vs=400m/s に相当する粘性境界を用いた。回転硬化限界面 m b0.700.501.001.00弾構造劣化の塑性尺度(IREV)p発展則物土粒子密度  s (g/cm3)性透水係数 k (cm/s)表22.6772.7872.6902.6901.0×10-51.0×10-41.0×10-71.0×10-7よう水圧ゼロとし,下端と両側面は非排水とした。初期値を図 9 に示す。地震波は東京都港湾局品川地震観測所のG.L.-36m 付近での観測地震波6) を 2E 波として,地盤底面浦安地盤の初期状態BAsAc1Ac2Ac3初期比体積 v 02.6021.9003.0003.2942.078初期鉛直応力  v (kPa)32.65108.0189.0236.0335.0初期応力比  00.5450.5450.5450.5450.545初期構造の程度 1 / R * 02.7851.204.55013.3012.13初期過圧密比 1 / R 01.9006.501.551.141.90初期異方性の程度  00.130.000.400.330.35図 6 には A, B 両地点のボーリング調査結果をもとに決定した鉛直方向の一次元モデルを示す 5)。同図には観測結図7浦安市の X-Y 測線における地質断面図果および上記の弾塑性定数から算出される Vs が併記してあるが,両地点ともに比較的良い整合性が取れており,適切なモデル化が行われていると考えられる。A 地点B 地点B(2m)B(9m)As(10m)Ac1(4m)Ac2(3m)As(10m)Ac3(8m)Ac1(17m)図8浦安市地盤の有限要素メッシュAc2(15m)D(47m)Ac3(13m)実測値解析設定値0200図6実測値解析設定値4000200D(10m)400A, B 地点の一次元モデル3. 浦安市地盤の地震応答解析図 1 中の X-Y 測線の地層構成図(図 7)をもとに浦安市地盤の有限要素メッシュ(図 8)を作成した。解析領域は幅 6,000m であり,中央部の 2,000m 区間の両端が図 6 の図9125入力地震動 図 10 にせん断ひずみ分布の経時変化を示す。せん断ひずみが傾斜部の Z 地点および Y 地点で広範囲かつ非一様に分布していること,時間の経過とともに表層の被害が特にこれらエリアで拡大していることがわかる。実際の液状化被害が甚大であったのは,傾斜部直上である中町や粘土層が厚く堆積する新町地区であり,解析結果と整合する。図 11 は X 地点での地表面加速度と同地点に近い K-net 浦安観測所の強震記録を比較したものである。加速度波形や卓越周期など,両者がよく似た傾向を示している。図 12は X,Y,Z 地点における地表面加速度応答である。いずれも最大加速度は 150gal 程度と大きな差異はないが,X 地点に比べて Z 地点や Y 地点は主要動終了後も比較的大きな揺れが継続していることがわかる。また,フーリエ振幅スペクトルを見てみると,下部軟弱粘性土層が厚いほど,加速図 12X,Y,Z 地点の地表面加速度波形の比較度がやや長周期の範囲で卓越している。細粒分を含む埋立土が液状化するためには,大きな塑性ひずみの進展が必要である。そのためには,長周期でしかも多数回の繰返し負荷による大きな変位・変形が必要である。傾斜部直上や深部粘性土層が厚い Y 地点において液状化が発生し,せん断ひずみが大きくなったのは,継続的な揺れと長周期成分の増幅が原因だと考えられる。 図 13 は X,Y,Z 地点における地表面沈下量である。地震後約 1 日で各地点ともに数センチの沈下を示す。地震後は約 10 年間にわたって沈下が継続するが,X 地点に比べて,Y, Z 地点の沈下量は大きい。図 13地表面沈下量4. 単純化モデルによる地震応答解析深部地層構成を精緻にモデル化した浦安市地盤を用いた多次元有効応力解析によって,実被害で見られたような非一様な液状化被害を再現することができた。非一様な液状化被害はこれまで,埋立年代や地盤改良の有無といった不均一性によって説明されることが多いが,解析結果は均質な地盤材料を仮定しても不均一かつ非一様な液状化被害が生じることを示した。本章では,深部地層構成の影響をより正確に把握するため,浦安市地盤モデルを単純化する。なおここで言う深部地層構成とは,軟弱粘土層厚と地層傾斜の 2 点を指すこととする。図 10せん断ひずみ分布4.1 軟弱粘性土層におけるやや長周期成分の増幅軟弱粘土層厚の影響を把握するために,図 14 で示す鉛直一次元モデルでの地震応答解析を実施した。両側端には周期境界を設けているので,水平成層地盤の解析に等しい。解析に用いた弾塑性性状を表 3 に示す。弾塑性パラメータは,浦安市地盤の沖積砂 As 層,沖積粘土 Ac2 層,洪積土D 層に等しいが,状態量は僅かに異なる。なお,境界条件や入力地震波等の解析条件はすべて 3 章と等しい。図 11解析結果と強震記録の比較126 表で大きなせん断変形(水平変位)が生じており,これが地表面1000- 100Max=128.7 galMin=- 121.0 gal100Acceleration (gal)1000- 100Acceleration (gal)- 2002001000- 100- 20003.022.00性膨潤指数 ~0.00250.0200.00050.100.100.104441.000.400.50構造劣化指数 a (b  c  1.0)8.000.650.05正規圧密土化指数 m8.0020.00.3100.200.200.441.000.7則回転硬化指数 br回転硬化限界面 mb物土粒子密度  s (g/cm )性透水係数 k (cm/s)初期値31002.6902.651.0×10-71.0×10-6初期比体積 v01.9803.351.21初期鉛直応力  v (kPa)108.0236.0335.0初期応力比  00.5450.5450.545初期構造の程度 1 / R * 03.0421.75100Max=109.3 galMin=- 96.9 galMax=33.6 galMin=- 37.6 gal0- 1001000- 100- 2002002.787初期異方性の程度  0Ac層通過後- 2002001.0×10-4初期過圧密比 1 / R0Max=151.9 galMin=- 154.2 gal1000- 100- 2000Max=20.8 galMin=- 33.1 gal10020030010-1図 15010Cycle (sec)12101040010000100001000010000-21010-1Time (sec)010Cycle (sec)110210No.2 地点における層境の加速度応答68.03.01.0×1010.750.4200図 14~図 16 に各地点における層別の加速度応答を示す。最大加速度に大きな差異は見られないが,フーリエ振幅ス地表面1000- 100Max=123.2 galMin=- 129.6 gal- 200200Acceleration (gal)ペクトルに着目すると,No.1 地点では 0.7 秒付近,No.2地点では 1.4 秒付近,No.3 地点では 2.0 秒付近と,粘土層厚が厚いほど,やや長周期の範囲において地震波が増幅さAc層通過後100- 200200Acceleration (gal)れている。図 17 には,表層の砂質土層中央部における平均有効応力低下率の時刻歴を示す。主要動付近(地震開始から 100 秒付近)から急速に大きくなるが,地震動がほぼAcceleration (gal)終了する 200 秒以降に変化は見られず,どの地点において地点は平均有効応力低下率が No.1 地点よりも大きくなっ0- 1001000- 100- 2000ており,より液状化に近づいていたことがわかる。図 18Max=28.6 galMin=- 33.5 gal100200Time (sec)は地表面における水平変位量を示す。軟弱粘土層の厚い図 16No.2 および No.3 地点では,長周期成分の増幅によって地127Max=41.9 galMin=- 35.6 gal100- 200200も液状化までは達していない。しかしながら,No.2 と No.3Max=89.7 galMin=- 82.4 gal0- 100Fourier Amp. (gal*s)展の割合 c sAcceleration (gal) Dv と D s発p0- 100- 200200Acceleration (gal)0.005Acceleration (gal)0.242Acceleration (gal)0.10地表面100Fourier Amp. (gal*s)2.00塑NCL の切片 N~圧縮指数 200Fourier Amp. (gal*s)1.50p0-210No.1 地点における層境の加速度応答Fourier Amp. (gal*s)洪積層 D1.40構造劣化の塑性尺度400Fourier Amp. (gal*s)沖積粘土 Ac1.40Acceleration (gal)沖積砂 As限界状態定数 Mポアソン比 01000Time (sec)図 14弾30001000Fourier Amp. (gal*s)単純化モデルで用いる弾塑性性状20001000Fourier Amp. (gal*s)表3Max=24.5 galMin=- 34.7 gal1001000Fourier Amp. (gal*s)有限要素メッシュおよび地層構成Max=34.4 galMin=- 33.0 gal0- 100- 200200図 13Max=77.8 galMin=- 77.4 galFourier Amp. (gal*s)Ac層通過後Fourier Amp. (gal*s)Acceleration (gal)- 200200Fourier Amp. (gal*s)Acceleration (gal)200Fourier Amp. (gal*s)原因となって液状化に近づいた。30040010000100001000010000-21010-1010Cycle (sec)No.3 地点における層境の加速度応答110210 に巻き上げるような(二次的な)表面波の発生7)が確認できる。この表面波は傾斜基端部で発生し,図中の右側へ進行していく。図 21 は傾斜角 1 度の場合の同時刻における速度ベクトル分布図である。傾斜角度が小さいと,鉛直上向き成分が小さいことがわかる。図面は省略するが,水平成層地盤では,当然このような表面波は生成されない。基盤と粘土層の媒質不連続面における実体波の反射・屈折現象によって表面波が生成された。図 17平均有効応力低下率図 20地震から 60 秒後の速度ベクトル分布(傾斜角 3 度)図 21地震から 60 秒後の速度ベクトル分布(傾斜角 1 度)図 22 は傾斜角 3 度の場合の傾斜中央部(4.1 節におけるNo.2 地点と同じ地層構成部)における砂質土層中央部の平均有効応力低下率を示す。図中には一次元解析結果(4.3節 No.2 地点,水平成層地盤)を重ねて示している。一次元解析では液状化しなかった(平均有効応力低下率<95%)図 18が,二次元解析では平均有効応力低下率が 95%以上となっ地表面における水平変位量の比較て液状化している。この要因を説明するため,図 23 に傾斜中央部における地表面加速度応答を示す。二次元解析で4.2 不整形境界からの表面波生成の影響続いて地層傾斜の影響を検討する。解析に用いた有限要は表面波の発生に伴って加速度が大きくなるとともに,主素メッシュを図 19 に示す。表層の砂質土層は水平成層か要動終了後も揺れが継続する「後揺れ現象」が発生する。つ均質な状態を仮定した。解析領域中央部 900m区間の粘つまり,二次元解析では表面波発生が要因となって主要動土層と基盤層の境界に傾斜部を設け,傾斜の状態を変化さ終了後も平均有効応力低下率が継続的に上昇を続け,最終せた。解析に用いた弾塑性性状は表 3 と等しく,境界条件,的に液状化にまで至った。水理境界や入力地震波等の解析条件はすべて 3 章と等し1水平成層傾斜部水平成層90090090095100EPP ratioい。砂質土粘性土θ=3°86基盤層1D553600単位:(m)図 192D0.5100有限要素メッシュおよび地層構成200300Time (s)図 22図 20 は傾斜角 3 度の場合の地震発生から 60 秒後の速度ベクトル分布図で,地層傾斜部周辺を鉛直方向にメッシュを 2 倍拡大して表示している。表層部において反時計回り128平均有効応力低下率の比較400 続いて盆地地形を想定した解析を実施した。図 26 は傾Acceleration (gal)2001D100斜角 3 度の場合の地震発生から 60 秒後の速度ベクトル分Max=151.9 galMin=−154.2 gal布図を,図 27 は地震発生から 200 秒後のせん断ひずみ分布図である。速度ベクトルを見ると,左右両方向から生0成・伝播してきた表面波が谷部直上の各所で衝突している。−100−20002D100図 23200Time (sec)このように,谷部直上では表面波が衝突を繰り返し,よりMax=222.2 galMin=−200.0 gal300400顕著なせん断ひずみの局所化・非一様性を生み出している。図 28 は傾斜地盤および盆地地盤中央部における加速度応答である。この点において両地盤の地層構成は等しい。加速度を比較すると同じ地層構成であるにも関わらず,傾斜地表面加速度の比較地盤に比べて盆地地盤の方が最大加速度は大きい。図 26図 24 は地震発生から 150 秒,200 秒,250 秒後のせん断でも示したが,両端から生成された表面波がちょうど中央ひずみ分布の経時変化を示す。表層砂質土は均質な状態を部で衝突・干渉し,揺れが拡大した。メキシコ地震(1985)仮定しているが,せん断ひずみ発生の様子は面的に非一様以降,盆地地形では地震被害が甚大化することが指摘されであり,特に傾斜部直上で大きい。表面波と下部からの実ている。実際,浦安市においても局所的な盆地地形が液状体波が複雑に干渉することで,均質な地盤材料・状態を仮化被害を甚大化させたという報告もある。液状化の危険性定しても地表面の変状が大きくばらついた。図 25 は傾斜が高い濃尾平野も浦安地盤のように基盤は緩やかに傾斜角 1 度の場合のせん断ひずみ分布の経時変化である。傾斜し,盆地地形も多く見られるため,今後これらの影響につ角 3 度に比べてせん断ひずみの大きさが小さく,また非一いても精緻に調べてゆきたい。様性も明確には見られない。図 24傾斜角 3 度の時のせん断ひずみ分布図 26盆地地形の速度ベクトル分布(傾斜角 3 度)図 27盆地地形のせん断ひずみ分布(傾斜角 3 度)300傾斜地盤盆地地盤Acceleration(gal)2001000- 100- 200- 3000100図 28200Time (sec)300400傾斜地盤と盆地地形の比較5. おわりに本稿では,浦安市内で実施されたボーリング調査および室内試験結果をもとに浦安市地盤の弾塑性モデル化を行図 25傾斜角 1 度の時のせん断ひずみ分布い,地震応答解析を通じて,東日本大震災で見られた浦安市の甚大かつ非一様な液状化被害の発生要因を特に深部129 地層構成(軟弱粘土層厚,不整形境界)に着目して考察し6. 謝辞た。主たる結論は以下のとおりである。本解析で用いた入力地震波は東京都港湾局地震観測所1) 液状化層以深に堆積する軟弱粘土層の存在が,地震波の公開データを,地層断面の把握のためには千葉県地質環をやや長周期の範囲で増幅させ,これに伴って生じる境インフォメーションバンクのボーリングデータを,強震大きな塑性変形によって,液状化しにくい中間土を液動記録と解析結果の比較のために防災科学技術研究所基状化させた。盤強震観測網 KiK-net の公開データを利用した。データを2) 表層地盤の液状化発生に及ぼす不整形地盤の影響を数値解析的に検討した結果,傾斜基端部から表面波が生提供していただいた各機関に深く感謝の意を表する。また成されることによって傾斜部直上では加速度が局所的本研究は,地盤工学会東日本大震災対応調査研究委員会に大きくなると同時に,主要動終了後も比較的強い揺「地盤変状メカニズム研究委員会(委員長:浅岡顕)」にれが継続する「後揺れ現象」が発生して,液状化が拡関連する研究報告である。大する。3) 表面波と下部からの実体波が複雑に干渉することで,均質な地盤材料・状態を仮定しても地表面の変状が大きくばらつく。4) 盆地地形では左右両方向から生成・伝播してきた表面波が谷部直上で衝突することにより,谷部直上での揺れや液状化の危険性がより高くなる。従来行われている微地形区分による概略法や FL 法による液状化判定では,表層土の「土性」だけが問題とされ,継続時間や深部地層構成,不整形境界の影響は直接的には問題とされない。しかしながら,傾斜地形や盆地地形といった不整形な境界は浦安市に特別な地形ではなく,どこにでも存在するものであり,注意が必要である。本稿で示した計算結果は,弾塑性力学に基づく最新の計算地盤力学の必要性を示唆している。130参 考 文 献1) Asaoka, A., Noda, T., Yamada, E., Kaneda, K. and Nakano, M..: Anelasto-plastic description of two distinct volume change mechanisms ofsoils, Soils and Foundations, Vol.42, No.5, pp.47-57, 2002.2) Noda, T., Asaoka, A. and Nakano, M.: Soil-water coupled finitedeformation analysis based on a rate-type equation of motionincorporating the SYS Cam-clay model, Soils and Foundations Vol.48,No.6, pp.771-790, 2008.3) 東日本大震災の教訓(インフラ被害の全貌), 日経コンストラクション編, pp.102-116, 2011.4) Noda, T., Takeuchi, H., Nakai, K. and Asaoka, A.: Co-seismic andpost-seismic behavior of an alternately layered sand-clay ground andembankment system accompanied by soil disturbance, Soils andFoundations, Vol.49, No.5, pp.739-756, 2009.5) 中井健太郎, 野田利弘, 中野正樹, 村上孝弥, 浅岡顕: 浦安市地盤の地層構成・物理特性・力学特性の把握, 地盤工学会特別シンポジウム-東日本大震災を乗り越えて-, 投稿中, 2014.6) 東京都港湾局.http://www.kouwan.metro.tokyo.jp/business/keiyaku/kisojoho/jishindou.html7) 大槻明, 田蔵隆, 清水勝美: 傾斜基盤を有する不整形地盤の地震時挙動と地盤ひずみ, 土木学会論文集第350号, I-2, pp.291-300,1984. Extensive liquefaction damage in Urayasu city enhanced by surface wave inducedaround its irregularly-shaped boundaryAkira ASAOKA3,Kentaro NAKAI1,Toshihiro NODA2,Kotaro MURASE11Association for the development of earthquake prediction2Nagoya University, Department of Civil Engineering3Nagoya University, Disaster Mitigation Research CenterAbstractFirstly, elasto-plastic modelling of Urayasu soils based on the boring survey and laboratory testing was conducted.After then, its seismic response analysis was conducted for the purpose of understanding why extensive andnon-uniform liquefaction damage was occurred at Urayasu city during 2011 Great East Japan Earthquake. The mainconclusions are as follows, 1) existence of the clay layer caused amplification of the seismic wave in the somewhatlong-period ranges, leading to large plastic strains sufficient to cause liquefaction even in intermediate soils, 2)existence of the sloped irregularly-shaped boundary generates surface waves which causes localized amplification ofthe acceleration, continuous oscillation at the ground surface and expansion of the liquefaction, 3) complicatedinterposition of the surface waves and body waves result in non-uniform ground deformation even for homogeneousground conditions.Key words: Urayasu city, seismic response analysis, stratigraphic composition, surface wave, liquefaction131
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  • タイトル
  • 東北地方太平洋沖地震における浦安地区の有効応力解析―水平2 方向同時加振が地震時応答とその後の沈下に及ぼす影響―
  • 著者
  • 濁川直寛・桐山貴俊・福武毅芳
  • 出版
  • 地盤工学会特別シンポジウム -東日本大震災を乗り越えて-
  • ページ
  • 132〜140
  • 発行
  • 2014/05/14
  • 文書ID
  • 67551
  • 内容
  • 地盤工学会特別シンポジウム-東日本大震災を乗り越えて-12東北地方太平洋沖地震における浦安地区の有効応力解析-水平 2 方向同時加震が地震時応答とその後の沈下に及ぼす影響-濁川直寛 1,桐山貴俊 1,福武毅芳 11清水建設株式会社・技術研究所概要千葉県浦安市の南東部の埋立て地を対象とした有効応力解析を実施し,加速度応答や液状化の程度について検討した.解析に用いた構成式は,R-O モデルとおわんモデルを併用したものである.解析パラメータは,原位置採取試料の要素試験結果に基づいて設定した.解析では,入力地震波は本震と余震を連続入力し,1 方向加震と水平 2 方向同時加震の違いによる応答の差異を考察した.また,地震後の地表面沈下量について実測値と解析値を比較し,結果の整合性を確認した.さらに,同地盤において液状化層の水圧上昇を抑制した解析を実施し,液状化を防ぐことで,その下の粘土層の沈下が助長されることを示した.キーワード:有効応力解析,水平 2 方向同時加振,地震後の沈下1. は じ め にΓこれまで,2011 年 3 月 11 日に発生した東北地方太平洋沖地震(以下,3.11 地震と呼称)で液状化による甚大な被γzx 2 γzy 2 γxy 2εx ‐εy2εy ‐εz2εz ‐εx2(1)∑∆害を受けた千葉県浦安市を対象に,様々な地震応答解析が∑ ∆行われてきた.しかしながら,多くの解析は土質パラメー∆∆∆∆∆タを仮定して実施されたものであり,原位置でサンプリン(2)グされた試料に基づいて定量的に検討した事例は少ない.このような中で,地盤変状メカニズム研究委員会主催の計算に用いたパラメータの一覧を表-1 に示す.パラメ「地盤材料の構成式ワークショップ」は,原位置におけるータは,千葉県浦安市の南東部の埋立て地内で採取された乱れの少ない試料を用いて要素試験を実施し,試験結果を乱れの少ない試料を対象とした要素試験結果 1)に基づいて公開した 1).本報告は,この試験結果を基に実施した要素決定した.既往の地震被害調査 5)によると,浦安市内の埋試験シミュレーション,および有効応力解析の成果を取り立て地であっても液状化を免れた箇所は散見されており,まとめたものである.有効応力解析にあたって,著者らは試料の採取地点の周辺において液状化被害は見られなか入力地震動の多方向性の影響を検討するため,3 次元の地ったと報告されている.そこで,この要素試験結果に基づ盤モデルを用いて 1 方向加震,および水平 2 方向同時加震いて決めたパラメータを,浦安地区で液状化しなかった地を行い,加速度応答や液状化の程度について検討した.さ盤の代表的なパラメータ:Para 1 とした.また,本解析でらに,この解析結果を基に,地震後に発生する沈下量を推は,Para 1 の埋土層(以下,F 層と呼称),砂層(以下,定した.表-1 要素試験シミュレーションに用いた土質パラメータ2. 構成式のパラメータ設定埋土 (F)Para 1計算に用いた構成式は,応力~ひずみ関係として 3 次元R-Oパラメータに拡張した Ramberg-Osgood モデル(以下,R-O モデルと呼称)2)を使用し,ひずみ~ダイレイタンシー関係としておわんモデルを使用した3) 4).ここで,3 次元条件下の変形において,せん断ひずみは各成分(γxy や εx-εy など)におわんパラメータ加えて,次式に示す合せん断ひずみ Γ と,累積せん断ひずみ G*を用いる 3) 4).132Para 2砂 (As)Para 1Para 2粘土(Ac)G0kPa80002500020000γ0.5-0.0014700.0006360.003500hmax-0.210.210.20A--1.0-1.0-0.6C-5.08.012.06050D-Cs/(1+e0)-Xl-400.0300 0.0060 0.0200 0.00600.220.110.240.150.03000.22 2)As 層と呼称)の液状化強度を便宜的に小さくすることで,れる液状化強度の下限値 Xl を,既往の液状化試験結果液状化被害が見られた地点のパラメータ:Para 2 とした(詳と比較すると,採取試料は,「やや密,または密な地盤」細は 2.2 節に記述).に相当する.Para 1 は,実験結果にフィッティングさせる解析パラメータは,要素試験結果から直接設定できるもことで,浦安地区で液状化しなかった地点でのパラメータのと,要素試験シミュレーションを通じて,目標とする応を再現している.また,Para 2 は,既往の浦安地区を対象力経路,応力~ひずみ関係を得るために,試行錯誤で設定とした液状化解析事例するものがある.以下では,まず解析で用いた構成式のパ具体的には,Para 2 の Cs/(1+e0)と Xl の値が Para 1 の値と比ラメータの設定について概説し,その後,要素試験シミュべて小さくなっている.それに伴い,液状化強度曲線はレーションの結果を示す.Para 1 のものより下方に位置している.なお,粘土層(以4)に倣ってパラメータを設定した.下,Ac 層と呼称)のパラメータは,Para 1,Para 2 共に同2.1R-O モデルのパラメータの設定じ値である.R-O モデルに必要なパラメータは,初期せん断剛性 G0,最大減衰定数 hmax,および基準ひずみ(G/G0=0.5 となると2.3繰返し非排水三軸試験のシミュレーションきのひずみ)γ0.5 の 3 つである.一例として,図-1 に三軸本節では,2.1 節,および 2.2 節で設定したパラメータ試験装置を用いて実施した,As 層での採取試料の動的変を用いて実施した要素試験シミュレーション結果を示す.形特性試験結果と R-O モデルによる計算結果を示す.こ図-3 に As 層で採取された試料の,繰返し非排水三軸試こで,パラメータのフィッティングは,過剰間隙水圧の発験結果と構成式による計算結果を示す.繰返しせん断に伴生による剛性低下の影響が小さい範囲(両振幅せん断ひずってひずみが徐々に増加していき,応力~ひずみ関係の履み 1%以下の領域)を対象とした.なお,R-O モデルのパ歴ループが紡錘形から逆 S 字形に変化していく挙動は,要ラメータは,Para 1,Para 2 共に同じ値である.素試験結果と計算結果の両方で確認された.シミュレーションの応力経路は要素試験結果と比べて若干粘り強い挙2.2おわんモデルのパラメータの設定動を示しているが,概ね要素試験結果を表現できている.図-2 に,繰返し非排水三軸試験より得られた液状化強図-4 は,As 層で採取された試料の,繰返しせん断後の度曲線(γDA が 5%に至るときのせん断応力比と繰返し回数排水による体積圧縮量の時刻歴である.図中の点線は,計の関係)と構成式による計算結果を示す.ここで,Xl は繰算結果から求められた最終圧縮量 1/D(後述)を示してい返しせん断を多数回与えても液状化には至らない,せん断る.3)応力比(液状化強度)の下限値 である.図-2 から読み取既往の研究6) 7) 8)では,繰返しせん断後の排水による体積ひずみは,せん断過程で経験した最大せん断と有意な関1.00.4係にあることが要素試験結果に基づいて示されている.ま0.5た,この関係性は,地震後の地盤沈下の推定にもしばしば利用されている.しかしながら,今回の浦安市の事例は,0.2比較的小さな地震加速度が長時間続き,小さなせん断応力hG/G 0G/G0 (実験)G/G0 (計算)h (実験)h (計算)が多数回作用したことによって液状化が発生したものと推測される.このような場合,最大せん断ひずみを用いて図-1 動的変形特性試験結果 (As 層)2020−20−40−0.15 −0.1 −0.050.60m0'=0.406200−20−40−0.1 −0.050.050.50.2実験Para1Para20.10.0 −110100Xl101102404020200−20−4003220.320406080 1002m' [kN/m ]10繰返し回数 N(a) 実験結果図-2 液状化強度曲線 (As 層)00.050−20−40020406080 1002m' [kN/m ](b) 計算結果(Para 2)図-3 動的変形特性試験結果 (As 層)1330.1 [kN/m ]0.4 [kN/m ]応力比 /m0'40/m0'=0.406 [kN/m ]10400.0010−2210−4 [kN/m ]0.0 −610 0.00試料1試料2試料3埋土 (F)v−0.01砂 (As)−0.02最終圧縮量1/D−0.03 0101012310粘土 (Ac1)41010Time [s]粘土 (Ac2)図-4 繰返し非排水三軸試験後の体積圧縮 (As 層)0.01粘土 (Ac3) vs0.00−0.01基盤 (Ds)−0.02−0.03−0.1 −0.05EW1/Dm0'=0.40600.050.1 024NS図-6 地盤 FEM モデル6G*表-2 地層構成と地盤定数図-5 おわんモデルによる非排水繰返しせん断中の深さGL- [m]ダイレイタンシー(As 層,Para 2)沈下量を算定することは,沈下量を過小評価する恐れがあγt[kN/m3]土質区分9.09.0埋土 (F)16.515018.519.010.0砂 (As)18.917024.71550.540050.0る.そこで,要素試験シミュレーションでは,最大せん断36.017.0粘土 (Ac1)15.2ひずみではなく,せん断ひずみの累積値(累積せん断ひず51.015.0粘土 (Ac2)14.564.013.0粘土 (Ac3)16.774.010.0基盤 (Ds)19.6み G*)を用いて沈下量の推定を試みた.図-5 に,おわんモデルを用いて計算した非排水繰返しVs[m/s2]層厚[m]N値2.52.8せん断試験中のダイレイタンシーを示す.計算では,繰返しせん断がある程度継続すれば,γ=0 におけるダイレイタある。3.11 地震では,本震発生から 29 分後に最大余震(マンシーは最終圧縮量 1/D となる.図-4,図-5 より,累積グニチュード 7.7)が観測された.本解析では,本震からせん断ひずみを用いて推定した圧縮量と,実験で得られた最大余震の間に過剰間隙水圧の消散はほとんど生じなか体積圧縮量は整合的であることがわかる.同様に,実験結った仮定し,本震と余震を繋げて E+F 波として入力した.果と計算結果の整合性は,Ac 層で採取された試料につい図-8 は,入力地震動の水平加速度波形のオービットである.最大振幅は,本震で NS 成分 55Gal,EW 成分 66Gal,ても認められた.余震で NS 成分 24Gal,EW 成分 24Gal であり,本震,余3. 有効応力解析による地盤の動的挙動の評価震共に振幅卓越方向(強軸方向)は見られない.このような地震動を解析で取り扱う場合,1 方向のみの入力では過本章では,2 章で設定した材料パラメータを用いて,浦剰間隙水圧や変形を過小評価する可能性がある.そこで本安地区南東部の埋立て地を対象とした有効応力解析を実解析では,入力波の NS 成分と EW 成分を同時入力した場施し,加速度応答や液状化の程度について検討した.解析合と,EW 成分のみを入力した場合について検討した.解析に用いたパラメータの一覧を表-3 に示す.Para 1 はに用いた構成式は,2 章で述べた R-O モデルとおわんモデ非液状化地点のパラメータ,Para 2 は液状化地点のパラメルを併用したものである.ングデータ に基づいて作成した.地盤モデルを図-6 に,地盤定数を表-2 に示す.基盤は剛基盤とし,境界条件は底面固定,側方を鉛直固定,水平フリーとした.地層構成0−402004006008003001000 −110および Ac3 の 3 つに分けて設定した.図-7 に入力地震動の加速度波形とそのフーリエ振幅スGL−36m 本震+余震 EW400−40−800ペクトルを示す.入力地震動は,東京都港湾局品川地震観200400Time [sec]で01010110600800300GL−36m 本震+余震 EW2001000 −11001010110Period [sec]図-7 入力地震動の波形とフーリエ振幅スペクトル1342Period [sec]Fourier amplitude [Gal*s]Acceleration [Gal]向に N 値のばらつきが認められたため,物性を Ac1,Ac2,80GL−36m 本震+余震 NS200Time [sec]な粘土層が堆積している点である.なお,粘土層は深度方9)GL−36m 本震+余震 NS40−800の特徴は,比較的 N 値が大きい表層の下に 45m もの軟弱測所(GL-34m)で得られた本震と余震の加速度記録80Fourier amplitude [Gal*s]1)Acceleration [Gal]ータであり,粘土層のパラメータは,Para 1,Para 2 共に解析に用いた地盤モデルは 3 次元モデルであり,要素試験シミュレーションを実施した試料の採取地点のボーリ2 8040NS成分 [Gal]NS成分 [Gal]800−402最大加速度 [cm/s ]水平変位 [mm]0040100002001010As (砂)−40204080−40EW成分 [Gal]04080EW成分 [Gal](a) 本震(b) 余震30深度 GL− [m]0−80−80深度 GL− [m]−40Ac1 (粘土)40Ac2 (粘土)図-8 入力地震動の水平加速度波形のオービット表-3 解析に用いたパラメータおわんパラメータ砂 (As)Para-1Para-2粘土(Ac1)(Ac2)(Ac3)3554740941G0kPa3788355736γ0.5-0.0014700.0006360.003500hmax-0.210.210.20A--1.0-1.0-0.612.037263C-5.08.0D-6050Cc/(1+e0)-0.0330 0.0070 0.0201 0.00700.0302Cs/(1+e0)-0.0300 0.0060 0.0200 0.00600.0300Xl-0.220.110.2460Case1−1Case2−1Case1−1Case2−17070過剰間隙水圧比合せん断ひずみ 0020.004400.150.22同じ値である.なお,初期せん断剛性 G0 は表-2 に示した地盤定数に基づいて設定したため,要素試験シミュレーションで用いた値とは異なる.10102020深度 GL− [m]R-OパラメータPara-240Ac3 (粘土)60深度 GL− [m]埋土 (F)305050Para-1200F (埋土)020−80−8010030400.51.03040表-4 に,実施した解析の一覧を示す.ここで,Para 3 は,5050F 層と As 層の過剰間隙水圧の発生を抑制した場合のパラメータである(詳細は 3.3 節に記述).以下では,各解析6060結果の比較検討を行った.Case1−1Case2−170表-4 解析ケースCase1-1Para2(液状化)○1方向(EW)(Case1-1 と Case2-1)2方向同時(EW, NS))対して,Case 2-1 では 0.25~0.8 程度の過剰間隙水圧比の○Case2-1○Case2-2○Case3-2加震方向Para3(水圧抑制)70図-9 最大応答値の深度方向分布解析パラメータPara1(非液状化)Case1−1Case2−1上昇が見られた.○3.2○○水平 2 方向同時加震が液状化に与える影響本節では,1 方向加震で液状化が見られた Para 2 を用い○て,水平 2 方向同時加震が液状化に及ぼす影響を検討した.図-10 に,Case 2-1(1 方向加震)と Case 2-2(水平 2 方向3.1同時加震)の最大応答値の深度方向分布を示す.Case 2-2液状化強度の違いによる地盤応答の差異本節では,Case 1-1 と Case 2-1 の比較から,液状化強度の結果を見ると,As 層に加えて F 層でも液状化が生じての違いによる応答の差異を検討した.ここでは,応答を比おり,それに伴って地表面付近で大きなせん断ひずみと応較するため,入力波は EW 成分のみの 1 方向加震とした.答加速度が確認された.すなわち,Case 2-1 では,液状化図-9 に,水平変位,応答加速度,合せん断ひずみ,過剰は As 層の上部に留まり,F 層の液状化は見られなかった間隙水圧の最大値の深度方向分布を示す.水平変位と応答のに対し,Case 2-2 では表層部(F 層,As 層)のほぼ全域加速度は,Case 1-1 と Case 2-1 とでほとんど差は見られなが液状化する結果が示された.かった.一方で,せん断ひずみと過剰間隙水圧比の結果にCase 2-2 の入力加速度,地表面加速度,および各層の中は顕著な差が見られた.Case 2-1 では As 層上部において間深度における過剰間隙水圧比の時刻歴を図-11 に示す.大きなせん断ひずみが生じ,それに伴って過剰間隙水圧比なお,同図の右側は,最大加速度が確認された前後の時刻も 1.0 に達して液状化に至っている.F 層の応答を見ると,(100~150 秒)の応答を拡大したものである.地表面加Case 1-1 では過剰間隙水圧がほとんど発生していないのに速度の時刻歴を見ると,振幅は加震から 120 秒以降で急激135 2合せん断ひずみ 最大加速度 [cm/s ]水平変位 [mm]0020000400200004003過剰間隙水圧比0.0060.51.0F (埋土)10101010202020204030405050深度 GL− [m]30深度 GL− [m]深度 GL− [m]深度 GL− [m]As (砂)3040Ac1 (粘土)3040Ac2 (粘土)50506060Ac3 (粘土)6060Case2−1(EW)Case2−2(NS)Case2−2(EW)Case2−1(EW)Case2−2(NS)Case2−2(EW)7070Case2−1Case2−2Case2−1Case2−27070AsAc13001500−150−3003001500−150−30001.0EW成分 Max=212Gal地表面加速度 [Gal]F地表面加速度 [Gal]図-10 最大応答値の深度方向分布(Case2-1 と Case2-2)NS成分 Max=315Gal2004006000.5800入力加速度 [Gal]過剰間隙水圧比As (No.13)0.01.080400−40−800110120130140150F (No.4)200400600800EW成分 Max=66GalNS成分 Max=55Gal2004006001.00.5As (No.13)0.01.00.5Ac (No.43)入力加速度 [Gal]過剰間隙水圧比0.50.5Ac3NS成分 Max=315Gal0.01.00.0080400−40−803001500−150−3001001.0EW成分 Max=212Gal0.5F (No.4)0.0Ac23001500−150−3008000.010080400−40−8080400−40−80100時間 [sec]Ac (No.43)110120130140150EW成分 Max=66GalNS成分 Max=55Gal110120130140150時間 [sec]図-11 地盤応答の時刻歴(Case2-2)に小さくなり,波は長周期化している.これは,地盤が液大きい.As 層の応力~ひずみ関係を見ると,Case 2-1 では状化した際に見られる挙動のひとつである.また,110~徐々に剛性が低下しているのに対して,Case 2-2 ではある120 秒の間には,応答加速度に鋭いピークとスパイク状の回数の繰返しせん断を境に急激な剛性低下が見られた.波形が現れており,F 層と As 層の過剰間隙水圧比の波形以上の結果より,今回のような強軸方向の見られない地からは,有効応力が周期的に回復するサイクリックモビリ震動で液状化の検討を実施する際は,水平 2 方向加震が解ティ挙動が見てとれる.析結果に大きな影響を及ぼすことを念頭に置く必要があ図-12 は,F 層と As 層の中間深度における要素挙動である.る.F 層の応力~ひずみ関係を見ると,Case 2-1 では剛性低下はほとんど見られず線形性を保っているのに対し,3.3Case 2-2 では加震に伴って剛性は低下し,非線形応答を示本節では,液状化地点の地盤を想定した Case 2-2 と,液している.また,有効応力の減少の程度も Case 2-2 の方が状化層の水圧上昇を抑制したパラメータ:Para 3 を用いた136液状化層の水圧上昇を抑制した場合の地盤応答 2030No.4 (YZ)yz [kN/m ]No.4 (YZ)30No.13 (YZ)00−20−0.020yz−200202m' [kN/m ]00−30−0.0340yz2040602m' [kN/m ]8030No.4 (YZ)30No.13 (YZ)No.13 (YZ)22No.4 (YZ)20(b) Case2-1 (As 層)yz [kN/m ]20−3000(a) Case-2-1 (F 層)yz [kN/m ]No.13 (YZ)22yz [kN/m ]200−20−0.0200yz−200202m' [kN/m ]00−30−0.0340−3000yz(c) Case-2-2 (F 層)2040602m' [kN/m ]80(b) Case2-1 (As 層)図-12 F 層と As 層の要素挙動(Case2-1 と Case2-2, EW 方向)2最大加速度 [cm/s ]水平変位 [mm]Case 3-2 とを比較し,解析的に表層部の液状化が地震応答0020000400200400に与える影響を検討した.Para 3 は,Para 2 の F 層と As層の液状化強度の下限値 Xl を無限大とし,多数回の繰返10102020メータである.深度 GL− [m]図-13 に,Case 2-2 と Case 3-2 の最大応答値の深度方向分布を示す.せん断ひずみと過剰間隙水圧比を見ると,Case 2-2 と比較して Case 3-2 では F 層と As 層の過剰間隙水圧の上昇が抑制されており,せん断ひずみもほとんど生じていない.また,水平変位,応答加速度も低減されてい深度 GL− [m]しせん断応力が作用しても液状化しない地盤としたパラ3040603-2 の Ac 層の水平変位,せん断ひずみ,および過剰間隙水圧比が,Case 2-2 と比べて大きくなっている点である.Case2−2(NS)Case2−2(EW)Case3−2(NS)Case3−2(EW)70合せん断ひずみ に弱い Ac 層で軟化が進行し,過剰間隙水圧が上昇したと00解釈できる.Case2−2(NS)Case2−2(EW)Case3−2(NS)Case3−2(EW)6070これは,F 層と As 層の水圧上昇を抑制することで相対的405050る.なお,ここで注目すべきは,水圧上昇を抑制した Case303過剰間隙水圧比0.0060.51.0F (埋土)4. 解析に基づいた地震後の沈下量の検討10102020深度 GL− [m]本章では,3 章の解析結果を用いて本震と余震による地震後の地盤沈下量を検討した.沈下量の算定には,2.3 節で述べたように累積せん断ひずみを用いた.累積せん断ひずみを用いて算定した圧縮量と,繰返し非排水せん断後の圧密沈下量が対応することは,2.3 節で検証済みである.以下では,解析ケースごとに沈下量を算定し,表層地盤の液状化が地震後の沈下に及ぼす影響を検討した.さらに,3040実測値と呼称)を比較し,その整合性を確認した.30Ac1 (粘土)40Ac2 (粘土)50506060Ac3 (粘土)Case2−2Case3−2Case2−2Case3−2解析から求めた沈下量(以下,解析値と呼称)と,浦安市を対象とした地震被害調査 5) 10)で測定された沈下量(以下,深度 GL− [m]As (砂)7070図-13 最大応答値の深度方向分布(Case2-2 と Case3-2)137 4.14.2液状化が地震後の沈下に及ぼす影響解析値と実測値の比較図-14 に,解析結果から算定した沈下量の深度方向分布前節で算定した地震後の沈下量の妥当性を検討するたを示す.ここでは,水平 2 方向同時加振の条件で解析しために,解析値と実測値の比較を行った.実測値とは,JR各ケースの最終沈下量を求めている.まず,非液状化地点京葉線新浦安駅から浦安市シンボルロードに沿って測線(Case 1-2)の沈下量を見ると,累積沈下量 160mm のうち,を設定し,地震発生後から 2 年間に渡り継続的に地表面沈表層(F 層と As 層)50mm,Ac 層 110mm と示された.一下量を計測した成果 5) 9)である.図-15 (a)は,地震発生か方,液状化地点(Case 2-2)の沈下量は,累積沈下量 300mmら 1~2 週間経過時点での測線に沿った沈下の分布であるのうち,表層 280mm,Ac 層 20mm であり,液状化した表5)層の沈下量が全体の 9 割以上を占めるに至った.していないと仮定し,この実測値は表層(F 層と As 層).なお,この時点では,Ac 層の圧密沈下はほとんど進行Ac 層の沈下量を比較すると,非液状化地点における沈で生じた液状化による即時沈下量として取り扱う.また,下量は液状化地点と比べて大きな値を示している.Case図-18 (b)は,即時的な沈下を除いた地震後の地表面沈下3-2 は表層の水圧上昇を抑制した解析結果であるが,表層量である 9).この実測値は粘土層で生じた圧密沈下量に相の沈下が抑制された反面,粘土層で非液状化地点と同等の当する.図中の液状化範囲は,地震被害調査結果 11)を参考沈下量が示された.すなわち,今回のような地層構成の地にしている.液状化範囲における沈下量の実測値は,表層盤では,表層が液状化するか否かによって,地震後に生じ50~450mm,Ac 層 5~20mm(2013 年 4 月時点)であった.る粘土層の圧密沈下量が大きく異なることが示された.また,非液状化地点での実測値は,表層 0~100mm,Ac層 20~70mm であり,いずれの実測値も解析値と概ね一致累積沈下量 [mm]00100200300する結果となった.4005. まとめF (埋土)10As (砂)千葉県浦安市の南東部の埋立て地内における液状化地深度 GL− [m]20点,非液状化地点を対象とし,2011 年東北地方太平洋沖地震の本震と余震を連続入力した有効応力解析を行った.Ac1 (粘土)30本解析では,液状化地点,非液状化地点に加え,水圧上昇を抑制し,液状化を防止した場合の地盤応答について検討40した.さらに,解析結果に基づいて地震後の沈下量を推定Ac2 (粘土)し,実測値との比較を行った.その結果,以下のことが明50らかになった.Ac3 (粘土)601) 今回のような強軸方向の見られない地震波で解析を実Case 1−2 (非液状化)Case 2−2 (液状化)Case 3−2 (水圧抑制)施する場合,2 方向同時加震が解析結果に及ぼす影響は大きいことを示した.702) 地震後の沈下量の解析値と実測値は,概ね良い整合性図-14 最大応答値の深度方向分布Settlement [mm]A−2000200400600800−200204060800を示した.液状化非液状化(a) F&As layerMar. 201313 Apl. 201111 Apl. 201210 Apl. 2013500A’1000(b) Ac layer150020002500Distance [m]図-15 測線に沿った地震後の沈下量の実測値138 3) 表層地盤の水圧上昇を抑制した場合,下部の粘土層でJSCE, Special Topic - 2011 Great East Japan Earthquake, Divisionひずみが卓越し,地震後の粘土層の沈下が助長されるA (Invited paper), pp.307-321, 2013.ことを解析的に示した.6) Shamoto, Y, and Zhang, J.-M : Evaluation of Seismic Settlement本報は,地盤工学会東日本大震災対応調査研究委員会Potential of Saturated Sandy Ground Based on Concept of Relative「地盤変状メカニズム研究委員会(委員長:浅岡顕)」にCompression,おける研究成果に基づくものである.ここに感謝の意を表Geotechnical Aspects of the January 17 1995 Hyogoken-Nambuする。Earthquake, Vol. 2, pp. 57-68, 1998.SoilsandFoundations,SpecialIssueon7) Ishihara, K. and Yoshimine, M. : Evaluation of settlements in sand参考文献deposits following liquefaction during earthquakes, Soils and1) 地盤工学会: 地盤材料の構成式ワークショップ (第 3 回) 当Foundations, Vol. 32, No. 1, pp. 173-188, 1992.日配布資料, 2014.8) Shamoto, Y., Sato, M and Zhang, J.-M : Simplified estimation ofearthquake-induced settlements in saturated sand deposits, Soils2) Nishimura, S. and Towhata, I. : A three-dimensional stress-strainand Foundations, Vol. 36, No. 1, pp. 39-50, 1996.model of sand undergoing cyclic rotation of principal stress axes,9) 東京都港湾局: 港湾局地震観測所で観測した地震動について,Soils and Foundations, Vol. 44, No. 2, pp. 103-116, 2004.3) 福武毅芳: 土の多方向繰返しせん断特性を考慮した地盤・構http://www.kouwan.metro.tokyo.jp/business/keiyaku/kisojoho/jishi造物系の三次元液状化解析,名古屋工業大学博士論文, 1997.ndou.html, 2014.4) 福武毅芳, 馬渕倉一, 吉田望, 社本康広: 砂や薬注改良体の初10) Nigorikawa, N. and Asaka, Y. : LONG-TERM SETTLEMENT期サイクリックモビリティ後のシミュレーション, 第 43 回地OF HOLOCENE CLAY GROUND AFTER THE 2011 GREAT盤工学研究発表会, pp. 437-438, 2008.EASTJAPANEARTHQUAKE,10CUEEConferenceProceedings, pp. 371-378, 2013.5) Fukutake, K. and Jang , J. : STUDIES ON SOIL LIQUEFACTIONAND SETTLEMENT IN THE URAYASU DISTRICT USING11) 国土交通省関東地方整備局, 地盤工学会: 東北地方太平洋EFFECTIVE STRESS ANALYSES FOR THE 2011 OFF THE沖地震による関東地方の地盤液状化現象の実態解明 (報告PACIFIC COAST OF TOHOKU EARTHQUAKE, Journal of書), 2011.139 Studies on ground behavior in the Urayasu District using effective stress analyses forthe 2011 Off the Pacific Coast of Tohoku Earthquake- Estimation of the effects of multi-directional shaking -Naohiro NIGORIKAWA1,Takatoshi KIRIYAMA1,Kiyoshi FUKUTAKE11Institute of Technology, Shimizu CorporationAbstractFocusing on the reclaimed land in Urayasu City, Chiba Prefecture, seismic ground response analysis by effectivestress analysis was conducted to estimate degree of soil liquefaction. The constitutive equations used in the analysiswere the R-O model in combination with a bowl model. The analysis parameters are set from element-test resultswith in-situ soil sample. The input seismic motion was the acceleration record for the main shock and aftershock ofthe 2011 off the Pacific Coast of Tohoku Earthquake. The analysis results show that the evaluation of shear strainsunder multi-directional shaking is an important issue in interpreting dynamic soil behavior. In case of preventingincrease of pore water pressure in sandy layer, much of the settlement occurs in clay layer. In addition, the resultswere compared with ground settlements surveyed.Key words: effective stress analysis, direction of shaking, settlement,140
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  • タイトル
  • マルチハードニングモデルによる浦安の液状化解析
  • 著者
  • 塩見忠彦・藤原良博
  • 出版
  • 地盤工学会特別シンポジウム -東日本大震災を乗り越えて-
  • ページ
  • 141〜145
  • 発行
  • 2014/05/14
  • 文書ID
  • 67552
  • 内容
  • 地盤工学会特別シンポジウム-東日本大震災を乗り越えて-13マルチハードニングモデルによる浦安の液状化解析塩見忠彦 1,藤原良博 11株式会社マインド概要2011 東北地方太平洋沖地震で液状化の被害を受けた浦安市埋立地の液状化解析を行い、液状化の要因のうち地震動の特性(水平二方向入力)と地中内部の初期応力の影響度合いを示した。解析モデルは地盤工学会東日本大震災対応調査研究員会「地盤変状メカニズム研究員会(委員長:浅岡顕)」の「地盤材料の構成式ワークショップ」で設定されたモデルを用い、解析手法にはマルチハードニング構成則を用いた。この構成則は弾性定数、動的変形試験、液状化試験結果をそのまま入力パラメータとして用いることが出来る。これにより設定されたモデルデータをそのまま用いた解析を行った。キーワード:累積損傷度,有効応力解析,液状化、浦安、地震応答解析1.はじめに3) 主要道の周期は後半が前半よりもやや長い。本稿は、地盤工学会東日本大震災対応調査研究員会「地盤変状メカニズム研究員会(委員長:浅岡顕)」に関連する研究報告である。委員会の一つの活動として、浦安の液状化現象が取り上げられた。委員会に関連した地盤調査によると液状化強度はかなり強かった1)。それにもかかわらず液状化した理由として図 2継続時間が長かったことが挙げられている。液状化解析にK-NET 浦安地表面の加速度時刻歴よると水位、横応力比、地震動の多方向性などの影響があった。ここでは、その内容について報告する。2. 地震動の特徴液状化の検討の入力動は、2011 東北地方太平洋沖地震の K-NET(CHB008 浦安、図 1◇マーク)観測記録(地図 3 K-NET 浦安-40m 地点で計算した基盤波表面)より求めた-40m における 2E 波とした。基盤波の精度の確認のために国交省港湾局の港湾地域強震観測の品川-36m の観測記録波(図 1 左)と比較確認した。図 4 港湾局、品川-36m 地点の加速度時刻歴品川観測点図 1 検討対象位置と地形(右図は Google Map に表示)2.1継続時間と最大加速度K-NET 観測波と基盤波を図 2~図 5 に示す。1) 最大加速度は、浦安(NS125gal, EW157gal)、品川地表(NS208gal,EW205gal),-36m(NS55gal, EW66gal)である。図 52) 主要動の継続時間時間が 100 秒と長い。141K-NET、港湾局品川観測記録の応答スペクトル 2.2液状化強度がいずれの土質も非常に高く、一般には液状化方向性(オービット)対象地震動のオービットは図 6 に示すように 1995 年兵しにくい値である。浦安市液状化対策技術検討委員会の液庫県南部地震の時とは異なり主とする地震の方向がなく、状化判定から埋土(FB)と砂層に液状化の可能性がある。本ピーク振幅がほぼ円状になっているのが特徴である。この検討では粘土層も液状化と同様に繰り返しひずみによる地震動の影響を調べるために単一方向加振(EW)と二方向剛性低下があることから、砂質土と同様に液状化強度曲線加振の結果を比較した。を設定した。K-NET 浦安地表面図 6港湾局品川-36mK-NET、港湾局品川観測記録のオービット3. 地盤のモデル化図 8 動的変形特性と液状化強度検討対象地点および地層構成は「地盤材料の構成式ワー4. 構成式クショップ」で用いられた浦安市新町の地層(図 1 に示す。表 1 に地層構成と地盤物性を示す。工解析にはマルチハードニングモデル(MH モデル)を用い学的基盤は 400m/s、ポアソン比は 0.3 とした。初期応力はた。このモデルの特徴は、せん断挙動、体積挙動、ダイレK0=0.5 と 1.0 を想定した。Vs と併せて図 7 に示す。イタンシー挙動をそれぞれ独立にモデル化することと、そB 地点)とした1) 2)れぞれの構成則のパラメータが地盤調査で得られるデー新町の地下水位は特に深いところを除けば、G.L. -1m 前後であるが 、浦安市内ではそのばらつきが大きいので、タそのものであることである。たとえばせん断の硬化則に水位をパラメータとしてその影響を調べた。ついては動的変形曲線を入力値とする。3)せん断挙動と体積挙動はそれぞれの降伏曲面を持ち、流れ則に従う。従って塑性ひずみを以下のように表す。表 1 解析対象地盤モデル土質層厚(m)密度(t/m3)間隙比細粒分(%)F,B91.6841.4647.4As101.9290.9314.6Ac1171.5512.187.5Ac2151.4802.587.5Ac3131.7041.487.5基盤d e  d  d sp  d vc  d vd(1)ここで、 d e は弾性ひずみ増分、 d は全ひずみ増分、d sp は塑性せん断ひずみ増分、 d vc は塑性圧縮体積ひずみ増分、d sd はダイレイタンシーによる塑性体積ひずみ増分を表す。これらの塑性ひずみは、それぞれ次のように表す。塑性せん断ひずみ増分は次のようになる。1.900dε sp  ds n gds n f De dεH 'n f Den g(2)ここで ng はせん断塑性ポテンシャル曲面に対する法線ベクトル、nf はせん断降伏曲面に対する法線ベクトルである。降伏曲面については、Mohr-Coulomb の降伏曲面を用いた。せん断ポテンシャル曲面は(Tresca 曲面のように)拘束圧に依存しない曲面としている。ここで硬化関数 H’は、応力―ひずみ関係の接線剛性 GT(γ)から次式のように求められる。この定式化により、動的変形試験により得られる G-γ曲線から、τ-γ曲線を計算し、その接線を求めれば、硬化関数 H’が得ることが出来る。H (GT ( ), G0 ) 図 7 初期応力と地盤剛性の深度分布GT ( )G ( )1 TG0(3)ここで示すせん断ひずみγは三次元定式化では相当ひず弾塑性パラメータは、動的変形試験から得られた動的変形特性と液状化強度試験結果を直接入力値とした(図 8 )。142み比γ*を用いる。  *  0.5 ij   ijc  ij   ijc (4)d vd ここで、ζij は参照ひずみで正規化した偏差ひずみ比であ /  y  M 0 d1 etan  f1 M 0K(9)る。このγ*に対応する応力が、ダイレイタンシーを求めこのとき  は相当応力、  y は降伏応力、Mo は変相角とるときの尺度になる。なお、図 9 に示すように応力反転破壊角の比である。時ごとに降伏曲面に相似な内部曲面を想定し、塑性成分は圧縮性の塑性体積ひずみはつぎのように求める。この曲面の法線成分となる。なお図は簡略のために降伏曲d vd  d ve  面を円状に表記している。d mdr ( D)    u e m0KeK(10)ここで Ke は次式で得られる体積弾性係数、εvd は塑性体積偏差ひずみ比ひずみ、 σ ’min は液状化による平均有効応力の最小値、は、偏差ひずみdru(D)は過剰間隙水圧比増分、D は損傷度である4)。応力に対応する。Ke 1K min    K min  m d m minv2(11)5. 解析結果図 9 三次元応力空間における半波のせん断成分解析結果を初期応力と多方向入力について検討した。5.1初期応力の影響ダイレイタンシーは図 10 に示す応力反転時(除荷点)初期応力の有無の影響は大きかった。初期応力は水位とを起点とした現在の応力から累積損傷度を求める。それに横応力比に依存する。水位が高い場合は地中の初期平均有対する応力比が(a)変相線よりも小さい場合と(b)変相線を効応力が低く液状化が起こりやすい。図 11 に K0=0.5 の越えた場合に分ける。前者の場合は図 10 のフロー図に示場合について過剰間隙水圧を初期上載圧とともに示した。すように液状化強度曲線を用いて応力比より半波ごとに両者ともに過剰間隙水圧は上昇するが、水位 0m の場合に1/(2N)で定義される損傷度を求め、この損傷度の累積からは表層で液状化に達するのに対して、-1.8m の場合には上経験式を用いて過剰間隙水圧比計算する。昇が小さかった。これは、水位が 1.8m 低い場合には水位以下の地層に 1.8G の載圧荷重が加わり拘束圧が増し液状化が生じにくいためである。新町の水位は-0.5m~3.8m と大きくばらついている 3)ので、地点毎に液状化発生が異なる原因の一つになっていると考えられる。液状化要因の地点による違いは工学基盤の深さなどほかにもあることから、ここでは発生状況そのものではなく、要因の影響の大きさについて調べた。図 10 ダイレイタンシーと過剰間隙水圧後者の場合は、応力比が変相線にぶつかった時のせん断剛性を GCM、平均拘束圧をσ’mp として、次式で接線せん断剛性を求める。ここでγ max はそれまで経験した最大のせん断ひずみである。GCM(),fb( )は実験から求められた経験式である。GT  GCM  f b  max  GCM  Gm0 10 6.0 Rsm0.15 m   mp Gm0 m 06.6Rsm f b  max   5b  exp  40.0   max   b mp m 0(5)(6)図 11 上載圧と間隙水圧(初期応力の違い)(7)また K0 が 1.0 と 0.5 の場合について検討したが、このG b  350.0   m 0   m 0 1.4影響も大きかった。図 12 に示すように K0=0.5 の場合は 0.0045過剰間隙水圧上昇が見られたが、K0=1.0 の場合はかなり(8)小さかった。これは、横応力比が 0.5 の場合は初期せん断この時の塑性体積ひずみは次のように定義される。応力が作用している状態になるために、応力が破壊角およ143 び変相角に近く、破壊による拘束圧変化が生じ液状化に結びついたものと考えられる。(a)表層(b)最下層図 14 二方向せん断応力のオービット図 12 最大加速度と過剰間隙水圧(初期応力の違い)5.2二方向成分の影響入力動の影響は地震動の長さが注目されているが、二方向成分の影響もあったと考えられる。石原と山崎5)によれば、二方向成分の振幅が同じ程度の場合には、位相の違い図 15 二方向載荷による過剰間隙水圧上昇の違いにかかわらず液状化強度が 3 割ほど小さく評価されることが示されている。また酒句・安達6)は液状化の検討には6. おわりに二方向成分を考慮する必要性を仮動的実験により指摘している。さらに塩見・吉澤7)は兵庫県南部地震のように地マルチハードニング構成モデルによる浦安市の液状化震動の主軸がはっきりとしている場合においても、二方向解析を行い、その液状化現象が、地震動の継続時間だけで載荷の違いを解析的に指摘している。なく、水位、横応力比および入力地震動の水平二方向成分の影響を考慮する必要があることを示した。ただ、地震動の多方向入力に対する精度については課題が残った。参 考 文 献1)「地盤材料の構成式ワークショップ(第三回)」発表資料、地盤工学会、地盤変状メカニズム研究員会、2014.1.9~102) 中井、中野、野田、山田、村上、浅岡:浦安市の地盤から採取された沖積粘土の力学性の把握、第47回地盤工学研究発表会、pp.267-268、20123) 浦安市液状化対策技術検討委員会:浦安市液状化対策技術検討調査報告書、pp.13, 20124) 藤原、塩見:マルチハードニングによる土の構成式、計算工学講演論文集、Vol.17, 20125) Ishihara, K. and Yamazaki F.: Cyclic simple shear tests on saturatedsand in multi-directional loading, Soils and Foundations, Vol. 20, No. 1,pp. 45-59, 19806) 酒句、安達:仮動的実験による飽和砂地盤の地震応答特性に与える二方向入力の影響、日本建築学会構造系論文集、第569号、pp.65-71、2003.7) Shiomi, T. and Yoshizawa, M.: Effect of multi-directional loading andinitial stress on liquefaction behavior, 11th WCEE, Paper No.1676.図 13 水平二方向載荷時の液状化強度(石原・山崎による)ここでは、EW 方向単独入力動と EW、NS 二方向入力動の解析を行いその影響を検討した。せん断応力のオービットは図 14 に示すように様々な方向の応答を示したが、過剰間隙水圧は図 15 に示すように EW 単独方向載荷に比べて若干大きくなる程度であった。この結果からは本構成式による解析では二方向載荷の影響が石原・山崎らの研究よりも小さく評価された可能性がうかがえる。144 Liquefaction analysis of Urayasu-site by the Multi-Hardening ModelTadahiko SHIOMI1 and Yoshihiro FUJIWARA11Mind Inc.AbstractConditions or factors to induce the liquefaction phenomenon of Urayasu bay area subjected to “The 2011 off thePacific coast of Tohoku Earthquake” are discussed based on their simulation analyses. The liquefaction took placeeven far from the epicenter. It is said that the reason of this partially long period of earthquake. But it should benoticed that the initial stress condition and direction of earthquake component are another key factors of liquefaction.Estimation of those influences is calculated for a numerical model built by a research committee of JapaneseGeotechinical Society by the multi-hardening constitutive equation.Key words: liquefaction, Earthquake response analysis, initial stress, constitutive equation, Urayasu bay area145
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  • タイトル
  • 3D FEM 解析による再液状化メカニズムの解釈の試み
  • 著者
  • 張鋒・森河由紀弘・阪口秀・平朝彦
  • 出版
  • 地盤工学会特別シンポジウム -東日本大震災を乗り越えて-
  • ページ
  • 146〜155
  • 発行
  • 2014/05/14
  • 文書ID
  • 67553
  • 内容
  • 地盤工学会特別シンポジウム-東日本大震災を乗り越えて-143D FEM 解析による再液状化メカニズムの解釈の試み張鋒 1,森河由紀弘 2,阪口秀 3,平朝彦 41名古屋工業大学・創成シミュレーション工学専攻2名古屋工業大学・社会工学専攻3独立行政法人海洋研究開発機構・地球内部ダイナミクス領域4独立行政法人海洋研究開発機構概要東北地方太平洋沖地震では広範囲で液状化が発生し,人々の生活に長期間にわたって大きな影響を及ぼした。また,近年では長時間の地震動や短時間における複数回の余震による液状化被害の拡大が懸念されている。今後発生することが予想されている連動型地震に適切に対応するためにも,地盤の再液状化を含めた地震時における地盤の複雑な力学挙動を論理的解明しなければならない。本研究では,3 次元水・土連成動的有限要素解析手法を用い,繰返し来襲する長時間の地震動による動的挙動と液状化後における過剰間隙水圧の消散に伴う圧密解析を試みた。キーワード:再液状化,3DFEM 解析,弾塑性構成式1. は じ め に2. 液状化による被害平成 23 年 3 月 11 日 14 時 46 分 18 秒に太平洋三陸沖を「浦安市液状化対策技術検討調査委員会 第二回委員震源とする東北地方太平洋沖地震が発生し,地震の規模を会」で報告された千葉県浦安市における液状化,及び再液示すマグニチュードは国内観測史上最大 9.0 を記録した。状化による被害状況を図 1 に示す。図 1(a)に示す本震直この未曾有の大震災による被害者数は消防庁災害対策本後に比べ,図 1(b)に示す余震直後において浸水範囲が広範部の公式発表(平成 26 年 3 月 7 日)によると死者 18,958囲化していることがわかる。このように,東北地方太平洋人,行方不明者 2,655 人,負傷者 6,219 人であった。この沖地震では短期間内に複数回発生する余震により本震で大震災の特徴として,「地震動の長継続時間性」,「津波には液状化しなかった範囲まで広範囲に液状化が発生し,こよる地盤の浸食・洗掘」,「地盤が不健全化した後の津波のの再液状化が地盤の長期不安定化をもたらし,被害を拡大来襲」,「短期間における複数回の余震」等が挙げられる。させたと考えられる。この大震災については今日まで様々な被害が報告されており1)2),特に津波や液状化による被害は観測史上最大規模であった。その被害は今までの代表的な震災である「地震動による建物の倒壊」や「液状化による構造物の損傷」のみならず,巨大津波による被害も甚大であった。本稿ではその中でも液状化被害を拡大させたと考えられる余震による再液状化に着目した。今回の液状化被害は観測史上最大規模のものであり,これは非常に大きな本震により地盤全体が健全度を失い,その状態で本震よりも比較的小さい余震を複数回受けることにより地盤の再液状化やせん断履歴によるダメージ,過剰間隙水圧の再上昇などに起因すると考えられる。そこで本稿では本震のみを対象とした単独大規模地震動による解析・評価のみではなく,(a)本震直後余震も含めた複数回の地震動による弾塑性動的有限要素(b)余震直後図 1 余震による液状化被害の拡大3)解析を行うことにより,液状化やその後の圧密沈下等についての影響を考察した。146 液状化による構造物の被害状況を図 2 に示す。地盤のモビリティを示すような状態では異方性の大きさに依存液状化により民家周辺の垣根や電柱等は激しく傾き,個人して楕円の扁平率が変化する。すなわち応力誘導異方性が住宅においても日常生活が困難な被害も多数確認されて大きくなるほど,楕円の扁平率が大きくなることを特徴といる(日本建築学会によると,0.6deg=1/100 でめまいや頭する。ここで,軸(<M)はせん断履歴により,静水圧痛が生じて水平復元工事を行わざるを得ない)。また,図軸である p 軸から1,2 へと変化する。2(b)に示すように上下水道,電気・ガス管などの地下埋設物は浮上りの被害が生じた。特に圧力をかけずに自然流下yield surface on cyclic mobility state方式により汚水を流下させる下水道等は浮上りなどにより管路勾配が逆勾配となることで,管路を再設置するまでSubloading yield surfaceCam-clay yield surfaceSuperloading yield surfaceqMqM長期間にわたり使用不可能となった。- (p,q)* *(p ,q )(p,q)C.S.L21ppm-p*mpmp-qC.S.L-q図 3Cyclic mobility model の降伏曲面一般応力状態での下負荷面は次式のようになる。f  ln(a) 住宅地の様子pp0* lnM 2   2   *2M 22 ln R*  ln R  vpCp0(1)ここで,1p   ii3* (b) 埋設管の浮上り被害(2)S ij  ij  p   ij3ˆij   ij   ij  ij ˆijˆij2pp,,3 ij ij 2,3  ij  ijCp 21 e0,(3)(4) p  Rp1,0  R 1 , R OCRq  Rq(5) p *  R * p, 0  R*  1 *q  R *q(6)であり, ( p, q) , ( p*, q*) , ( p, q ) は Subloading yield surface,図 2 構造物の被害状況4)Cam-clay yield surface, Superloading yield surface 上での平均主応力と軸差応力,p0*は初期基準状態での pm*,Sij は偏3. 解析モデル差応力テンソル,ij は異方性応力テンソルである。ここで,3.1式(1)より適合条件式は以下のようになる。モデルの定式化解析は回転硬化型弾塑性構成式 Cyclic mobility model5)にdf 6)よる土水連成有限要素解析プログラム「DBLEAVES 」を用111ffd ij d ij  * dR *  dR d vp  0 ij ijRCpR(7)いる。Cyclic mobility model は土の力学挙動に大きな影響を与える土の密度や過圧密比,自然堆積過程に形成された3.2 応力誘導型異方性応力テンソルの発展則構造,および各種応力履歴を受けることで発生した土の応応力誘導異方性は過去の応力履歴に依存し,特に砂のよ力誘導異方性を一つのモデルでパラメータを変えることうな粒状体において,粒子の配列が土の挙動,特にせん断なく表現することを目的に開発された構成式である。強度だけではなく,ダイレタンシーにも多大な影響を与えZhang et al.(2007)は下負荷面の概念(Hashiguchi and Ueno ,る。図 4 に相対密度 Dr=20%の豊浦標準砂を対象とした動1977) 及び,上負荷面の概念(Asaoka et al. , 1998) に基づき,的三軸試験結果を示す。せん断過程においてせん断方向が図 3 に示す平均主応力 p~軸差応力 q 面上での新たな降伏変わると砂の体積変化特性が急激にせん断膨張から圧縮,曲面を提案した。このモデルの特徴の一つは限界状態線あるいは圧縮から膨張に転じるため,体積変化が許されな(以下 C.S.L)の勾配が異方性の発展によらず一定となり,い非排水条件下では間隙水圧が急激に変化し平均有効応楕円形の降伏曲面の扁平率が一定ではなく,サイクリック力が増減する。これは明らかに限界状態線(C.S.L)の付近に7)8)147 おいて,応力誘導異方性が発達していてその変化も激しく3.5 Cyclic mobility model の特徴なり,弾塑性挙動を伴いながら平均有効応力を増減させる提案モデルの特徴を以下にまとめる。を意味する。従って,異方性応力比が C.S.L の勾配 M を土の力学挙動を表現している 8 つのパラメータの内,1)上回らないよう,応力誘導異方性テンソルの発展則は以下5 つのパラメータ(,k,M,N,)はカムクレイモのように定式化される。ここで,br は応力誘導異方性の発デルと全く同じであり,室内三軸試験により決められ展速度である dij の大きさをコントロールするパラメータる。他の 3 つのパラメータ(a,m,br)はそれぞれ構である。造喪失の速度,過圧密解消の速度,および応力誘導異方性の発展速度をコントロールするパラメータであq/2p0=0.1550-5-10る。実験結果より,サイクリックモビリティ状態では100102030Mean effective stress p'(kPa)(a) 平均有効応力~軸差応力関係Deviator stress q(kPa)Deviator stress q(kPa)10q/2p0=0.15応力比が C.S.L の勾配とほぼ同じであり,異方性応力5比は<M を常に満足させ,決して C.S.L を超えない。0塑性圧縮と塑性膨張の境界である限界状態線はいか2)なる載荷過程での有効応力経路において不変である。-5-10-10緩い砂の場合はサイクリックモビリティなしで液状3)-505Axial strain(%)化が起きるが,中密の砂の場合はサイクリックモビリ10ティが起きながら液状化に至る。サイクリックモビリ(b) 軸ひずみ~軸差応力関係ティを伴った液状化は主に応力誘導異方性の発展に図 4 サイクリックモビリティの状態(豊浦標準砂,Dr=20%)よって引き起こされる。一方,密な砂は液状化が起きにくい。これらの密度の異なる砂の全ての挙動は同じd ij  6 Mbr ( M   )ˆijC p ( M 2   2   *2 ) p材料パラメータを用いて表現できる。(8)過剰間隙水圧が消散した後に強い動作を受けた場合4)に,再び液状化する現象も表現できる9)。応力誘導異方性の発達の速度は,砂質土のサイクリッ5)3.3 構造喪失の発展則クモビリティ発生までの繰り返し回数に影響を及ぼAsaoka et al.(1998) 8)は合理性に富んだ構造喪失の発展則す。異方性の発達の速度が速ければ速いほど,土のサを提案しており,その概念をそのまま利用する。ただし,イクリックモビリティがより起きやすくなる。異方性の影響を考慮する必要があるので,構造喪失の発展則 dR*は次式になる。ここで,a は構造 R*の喪失速度で4. 解析条件ある dR*の大きさをコントロールするパラメータである。dR *  2aMR * (1  R * ) *C p (M 2  2  *2 ) p4.1(9)被害調査結果解析対象地域は図 5 に示すように東北地方太平洋沖地震において本震だけでなく,余震においても地盤が激しい液状化が発生した地域である。また,解析対象地域では被3.4 過圧密比解消の発展則災後に住民らが自主的に地質調査を行っているため,解析今まで提案されてきた下負荷面を用いている構成式の断面は被害状況やこれらの地質調査に基づいて土層区分多くにおいて,過圧密比の増大は弾性除荷時に下負荷面がを 4 種類に分類し,分類された各地域のボーリグデータを小さくなることによりのみ表現されてきたが,室内試験に参考に決定した。おいて,砂がサイクリックモビリティ領域に入ると,繰返ここで,解析対象地域における液状化被害についてのアしせん断過程において応力経路が V の字のようになり,ンケート調査(180 件回答)により,以下の事実が明らか有効応力がゼロに近づき,過圧密比が増加する現象が見らとなっている。れる。Cyclic mobility model は過圧密の変化速度を塑性ス1)本震により地割れが発生し,早い場所では数分後に,トレッチングテンソルと応力誘導異方性の二つの要因にほとんどの場所では余震時に割れ目(特に側溝と道よってコントロールしている。過圧密の発展則は次式で表路)や家の基礎の周囲,電柱の周囲などから噴砂がされる。ここで,m は過圧密の解消速度である dR の大き発生した。さコントロールするパラメータである。2) fRd ijM  ij噴砂開始直後は水が多い土砂だったが,時間の経過とともに土砂を多量に含んだ噴砂となった。12 m  M ln R 6  ( M 2   2 ) 2 2  p p 0  3dR  C p ( M 2   2   *2 ) p  p p 0 2  1 *23)噴砂(水柱)は 2m も吹き上がった場所があり,噴砂が翌日まで続いた場所もある。また,噴砂量は最大で厚さ 70cm を越す。(10)148 Type AType BType C(m)0(m)0(m)0555100510 15 20 25 30 35 40換算N値100510010 15 20 25 30 35 40換算N値510 15 20 25 30 35 40換算N値図 5 対象地域における液状化被害(撮影:平朝彦氏)図 6 に震災直後に調査した噴砂量の分布,図 7 に震災後における家屋被害調査結果を示す。調査結果より,液状化による噴砂量が多い地域は家屋被害が大きい地域と概ね一致していることがわかる。これは噴砂が多い地域は広範囲に液状化しており,地盤にも大きな緩みが生じているためだと考えらえる。:推定地層区分境界図 8 に震災後半年以内に住民らが行ったスウェーデン図 8 スウェーデン式サウンディング試験結果式サウンディング試験結果を示す。対象地域の地盤種別はType A~Type C の 3 タイプに分類可能である。これらの地質調査結果や図 6~図 7 に示す被害状況を総合的に判断図 9 にサンプリングコアの X 線 CT 像を示す。計測結し,大まかではあるが 300m×400m 程度である解析対象地果から,深度が 6.4m~8.7m の範囲において堆積に伴って域を図 8 に示すような 4 つのエリアに分類した。生じるはずの層構造が確認できない。これは,この深度の層が液状化によって大きく乱されたことを意味する。残念ながら測量杭の破損によって標高を断定することは難しいが,対象地域では概ね深度 6.4m~8.7m 付近において液状化が発生した可能性が極めて高い。2.0-3.0mDepth(m)2.0:0~20cm :20~40cm:ほとんど噴砂なし:40~60cm:60cm以上3.0-3.8m2.02.53.8-4.8m4.8-5.8m5.8-6.8m6.8-7.8m3.84.85.86.84.05.06.07.04.55.56.57.54.85.86.87.82.5:噴砂丘3.8図 6 噴砂量の分布3.07.8-8.8m7.89.0-10.0m10.0-11.0m 11.0-12.0m 12.0-13.0m9.010.011.012.09.510.511.512.510.011.012.013.0Depth(m)8.08.5:大きく傾いた:かなり傾いた:かなり傾いた:全くなかった8.8:液状化層図 7 家屋被害調査図 9 X 線 CT 像とコアの画像(左:X 線 CT 像,右:コアの像)149 解析断面と解析パラメータ4.2解析パラメータは静的・動的三軸試験を行い決定するこ解析には図 8 に示す Type A~Type C のエリアを簡便化とが望ましいが,三軸試験用の供試体や三軸試験結果の入した図 10 に示す解析断面を用いた。ここで,各エリア内手は困難であっため一般的な土質試験結果や N 値等からでは起伏の無い成層地盤として扱い,各エリア間の土層は判断し,解析パラメータを表 1~表 2 に示すように仮定20.0m×2=40.0m で擦り付けを行った。図 10(a)内に表示さした。ここで,透水係数は土工指針等に示されている一般れるアルファベットは土層種別を示し,Type A と Type B的と考えられる値を用いた。との擦りつけ区間を Type AB,Type AB と Type AC との擦図 11~図 15 に繰返し応力振幅比(繰返し軸差応力のりつけ区間は Type ABAC として表示した。また,深度方片振幅の 1/2 を有効拘束圧で除した値)を 0.10 とした場合向の解析メッシュ幅は 1.0m を基本とし,ほぼ単一シルトの非排水繰り返し載荷時の要素シミュレーション結果を層となる GL-16.0m 以深においては 1 辺を 2.0m とした。示す。図 11~図 13 に示す砂質土層である B 層,As1 層,解析に用いられるプログラムには水土連成有限要素解及び As2 層において,荷重の繰返し回数とともにひずみが析手法を用いており,使用モデルは地盤が液状化するかど増大し,サイクリックモビリティを伴いながら液状化に至うかを前もって指定する必要がなく,地盤条件と外力によっている。また,図 14~図 15 に示す粘性土層である Ac1り,自動的に判断を行う解析手法である。境界条件につい層,及び Ac2 層においては過剰間隙水圧が上昇し,液状化ては,メッシュ下部を x,y,z 方向の変位固定,また同一に至らないまでも有効応力が減少していることが分かる。平面上の端部においては x,y,z 方向の等変位境界とした。水理境界については下面,および側面を非排水境界とし,地下水位は GL-1.0m と仮定した。初期応力は,同じ構成式を用いて,自重圧密解析により与えた。400(21 nodes)300(16 nodes)18016028026012010020 20AAB BAACBACA12010020 20BABBBC CBC608020 20160200CB BC20 20名称Compression index Swelling index Stress ratio at critical state MVoid ratio e0 (p'=98kPa onN.C.L)Poisson's ratio Degradation parameter ofoverconsolidation state mDegradation parameterof structure aEvolution parameterof anisotropy brwet unit weight t (kN/m3)under waterPermeability k (m/sec)Initial structure R0*Initial degree ofoverconsolidation 1/R0Initial anisotropy 0(a) 平面図A AC CA CB BC CB CBA BABC BC(BCBA)BBBBAc1As2(loose)As1Ac1As1As1As2(loose)As2(loose)Ac1CB CBCA CA(CACB)ABABAC AC(ACAB)BBAs1Ac1As2(loose)Ac1As2(loose)As2(loose)Ac1Ac1Ac1As1As1As1Ac1Ac150.0m16@1.0m = 16.0mAs1Ac1As1As1As117@2.0m = 34.0mAs1Ac2Ac2Ac2Ac2Ac2B0.0300.0064.6000.7200.300As10.0300.0064.6000.7200.300As20.0430.0094.6000.8800.3000.1000.1000.1002.2002.2000.1001.5001.5000.10017.60( 7.60)1.00E-50.80018.00( 8.00)1.00E-50.80017.00( 7.00)1.00E-60.6005.0005.0003.0000.0000.0000.000表 2 材料パラメータ(粘性土)100120400A AB BA B表 1 材料パラメータ(砂質土)名称Compression index Swelling index Stress ratio at critical state MVoid ratio e0 (p'=98kPa onN.C.L)Poisson's ratio Degradation parameter ofoverconsolidation state mDegradation parameterof structure aEvolution parameterof anisotropy brwet unit weight t (kN/m3)under waterPermeability k (m/sec)Initial structure R0*Initial degree ofoverconsolidation 1/R0Initial anisotropy 0Ac2(b) 断面図図 10 解析断面150Ac10.2070.0413.5001.1000.350Ac20.2070.0413.5001.1000.3503.8003.8000.1000.1000.1000.10015.40( 5.40)1.00E-70.60017.70( 7.70)1.00E-70.6002.5002.5000.0000.000 10 (GL-1.5m,q/2p=0.1)10 (GL-1.5m,q/2p=0.1)q (kPa)q (kPa)0深度 2300m で観測されたマグニチュード 7.0 以上の地震動03 波(本震と 2 つの余震)を用いて,N-S 方向,および E-W-5-5-10入力地震動は Kik-net 下総(千葉県)10)において,設置5501020 30P(kPa)方向の 2 方向より同時に入力した。ここで,地震動の観測地点と解析対象地域は約 15km 離れており,また地震動の-10-0.10 -0.05 0.00 0.05 0.104011(a) 有効応力経路入力地震動4.3観測地点深度が深度 2300m であるのに対し解析対象地盤(b) 応力~ひずみ関係の深度は 50m であり,両者に差異は認められるが対象地図 11 パラメータ(B 層)域付近の観測結果が得られなく,また対象地盤においてGL-50m 以深で N 値が 50 以上となっていることから,上10 (GL-3.5m,q/2p=0.1)0デル・パラメータを用いて連続的に静的圧密解析を行った。-5の詳細を図 17~図 19 に示す。観測された最大加速度は11(a) 有効応力経路本震である第 1 波目が約 0.85m/s2,本震からから約 24 分(b) 応力~ひずみ関係後に発生した第 2 波目では約 0.25m/s2,第 2 波目から約 6図 12 パラメータ(As1層)q (kPa)0-5-502550 75P(kPa)-400-20-0.02 -0.01 0.00 0.01 0.02(b) 応力~ひずみ関係2020q (kPa)100 150 200P(kPa)(a) 有効応力経路100200t(sec)0.50.0-0.5-1.03000100200t(sec)300[N-S]1.0[E-W]1.00.50.0-0.5-1.0100200t(sec)0.50.0-0.5-1.03000100200t(sec)300図 18 入力地震動(第2波)0-2050-1.00[N-S]1.02Acceleration(m/s )q (kPa)40 (GL-32.0m,q/2p=0.1)-400-0.52Acceleration(m/s )1140 (GL-32.0m,q/2p=0.1)-20[E-W]1.0図 17 入力地震動(第1波)図 14 パラメータ(Ac1層)00.00-10(a) 有効応力経路0.50-20-1.00 10 20 30 40 50 60t(min)[N-S]1.0210100Acceleration(m/s )20q (kPa)q (kPa)20 (GL-12.5m,q/2p=0.1)0.0-0.5図 16 地震動の時刻歴(b) 応力~ひずみ関係40 (GL-12.5m,q/2p=0.1)50 75P(kPa)-1.00.50 10 20 30 40 50 60t(min)図 13 パラメータ(As2層)250.0-0.511(a) 有効応力経路00.5-10-0.10 -0.05 0.00 0.05 0.10100[E-W]1.020[N-S]1.0255q (kPa)Acceleration(m/s )10 (GL-8.5m,q/2p=0.1)10 (GL-8.5m,q/2p=0.1)-10分後に発生した第 3 波目では約 0.04m/s2 程度であった。240Acceleration(m/s )20 30P(kPa)210Acceleration(m/s )0各地震動における N-S 方向,および E-W 方向での加速度-10-0.10 -0.05 0.00 0.05 0.10Acceleration(m/s )-5隔は実際の地震動観測時刻より決定し,各地震間は同じモ20-10図 16 に入力地震動の時刻歴を示す。ここで,地震動間5q (kPa)q (kPa)5記観測地震動を用いて計算を行うこととする。Acceleration(m/sec )10 (GL-3.5m,q/2p=0.1)-40-0.02 -0.01 0.00 0.01 0.0211(b) 応力~ひずみ関係図 15 パラメータ(Ac2層)0.50.0-0.5-1.00100200t(sec)300[E-W]1.00.50.0-0.5-1.00100200t(sec)図 19 入力地震動(第3波)151300 Excess Pore Water Pressure Ratio解析は地震動 3 波全てを考慮し,加震後に過剰間隙水圧の消散に伴う 50 年間の圧密解析を行った。表 3 に解析ステップを示す。ここで,一般的な設計においては,液状化解析に代表される動的解析と静的荷重による変形問題に代表される静的解析では全く異なる解析プログラムを用いて別々に解析を行うことが普通であるが,本解析では同一のプログラム,パラメータを用いて連続的に静的・動的解析を行っている。また,静的解析と動的解析での時間積分方法は同様であり,本解析では初期剛性比例型のレリー減衰を使用しAs1(upper part)1.50TypeA(GL-4.5m)TypeB(GL-3.5m)1.251.000.750.500.250.000.00.5ており,減衰係数 h の値は全地盤において 0.05 である。Excess Pore Water Pressure Ratio表 3 解析ステップ(Case1)解析の種類動的解析静的解析動的解析静的解析動的解析静的解析地震動の種類第1波(圧密)第2波(圧密)第3波(圧密)解析時間(sec)300( 5.00min)1440(24.00min)300(5.00min)360(6.00min)135( 2.25min)約 50 年解析結果5.5.11.52.0(a) As1層(上部)また,入力地震動の時間増分はt=0.01s である。Step1234561.0t(hour)As2(loose)1.50TypeA(GL-7.5m)TypeB(GL-4.5m)TypeC(GL-6.5m)1.251.000.750.500.250.000.00.5各層における過剰間隙水圧比1.0t(hour)1.52.0(b) As2層各土層,各エリアにおける過剰間隙水圧比を図 20 に示Excess Pore Water Pressure Ratioす。ここで,過剰間隙水圧比とは過剰間隙水圧pw を初期有効上載圧 v0 で除した 値 であり,過 剰 間隙水圧比がpw/v0=1.0 となる場合に液状化を意味する。図 20(a)に示す As1 層(上部)では,Type A において本震では液状化に至らなかったものの,過剰間隙水圧が上昇し異方性が発達しているため,本震よりも小さな余震時において,過剰間隙水圧比が本震よりも大きく上昇し,ほぼ液状化に至っている。また Type B においては,本震後に過剰過激水圧比が低下しているものの,本震よりも小さな余震時において再液状化に至っていることが分かる。1.50As1(lower part)TypeA(GL-15.5m)TypeB(GL-9.5m)TypeC(GL-13.5m)1.251.000.750.500.250.000.0図 20(b)に示す最も液状化が起こりやすいと考えられる0.51.0t(hour)1.52.0(c) As1層(下部)As2 層では,Type A,及び Type B において本震時には液状Excess Pore Water Pressure Ratio化が生じていないのにもかかわらず,本震後の余震時には過剰間隙水比が 1.0 程度まで上昇し,液状化が生じていることが分かる。また Type C においては,上下を透水係数の低いシルト層で囲まれているため,過剰間隙水圧の消散が終わらないうちに再液状化に至っている。図 20(c)に示す As1 層(下部)では,各エリアにおいて深度の差,つまりは初期有効応力に差があるため,過剰間隙水圧の上昇に伴う過剰間隙水圧比の変化にも差が生じているが,全エリアにおいて本震よりも比較的小さい余震時に本震と同程度の過剰間隙水圧比となっている。図 20(d)に示す Ac1 層(上部)では,本震・余震終了後1.50Ac1(upper part)TypeA(GL-12.5m)TypeB(GL-6.5m)TypeC(GL-10.5m)1.251.000.750.500.250.000.00.51.0t(hour)1.5(d) Ac1層(上部)にシルト層下部からの過剰間隙水圧の伝搬により,余震終図 20 過剰間隙水圧比了後においても過剰間隙水圧比が上昇し続けていることがわかる。1522.0 5.2過剰間隙水圧比の平面・深度分布各深度における過剰間隙水圧比の分布を図 21~図 24に示す。解析結果より,本震により過剰間隙水圧が上昇しType A,及び Type B エリアにおいて,GL-4.0m 付近で過TypeA剰間隙水圧比が 1.0 に近づき液状化に至っていることが分TypeBかる。また,Type C エリアも同様に GL-6.0m 付近で液状化に至っている。本震から 24 分後に発生した余震時(第2 波)においては,GL-6.0m~GL-8.0m において第 1 波でTypeBは液状化に至っていなかった部分までも,広範囲で液状化TypeCに至っており,本震よりも小さな余震において実現象と同様に液状化被害が拡大されていることが確認できる。この(a) 本震時(第1波)原因として、本震による応力履歴により地盤の異方性がかなり発達した影響し,後発地震動が小さい場合でも過剰間隙水圧が上昇しやすく,再液状化等が起こりやすい状態にあることが考えられる。図 25 に地震後における沈下量分布を示す。解析結果よTypeAり,余震終了から 6 時間後に Type C では最大 0.4m 程度のTypeB隆起現象が起きているが,Type A エリアや Type B では0.5m 程度沈下しており,激しい不陸となっていることが分かる。そして時間の経過とともに圧密沈下が進行し,約TypeB51 年後では 0.9m 程度と非常に大きな圧密沈下を生じていTypeCる。実際の沈下量や隆起量は,測量杭等の被災や液状化に伴う噴砂等により測定はできていないが,図 26 に示すよ(d) 余震時(第2波)うに,実現象としても隆起した部分や沈下した様子がうか図 22 過剰間隙水圧比分布(GL-6.00m)がえる。TypeATypeATypeBTypeBTypeBTypeBTypeCTypeC(a) 本震時(第1波)(a) 本震時(第1波)TypeATypeBTypeATypeBTypeBTypeBTypeCTypeC(d) 余震時(第2波)図 23 過剰間隙水圧比分布(GL-8.00m)(d) 余震時(第2波)図 21 過剰間隙水圧比分布(GL-4.00m)153 TypeATypeBTypeBTypeC図 26 地震後における不陸状況(a) 本震時(第1波)6.まとめ土水連成有限要素解析プログラム「DBLEAVES」を用いて余震も含めた動的・静的有限要素解析を行った結果, 以下の結論を得た。TypeA1)TypeB応力履歴により発達した異方性や過剰間隙水圧の保持により,後発地震動が小さい場合でも過剰間隙水圧が上昇しやすく,再液状化等が起こりやすい。TypeB2)TypeC応力履歴は異方性の発達に影響を与え,異方性の発達はその後の沈下量や再液状化などの挙動に大きな影響を与えることから,応力経路(地震動等)が複雑な場合でもその経路を適切に表現する必要がある。(d) 余震時(第2波)3)図 24 過剰間隙水圧比分布(GL-10.00m)起伏する地盤においては,その地盤の不均一さによって,液状化の発生パターンが異なっている。Type A の地盤においては,本震の場合が液状化しなかったものの余震では激しい液状化が発生した。隆起参 考 文 献(社)地盤工学会:地震時における地盤災害の課題と対策 2011年東日本大震災の教訓と提言,2011.72) 風間基樹:地盤工学ジャーナル,Vol.7,No.1,pp.1-11,2012.13) http://www.city.urayasu.chiba.jp/secure/26052/04_siryo2-4-1jibanntokuseinohaaku.pdf4) http://www.city.itako.lg.jp/index.php?code=1828 , 今、心をひとつに~東日本大震災から1年~(YouTube)5) Zhang, B. Ye, T. Noda, M. Nakano and K. Nakai: Explanation ofcyclic mobility of soils: Approach by stress-induced anisotropy, Soilsand Foundations, Vol.47, No.4, pp.635-648, 20076) Ye, B.: Experiment and Numerical Simulation of RepeatedLiquefaction -Consolidation of Sand, Doctoral Dissertation, GifuUniversity, 2007.7) Hashiguchi, K. and Ueno, M.: Elastoplastic constitutive laws ofgranular material, Constitutive Equations of Soils, Pro. 9th Int. Conf.Soil Mech. Found. Engrg., Spec. Ses. 9, Murayama, S. and Schofield,A. N. (eds.), Tokyo, JSSMFE, pp.73-82, 19778) Asaoka, A., Nakano, M. and Noda. T.: Super loading yield surfaceconcept for the saturated structured soils, Proc. of the Fourth EuropeanConference on Numerical Methods in GeotechnicalEngineering-NUMGE98, pp.232-242, 1998.9) Ye, B., Ye, G. L., Zhang, F. and Yashima, A.: Experiment andnumerical simulation of repeated liquefaction-consolidation of sand,Soils and Foundations, Vol.47, No.3, 547-558, 2007.10) 防災科学技術研究所 基盤強震観測網KiK-net(http://www.kik.bosai.go.jp/kik/)1)沈下量(m)TypeATypeBTypeBTypeC沈下(a) 6時間後隆起沈下量(m)TypeATypeBTypeBTypeC沈下(d) 51年後図 25 地震後における沈下量分布154 Evaluation of damage due to re-liquefaction using 3D-FEM analysisFeng ZHANG 1,Yukihiro MORIKAWA 2,Hide SAKAGUCHI3,Asahiko TAIRA41Nagoya Institute of Technology, Department of Scientific and Engineering Simulation2Nagoya Institute of Technology, Department of Civil Engineering3Japan Agency for Marine-Earth Science and Technology, Department of Institute For Research on EarthEvolution4Japan Agency for Marine-Earth Science and TechnologyAbstractLiquefaction happened in a wide area along Pacific Ocean coastal area during the Eastern Japan Great Earthquakeand had impact on the life of many people for a long time. In recent years, expansion of the damages due toliquefaction caused by multiple aftershocks in a relative short time period with relative a long time seismic motion isconcerned. For appropriate action to continuous earthquake that is expected to occur in the next 30 years, it isnecessary to make clear of complicated dynamic behavior of the ground in earthquake include re-liquefaction. In thisresearch, we have conduced dynamic analysis and consolidation analysis with dissipation of excess pore waterpressure by repeated long time seismic motion using 3D FEM.Key words: re-liquefaction, 3D FEM analysis, elasto-plastic constitutive equation155
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  • タイトル
  • 遠心力模型実験による細粒分含有率の異なる砂の沈下特性
  • 著者
  • 山崎智哉・風間基樹・河井正・森友宏・金鍾官
  • 出版
  • 地盤工学会特別シンポジウム -東日本大震災を乗り越えて-
  • ページ
  • 156〜160
  • 発行
  • 2014/05/14
  • 文書ID
  • 67554
  • 内容
  • 地盤工学会特別シンポジウム-東日本大震災を乗り越えて-15遠心力模型実験による細粒分含有率の異なる砂の沈下特性山崎智哉 1,風間基樹 1,河井正 1,森友宏 1,金鐘官 11東北大学大学院工学研究科土木工学専攻概要細粒分を多く含む地盤が地震により液状化した場合の沈下量を予測する手法の開発が現在必要とされている.本研究では,液状化した土の圧縮性と地盤の沈下量の関係を砂の種類を変えて把握することを目的として,遠心加速度 30G 場で正弦波による加振実験を行った.一連の実験の結果,各種試料を用いて簡易に圧密試験を実施して得られた沈下量と加振によって発生する沈下量の相対的な大小関係は同じであり,圧密試験により,加振時の沈下量を予測できる可能性があることが示唆された.キーワード:液状化,沈下,細粒分含有率,遠心力模型実験はじめに1.ては適用範囲外である.しかし,石川ら 4)は実験において,細粒分含有率が 5%以上の浦安砂に対しても相対密度を求2011 年東北地方太平洋沖地震で顕著な液状化被害が観めていることから,本論文においても石川らと同様に,細1)察された浦安市の地盤は,細粒分を多く含んでいた .現粒分含有率が 5%を超える砂に対しても,便宜的に従来の在普及している石原・吉嶺の液状化時の沈下量予測手法 2)方法を適用して相対密度を求めることとする.は,相対密度をパラメータとして整理されているため,土液状化層は,30 倍の粘性を持つグリセリン溶液の中で質試験法 3)の適用対象外となる細粒分含有率の大きな試料予め脱気した試料を使用して,水中落下法により作成する.については適用できない.このような背景に基づき,細粒作成後,遠心加速度を 30G に上げて,沈下が安定するま分を多く含む砂地盤の液状化強度や,液状化時の沈下量をで圧密を続ける.圧密後,1G 場まで戻し,液状化層を所予測する手法の開発が現在必要とされている.定の高さに成形し,液状化層表面に沈下量を測定するためのマーカーを 28 個均等間隔で設置した後,表面をラップ本研究では,液状化した土の圧縮性と地盤の沈下量の関係を把握することを目的として,遠心加速度 30G 場で砂で覆い,液状化時の排水のためにパイプを数本配置する.の種類をパラメータとした正弦波による加振実験を行っその後,粒径の粗い鹿島珪砂で非液状化層を作成する.非た.液状化層表面に,加振後に沈下量を測定するためのマーカーを 28 個均等間隔で設置しておく.このような地盤模型2.遠心力模型実験の概要を作製した理由は,本実験が,別の目的として噴砂が沈下量に影響を与えるか否かの検討することも考慮したため遠心力模型実験は,加振方向長さ 60cm×奥行 25cm×高であり,それによって排水条件,上載圧ならびに加振条件さ 40cm(実物換算 18m×7.5m×12m)のせん断土槽を用が各ケースごとに異なっている.そのため実験結果の比較いて,遠心加速度 30G 場において行った.図-1 に実験模の際は,それらのパラメータの相違を考慮した上で,結論型の断面図を示す.以下の記述は断りがない限り,相似則を導いている.なお,結果として沈下量に有意な影響を与えるほどの噴を適用した実物に換算した値で示す.砂は発生しなかったため,噴砂に関する報告は割愛する.液状化層に使用する試料をケースごとに変えて,計 5 ケ遠心加速度を再び 30G に上げて,沈下が落ち着くまでースの実験を行った.内訳は,浦安砂を使用した 3 ケース(CASE0-1~CASE0-3),浦安砂に粒度分布を似せた細粒圧密を続けた後,正弦波(2Hz,分混合珪砂を使用した 1 ケース(CASE1),細粒分を含まう.加振実験は,各模型に対して,複数回実施した.各加ないケースとして飯豊産珪砂 7 号のみを使用した 1 ケース振回ごとに,圧密のために時間を置いた後,1G 場に戻し(CASE2)となっている.図-2 に各ケースに使用した試料て沈下計測を行った.の粒度分布を示す.また,表-1 に,各ケースに使用した試料の基本物性,実験条件を示す.なお,現行の土質試験法に基づく相対密度は,細粒分含有率が 5%以上の土に対し156200Gal,)による加振を行 模型実験結果3.3.1 加振中に発生する沈下量が総沈下量に占める割合一回目の加振時の沈下量時刻歴(鉛直変位計 LV1)を図-3 に示す.なお,図-3 に示している総沈下量は,非液状化層表面の 1 点をレーザー変位計により計測した,加振後に1G 場に戻すまで圧密のために放置した後の値であり,後述の図-5 に示している非液状化層表面に設置したマーカーから計測した鉛直ひずみとは異なっている.図-3 から,CASE1 と CASE2 では加振継続時間が等しいが,加振中に発生した沈下量が総沈下量に占める割合は,CASE2 では約 60%と大きな割合を占めたのに対して,CASE1 では約図-1各ケース実験模型断面図40%と小さかった.これは,①排水用パイプの面積がCASE1 よりも CASE2 の方が大きかったこと,②CASE2では珪砂の透水係数が 1.26×10-2[cm/s]と大きく,排水の進行が速いのに対して,CASE1 では細粒分混合珪砂の透水係数が 1.80×10-5[cm/s]と小さく,排水の進行が遅いこと,③圧密試験(後述の図-7 参照)・マーカーから計測した鉛直ひずみから推定される体積圧縮係数が大きいことなどが関係していると考えられる.3.2 各ケースの沈下量と過剰間隙水圧比CASE0-2,CASE1,CASE2 における,一回目の加振時の過剰間隙水圧比時刻歴(液状化層中段に設置した間隙水圧計 P8)を図-4 に示す.また,実施した全ケースの加振図-2各ケースの実験試料の粒径加積曲線回と平均鉛直ひずみ(非液状化層一面に均等間隔で設置し表-1各ケースの基本物性・実験条件一覧表たマーカーの沈下量の平均値から算出した値)の関係を図-5 に示す.図-3 より,細粒分を多く含む CASE1 は,従来の方法による相対密度が他の 2 ケースよりも著しく大きかったにも拘らず,他の 2 ケースと同様に過剰間隙水圧比が 0.95 付近まで上昇し,液状化が発生していることが分かる.また,図-5 から,CASE1 は,同条件の加振・等しい上載圧に対して,きれいな砂を用いた CASE2 の 3 倍程鉛直ひずみの平均値が大きかったことが分かる.また,従来の方法による相対密度が CASE2 と同程度の CASE0-1 では,CASE2 よりも加振継続時間が短く,上載圧が小さかったにも拘らず,CASE2 と鉛直ひずみの平均値が同程度である.これらのことから,細粒分を含む砂に現行の土質試験法を拡大適用して求めた相対密度は,液状化強度や鉛直ひずみの推測に使用することは困難であると考えられる.図-3157各ケースの加振時沈下量時刻歴(LV1) 4.要素試験と模型実験の対応関係本節では,簡易に液状化時の鉛直ひずみを予測する手法開発の第一歩として,液状化により発生する鉛直ひずみと要素試験で発生する鉛直ひずみとの対応関係を把握するために行った,圧密試験と繰り返し圧密試験の結果を示す.4.1 圧密試験結果と各ケースの沈下量との対応関係本研究では,JGS 基準(JGS0411)の圧密試験方法 6)に準じて,段階載荷による圧密試験を,浦安砂,細粒分混合珪砂,珪砂に対して行った.なお,本研究においては,各図-4載荷段階で,沈下が終了次第,次の載荷段階に移行するこ各ケースの過剰間隙水圧比時刻歴(P10)ととした.図-7 に,圧密試験から求めた圧密圧力-体積ひずみ関係を示す.図-7 から,各試料に現行の土質試験法を拡大適用して求めた圧密試験開始前の相対密度は,遠心力模型実験での加振前推定相対密度と近い値であるが,圧密試験においても,浦安砂や細粒分含有珪砂の方が,珪砂よりも圧縮性が大きいことが分かる.すなわち,今回検討に用いた砂では加振によって発生する沈下と圧密による沈下の相対的な大小関係が同じであった.以上の事より,液状化試験よりも簡単に実施できる圧密試験によって,加振によって発生する沈下を予測できる可能性があることが図-53.3示唆された.各加振回で発生した鉛直ひずみ東北地方太平洋沖地震での浦安市の被害と,浦安砂を用いたケースの実験結果本研究で使用した浦安砂を採取した浦安市日の出地区の大部分において,京川ら 1)によれば,東北地方太平洋沖地震時,厚さ約 7~9m の埋立層で液状化が発生し,約 2.5~3.5%の鉛直ひずみが発生していた.また,浦安市により報告された,東北地方太平洋沖地震時に浦安市高須小学校で観測された地震波5)(図-6)は,最大加速度 99.7[Gal],加振継続時間が約 200 秒であった.表-1 から,CASE0 の全ケースにおいて,一回目の加振では,加振前推定乾燥密度が 1.18[g/cm3]付近である.ここで,図-4 から,CASE0-1 で発生した鉛直ひずみは,CASE0-2,図-7各ケース使用材料の体積ひずみ-圧密圧力関係CASE0-3 の鉛直ひずみの約 1/3 に相当する.これは,CASE0-1(加振継続時間 10 秒)が,CASE0-2(加振継続4.2 繰り返し圧密試験と各ケースの沈下量との対応関係時間 300 秒),CASE0-3(加振継続時間 450 秒)よりも,本研究では,前述の 4.1 節の圧密による沈下の相対的な加振継続時間が短いことと,上載圧が小さかったことが関大小関係と,除荷-載荷という異方な応力状態のサイクル係していると考えられる.また,加振継続時間以外の条件で発生する鉛直ひずみの相対的な大小関係との対応関係は同じであった CASE0-2 と CASE0-3 で発生した鉛直ひずを把握するために,繰り返し三軸試験よりも簡易に実施でみは両ケースとも約 2.8%であった.きる,繰り返し圧密試験を以下の手順で行った.まず,JGS基準(JGS0411)の圧密試験方法6)に準じて,遠心加速度30G 場における液状化層中段位置の拘束圧に相当する60kPa になるまで,段階載荷を行い,試料を圧密させる.次に,拘束圧 0kPa になるまで,段階除荷を行い,試料を膨潤させる.膨潤時間を十分に取った後,再び拘束圧 60kPaにまで段階載荷を行い,前回から増分した鉛直ひずみの値図-6を計測する.浦安市高須小学校 EW 成分(文献 5)に加筆)158 5. 結論図-8 にサイクル一回目と二回目の実験結果を示す.図-8から,繰り返しサイクル開始前の推定相対密度は,遠心力模型実験での加振前推定相対密度と比較すると,浦安砂と本研究では,液状化した土の圧縮性と地盤の沈下量の関細粒分含有珪砂では同程度で,珪砂はやや大きいことが分係を砂の種類を変えて把握することを目的として,遠心加かる.サイクル一回目で発生した増分鉛直ひずみの相対的速度 30G 場で正弦波により加振実験を行い,以下の知見な大小関係で,浦安砂を用いたケースが最も大きくなるこを得た.とは,圧密試験で発生した沈下量の相対的な大小関係と共1.通していた.また,サイクル二回目においても,浦安砂を有珪砂を用いた CASE1 の相対密度は 111%であり,珪砂 7現行の土質試験法を拡大適用して求めた,細粒分含用いたケースで発生した増分鉛直ひずみが最も大きくな号を単独で使用した CASE2 の相対密度 54%よりも大きかった.以上の事より,液状化試験よりも簡単に実施できるったが,両ケースともに同じ加振振幅で液状化が発生し,繰返し圧密試験によっても,加振によって発生する沈下をマーカーから計測した鉛直ひずみの平均値は CASE1 の方予測できる可能性があることが示唆された.が CASE2 よりも 3 倍程大きかった.よって,細粒分を含また,図-9 に,沈下が発生しなくなるまでサイクルを繰む砂に現行の土質試験法による方法を拡大適用して求めり返した時の,細粒分含有珪砂のケースの間隙比を示す.た相対密度は,液状化強度や沈下量の推測に使用すること図-9 から,最終サイクルの間隙比は 0.60 であり,現行のが困難であることを把握した.土質試験法によって求めた細粒分混合珪砂の最小間隙比2.0.70 よりも小さいことが分かった.なお,仮に最終サイクって発生する沈下との相対的な大小関係が整合しており,ルの間隙比を用いて遠心力模型実験の CASE0-2 の相対密圧密試験により,加振によって発生する沈下を予測できる度を求めると 90[%]となり,現行の土質試験法から求めた可能性があることが示唆された.相対密度 111[%]よりも小さくなった.今後,繰り返し圧密3.試験などから求まる最小間隙比を用いた相対密度を,細粒の相対的な大小関係において,浦安砂を用いたケースの増分含有率が 5%を超える試料の液状化強度や沈下量の推測分鉛直ひずみが最も大きくなったことは,圧密試験によっの指標に使用できないかどうかを,引き続き実験を行ってて発生する沈下の相対的な大小関係と共通していた.また,検討していく所存である.沈下が発生しなくなるまでサイクルを繰り返した時の最今回検討に用いた砂では圧密による沈下と加振によ繰り返し圧密試験によって発生した増分鉛直ひずみ小間隙比を用いた相対密度を,液状化強度の指標として使用できないか,引き続き実験を行って検討していく.参1)考文献京川裕之,清田隆,近藤康人,小長井一男:東北地方太平洋沖地震による浦安市埋立地盤の液状化被害調査,地盤工学ジャーナル Vol.7,No.1,pp.265-273,2012.2)石原研而,吉嶺充俊:地震時の液状化時に伴う砂地盤の沈下量予測,第 26 回土質工学研究発表会,pp.767-770,1991.3)図-8繰り返し圧密試験による増分鉛直ひずみ地盤工学会:土質試験-基本と手引き―(第二回改訂版),pp.59,20104)石川敬祐,安田進,萩谷俊吾:千葉県浦安市の液状化現象の発生状況調査,日本地震工学会論文集第 12 巻第 4 号,pp.56-64,2012.5)浦安市液状化対策技術検討調査委員会:浦安市液状化対策技術検討調査報告書第 2 編地盤特性の把握・液状化の要因分析 2(http://www.city.urayasu.chiba.jp/secure/26052/lasthoukoku02-02.pdf)6)地盤工学会:土の段階載荷による圧密試験方法(http://www.jiban.or.jp/organi/bu/kijyunbu/kouji/200807/JGS_0411_080801.pdf)図-9細粒分混合珪砂のケースの間隙比159 Settlement characteristics which vary with fine contents on centrifuge model testTomoya YAMAZAKI1,Motoki KAZAMA1,Tadashi KAWAI1,Tomohiro MORI1,Jongkwan Kim11Graduate School of Engineering, Tohoku UniversityAbstractRecently, the prediction method of the settlement of liquefied ground which contains much fine particle is needed tobe developed. In this study, we aimed to obtain the relationship between the compressible characteristics of liquefiedsoil and the settlement characteristics of liquefied ground, and we conduct the shaking table test of centrifugal fieldon 30G.From a set of the experiment results, the settlement which gained by the consolidation test which use variousspecimen has the same large/small relation of the case of the centrifuge model test. Therefore, the possibility that theconsolidation test can predict the settlement of the shaking table test is suggested.Key words: liquefaction, settlement, fine content, centrifuge model test160
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  • タイトル
  • 非塑性細粒分を含む材料の液状化強度・被害の評価に関わる密度指標の再考
  • 著者
  • 金鍾官・風間基樹・河井正・森友宏
  • 出版
  • 地盤工学会特別シンポジウム -東日本大震災を乗り越えて-
  • ページ
  • 161〜167
  • 発行
  • 2014/05/14
  • 文書ID
  • 67555
  • 内容
  • 地盤工学会特別シンポジウム-東日本大震災を乗り越えて-16非塑性細粒分を含む材料の液状化強度・被害の評価に係わる密度指標の再考金鍾官 1,風間 基樹 2,河井 正 3,森 友宏 41東北大学工学研究科土木工学専攻博士課程2東北大学工学研究科土木工学専攻教授3東北大学工学研究科土木工学専攻准教授4東北大学工学研究科土木工学専攻助教概要非塑性細粒分が液状化強度と液状化後の被害に及ぼす影響は研究者ごとに結果が異なり,まだ合意に至ってない。そこで,本研究では,乾燥状態ではなく,水浸状態と繰返し液状化と排水による最小間隙比を検討することで,最小間隙比の見直しを行った。その結果,ほとんどの材料で水浸状態で求めた最小間隙比が乾燥状態で求めた値より小さくなり,現行の最小間隙比は過少評価されていることが分かった。また,見直した最小間隙比を用いた場合,相対密度や余裕間隙比の液状化強度や沈下量との相関が高くなることが確認された。キーワード:液状化,細粒分,最小間隙比,相対密度,余裕間隙比1. はじめにの際に浦安市で液状化したような細粒分を大量に含む土は対象外となる。細粒分を多く含んだ土の場合は,その含粘性・塑性を持つ細粒分が液状化強度を増加させること有率が大きくなるほど,拘束圧の大きさ,間隙水の有無のはよく知られている。しかし,非塑性細粒分が液状化強度影響を大きく受けて,密度が大きく変化する。また,細粒と液状化後の被害に及ぼす影響に関する既往の研究はそ分を 11.6%含む試料の場合,絶乾状態の試料で 1 回試験をれぞれ異なっている。Chang ら 1)と Dezfulian ら 2)は細粒分行った後の含水比が 2.3%になり,空中落下させなくなり,含有率が増えると液状化強度が増加すると報告している最大間隙比を求められない状態になるという報告 6)や,最3)4)小間隙比が大きく評価されるという報告 7)もある。のに対し,Chien ら と Hara ら は液状化強度が細粒分含有率の増加と共に減少すると報告している。また,Xenakiこのように,土の最小間隙比は乾燥状態と水浸状態で大5)ら はある含有率までは減少し,その後は増加すると報告きく変化する。しかし,既往の液状化研究では乾燥状態でした。このように研究者ごとに結果が異なる理由は,材料求めた最小間隙比を用いて土の密度を評価している。特に,の違いもあるが,研究者ごとに用いている指標や比較方法細粒分を大きく含んだ土は間隙水の大小によって大きくが異なるのが一番大きいと思われる。影響を受けるため,その特性を検討する必要がある。液状化強度・被害を評価する場合,しばしば相対密度がそこで,本報告では,液状化強度・被害を評価するとい重要な指標として用いられる。相対密度はある状態の土がう観点から,その評価に必要な最大密度(最小間隙比)を最大・最小間隙比の間のどこに位置しているかを示す指標評価する方法について再考した。試験はきれいな砂と細粒である。説明するまでもなく相対密度を求めるためには,分を含んだ材料を用いて,絶乾状態と水を加えた水浸状態最大・最小間隙比を求める必要がある。相対密度を求めるで打撃することで最小間隙比に及ぼす間隙水の影響を検際に用いられる最小間隙比は地盤工学会から規定されて討した。さらに,中空ねじりせん断試験により繰返しせんいる方法(JGS 1224)で求めた値を使うのが一般的である。断させた場合の最小間隙比と対比させて検討した。しかし,地盤工学会の規定にも記述されているようにこの2. 試験概要試験法は土の絶対的な最小間隙比を決定する方法ではない。この方法によって求められる最小間隙比は打撃回数,打撃力,拘束圧,含水比などによって変化するからである。また,これらの試験に用いる試料は,細粒分含有率 5%ま2.1最小間隙比試験装置地盤工学会の最小間隙比試験法は,同一材料であっても,でが適用範囲であるため,2011 年東北地方太平洋沖地震実施者によってばらつきが発生する。そこで,本研究では161 1.6Cleansand second飯豊硅砂7 号 100%7 号(50%)+石英粉(50%)Q 飯豊硅砂50% second1.4間隙比Void ratioe1.21.00.80.60200040006000800010000The 打撃回数(回)number of tamping図2 打撃による間隙比の変化図1 機械式最小間隙比試験装置回を打撃し,打撃回数と間隙比の関係を検討した。試験はモールドに最大間隙比状態の試料を作り,モールドの上面表 1 試料の物性比重試料最大間隙比最小間隙比平均粒径に設置されているレーザー変位計で打撃による沈下量を細粒分含有率測定した。その結果を図 2 に示す。結果を見ると,きれFC (%)いな砂の場合は 1000 回程度の打撃で間隙比がほぼ変化し飯豊硅砂2.691.0150.6260.2800ないことが分かる。また,その値は現行法の求めた値石英粉2.742.3501.170.020100(0.626)とほぼ一致している。これより,きれいな砂のDL Clay2.671.6700.820.015100場合は現行の打撃方法で十分であることが分かる。しかし,荒砥沢土2.342.5701.510.03093石英粉 50%の結果をみると,打撃回数 6000 回付近までは浦安土2.631.6400.880.03553.4間隙比が減少し,その後は変化がないことが分かる。6000回以降の変化は,本研究では表面の沈下を測定して間隙比を計算したため,打撃によって測定点が変化することによモールドに加える打撃エネルギーを一定にするため,機械式実験装置 を用いて試験を行った。図 1 に装置写真を示る影響である。この結果より,細粒分を多く含む材料に対す。装置はモーター,ばね,金属ハンマー,計測器で構成しては,1000 回の打撃で不十分であると考えられる。以され,モーターの回転とばねの力で金属ハンマーがモール上の知見から,本研究では,乾燥状態の試料に対しては,ドを打撃する仕組みである。金属ハンマーは 4 回/秒のス全てのケースで 10000 回を打撃して最小間隙比を求めるピードでモールドを打撃するように設定した。また,ハンこととする。8)マーによる打撃力は 0.075N・s であった。2.2.22.2水浸状態での最小間隙比試験の方法一般に最小間隙比は乾燥状態の材料を用いて試験を行最小間隙比試験本研究では粗粒分として飯豊硅砂 7 号を細粒分としてうことになっている。しかし,液状化を考慮する場合の地DL クレー,石英粉を用いた。飯豊硅砂 7 号は平均粒径が盤は水浸状態であるため,水浸状態での最小間隙比を検討0.28mm のきれいな砂であり,豊浦砂と類似の粒度分布をし,それの影響を考慮する必要があると考えられる。そこ持っている。また,2008 年岩手宮城内陸地震で地すべりで,本研究では乾燥状態で最小間隙比状態を作り,その後,が発生した荒砥沢ダムで採取した試料と 2011 年東北地方水を加えることで水浸状態とし,モールドの側面を打撃し,太平洋沖地震で液状化が発生した浦安市で採取した試料液状化させた。その後,過剰間隙水が消散するまで放置しを用いて実験を行った。試料の詳しい物性は表 1 に示す。た。本研究で用いたモールドは間隙水圧を計れる仕組みと試験は飯豊硅砂 7 号に石英粉と DL クレーをそれぞれ重量なってないため,表面の沈下量を測定し,沈下が安定する比で 30%あるいは 50%混ぜた材料を用いて行った。と過剰間隙水圧が消散したことにした。打撃と放置を繰返し,それ以上沈下が発生しないと試験終了とした。2.2.1打撃回数の検討2.3現行の最小間隙比は 10 層に別けて各層毎に 100 回を打繰返し液状化・排水試験撃し,合計 1000 回を打撃することになっている。本研究本研究の対象は液状化であるため,中空ねじりせん断試で用いた機械式装置と現行の方法との相互性を検討する験機を用い,液状化と排水を繰返しことによって得られるために,きれいな砂と石英粉 50%の試料を用いて,10000最小間隙比を検討した。試験に用いた供試体は B 値が 0.95162 1.6地盤工学基準地盤工学会基準1.4装置本研究での機械式装置1.2間隙比 e10.80.60.40.20飯豊硅砂石英粉30%石英粉50% DL Clay 30% DL Clay 50%荒砥沢浦安試料の種類図4 試験法による最小間隙比の違いんだ材料に適用させる場合には注意が必要であることが図3 繰返し液状化と排水試験の手順わかる。以上の飽和供試体であり,有効拘束圧は 100kPa であった。3.2間隙水が最小間隙比に及ぼす影響図 3 に繰返し液状化と排水試験の手順を示す。試験は片振幅 2.5%の繰返し載荷を行い,前回のサイクルと応力-ひ水浸状態で求めた最小間隙比を図 5 に示す。水浸状態でずみループが同じであると安定と見なされたとき,繰返しの最小間隙比は拘束圧が無い条件と 1kPa の拘束圧を加え載荷を停止し,排水を行った。排水によって有効応力が回た条件で試験を行った。結果をみると,飯豊硅砂 7 号 100%復すると,また繰返し載荷と排水を行うことを繰返した。の場合は乾燥状態が水浸状態より最小間隙比が小さいの試験終了時点は 1Hz の地震動が 3 分間続いた場合を想定し,に対して,それ以外の細粒分を含有した試料の場合はほぼ繰返し回数 200 回以内に応力-ひずみループが安定しな同じか,あるいは水浸状態で求めた方がより小さいことがいか,あるいはせん断面が発生した場合に終了とした。分かる。これは,乾燥状態より水浸状態でより密になれることを意味し,細粒分を含んだ材料の場合,最小間隙比を3. 最小間隙比試験結果過少評価していると考えられる。水浸状態での拘束圧の影響も同図から確認できる。DL クレー50%の試料以外はは3.1拘束圧の影響がほぼないか,あるいは拘束圧が無い場合の機械式装置による各材料の最小間隙比方がより密になることがわかる。しかし,拘束圧を加える図 4 に現行の最小間隙比試験(1000 回打撃)による結際にモールド壁面と上面から荷重を加える蓋との間の摩果と本研究で機械式装置(10000 回打撃)を用いた求めた擦力の影響は考慮されてない。また,細粒分を多く含む材結果を示す。結果をみると,石英粉 50%と DL クレー30%料の場合,水浸状態では上面からの荷重に対する抵抗力がの試料は差があるのに対して他の材料はほとんど差が見無く,重りが自沈する現状が発生し,モールドと蓋の間のられない。これより,現行の最小間隙比試験を細粒分を含隙間から試料が出てくる現象があったため,拘束圧を加え間隙比 e1.81.6乾燥状態1.4水浸状態(拘束圧なし)1.2水浸状態(拘束圧1kPa)1繰返し排水0.80.60.40.20飯豊硅砂7号石英粉30%石英粉50%DLクレー 30% DLクレー 50%試料の種類3図5 試料の状態,試験法の違いによる間隙比の違い163荒砥沢浦安 0.9たケースに関しては議論の余地がある。0.8繰返し液状化と排水による最小間隙比eVoid ratio e3.3振幅の大きさによる影響0.7間隙比3.3.1繰返し液状化と排水による最小間隙比を求める際に,繰返しせん断中のひずみ振幅の大きさが最小間隙比に及ぼ0.6す影響を調べるために,ひずみ片振幅 5%と 1%で繰返し(a)液状化と排水を行った結果を図 6 に示す。二つのケースは0.5初期密度(Dr=45%)は同じであり,繰返しせん断中のひ0.9020406080100ずみ振幅の大きさだけが異なる。前節で述したように,繰返し液状化は繰返し回数 200 回以内に応力-ひずみルーe験終了とした。結果をみると,繰返しせん断中のひずみ振間隙比Void ratio e0.8プが安定しないか,あるいはせん断面が発生した場合に試幅の大きさによらずに得られた最小間隙比はほぼ一致していることが分かる。これより,繰返し液状化と排水によ0.70.6る最小間隙比は繰返しせん断中のひずみ振幅の大きさに(b)影響されないと判断できる。この結果を踏まえて,これ以0.50降の繰返し液状化試験はひずみ片振幅 2。5%で行った。20406080100Mean effective stress (kPa)3.3.2平均有効応力(kPa)繰返し液状化と排水による最小間隙比図6 繰返し液状化と排水による間隙比の変化(きれいな砂)図 5 には繰返し液状化と排水によって求められた最小間隙比も一緒に示している。石英粉 30%と DL クレー30%(a) SA=5%, (b) SA=1%は未試験のため,データを載せてない。結果をみると,石英粉 50%の結果以外は全てのケースで繰返し液状化と排見直し最小間隙比4.1水によって求められた最小間隙比が一番小さかった。これは,モールドを用いて試験を行う場合,液状化と排水を繰前節では様々な方法で最小間隙比を求めることを試み返すことに連れて材料の密度が増大すると,モールドの打た。本節では,前節で求めた最小間隙比,主に繰返し液状撃力が足りなくなり液状化しきってないからではないか化と排水で求めた結果を相対密度と余裕間隙比(と思われる。これについては今後打撃力の大きさを変化さに適用し,液状化試験で求めた結果との相関性を検討した。せて検討を行う必要がある。しかし,DL クレー30%と石英粉 30%は繰返し液状化と排−水試験がまだ行われてないため,水浸状態で求めた値を用4. 見直し最小間隙比を用いた液状化評価いた。液状化試験4.2表2 液状化試験の条件と結果ケース材料FC (%)⁄Dr (%)Drc (%)1きれいな砂00.237.82きれいな砂00.23きれいな砂00.24きれいな砂00.25DL クレー306DL クレー507石英粉891011−−36.20.24249.147.156.465.30.20.2300.2石英粉50荒砥沢土93荒砥沢土浦安土繰返し回数体積ひずみ (%)0.2590.55.440.1980.2151.53.5353.90.1700.1873.53.0262.50.1350.15212.52.1460.856.60.1920.22805.0568.2265.70.1900.21404.465.961.00.2640.30206.3637160.29377.30.0610.24003.090.272.349.70.3830.6841.55.97930.293.674.90.0400.341153.5853.40.275.964.50.1730.3181.55.51164) 201510(a)(a)Cleansand7 号飯豊硅砂DL 30%クレー30%DL 50%クレー50%Seki30%石英粉30%Seki50%石英粉50%Arato荒砥沢土Ura浦安土繰返し回数(回)繰返し回数(回)205Cleansand7 号飯豊硅砂DL 30%クレー30%DL 50%クレー50%Seki30%30%石英粉Seki50%50%石英粉Arato荒砥沢土Ura浦安土15105000204060800.0100200.20.40.620(b)(b)15繰返し回数(回)繰返し回数(回)0.810515105000204060800.01000.20.40.60.8𝑒 − 𝑒𝑚𝑖𝑛相対密度(%)図7 相対密度と繰返しせん断中の繰返し回数の関係図8 余裕間隙比と繰返しせん断中の繰返し回数の関係(a)𝑒𝑚𝑖𝑛 修正前,(b)𝑒𝑚𝑖𝑛 修正後(a)𝑒𝑚𝑖𝑛 修正前,(b)𝑒𝑚𝑖𝑛 修正後最小間隙比の適用性を検討するために,中空ねじりせんぼすために,見直していない最大間隙比をそのまま用いた断試験機を用いて液状化試験を行った。試験は応力制御繰からであると思われるが,これについては今後検討課題で返しせん断試験を行い,ひずみ片振幅が 2.5%に達するとある。図 8 は余裕間隙比と繰返しせん断中の繰返し回数液状化と判断し,それまでの繰返し回数で液状化強度を比の関係を示している。余裕間隙比も同じように修正した結べることにした。ひずみが 2.5%に達した後は応力-ひず果の相関が高いことがわかる。しかし,荒砥沢土だけは大みループが安定するまでひずみ振幅一定繰返しせん断をきく外れており,その理由はまだはっきりされてない。行い,その後単調せん断と排水を行った。試験の詳細は既図 7 と図 8 の結果より,相対密度でも余裕間隙比でも修9)往の研究 を参照されたい。本研究で行った実験ケースと正した最小間隙比を適用するとより相関が高くなると言その結果を表 2 に示す。試験に用いた供試体は全て B 値がえる。相対密度の場合は,最大間隙比を見直した結果を用0.95 以上の飽和供試体であり,有効拘束圧 100kPa で圧密いてもう一回検討する必要があるが,余裕間隙比の方が液した。繰返しせん断中の応力比は 0.2 であった。荒砥沢土状化までの繰返し回数と相関が高いと思われる。と浦安土は現場で採取した材料を再構成したものである。液状化試験後の排水による沈下量と相対密度や余裕間隙比の関係をそれぞれ図 9 と図 10 に示す。まず図 9 をみ4.3液状化強度の評価と沈下量の評価ると,きれいな砂単体では相対密度と液状化後の体積ひずみが高い相関を示しているが,細粒分を含んだ材料を含めると,相対密度と体積ひずみの相関は見られない。これは,図 7 には修正前の最小間隙比を用いた相対密度と修正した最小間隙比を用いた相対密度に対する液状化までの最小間隙比を見直した結果でも同じである。しかし,結果繰返し回数の関係を示している。ここで,修正前の最小間をみると,細粒分を含んだ材料の結果は全てきれいな砂の隙比は地盤工学会の規定に従って求めた値であり,修正後右側にプロットされていることから,細粒分を含んだ材料の最小間隙比は本研究で繰返し液状化と排水によって求の場合は相対密度が大きく評価されていると考えられる。めた値である。結果をみると,最小間隙比を見直すること液状化は飽和状態での現象であるので,水浸状態での最大でばらつきが小さくなるとしても,きれいな砂と細粒分を間隙比を妥当に求めれるのであれば,細粒分を含んだ材料含んだ材料の液状化強度を相対密度で一緒に評価するこは水浸状態で乾燥状態より小さな間隙比を示すため,細粒とには無理がある。これは,本研究では最小間隙比だけの分を含んだ材料のプロットが左方向に移動し,より高い相見直しをしたが,相対密度は最大間隙比も大きく影響を及関を示す可能性がある。図 10 は余裕間隙比と体積ひずみ165 8の関係を示している。見直した最小間隙比を用いた場合は体積ひずみ 𝜀𝑣 (%)%)(a)かなり高い相関を示すことがわかる。しかし,液状化強度の結果と同じように,荒砥沢土の結果だけ大きく外れてい6る。この原因はまだ不明である。Clean sand7 号飯豊硅砂30%DL クレー30%DL クレー50%50%Seki 30%石英粉30%Seki 50%石英粉50%Arato荒砥沢土Ura浦安土4200205. 結論本研究では液状化強度・被害の評価に係わる密度指標について検討を行い,以下の知見を得た。406080100本研究で見直した最小間隙比を用いた場合,相対密度や余裕間隙と液状化強度の相関がより高くなった。8(b)細粒分を含む材料に対して相対密度を適用するため体積ひずみ 𝜀𝑣 (%)には最小間隙比だけではなく最大間隙比の見直しも6必要である。4現行の試験法は細粒分を含んだ土の相対密度を過大に評価している可能性がある。2最小間隙比だけを用いる余裕間隙比は細粒分含有率に係わらず液状化後の沈下量を評価する際に良い相関を示す。0020406080100最小間隙比を見直すことで,相対密度や余裕間隙比がきれいな砂だけではなく,細粒分を多く含む材料相対密度(%)まで適用できる可能性が確認された。図9 相対密度と液状化後の体積ひずみの関係参考文献(a)𝑒𝑚𝑖𝑛 修正前,(b)𝑒𝑚𝑖𝑛 修正後1)8体積ひずみ 𝜀𝑣 (%)(a)2)6B飯豊硅砂7号D クレー30%DLF クレー50%DLH石英粉30%J石英粉50%L荒砥沢土N浦安土4200.00.20.43)4)0.65)0.886)体積ひずみ 𝜀𝑣 (%)(b)67)48)29)00.00.20.40.60.8𝑒 − 𝑒𝑚𝑖𝑛図10 𝑒 − 𝑒𝑚𝑖𝑛 と液状化後の体積ひずみの関係(a)𝑒𝑚𝑖𝑛 修正前,(b)𝑒𝑚𝑖𝑛 修正後166Chang, N.Y., Yeh, S.T. and Kaufman, L.P. : Liquefaction potential ofclean sand and silty sand, proceedings of the 3rd internationalearthquake microzonation conference, Seattle, Vol.2, pp. 1017-1032,1982.Dezfulian, H.: Effects of silt content on dynamic properties of sandysoils, Proceedings of the eighth world conference on earthquakeengineering, Sand Francisco, pp. 63-70, 1982.Chien, L., Oh, Y. and Chang, C.: Effects of fines content onliquefaction strength and dynamic settlement of reclaimed soil,Canadian Geotechnical Journal, ASCE, 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Reconsideration of density index for liquefaction resistance and damage of soilcontaining non-plastic finesJongkwan KIM1,Motoki KAZAMA2,Tadashi KAWAI 3,Tomohiro MORI41PhD. Student, School of engineering, Tohoku University2Professor, School of engineering, Tohoku University3Associate Professor, School of engineering, Tohoku University4Assistant Professor, School of engineering, Tohoku UniversityAbstractThere has been no consensus of the effect of non-plastic fines on liquefaction resistance and post-liquefaction damage.In this study, reconsideration of minimum void ratio was conducted with examination of minimum void ratio withwater immersion condition and with cyclic liquefaction and drainage. As a result, it has been verified that routinemethod underestimates the minimum void ratio. The relative density and the margin of void ratio re-calculated withminimum void ratio obtained in this study show better correlation with liquefaction resistance as well aspost-liquefaction damage than previous one.Key words: liquefaction, fines, minimum void ratio, relative density, the margin of void ratio167
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  • タイトル
  • SYS Cam-clay model への超弾性構成式の適用
  • 著者
  • 山田正太郎・野田利弘・浅岡顕・中井健太郎
  • 出版
  • 地盤工学会特別シンポジウム -東日本大震災を乗り越えて-
  • ページ
  • 168〜174
  • 発行
  • 2014/05/14
  • 文書ID
  • 67556
  • 内容
  • 地盤工学会特別シンポジウム-東日本大震災を乗り越えて-17SYS Cam-clay model への超弾性構成式の適用山田正太郎 1,野田利弘 2,浅岡顕 3,中井健太郎 11名古屋大学大学院・工学研究科社会基盤工学専攻2名古屋大学・減災連携研究センター3地震予知総合研究振興会概要Asaoka et al. (2002)が提案する骨格構造概念に基づく弾塑性構成式 SYS Cam-clay model に,Einav and Puzin(2004) が提案する超弾性構成式を有限変形化して適用した。粘土,砂それぞれに対するこの構成式の基本応答を示し,超弾性構成式を適用したことで,SYS Cam-clay model の基本的性質が損なわれることがないことを示した。また,砂を対象に,この構成式の繰返し非排水せん断応答を示すことで,サイクリックモビリティを記述する上で重要となる,非排水条件下でのせん断応力除荷時の平均有効応力の低下挙動や有効応力空間の原点付近に達してからの剛性回復挙動などが得られることを示した。キーワード:超弾性,弾塑性,骨格構造,SYS Cam-clay model~積断弾性係数, G はせん断弾性係数である。 T  は有効1. は じ め にCauchy 応力 T (引張を正)の Green-Naghdi rate5)を,D e はAsaoka et al.1), 2), 3)はこれまでに,様々な土の力学挙動をストレッチング(引張を正)の弾性成分を表す。また,単一の構成式によって統一的に記述することを目指し,骨p   trT  / 3 は平均有効応力, v は比体積である。 SYS格構造概念に基づく弾塑性構成式 SYS Cam-clay model をCam-clay model でも,この亜弾性構成式を用いてきたが,提案している。骨格構造の変化を記述することで,今回新たに Einav and Puzin4) が提案する超弾性構成式をCam-clay model では限界状態線に一致して不動であった次式に示すように有限変形化して適用した。塑性圧縮と膨張,硬化と軟化の閾線が変動するようになる。また,これらの状態が様々な組み合わせで現れることによって,土骨格の複雑な力学的挙動の多くを再現できること1 T e T DT   p 2GDse  ~pp (2)ここに, ~ と G は材料定数である。また, s  T   pI ,が示されている。一方で,液状化中の剛性回復挙動であるない挙動も存在し,更なる構成式の合理的高度化を推し進η  s p , Dse  De  ( trDe / 3) I である。Einav and Puzin によるオリジナルのモデルは, ~ と G 以外に体積弾性係数やめてゆく必要がある。その取り組みの一環として,SYSせん断弾性係数の拘束圧依存性を考慮するためのパラメCam-clay model に超弾性構成式を適用したので,本論文でータ(原著論文では n と m)を有しているが,ここではサイクリックモビリティの記述など,まだ十分に再現できはその特徴について概説する。なお,本論文で特に定義がCam-clay model への適応性を考慮してこれらを 1 とした。示されていない記号については,既往の論文 3)に準ずる。これらのパラメーラを 1 とすることで,応力比一定の比例2. 適用した超弾性構成式負荷時に ln v  ln p  平面上で直線状の圧縮挙動 6), 7)を示すことが主な理由である。なお,~ は同平面上でのその直線の傾き,すなわち, ln v  ln p  平面上での膨潤線の傾きを土の弾塑性構成式には,式(1)に示す,亜弾性体である,以下に 3 つほど計算例を挙げて,式(1)の亜弾性構成式と拘束圧依存の速度型 Hooke 則が適用されることが多い。~ ~ 2 ~T    K  G ( trD e )  2GD e3 ~ 3(1  2 ) ~~ vK  ~ p , G K2(1   )表す。式(2)の超弾性構成式の応答の違いを比較してみる。用いた材料定数は表 1 に示す通りである。式(1)に対しては初期比(1)体積を v 0  2.0 とした。表 1 は初期状態において,互いの接線剛性がほぼ等価となるように与えている。まず,三軸条件下において,以下の閉じた応力サイクルを与えた場合~ここに, ~ は膨潤指数,  はポアソン比であり, K は体の応答を図 1 に示す。168 <サイクル 1>次に,平面ひずみ条件下において,以下の閉じた応力サ(a) ( p, q)  (100kN/m 2 , 0kN/m2 )イクルを与えた場合の応答を図 2 に示す。この応力サイク(b) ( p, q )  (100kN/m 2 , 100kN/m 2 )ルは回転を伴うサイクルである。(c) ( p, q )  (200kN/m 2 , 200kN/m 2 )<サイクル 2>(d) ( p, q )  (200kN/m 2 , 0kN/m 2 )(a) (Txx ,Tyy ,Txy )  (100kN/m 2 , 100kN/m 2 , 0kN/m 2 )(e) ( p, q )  (100kN/m 2 , 0kN/m 2 )(b) (Txx ,Tyy ,Txy )  (100kN/m 2 , 100kN/m 2 ,100kN/m 2 )(c) (Txx ,Tyy ,Txy )  (100kN/m 2 , 200kN/m 2 ,100kN/m 2 )式(1)の亜弾性体は体積変化が平均有効応力 p  の変化によってのみ生じる。また,1 サイクルの間にせん断ひずみ(d) (Txx ,Tyy ,Txy )  (100kN/m 2 , 200kN/m 2 , 0kN/m 2 )が蓄積されてしまう。これに対し,式(2)の超弾性体は応力(e) (Txx ,Tyy ,Txy )  (100kN/m 2 , 100kN/m 2 , 0kN/m 2 )比の変化によっても体積変化が生じる。また,比例負荷にやはり,式(1)の亜弾性体では,1 サイクルの間にせん断ひ対してはせん断ひずみが発生しない。さらに,1 サイクルずみが蓄積されてしまうが,式(2)の超弾性体では,回転をの間にせん断ひずみが蓄積されることはない。0(e)(d)(a)-100-0.200.20.4Shear strain s (%)0.6(c)200(b)1000-1000(a) (e)(d)100200300300(c)200(b)100(d)(e)0.2(a)04000.4(c)(b)1000.8(d)(a) (e)1000200300Mean effective stress p' (kPa)0.2-0.200.2(c)0.4Shear strain s (%)0.1(c)(d)0.200.6100200300-0.20(b)(e)(c)(d)0.2400(a)00.20.4(d)(a)00.20.4Shear strain s (%)0.61000-1000(a)(e)(d)100200300Volumetric strain v (%)-0.1(c)(a)(e)0.1(d)00.20.4Shear strain s (%)0.6(a)(b)(e)00.200.8(c)(d)100200300Mean effective stress p' (kPa)300(c)200(b)100(e)0 (a)400-0.2(b)0.2-0.2(b)Mean effective stress p' (kPa)-0.20(c)200(d)0.20.40.6Shear strain s (%)0.82001000(c)(b)(d)(a) (e)100200300Mean effective stress p' (kPa)-0.6-0.6(b)Volumetric strain v (%)-100-0.2(b)-0.2300Deviator stress q (kPa)1000Deviator stress q (kPa)300(c)-0.4(a) 亜弾性 Hooke 則(a) 亜弾性 Hooke 則2000.6Shear strain s (%)Mean effective stress p' (kPa)300Volumetric strain v (%)(d)(a)(b)(e)0-0.4Deviator stress q (kPa)0.1-0.1-0.10(a)(e)(c)0.1(d)0.20100200300-0.4(b)-0.2(c)(a)0(e)0.2400Mean effective stress p' (kPa)Volumetric strain v (%)(e)Volumetric strain v (%)Volumetric strain v (%)(b)(a)0Deviator stress q (kPa)200-0.2-0.1Volumetric strain v (%)0.6Shear strain s (%)Mean effective stress p' (kPa)-0.2Deviator stress q (kPa)(b)100Deviator stress q (kPa)(c)200Volumetric strain v (%)300300Deviator stress q (kPa)Deviator stress q (kPa)300伴うような経路でもひずみが蓄積されない。0(d)0.20.40.6Shear strain s (%)0.8-0.4(b)-0.200.20(c)(a)(e)(d)100200Mean effective stress p' (kPa)(b) Einav and Puzin の超弾性構成式(b) Einav and Puzin の超弾性構成式図 1 三軸条件下での応答<サイクル 1>図 2 平面ひずみ条件下での応答<サイクル 2>169300 最後に,三軸条件下での繰返し等体積せん断応答を図 3が卓越するのが粘土であるとしている 3)。また,これらのに示す。式(1)の亜弾性体は等体積条件下では平均有効応力速さの兼ね合いにより,砂にも粘土にも分類しがたい様々の変化が生じない。また,平均有効応力が一定であるため,な種類の土の力学挙動を再現できるとしている。以下では,せん断剛性も一定値を示している。一方,式(2)の超弾性体式(2)に示す超弾性構成式を適用した SYS Cam-clay modelでは,等体積せん断時であっても,応力比の増加に伴ってにより,典型的な粘土と砂の要素試験結果を再現すること有効応力経路に勾配が現れるとともに,せん断剛性が増加により,まずは超弾性構成式適用後もモデルの基本的性質している。が保たれていることを示す。400Deviator stress q (kPa)Deviator stress q (kPa)4002000-200-400-10Shear strain s (%)構造高位な過圧密状態0-200構造劣化した(練返し)過圧密状態-40001粘土砂200200400600800Mean effective stress p' (kPa)(a) 亜弾性 Hooke 則構造の壊れた(練返し)正規圧密状態400Deviator stress q (kPa)Deviator stress q (kPa)4002000-200-400-0.4-0.200.2Shear strain s (%)構造を有する正規圧密状態塑性変形0.4200図 4 SYS Cam-clay model における砂と粘土の違い03.2-200-4000200400600粘土の応答典型的な粘土として,浦安で採取した沖積粘土を取り上G = 1041~ = 0.002げる。図 5 と 6 に同粘土の標準圧密試験結果および拘束圧800を変化させた非排水三軸圧縮試験結果および超弾性構成Mean effective stress p' (kPa)式を適用した SYS Cam-clay model によるそれぞれの再現(b) Einav and Puzin の超弾性構成式結果を示す。太線が実験結果を細線が計算結果を示してい図 3 繰返し等体積せん断応答る。また,標準圧密試験結果については,再構成試料に対する結果も示している。計算に用いた材料定数と初期値を以下では,この超弾性構成式を適用した SYS Cam-clay表 2 と 3 に示す。計算には一組の材料定数を用い,初期応model の基本的応答について示すために,砂を対象とした力に応じて状態量の初期値を変化させた。標準圧密試験結計算例を示す。果については,自然堆積粘土特有の嵩張った状態(不可能領域)から塑性変形を伴いながら練返し正規圧密土の一次表 1 材料定数元圧縮挙動に漸近する挙動が再現されている。また,非排(a) 亜弾性 Hooke 則膨潤指数 ~ポアソン比 水三軸試験結果では,構造を有した過圧密粘土に特有の巻き返し挙動や,構造を有した正規圧密土に特有の限界状態0.004線よりも下側の塑性圧縮を伴う軟化挙動が再現されてい0.4る。(b) Einav and Puzin の超弾性構成式0.002せん断剛性係数(無次元量) G10415Specific volume v膨潤指数 ~3. 超弾性構成式を適用した SYS Cam-clay model の基本応答3.1SYS Cam-clay model における砂と粘土の違い432実験 計算不攪乱再構成101SYS Cam-clay model では,砂と粘土の力学的な違いは構102103104Vertical effective stress v' (kPa)造の劣化速さと過圧密の解消速さにあり,図 4 に示すように,構造の劣化速さが卓越するのが砂,過圧密の解消速さ図 5 浦安粘土の標準圧密試験結果とその再現結果170 表 2 浦安粘土の材料定数と初期値400400限界状態定数 M1.5NCL の切片 N圧縮指数 ~3.000.100膨潤指数 ~0.020せん断剛性係数(無次元量) G54.6Deviator stress q (kPa)Deviator stress q (kPa)q=Mp'弾塑性パラメータ3002001000510Shear starain s (%)300200100150発展則パラメータ0.4構造劣化指数 a (b  c  1.0)0.35正規圧密土化指数 m1.0回転硬化指数 br0.03回転硬化限界面 mb1.020030040041Specific volume vp実験結果||||/mbp Dv と|| Ds ||の割合 cs100Mean effective stress p' (kPa)CU1CU2CU3CU40.500表 3 浦安粘土の各種試験の初期値10Shear starain s (%)3NCLCSL2020100200300400Mean effective stress p' (kPa)(a) 標準圧密試験不攪乱再構成1計算結果CU1CU2CU3CU4R初期値0.53.2939.2初期応力比 00.000.0012.71.04.01.00.2310.107初期構造の程度 1/R*0初期過圧密比 1/R0初期異方性の程度 00CU1状態緩CU2中密CU3密CU4超密初期値3.553.403.253.0149.198.1196.2392.4初期応力比 00.000.000.000.00初期構造の程度 1/R*011.910.27.86.00平均有効応力 p’0(kPa)初期過圧密比 1/R0初期異方性の程度 03.303.42.11.21.010.2050.1670.1070.052600600500500400300200100010Shear starain s (%)201020Shear starain s (%)q=Mp'400300200100300100200300400500600Mean effective stress p' (kPa)2.21||||/mb初期比体積 v020図 6 浦安粘土の非排水せん断試験結果とその再現結果(b) 非排水せん断試験試験名10Shear starain s (%)0.5Deviator stress q (kPa)3.639.2Deviator stress q (kPa)初期比体積 v0平均有効応力 p’0 (kPa)ROT2*状態1OT1実験結果0.5砂の応答0典型的な砂として相馬珪砂を取り上げる。図 7 と 8 に同Specific volume v試験名CU1CU2CU301020Shear starain s (%)2NCL1.8CSL1.6030100200300400500600Mean effective stress p' (kPa)砂の密度を変えた排水および非排水三軸せん断試験結果とその再現結果を示す。太線が実験結果を細線が計算結果11を示している。計算に用いた材料定数と初期値を表 4 と 5計算結果CD1CD2CD30.5じて状態量の初期値を変化させた。実験結果は密な砂が排RR*に示す。計算にはやはり一組の材料定数を用い,密度に応水せん断時に示すピーク挙動や,中密な砂が非排水せん断0.5時に示す有効応力空間の原点に向かって一旦軟化する挙0動など,砂に典型的なせん断挙動を示している。1020Shear starain s (%)3001020Shear starain s (%)30図 7 相馬珪砂の排水せん断試験結果とその再現結果171 表 4 相馬珪砂の材料定数と初期値1.35NCL の切片 N圧縮指数 ~1.950.045膨潤指数 ~0.002せん断剛性係数(無次元量) G1041Deviator stress q (kPa)限界状態定数 Mq=Mp'Deviator stress q (kPa)弾塑性パラメータ200100010Shear starain s (%)200100200発展則パラメータ2002.2p Dv と|| Ds ||の割合 cs1.0構造劣化指数 a (b  c  1.0)5.0正規圧密土化指数 m0.2回転硬化指数 br5.0回転硬化限界面 mb0.55||||/mb1Specific volume vp100Mean effective stress p' (kPa)実験結果0.50CU1CU2CU3CU40表 5 相馬珪砂の各種試験の初期値10Shear starain s (%)21.81.6020NCLCSL100200300Mean effective stress p' (kPa)(a) 標準圧密試験CD3状態中密密超密1初期値計算結果CU1CU2CU3CU40.5初期比体積 v01.841.7498.198.198.10.000.000.00初期構造の程度 1/R*01.22.01.0初期過圧密比 1/R01.07.013.0初期異方性の程度 00.00.00.0平均有効応力 p’01.97(kPa)初期応力比 0020010Shear starain s (%)204. 超弾性構成式を適用した SYS Cam-clay model の繰返し非排水せん断時の応答CU1CU2CU3CU4緩中密密超密初期比体積 v02.021.951.841.74平均有効応力 p’0 (kPa)98.198.198.198.1初期応力比 00.000.000.000.00初期構造の程度 1/R*04.54.01.71.0初期過圧密比 1/R02.04.07.015.0初期異方性の程度 00.00.00.00.0状態0.5図 8 相馬珪砂の非排水せん断試験結果とその再現結果(b) 非排水せん断試験試験名10Shear starain s (%)RCD2RCD1*1試験名次に,同構成式に繰返し非排水せん断を与えた際の応答を図 9 に示す。材料定数は表 4 に示したものと同じ値を用初期値いた。初期値については,サイクリックモビリティを描く程度に密な状態(表 5 の CU3 と同じ値)を与えた。繰返しせん断に伴う構造の劣化と過圧密の蓄積に起因する塑性圧縮が生じることにより,平均有効応力が低下してゆく挙動が再現されている。また,式(2)に示す超弾性構成式を用いたことにより,せん断応力の除荷時にも平均有効応力が低下する挙動や,応力空間の原点付近に達してから剛性が回復する挙動など,サイクリックモビリティの記述にと以上で示したように,計算結果は,典型的な粘土と砂のって重要な挙動が示されている。力学挙動の特徴を概ね再現することができている。また,図 6 において R が R*に比べて速やかに 1 に近づいている5. まとめことから,粘土では過圧密の解消速さが構造の劣化速さを卓越していることを確認できる。逆に図 7 や 8 において R*本論文では,Einav and Puzin による超弾性構成式を適用が R に比べて速やかに 1 に近づいていることから,砂ではしたときの SYS Cam-clay model の応答例について示した.構造の劣化速さが過圧密の解消速さを卓越していること現在,弾塑性構成式の更なる高度化を視野に研究を進めてを確認できる。このように,式(2)に示す超弾性構成式を適いる用したことによって,SYS Cam-clay model の単調せん断時質の改善がもたらす効果について示した.の基本的応答が損なわれることはないことが分かる。1728),9),10)が,本論文ではその研究の一環として弾性的性 50Deviator stress q (kPa)Deviator stress q (kPa)500-50-1q=Mp'1)02)-500Shear starain s (%)10501003)Mean effective stress p' (kPa)2.2Specific volume v||||/mb104)NCL2CSL1.85)elastic-plastic-1-10Shear starain s (%)1.601506)RR*10.50.50Shear starain s (%)10-10Shear starain s (%)continuum,”ArchiveforRationalMechanics and Analysis, 18, 251-281, 1965.橋口公一: 粒状体に関する等方硬化理論, 土木学会論文集, 227, 45-60, 1974.7) Butterfield, R.: A natural compression law for soils (anadvance on e-logp’), Geotechnique, 29, 469-480, 1979.8) 山田正太郎, 野田利弘 , 中野正樹, 中井健太郎, 浅岡顕 : 複合負荷状態を有する土骨格の二重硬化弾塑性構成式の提案, 第 49 回地盤工学研究発表会概要集,2014.9) 岡田麻希, 山田正太郎, 野田利弘: 二重硬化弾塑性構成式による砂の排水/非排水せん断挙動の再現 , 第49 回地盤工学研究発表会概要集, 2014.10) 水野元陽, 山田正太郎, 野田利弘: 二重硬化弾塑性構成式による応力履歴を受けた砂のせん断挙動の再現,第 49 回地盤工学研究発表会概要集, 2014.100Mean effective stress p' (kPa)10-1参 考 文 献Asaoka, A., Nakano, M. and Noda, T.: “Superloading yieldsurface concept for the saturated structured soils,” Proc. of4th European Conf. on Numerical Methods inGeotechnical Engineering, Udine, Italy, pp.233-242, 1998.Asaoka, A., Nakano, M. and Noda, T.: “Superloading yieldsurface concept for highly structured soil behavior, ” Soilsand Foundations, 40(2), 99-110, 2000.Asaoka, A., Noda, T., Yamada, E., Kaneda, K. and Nakano,M.: An elasto-plastic description of two distinct volumechange mechanisms of soils, S&F, 42(5), 47-57, 2002.I., Einav & A., M., Puzrin: Pressure-dependent elasticityand energy conservation in elastoplastic models for soils,Journal of geotechnical and GeoenvironmentalEngineering, ASCE, 81-92, 2004.Green, A.E. and Naghdi, P.M.: “A general theory of an1図 9 超弾性構成式に基づく SYS Cam-clay model の非排水繰返しせん断挙謝辞本論文は,地盤工学会東日本大震災対応調査研究委員会「地盤変状メカニズム研究委員会(委員長:浅岡顕)」に関連する報告である.173 Application of hyperelasticity to SYS Cam-clay modelShotaro YAMADA1,Toshihiro NODA2,Akira ASAOKA3,Kentaro NAKAI11 Nagoya University, Department of Civil Engineering2Nagoya University, Disaster Mitigation Research Center3 Association for the Development of Earthquake PredictionAbstractThe hyperelastic constitutive equation proposed by Einav and Puzin (2004), being adapted for finite deformationtheory, was applied to the SYS Cam-clay model which is an elasto-plastic constitutive equation based on soil skeletonstructure concept (Asaoka et al. (2002)). In the present study, basic responses of the model for clay and sand wereexamined. These results show that the application of the hyperelastic constitutive equation does not lose thefundamental performances of the SYS Cam-clay model. In addition, a cyclic undrained shear response of the modelwas examined. This result shows that the revised model can describe decrease behavior in mean effective stressduring unloading of shear stress and restoration behavior in stiffness after reaching near the origin of effective stressspace under undrained condition.Key words: hyperelastic, elasto-plastic, skeleton structure, SYS Cam-clay model174
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  • タイトル
  • 2011 年東北地方太平洋沖地震で被災を免れた仙台塩釜港向洋埠頭桟橋背後地盤の液状化ポテンシャルと残留変形
  • 著者
  • 仙頭紀明・谷田貝航・佐野峯麻聖
  • 出版
  • 地盤工学会特別シンポジウム -東日本大震災を乗り越えて-
  • ページ
  • 175〜181
  • 発行
  • 2014/05/14
  • 文書ID
  • 67557
  • 内容
  • 地盤工学会特別シンポジウム-東日本大震災を乗り越えて-182011 年東北地方太平洋沖地震で被災を免れた仙台塩釜港向洋埠頭桟橋背後地盤の液状化ポテンシャルと残留変形仙頭紀明 1,谷田貝航 1,佐野峯麻聖 11日本大学工学部・土木工学科概要液状化対策をしていた仙台塩釜港の向洋埠頭の背後埋立地盤において PDC によるサウンディング調査と地盤変状調査を実施した。埋土層では,深さ方向に不均質な細粒分含有率の分布を示すことがわかった。無対策地盤の Nd 値は 5 前後と低く,液状化の可能性が高いのに対し,対策地盤の Nd 値は無対策地盤の 2倍程度で液状化発生の可能性は低いことがわかった。また液状化対策地盤でも桟橋近傍で約 30cm 沈下し,桟橋から離れると沈下量は減衰し 10~20cm に収束した。キーワード:液状化,過剰間隙消散工法,沈下,機械式コーン貫入試験,PDC1. は じ め に密度増加により地震後の液状化強度が増加することを示している4)。東日本大震災では,埋立地や旧河道等の飽和した緩い砂一方で,液状化対策を行った箇所での地震後の現場調査地盤の液状化が東日本の広範囲で確認され,住宅や社会基については,無被害または軽微な被害であると確認されれ盤施設に大きな被害が発生した。一方で,事前に液状化対ば,その後に地盤調査や変状測定を含む詳細な調査を実施策が行われていた箇所では,対策が効果を発揮して構造物することは稀である。そのため,地震を経験した改良地盤の被害を免れている。液状化対策には様々な原理に基づいがなぜ効果を発揮したかについて詳細に検証するためのた工法があるが,本論文では,過剰間隙水圧消散工法を主情報が不足していることが課題である。な対象とする。そこで,本論文では前述した仙台塩釜港の向洋埠頭につ間隙水圧消散工法とは,礫や合成樹脂等の排水性の良いいて岸壁背後の液状化対策地盤と無対策地盤を対象とし材料を地盤中に所定の間隔で鉛直に設置することによりて,東日本大震災から約 2 年半後に地盤調査を実施した。地盤の透水性を高め,間隙水をドレーン内に流入させ,過具体的には液状化に対する抵抗性を評価するためにピエ剰間隙水圧の上昇を抑制する液状化対策工法の一つであゾドライブコーン(以降 PDC と呼ぶ)を用いたサウンデ1)る 。東日本大震災ではこの対策工を施工した岸壁では,ィング調査を実施した。加えて同地点において舗装面の高さを測定することで無被害もしくは軽微な被害であったことが報告されてい2)る 。具体的には東京湾周辺では,無対策地盤で激しく液沈下量を求め,レベル 2 地震が作用した改良地盤および無状化し噴砂や亀裂等が見られたが,対照的に隣接する対策対策地盤の地震による残留変形を明らかにすることを目が施された岸壁背後地盤は液状化の痕跡や変状もなく無的とする。被害であった。また震源に近く強い揺れに見舞われた仙台2. 調査概要塩釜港向洋埠頭では,設計想定を超える地震動が作用したにも関わらず,桟橋式岸壁の水平変位,傾斜等の変状が抑えられたことで,緊急物資の荷揚げを行うことができた。2.1一方で桟橋背後地盤が 10 数 cm 沈下したことが報告され向洋埠頭は,図 1 に示すように仙台塩釜港の東南部にている。これらをまとめるとレベル 1 地震に対しては無被位置している。図 2 に岸壁の平面図を,図 3 には断面図害であり,レベル 2 地震に対しては多少の変状は発生したを示す。当該地点は,沖積砂層(As1)からなる旧海底面ものの,構造物の機能を保持していたといえる。上に,浚渫砂を埋立てた埋立地にあたる。岸壁は計画水深調査地点上記のような対策効果を説明するためのメカニズムを-12m で,桟橋(1 ブロックあたり)の幅は 20m,奥行き解明するために,筆者らは過剰間隙水圧消散工法により改20m であり,それぞれ杭基礎により支持されている。桟橋良された地盤を模擬した部分繰返しせん断試験を実施し,部分の沖積砂層(As1)はサンドコンパクションパイル工消散に伴う沈下量の予測3)を試みるとともに,沈下に伴う法(以下 SCP と呼ぶ)により締固められている。また桟175 橋背後の 34m は液状化対策が施工されている。桟橋端部調査位置は西側のⅠ工区(区間長さ 100m)の中心部付から約 7.7m は過剰間隙水圧消散工法であるスパイラルド近である。エプロン端部から 6.4m(図中 D-1~3)と 39mレーン工法(以降 SPD と呼ぶ),それよりも陸側は SCP(図中 N-1~2)離れた位置で PDC によるサウンディング工法が施工されていた。SPD は施工時に桟橋に作用する土を実施した。前者は SCP との境界から 1m 強海側に離れた圧が少ないために採用されたものである。SPD 工法は排水位置で,ドレーン間の中心部に相当する。後者は SCP 施材としてポリエチレン製の円筒型(スパイラルドレーン)工境界から陸側に 5m 離れた無対策地盤である。いずれのを用いる工法である。本地点ではドレーン直径 10cm,打位置も SCP 施工の影響,具体的には,砂杭打設の振動お設間隔 64cm であった。なお対策工は 1995 年に施工されよび水平土圧増加に伴う強度増加の影響を避けるためにたものである。なおこの埠頭は石炭の荷揚げとストックに一定以上離れた位置を選定したものである。利用され,関係者からの聞き取り調査では地震当時も凡そ2.25m 以上の高さで石炭がストックされていた。調査方法今回の調査では PDC による地盤調査及び背後地盤の地表面沈下量の測量を行った。はじめに PDC の調査の概要を示す。PDC は動的コーン貫入試験に分類される。PDCの構成概要を図 4 に示す5)。PDC は地盤の動的貫入抵抗を測定しながら,打撃貫入時に先端コーン周辺地盤に発生する間隙水圧を測定することで地下水位と土質区分(細粒分含有率 Fc)を推定して,簡易に地盤の液状化強度を評価する原位置試験である6)。さらにこの方法の特徴は,連続して貫入が行われるため,1m ピッチで実施する標準貫入試験と比べて深さ方向に高分解能な計測ができることから,薄層や互層等の地盤の不均質な強度や Fc から推定される透水性を調査できることである。図 1 仙台塩釜港向洋埠頭の位置(電子国土に加筆)図 2図 3向洋埠頭岸壁の平面図向洋埠頭岸壁の断面図(Ⅰ工区)176 定の際に用いる湿潤単位体積重量は表 1 に示す値を仮定して用いた。表 1 液状化判定の際に仮定した湿潤単位体積重量地 層盛土埋土埋土沖積層図 4土 質 記 号礫質土砂質土粘性土砂質土BFsFcAs1単位体積重量3γt (kN/m )20181618PDC の構成概要(利藤ら 5)に加筆)今回の実験では先端コーン直径 45mm,ロッド直径32mm,ドライブハンマー質量 63.5kg,落下高さ 50cm の条件で行った。なおこの条件は ISO 22476-2 の分類によれば,DPSH-A(Super heavy)に相当する 6)。図 5 無対策地盤の Nd 値,Fc,FL の分布(N-1)次に地表面沈下量の測定方法を説明する。調査時には,アスファルト舗装が当時のまま残っていた箇所を対象に,桟橋天端(陸側端部)の高さを基準として,舗装上面の高さを図 2 に示す 40m 区間について 2m ピッチで測定した。この区間には前述のように SPD,SCP 及び無対策地盤区間を含んでいる。3. 調査結果3.1PDC による調査結果無対策地盤(N-1,N-2)の Nd 値,Fc 及び FL 値の分布を図 6 無対策地盤の Nd 値,Fc,FL の分布(N-2)図 5,図 6 に示す。Nd 値と標準貫入試験の N 値は概ね等しいため,Nd 値を N 値と読み替えて建築基礎構造設計指針7)を用いて液状化簡易判定を行って FL 値を求めた。ここ図より埋土の Nd 値はほとんどで 5 以下であり,緩い状では中地震として地表面最大加速度 200Gal ,大地震とし態であることがわかる。細粒分含有率 Fc は N-1 の結果でて 350Gal を考慮した。マグニチュードはそれぞれ 7.5 を仮は,埋土で 10%前後であるが,深度 4m,6m 付近で Fc が定した。東日本大震災のマグニチュードは 9.0 であったが,20%を超えている。N-2 では深度 6m 以浅で Fc の変動が大このような大きなマグニチュードに対して,等価の繰返しきくなり,20%を超えて 60%に達するものもあった。こ回数に関する補正係数算定式を外挿して適用できるかは,の Fc の分布を考察するために 1995 年 5 月に同埠頭で実施8)研究事例 が少ないためよくわかっていない。そのため従した標準貫入試験結果と粒度試験結果を参考のために示来の液状化判定に用いられる 7.5 をここでは用いた。したす。なお既往の調査地点は今回の地点から東南東に約 60mがって,等価な繰返しせん断応力比は若干小さく,FL 値は離れた位置のものである。上記の Fc 分布の変動は既存の大きく見積もっていることに注意する必要があるが,対策,調査結果には見られない。この差異は,場所の違いに加え無対策地盤の相対比較には問題は生じないものと考える。て,データの深度方向測定分解能の違いが影響していると土層構成は上から,盛土(礫質土:B),埋土(砂質土:考えられる。一方,表 2 には埋立に用いられた浚渫土のFs),旧海底地盤(砂質土:As1)である。地下水位は約物理特性を示す。一部を除き,粒径が揃ったほぼ均等な砂2m である。なお,細粒分含有率の推定ならびに液状化判であり,細粒分含有率は 10%より小さいものが多いことが177 わかる。このことから埋立材料の違いにより前述の Fc 分として,ドレーン工を模擬した室内要素実験 4)では,排水布を説明することは困難である。その他の要因としては,を伴う繰返しせん断により,1 回目の繰返しせん断と比べ施工に伴う埋立土砂の分級,地震後の過剰間隙水圧消散にて 2 回目の繰返しせん断の液状化強度が増加する結果が伴う浸透流による細粒分移動等が考えられる。ただし,今得られている。回の調査結果のみで結論を導くことはできない。表 2 埋立材量の物理特性埋立時期 試料No.平成6年3月平成7年2月123456D60(mm)0.320.320.240.250.260.26D50(mm)0.270.290.210.230.240.23D30(mm)0.190.230.160.180.190.16D10(mm)0.0960.160.110.0600.0930.005Fc(%)Uc6.80.25.2119.0153.32.02.14.22.852土粒子の密度3ρs (g/cm )2.6472.6582.6832.6682.6782.675図 8 舗装面高さの分布図 7 対策地盤の Nd 値,Fc,FL の分布(D-3)次に液状化強度に着目すると埋立砂のほとんどが大,中地震を想定しても FL 値が 1 より小さく,大地震を経験してもなお液状化の可能性が高いことがわかる。図 7 には対策地盤(D-3)の結果を示す。土層構成は上から,盛土(礫質土:B),埋土(粘性土:Fc),埋土(砂図 9 地震前地盤高さの分布質土:Fs)となっている。この地点では無対策地盤の結果と比べ,かなり高い細粒分含有率と大きな変動を示す Fc3.2の深度方向分布がみられた。この要因として,無対策地盤地盤変状調査結果で述べた要因に加えて,施工位置の違い(陸側,海側)が図 8 には舗装面高さの測量結果を示す。舗装面高さは影響している可能性がある。表 2 で示したように,この場桟橋端部(陸側上面)を基準とし,沈下方向を正と定義し所だけ細粒分の高い土を埋立てに用いたとは考えにくく,た。舗装面高さは桟橋端部に最も近い測点では約 30cm でなんらかの理由で細粒分が集まりやすい場所になっていあり,内陸に向かって減少し,25m 付近を超えると隆起すたと考えられる。なお,この傾向は約 10m 西側で実施しる結果となり不合理な結果である。したがって舗装面高さた D-1,D-2 地点も同様であった。一方,埋土(Fs)の Ndをそのまま地盤沈下量とみなすことはできない。これは地値を見ると,無対策の 5 前後と比べて 10 前後になってお震前の岸壁背後地盤が水平でなかったことが原因である。り,約 2 倍程度大きな値が得られている。Nd 値が大きいこすなわち,荷役場(桟橋背後地盤)の地表面には陸側からとに加えて Fc が大きいために,中地震ではほとんどの深海側に向かう排水勾配が設けられていたためである。した度で FL 値が 1 を超えており,液状化発生の可能性は低いがってその影響を補正することで地震により生じた地盤と思われる。細粒分含有率が高い砂が水中で堆積する場合,の沈下量を算出することができる。図 9 には当時の埠頭一般的には緩くなりやすく,埋立直後からこの Nd 値であの平面図より読み取った地盤の標高データをもとに設定ったことは考えにくい。そのためこの Nd 値はドレーン打した地震前の地盤高さを示す。2つのパターンが読み取れ設時のマンドレル圧入により締固まった ,または地震中たがいずの場合も SCP と無対策地盤の境付近で桟橋端部のドレーン工の排水効果により強度が増加したと解釈すよりも約 20cm 高くなっていたことがわかる。9)ることが可能であろう。後者の推定を裏付ける一つの根拠178 図 10 は舗装面高さから地震前地盤高さを差し引いて求め た 地 盤 沈 下 量 を 示 す 。 図 よ り , SPD 施 工 区 間 で は20~30cm,SCP および無対策地盤では 10~20cm 沈下していることがわかった。SPD 区間については,地震後の調査では 10 数 cm の沈下であった 2)ことが報告されており,今回の調査はそれよりも大きめの結果が得られた。この原因として,同じ埠頭であっても測定地点が異なっている可能性があること,余震の影響により沈下量が増加した等が考えられる。つぎに今回得られた地盤沈下量の大小を論じるために参考値として,建築基礎構造設計指針 7)の Dcy を沈下量と読み替えて沈下量を評価した。Dcy は無対策地盤について図 10 地表面沈下の分布は N-2,対策地盤では D-3 の液状化判定結果から求めた。図 11 および図 12 には N-2 および D-3 の補正 N 値と応力比の関係を示した。これらの図より求めたせん断ひずみを層厚に乗じて深さ方向に足し合わせることで Dcy を求めた。その結果を図 10 に示した。無対策地盤については,測量より求めた沈下量と Dcy は想定した地震動の違いはあるものの,比較的近い値を示した。これに対し,対策地盤については Dcy と測量より求めた沈下量に差が生じた。これは,Dcy が水平地盤の地震後の再圧密による沈下量を表しているのに対し,測定値は岸壁の水平移動に伴う沈下の成分や,地震後に橋台等の構造物近傍で見られる沈下の成分が加わったためにその差が大きくなったものと考えられる。上記の桟橋の海側への水平移動に関する測量結果を図13 に示す。データは測量基準点(3 箇所)からの相対水平変位であり,地震前後の比較による水平変位とは異なることに留意する必要がある。図より最大で 18cm,今回の地盤調査地点近傍では 4cm 前後の水平変位が測定されてい図 11 補正 N 値と応力比の関係(N-2)る。岸壁の水平変位が背後地盤の沈下に及ぼす影響については,今後の研究課題である。図 13 埠頭の海側への移動量4. まとめ図 12 補正 N 値と応力比の関係(D-3)東日本大震災を経験した液状化対策地盤および無対策179 地盤について PDC によるサウンディング調査ならびに測用地質量による地盤変状調査を実施して以下のことがわかった。年氏,五洋建設1)今回調査した埋土では,埋立に用いた砂質土の Fc より吉澤大造氏,澤田俊一氏,東亜建設工業大野康林健太郎氏には調査実施にご協力いただきました。記して謝意を示します。も高い Fc を示す深度が数多く存在し,不均質な分布を示参 考 文 献1) 社団法人地盤工学会:地盤工学・実務シリーズ18 液状化対策工法, pp.363, 2004.2) 海野寿康,林健太郎,浅田英幸,居場博之:遠心載荷模型実験を用いた過剰間隙水圧消散工法による液状化対策の効果の検証,土木学会論文集 B3(海洋開発),Vol.68,No.2, I480-I_485, 2012.3) 仙頭紀明,齋藤正平,海野寿康,大野康年:過剰間隙水圧消散工法を適用した地盤の繰返しせん断に伴う体積ひずみの予測法,第48 回地盤工学研究発表会(富山), pp. 1769-1770, 2013.4) 齋藤正平,仙頭紀明:間隙水圧消散工法の排水に伴う沈下量予測と再液状化に対する抵抗性,土木学会東北支部技術研究発表会(平成24年度),Ⅲ-11,2013.5) 利藤房男,沢田俊一,伊藤義行:新しいサウンディング技術,地盤工学会誌,Vol.58,No.8,pp.26-29,2010.6) 公益社団法人地盤工学会:地盤調査の方法と解説,pp.460-464,2013.7) 日本建築学会:建築基礎構造設計指針,pp.61-67,2001.8) 新井洋:2011年東北地方太平洋沖地震における東京湾岸の液状化に関する等価繰返し回数,第47回地盤工学研究発表会,pp.1559-1560, 2012.9) DEPP 工法研究会:DEPP 工法技術資料, pp.31-32, 2011.すことがわかった。2)無対策地盤の埋土の Nd 値は 5 前後と低く,FL 値は中地震,大地震とも 1 より小さく液状化の可能性が高い。3) 対策地盤の Nd 値は無対策地盤の 2 倍程度あり,中地震では FL 値が 1 よりも大きく液状化が発生する可能性は低い。4) 測 量 か ら 求 め た 地 盤 沈 下 量 は , 無 対 策 地 盤 で は10~20cm であり,液状化簡易判定から求めた沈下量と近い値を示した。対策地盤では,桟橋近傍の沈下量は約 30cmで桟橋から離れるに従って減衰し,約 15m 程度離れるとほぼ一定値に収束した。謝辞本研究は JSPS 科研費 25420510 の助成を受けたものです。国土交通省東北地方整備局似内敏行氏,川守田正路氏,下澤治氏,佐瀬浩市氏,塩竈港運送阿部祐一氏,応180 Liquefaction potential and residual deformation of the pier back ground of the Koyowharf in Sendai-Shiogama Port hardly damaged during the 2011 off the Pacific coast ofTohoku earthquakeNoriaki SENTO1,Wataru YATAGAI1,Asami SANOMINE11Nihon University, College of engineering, Department of civil engineeringAbstractThe mechanical cone penetration tests with pore pressure measurement using Piezo Drive Cone technology and theresidual ground deformation measurement were conducted at the Koyo wharf in Sendai-Shiogama port which background was treated against liquefaction by both drainage method and compaction method. In the reclaimed fill layer,heterogeneous fine content distribution in depth direction was observed even though the almost homogeneous sandysoil was used for reclaimed fill construction. Nd-value of untreated fill ground is around 5, so the higher susceptibilityto liquefaction was obtained. On the other hand, Nd-value of treated fill ground by drainage method is twice as largeas untreated one, so the lower susceptibility to liquefaction was obtained. Treated ground settled about 30 cm at thevicinity of pier and the ground settlement reduced as the distance from the pier increased. Finally it became aconstant value of 10-20 cm at about 15 m distance from the pier.Key words: Liquefaction, drainage method, settlement, mechanical cone penetration test, Piezo Drive Cone181
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  • 平成23 年東北地方太平洋沖地震でみられた締固め改良による地盤の変形抑止効果の検証
  • 著者
  • 竹内秀克・野田利弘・中井健太郎・高稲敏浩
  • 出版
  • 地盤工学会特別シンポジウム -東日本大震災を乗り越えて-
  • ページ
  • 182〜188
  • 発行
  • 2014/05/14
  • 文書ID
  • 67558
  • 内容
  • 地盤工学会特別シンポジウム-東日本大震災を乗り越えて-19平成 23 年東北地方太平洋沖地震でみられた締固め改良による地盤の変形抑止効果の検証竹内秀克 1,野田利弘 2,中井健太郎 3,高稲敏浩 41不動テトラ・地盤事業本部技術部2名古屋大学・減災連携研究センター3名古屋大学大学院・工学研究科社会基盤工学専攻4淺沼組・技術研究所概要東日本大震災から 3 年が経過し,密度増大を原理とする液状化対策の改良効果に関する調査報告が開示されている。数値解析ツールを用い,浦安地区の埋立地盤を対象に,継続時間が長い強震動作用時の締固め改良効果メカニズムについて検証した。サンドコンパクションパイル改良地盤の密な砂杭は,地震による急速な繰返しせん断によって,塑性膨張を伴う硬化(正のダイレイタンシー)により砂杭周辺の応力も受け持つようになる。これにより締固め改良には十分な地盤の変形抑制効果があることがわかった。キーワード:サンドコンパクションパイル,締固め,液状化1. は じ め にSCP 工法が採用され,主に 3 階建壁式鉄筋コンクリート造の建物の基礎に適用された。SCP 工法の改良仕様は杭東日本大震災における現地調査によって,埋立地におけ径φ800mm,2m の正方形配置(改良率 as=12.5%),改良る締固めによる改良は液状化に対し有効で,地震後の変状長 10m で,改良範囲は構造物直下および周辺の 5m であも小さく殆ど被害が無かったことが報告されている1)。今る。改良の結果,細粒分の少ない深度では杭間の N 値が回,現地の土質調査結果を踏まえつつ,継続時間が長い強10 以上増加し改良効果がみられた。当該エリアでは東日震動が作用した場合の締固め改良効果を数値解析により本大震災における地震時に改良域では液状化や被害は発検証した。具体的には,浦安地区の埋立地盤を対象に,地生しなかった。一方,周辺の未改良部や敷地内でも一部の盤変形解析コード GEOASIA2),未改良域で噴砂が発生した。3)を用いて,サンドコンパクションパイル(SCP)工法による改良地盤を複合地盤とし3. 東日本大震災における締固め改良地盤の効果の検証てモデル化した上で,この地盤に対して継続時間が長い地震動を与え,無処理地盤の挙動と比較しつつ,地震後を含む SCP 改良地盤の変形抑止効果のメカニズムを調べた。3.1 浦安市地盤の弾塑性性状のモデル化とその一次元2. 東日本大震災における締固め改良地盤の調査地震応答解析中井ら4)および浅岡ら5)は,東日本大震災で発生した甚大東日本大震災において,東京湾岸地区において広範囲にかつ非一様な浦安市の液状化被害のメカニズムを解明す液状化による被害が発生した。特に埋立地においては甚大るために,多層系地盤の地震応答解析を実施している。浦な被害が発生した。それに対し東日本大震災発災前から締安市内の南北 2 地点において,ボーリング調査および不攪固めによる液状化対策工事は多数実施されており,例えば乱試料の採取を行い,浦安地盤の物理特性・力学特性の把不動テトラ実施分では 560 件程度である。これらはすべて握を試みている。また,SYS カムクレイモデルにて精緻な無被害であった。材料定数の同定し,モデル化している。表 1 および表 2 にその一事例として,Yasuda et al.による文献 1)に紹介されSYS カムクレイモデルによる弾塑性性状の一覧,図 1 に浦た浦安市内の住宅建設に伴う液状化対策をとりあげる。当安市南地点を想定した鉛直方向の一次元モデルを示す。同該地区では,上部に 5m 程度 の埋土層があり,その下部図には観測結果および弾塑性定数から算出される Vs を示に沖積砂質土層,沖積粘性土層が堆積している。上部の緩す。一次元地震応答解析により比較的軟弱層が厚い地点でい砂層の締固めによる支持力増加,液状化防止を目的には,最表部の埋土層が液状化することが確認された。182 表 1 材料定数(弾塑性・発展則パラメータ)5)弾塑性埋土 B沖積砂 As沖積粘土 Ac1,2沖積粘土 Ac3限界状態定数 M1.401.431.401.40NCL の切片 N~圧縮指数 λ膨潤指数 κ~2.452.012.822.000.090.070.2800.1150.0050.0020.020.012ポアソン比 ν0.100.250.100.1044440.801.000.400.40構造劣化の塑性尺度(IREV)p発展則所定の深さまで貫入した後,ケーシング先端より砂を排出− Dv と D s p の割合 c s構造劣化指数 a (b = c = 1.0)0.108.000.650.65正規圧密土化指数 m8.008.0020.020.0回転硬化指数 br0.503.000.200.20回転硬化限界面 m b物土粒子密度 ρ s (g/cm3)性透水係数 k (cm/s)0.700.501.001.002.6772.7872.6902.6901.0×10-51.0×10-41.0×10-71.0×10-7することによって半径 r=35cm の砂杭を地盤深部から施工する。鉛直方向には静的な工法を模擬し 20cm ごとに砂杭施工後,ケーシングを引き上げてその上部 20cm の砂圧入施工する工程を繰り返し,所定の深度の施工をする。ここでは,半径 1m の円筒形状内での砂圧入施工を模擬し,その過程を軸対称条件で解析した。解析領域は,改良対象の円筒形状の砂地盤である。砂杭造成部は排水条件とし,地盤に強制的に水平変位 15cm を与えることでモデル化する。図 2 に円筒土槽内砂地盤の半径 r0=1.0m の場合の有限要素メッシュと境界条件,水理条件を示す。図 3 は周辺地盤の地盤内の比体積変化分布を示す。図表 2 初期状態5)初期値中で暖色系(赤色)に変化する部分ほど圧縮している(締め沖積粘土沖積粘土沖積粘土Ac1Ac2Ac31.9003.0003.2942.078108.0189.0236.0335.00.5450.5450.5450.5450.5452.7851.204.55013.3012.13初期過圧密比 1 / R 01.9006.501.551.141.90初期異方性の程度 ς 00.130.000.400.330.35埋土 B沖積砂 As初期比体積 v 02.602初期鉛直応力 σ v′ (kPa)32.65初期応力比 η 0初期構造の程度 1 / R*0固まる)ことを示す。表 3 には構造の程度,静止土圧係数K0,および間隙比の深度 1m 毎の砂杭拡径後の平均値を示す。埋土の性状が細粒分含有率 40%程度,透水係数も 1.0×10-5cm/s と中間土であるため,粘性土的な特徴がみられた。すなわち,砂杭拡径によるせん断中よりも,それ伴い発生した過剰間隙水圧が砂杭拡径終了後の圧密によって消散する過程の中で,間隙比が減少(圧縮)し締め固まっている。CL r0=0.2m大気圧ケーシングパイプ側(強制変位)Vs(m/sec)図19m非排水境界a/2=1.0m5)浦安市南地点の一次元モデル図 2 砂杭拡径モデル化および有限要素メッシュ3.2 SCP 工法による締固めのシミュレーション3.1 にて液状化が示唆された層厚 74m の浦安市における実在の埋立地盤の最表層部の埋土層に対し,締固めによる液状化対策が施された場合の対策効果の検証のため,SCP 改良地盤をモデル化し地震応答解析を実施した。まず,SCP 工法の砂杭造成に伴う拡径過程をシミュレートするためのモデル化(理想化/仮定)について説明する。Nakano et al.6)に準じ,2 次元軸対称解析で,最も簡単な条件として円筒形状地盤(土槽)の中央部に砂杭を 1 本造成した場合をモデル化する。このモデル化では砂杭施工に伴うせん断による地盤内部の締固め効果を評価することがで拡径開始0.0きる。拡径中拡径後圧密後0.1 以上(圧縮)図 3 間隙比変化分布SCP 工法による施工では,半径 r0=20cm のケーシングを183 表 3 杭間部の各状態量事前事後K0事前表 4 盛土・砂杭の材料定数と初期値間隙比事後事前事後0.7481.8411.785-2m1.8840.8071.7221.662-3m1.8920.8081.6741.608-4m1.8910.7971.6421.5680.7841.6181.536-5m2.81.8880.6-6m1.8840.7701.6001.510-7m1.8800.7581.5841.487-8m1.8750.7481.5711.467-9m1.8580.7601.5591.446発展則1.878弾塑性-1m物性初期値盛土砂杭~圧縮指数 λ0.040.05~膨潤指数 κ0.0040.012限界状態定数 M1.451.0正規圧密線の切片 N2.41.98ポアソン比 v0.40.3構造劣化指数 a(b=c=1.0) 10.02.2正規圧密土化指数 m0.030.06回転硬化指数 br0.13.5回転硬化限界定数 mb0.650.7透水係数 k (cm/sec)1.0 × 10-5 1.0 × 10-3土の密度 ρs(g/cm3)2.652.80構造の程度 1/R0*1.181.26比体積 v02.251.79応力比 K00.8241.03.3 地震応答解析BAs(1)解析条件次に,文献 4),5)にて示された層厚 74m の浦安市におけAc1る実在の埋立地盤の SCP 改良地盤の地震中・地震後の挙Ac2動を 2 次元平面ひずみ条件でモデル化した。表 1 および表Ac3両端:周期境界下端:粘性境界2 に示した各土層と表 4 に示す盛土および砂杭の材料定数・初期値を用いた。図 4 はこの解析に用いた有限要素メDSCP改良域as=11%相当ッシュと境界条件を示す。解析領域中央の幅 18m 区間(図4 赤枠部分)を SCP 改良域とする。対象層は 3.2 に示した液200m4.5m9.0m4.5m盛土中央直下状化の発生の危険性がある層厚 9m の埋土(B)層とする。こ10m 13m 15m 17m 10m 9m深度構造の程度法尻3mケースの改良域は SCP 施工によって造成される「砂杭部」と,砂杭造成によりせん断変形を受けて締め固まる「杭間部」1無処理2SCPBA9mからなる。このため,置換する砂杭は図 1 のように,幅18m(砂杭0.2m,杭間0.4m×4)20cm 設置間隔 1.8m の「砂壁」(改良率 11%相当)としてモデル化し 6),密な砂の状態を想定した。杭間の埋土層は砂図 4 有限要素メッシュ杭拡径による締固め効果(密度増加)を考慮するために,締固めシミュレーション結果に基づいて,鉛直方向に 1m ご60Acceleration (gal)とに分割した 9 層に対する表 4 に示す各層の間隙比などの平均化した状態をもとに力のつり合いを満足するように決めた。次に,無処理地盤と SCP 改良地盤に対して,有7)限要素メッシュを追加する方法 で地盤改良域の地表面部分に高さ 3m の盛土を載荷し,圧密が収束するまで計算をEW0−600実施した。浦安地区では宅地や住宅などの建物の被害が甚100大であったが,ここでは大きめの偏荷重が作用した場合のTime (sec)200300図 5 開放基盤面での入力地震波形変状を比較検討するため,5 階建程度の建物と同等な荷重の盛土とした。その後,基盤層に底面粘性境界(Vs=400m/s),横方向は周期境界を設定し,図 5 に示す地震波を入力して図 7 は盛土法尻部の最大水平変位の深度分布,図 8 はせ無処理と SCP 改良地盤の解析を実施し挙動を比較した。ん断ひずみ分布の推移を示す。これらの図からも SCP 改良のケースでは変形抑制効果が見て取れる。図 9 は平均有(2)解析結果図 6 は地震発生からの図 4 赤枠内の盛土中央直下部にお効応力 p’分布の推移を示す。無処理地盤では,拘束圧(平ける時間~沈下関係を示す。なお,この沈下量は埋土層だ均有効応力)を失い液状化が生じている。これに対してけの層別沈下量にしている。無処理地盤のケースでは,地SCP 改良地盤では砂杭部分に大きな応力集中が発生し耐震中に(従って非排水的に)地盤が側方に移動し,地盤のせ震効果(変形抑止効果)を発揮する。杭間部分についても砂ん断変形による盛土の大沈下を示す。これに対し,SCP 改杭拡径に伴う締固めにより,地震中,p’はある程度保持し良地盤は無処理地盤に比べ沈下量が半減している。続け,液状化しない。184 0.000100.0010.010.1時間 (day)1100100100010000 10000080100-110-215-320深度 (m)沈下量 (cm)水平変位 (cm)40600無処理SCP520253035-4-5-640-7図 6 埋土層沈下量の経時変化-8無処理SCP-9図 7 水平変位分布(法尻)(1) 無処理(2) SCP 改良地盤0%20%以上図8 せん断ひずみ分布(上段:地震前,中段:地震中300s,下段:地震後)(1) 無処理(2) SCP 改良地盤100kPa 以上0kPa図 8 平均有効応力分布(上段:地震前,中段:地震中300s,下段:地震後)185 0Shear strain εs (%)50R*-110R-210-3100Shear strain εs (%)図950101.8Deviator stress q (kPa)Shear strain εs (%)50Shear strain εs (%)55RR*–11.70100200300Mean effective stress p' (kPa)100Shear strain εs (%)5q=Mp'50050100Mean effective stress p' (kPa)2.5N.C.L.2.4050100Mean effective stress p' (kPa)図 11 無処理 要素 B の挙動が十分に表れている。地震終了後は過剰間隙水圧の消散に100Deviator stress q (kPa)Deviator stress q (kPa)0SCP 砂杭要素 A の挙動1000100100500100200300Mean effective stress p' (kPa)Specific volume v (=1+e)R, R*10Deviator stress q (kPa)100200R, R*200100q=Mp'Specific volume v (=1+e)300Deviator stress q (kPa)Deviator stress q (kPa)300q=Mp'伴う圧密により比体積は若干減少する。これに対し図 11および図 12 は図 4 中要素 B(GL-6m)の挙動を示す。SCP 有無に関わらず地震発生とともに一方的に p’が減少するの50みであった。今回のケースでは,既往の研究8)でみられたSCP 改良の杭間要素において塑性膨張を伴う硬化に伴いp’が一旦増加する現象まではみられなかった。これは今回050100Mean effective stress p' (kPa)対象とした地震動のレベルが小さかったこと,埋土層にシSpecific volume v (=1+e)ルト分が多く構造劣化に伴う塑性圧縮が起き難い粘性土010R, R*R*R-1100Shear strain εs (%)5的な挙動をとる物性であることに起因する。地震後は,水N.C.L.圧消散に伴い有効応力を回復しつつ比体積が若干減少する。2.54. おわりに2.4050100Mean effective stress p' (kPa)地盤解析コード GEOASIA を用いて,実際の浦安地区の埋立地盤を対象に SCP 改良を施した複合地盤特性の観図 10 SCP 杭間要素 B の挙動点から,耐震(変形抑止)メカニズムを調べた。密な砂杭は地震中,急速な繰り返しせん断によって,塑性膨張による図 10,図 11 は SCP 改良地盤の要素の挙動を示す。左上硬化(正のダイレイタンシー)を伴って杭周辺の応力も受図はせん断応力 q~せん断ひずみ εs 関係,右上図は p’~ qけ持つようになる。これにより締固め改良は今回対象とし関係(有効応力パス),左下図は過圧密比 R・構造の程度 R*た継続時間の長い地震動に対しても十分な変形抑制効果~εs 関係,右下図は比体積 v~p’関係を示す。また,各図があることがわかった。長継続地震に対する耐震設計は有中の青点は地震発生前の状態,黒線は地震中の挙動,赤線効応力解析に依るところが大きい。本取組をさらに進展さは地震後圧密終了までの挙動を示す。図 10 は図 4 中 SCPせ,埋立地などの軟弱な地盤の締固め改良効果の適切な評砂杭要素 A(GL-6m)の挙動を示す。盛土載荷に伴い高応力価の確立に努めたい。比状態にあるが,その後地震中の急速な繰り返しせん断によって p’とともに q が増加している。地震による「非排水」謝辞せん断を受けると正のダイレイタンシー効果,すなわち高応力比下(限界状態線の上側)での塑性膨張を伴う硬化挙動本稿は地盤工学会東日本大震災対応調査研究委員会「地が生じる。これにより締固め改良による変形抑制効果186 盤変状メカニズム研究委員会(委員長:浅岡顕)」に関連す4)る研究報告である。関係各位に謝意を表する。1)2)3)5)参 考 文 献Yasuda, S., Harada, K., Ishikawa, K. and Kanemaru, Y.:Characteristics of liquefaction in Tokyo Bay area by the 2011 GreatEast Japan Earthquake, Soils and Foundations, Vol. 52, No. 5, pp.793-810, 2012.Noda, T., Asaoka, A. and Nakano, M.:Soil-water Coupled FiniteDeformation Analysis Based on a Rate-type Equation of MotionIncorporating the SYS Cam-clay Model, Soils and Foundations, Vol.48, No. 6, pp. 771-790, 2008.Asaoka A.: Consolidation of clay and compaction of Sand - anelasto-plastic description-., Proc. of 12th Asian Regional Conf. on SoilMechanics and Geotechnical Engineering, Leung et al., Singapore, 2,pp.1157-1195,2003.6)7)8)187中井健太郎,中野正樹,野田利弘,山田正太郎,村上孝弥,村瀬恒太郎, 浅岡顕: 浦安市地盤の弾塑性性状のモデル化とその一次元地震応答解析, 第49回地盤工学研究発表会概要集,2014.浅岡顕,澤田義博,中井健太郎,野田利弘,村瀬恒太郎: 不整形な境界から発生した表面波によって拡大した埋立地盤の液状化被害, 第49回地盤工学研究発表会概要集,2014.Nakano, M., Yamada, E. and Noda, T.: Ground improvementreclaimed land by compaction through cavity expansion of sand piles,Soils and Foundations, Vol. 48, No. 5, pp. 653-672, 2008.竹内秀克,高稲敏浩,野田利弘: 飽和粘土地盤の圧密変形に及ぼす幾何学的非線形性の効果,応用力学論文集, Vol. 9, pp. 539-550,2006.竹内秀克,野田利弘,浅岡顕: SCP 改良砂地盤の塑性膨張を伴う硬化による耐震メカニズム,第45回地盤工学研究発表会概要集,pp.1549-1550, 2010. A study on effects of ground improvement with sand compaction pilein the 2011 off the Pacific Coast of Tohoku EarthquakeHidekatsu TAKEUCHI1,Toshihiro NODA2,Kentaro NAKAI3,Toshihiro TAKAINE41Geo-technical division, Fudotetra Corporation2 Disaster Mitigation Research Center, Nagoya University3 Department of Geotechnical Engineering, Nagoya University4 Technical Research Institute, Asanuma CorporationAbstractNo damages occurred in reclaimed grounds improved with sand compaction pile (SCP) method. The anti-seismicmechanism of reclaimed grounds improved with SCP during long-duration earthquake motions was investigatedusing the geo-analysis code GEOASIA, which is a dynamic/static soil-water coupled finite element deformationanalysis code incorporating the SYS-Cam clay model. The main conclusion is drawn as follow. Compared withuntreated ground, the deformation caused by earthquakes is suppressed in the SCP-improved grounds. This is becausestress concentration occurs at the sand piles in which sand exhibits hardening behavior due to plastic expansion.Key words: sand compaction pile, liquefaction188
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  • タイトル
  • ジオテキスタイル補強土を用いた盛土の耐震メカニズムの数値解析による把握
  • 著者
  • 酒井崇之・辻慎一郎・中野正樹・野田利弘・田代むつみ
  • 出版
  • 地盤工学会特別シンポジウム -東日本大震災を乗り越えて-
  • ページ
  • 189〜197
  • 発行
  • 2014/05/14
  • 文書ID
  • 67559
  • 内容
  • 地盤工学会特別シンポジウム-東日本大震災を乗り越えて-20ジオテキスタイル補強土を用いた盛土の耐震メカニズムの数値解析による把握酒井崇之 1,辻慎一朗 2,中野正樹 3,野田利弘 1,田代むつみ 31名古屋大学減災連携研究センター2前田工繊株式会社3名古屋大学大学院工学研究科社会基盤工学専攻地盤防災推進部概要2007 年,能登半島地震によって,のと里山海道(旧能登有料道路)が崩壊した。多くの崩壊した盛土はジオテキスタイル補強土を用いた補強土工法で復旧されている。本研究の目的は,ジオテキスタイル補強土を用いた盛土に対し,地震応答解析を実施し,補強土の地震における挙動を調べることである。以下に得られた結論を述べる。1)ジオテキスタイル補強土で作製された盛土は,耐震性を十分有している。2)ジオテキスタイル補強土の締固め度が大きいと,ジオテキスタイルの有無による挙動に変化はあまり見られない。3)補強土の締固め度が大きい場合,地震時にジオテキスタイルの張力は小さい。4)地震時にジオテキスタイルありの補強土は,無しの補強土よりも地震時の応力比が小さい。キーワード:ジオテキスタイル,地震応答解析,盛土1.はじめに有限変形解析コード(GEOASIA 4))を用いている。なお,筆者らは,既往の研究において,のと里山海道の盛土の能登2007 年 3 月 25 日,石川県輪島市西南沖 40km の日本半島地震における地震後の盛土崩壊現象を,同コードを用海でマグニチュード 6.9 の能登半島地震が発生し,七尾市,いて再現している 5)。穴水市,輪島市で震度 6 強を観測した。この地震により,2. 解析断面のモデル化と解析条件地盤の液状化や盛土斜面の大崩壊などが起こった。のと里山海道(旧能登有料道路)においては,七尾市や穴水町で 11箇所盛土崩壊が起こり,崩壊した盛土は,8 箇所において2.1耐震性に優れたジオテキスタイル補強盛土工法により強図 2.1 に本解析で対象とした盛土の断面図を示す。盛土はじめに化復旧され(写真 1),地震発生から約 1 ヵ月後には,のと高さ 32m,天端幅 13m で,図に示すように様々な材料か里山海道(旧能登有料道路)は全線開通した。らなる盛土である。また,ジオテキスタイルを用いた補強土エリアは図 2.1 の水色の部分にあたる。補強土の法面勾配は 1:0.6 であり,急な勾配であるが,これは補強土盛土の特徴である。盛土の法尻には透水性の良い栗石を用い,盛土の大部分には崩壊土砂を石灰で改良した土を用いている。また,余った崩壊土砂で抑え盛土を行った。2.3 節写真 1 ジオテキスタイル補強土において,各材料の材料定数および初期値を決定する。2.4ジオテキスタイル補強土を用いた構造物は,兵庫県南部節において,入力地震動について述べる。地震において,変形が小さかったという報告がある 1)。ま13m7m1:1.5た,ジオテキスタイル補強土の耐震性は模型実験でも示さ石灰改良土2)れている 。本研究では,のと里山海道の復旧後の盛土を32m対象として,詳細な室内試験を盛土材料に対して実施し,1:21:0.6補強土抑え盛土栗石二次元平面ひずみ条件下でモデル化し,地震応答解析を実施し,耐震性や耐震メカニズムの把握を行う。解析には土原地盤骨格の構成式に骨格構造(構造・過圧密・異方性)とその働きを記述する SYS Cam-clay model 3)を搭載した水~土連成図 2.1 解析対象189残存盛土 図 2.2 有限要素メッシュ図解析断面2.2250図 2.2 は本解析で用いた有限要素メッシュ図を示す。200圧縮応力 σ (kPa)(a)は解析全断面,(b),(c)は盛土部を拡大したメッシュ図で,それぞれ復旧前の初期状態,盛土築造後を示す。解析は盛土や地盤が進行方向に等断面で構成されているものとして,平面ひずみ条件で全断面を用いて計算を行った。メッシュ図は,実際の形状を極力再現した。初150100計算5000実験2期状態とは,崩壊土砂を撤去した後とした。計算で用い4圧縮ひずみ ε (%)68図 2.3 石灰改良土の再現結果(一軸圧縮試験)た地盤は,横 1700m であり,側面の影響が無いように十分に広く解析領域を設定した。仮定している。つまり,盛土表面(境界),地表面と表面水位が一致するように設定しているため,盛土には常に300200100水が供給されている状態を想定している。0地震時には,側方要素の反射を考慮し,側方要素単純Pore water pressure u (kPa)せん断境界 6)を地盤の両端に設定した。また,地震波の全反射を防ぐために,地盤の下端の水平方向に粘性境界 7)を設けている。高さ 32m の盛土の施工過程は,水~土二相系弾塑性体として高さ約 1m の有限要素を順次追加することによりDeviator stress q (kPa)水条件とした。なお,盛土,地盤ともに完全飽和状態を40010Shear strain es (%)q = Mp′300200100200100 200 300 400M ean effective stress p′ (kPa)400Specific volume v (=1+e)Deviator stress q (kPa)400水理境界は両端,下端は非排水条件で,地表面のみ排3002001000表現する。この時の盛土施工速度は,能登有料道路復旧10Shear strain es (%)20計算実験2.22.0NCLCSL1.80100 200 300 400M ean effective stress p′ (kPa)工事記録誌 8)を参考に決定した。を入力することで,ジオテキスタイルを表現した。なお,計算手順は盛土構築~地震波入力~圧密放置までの一連の流れを計算した。2.312006001200600006001200Mean effective stress p′ (kPa)各材料の材料定数および初期値の決定2.0されていたので,それらを弾塑性構成式 SYS Cam-clay1.9Specific volume v各材料に対して,一軸圧縮試験や三軸圧縮試験が実施model で再現を行い,解析で用いるパラメータを決定した。再現結果を図 2.3~2.6 に示す。また,表 1,2 に再現計算で得られた弾塑性パラメータおよび初期値を示計算実験1.81.71.61.506001200Mean effective stress p′ (kPa)す。なお,原地盤と残存盛土についての再現結果は文献5)を参照されたい。0010–10010010Shear strain es (%)図 2.5 栗石の再現結果(排水三軸圧縮試験)19020Shear strain es (%)Volume strain ev (%)9)件Deviator stress q (kPa)赤線が示す部分について,節点間の距離が変わらない条Deviator stress q (kPa)図 2.4 抑え盛土の再現結果(非排水三軸圧縮試験)ジオテキスタイルのモデル化については,図 2.2(c)の20 Deviator stress q (kPa)Deviator stress q (kPa)600400200抑え盛土400計算実験石灰改良補強土残存盛土0010Shear strain es (%)20弾塑性パラメータ0λ0.0980.0400.105膨潤指数κ~0.0300.0020.005限界状態定数Μ1.4001.7501.700NCL の切片Ν2.0901.4401.895ポアソン比υ0.3000.2000.300発展則パラメータ010Shear strain es (%)20図 2.6 Dc90%の補強土の再現結果(排水三軸圧縮試験)(1)~圧縮指数5-5栗石原地盤200Volume strain ev (%)2.01.91.81.71.61.51.41.31.21.11.00200400600Mean effective stress p′ (kPa)材料名60000200400600800Mean effective stress p′ (kPa)Specific volume v表 2.1 材料定数800800正規圧密土化指数m1.7005.0001.200構造劣化指数a0.30010.002.000b1.0001.0001.000c1.0001.0001.000塑性指数cs0.1001.0001.000回転硬化指数br0.3000.0011.000回転硬化限界定数mb0.5000.5000.001原地盤および残存盛土原地盤は凝灰角礫岩である。また,崩壊する前の盛土も凝灰角礫岩が用いられていた。既往の研5)究 で,凝灰角礫岩を盛土崩壊現場から採取しており,各種室内試験を実施し,構成式で再現してい表 2.2 初期値る。既往の研究で対象としている盛土は,今回対象としている盛土と位置が少し異なるが,同じ材比体積 v 0応力比 η 0異方性 ζ 04.002.2500.000.00石灰改良土1452.3670.000.00原地盤1.201.6000.540.54残存盛土7.502.1400.540.54補強土(Dc=90%)1.101.4280.000.00補強土(Dc=95%)1.101.3500.000.00栗石1.001.5930.000.00材料名料と仮定した。(2)構造の程度1 / R *0抑え盛土石灰改良土石灰改良土には,盛土堤体からサンプリングした試料を用いて,一軸圧縮試験を実施している。石灰添加量は配合試験により求めており,今回用いた試料は 30~50kg/m3 である。本研究では,サンプリング過程および一軸圧縮試験過程を計算し,試験結果を再現した。この際,弾塑性パラメータは母材である盛土崩壊土砂と同じものと仮定した。(3)抑え盛土能登半島地震において k-net 穴水観測点 11)で観測された地そこで,既往の研究で採取した盛土崩壊土砂を締震動である。道路がほぼ南北方向に道路が走っている箇所固めて作製した供試体に対し,非排水三軸試験をなので,EW 成分を使用した。なお,観測点が地表面であ実施し,試験結果を再現した。なお,盛土の締固るため,文献 5)と同様に振幅を半分にして入力地震動にしめ度は 90%とした。た。栗石50010)を再現した。Horizontal Acceleration (gal)礫材の排水三軸試験結果(5)入力地震動入力地震動を図 2.7 に示す。入力地震動は文献 5)と同じ,抑え盛土は,余った崩壊土砂を締固めている。(4)2.4補強土補強土は,購入された良質な締固め材である。この材料を用いて実施された排水三軸圧縮試験結果を再現した。供試体の締固め度は 90%であり,設計で用いられた締固め度と同じである。実際の盛土は締固め度 95%で締固められているので,本研究では,締固め度 90%と 95%のケースで計算を2500-250min:-450.69 [gal]-500行った。max: 338.27 [gal]0102030Time (sec)図 2.7 入力地震動1914050 3. 解析結果本復旧工事においては,ジオテキスタイル設置のり面に対し動態観測を行っている。図 3.1 に示す点 1~3 が観測地震前地点である。それぞれ鉛直変位(沈下量)と水平変位を計測している。なお水平変位はのり面がせり出す方向(図中左向き)を正としている。図 3.2 に実測値と解析結果を示す。解析結果は実際の補強土の密度である締固め度 95%のdisplacement (mm)み示す。解析結果と実測値を比較すると概ね一致した。10090807060504030201000実測最大加速度時計算地震直後図 3.3 せん断ひずみ分布(補強土締固め度 90%ジオテキスタイル無し)30601090 120 150Time (day)180210240settlement (mm)0-10地震前-20-30-40実測-50-600306090計算120 150Time (day)180210最大加速度時240図 3.2 施工中の変位の比較 12)点4 点5 点6地震直後点3図 3.4 せん断ひずみ分布点2(補強土締固め度 90%ジオテキスタイルあり)点1図 3.1 変位について着目した点地震前図 3.3 に示すように,補強土の締固め度が 90%の場合,無補強の盛土では,円弧上にせん断ひずみが発生しているのに対し,図 3.4 のジオテキスタイルによって補強すると,円弧状のせん断ひずみが発生していない。図 3.5 の平均有効応力に着目すると,地震によって繰返し載荷を受けるこ最大加速度時とによって,平均有効応力が低下している。図 3.6 に示すように,平均有効応力の低下は,ジオテキスタイルがあった方が顕著である。一方,図 3.7,3,8 から,締固め度が 95%の時は,ジオテ地震直後キスタイルの有無に限らず,顕著なせん断ひずみの発生が見られない。図 3.9,3,10 から,両者ともに地震によって図 3.5平均有効応力が増大している。ジオテキスタイルの有無に平均有効応力分布(補強土締固め度 90%ジオテキスタイル無し)よる明確な違いは見られなかった。192 (補強土締固め度 95%ジオテキスタイルあり)地震前地震前最大加速度時最大加速度時地震直後地震直後図 3.6 平均有効応力分布(補強土締固め度 90%ジオテキスタイルあり)図 3.9平均有効応力分布(補強土締固め度 95%ジオテキスタイル無し)地震前地震前最大加速度時最大加速度時地震直後地震直後図 3.7 せん断ひずみ分布(補強土締固め度 95%ジオテキスタイル無し)図 3.10平均有効応力分布地震前10.80.60.40.20-0.2-0.4-0.6-0.80補強土5c=90%ジオテキスタイルあり10203040displacement (m)displacement (m)(補強土締固め度 95%ジオテキスタイルあり)5010.80.60.40.20-0.2-0.4-0.6-0.8補強土5c=95%ジオテキスタイルあり010Time t (sec)10.80.60.40.20-0.2-0.4-0.6-0.80地震直後図 3.8補強土5c=90%ジオテキスタイル無し10203030405010.80.60.40.20-0.2-0.4-0.6-0.80点4102030点5点6図 3.11 点 4~点 6 の水平変位-時間関係19350補強土5c=95%ジオテキスタイル無しTime t (sec)Time t (sec)せん断ひずみ分布40Time t (sec)displacement (m)displacement (m)最大加速度時204050 それぞれの変位量は変わらなかった。本解析では,盛土の0多くの部分を占めるのが石灰改良土であること加え,補強-0.2土の締固め度が 90%で,ジオテキスタイルが無い場合の地Settlement ρ (m)0.20Settlement ρ (m)0.2-0.2-0.4-0.4-0.6010203040震時に発生するせん断ひずみが,図 2.1 の補強土エリアの-0.6補強土5c=90%ジオテキスタイルあり-0.8補強土5c=95%ジオテキスタイルあり-0.85001020Time t (sec)3040みに発生するため,ジオテキスタイルの有無で違いが現れ50Time t (sec)なかった。なお,水平変位量は,補強土の締固め度が 90%の時は 30cm,締固め度が 95%の時は 10cm である。また,0沈下量は,補強土の締固め度が 90%の時は 30cm,締固めSettlement ρ (m)0.20Settlement ρ (m)0.2-0.2-0.2度が 95%の時は 20cm であり,軽微である。図 3.13,3.14 に水平変位-時間関係および,沈下量-時-0.4-0.4-0.6-0.6補強土5c=90%ジオテキスタイル無し-0.8010203040補強土5c=95%ジオテキスタイル無し-0.805010203040間関係を示す。点 1~3 については,図 3.2 に示す通りで50Time t (sec)Time t (sec)点4時は,水平変位,沈下量ともにジオテキスタイルの有無で点6点5ある。図 3.12,図 3.13 を見ると,締固め度が 90%である変化が見られ,ジオテキスタイルによる補強の効果が現れ図 3.12 点 4~点 6 の沈下量-時間関係ている。一方締固め度が 95%の時は,ジオテキスタイルの有無による違いは無かった。0.200-0.2-0.2-0.4-0.6-0.8-1補強土5c=90%ジオテキスタイルあり-1.2-1.4-1.6010203040-0.4-0.6-0.8-1-1.4-1.65001020Time t (sec)-0.4-0.6-0.8-1図 3.15 ジオテキスタイルおよび土の挙動を確認した箇所-0.4-0.6-0.8-1補強土5c=95%ジオテキスタイル無し-1.4-1.40102030Time t (sec)4050-0.2-1.2-1.2-1.6400補強土5c=90%ジオテキスタイル無しdisplacement (m)displacement (m)0-0.230Time t (sec)0.20.2点7要素1補強土5c=95%ジオテキスタイルあり-1.250-1.601020304050Time t (sec)点4点6点5図 3.13 点 1~点 3 の水平変位-時間関係0Settlement ρ (m)0.20Settlement ρ (m)0.2-0.2-0.2-0.4-0.4-0.6-0.6補強土5c=90%ジオテキスタイルあり-0.80102030補強土5c=95%ジオテキスタイルあり-0.8405002030Time t (sec)10Time t (sec)0.2010203040-50-100締固め度90%締固め度95%0102030Time (sec)4050図 3.16 ジオテキスタイルに発生する張力し張力が発生しており,その後地震動によって張力が増してゆき,最大加速度直後において最大値となった。その後補強土5c=95%ジオテキスタイル無し-0.850010Time t (sec)203040も増減を繰り返し,最終的には 100kN 程度の値となった。50Time t (sec)点40イルの張力を示す.締固め度 90%は,施工直後において少-0.6補強土5c=90%ジオテキスタイル無し-0.8500-0.4-0.6100図 3.16 に図 3.15 の点 7 において発生するジオテキスタ-0.2-0.41500.2Settlement ρ (m)Settlement ρ (m)0-0.25040テキスタイルに発生する力(kN)ジオテキスタイルに発生する力(kN)displacement (m)displacement (m)0.2点5締固め度 95%は,施工直後においてほとんど張力は発生していない。その後,締固め度 90%の時と同様に,地震動点6によって張力が増してゆき,最大加速度直後において最大図 3.14 点 1~点 3 の沈下量-時間関係値となった。張力の値は常に締固め度 90%よりも小さい値図 3.11,3.12 に盛土のり肩,天端中央の水平変位-時間であり,補強土を締固めることによって,ジオテキスタイ関係および,沈下量-時間関係を示す。点 4~6 についてルに発生する力を軽減できることがわかった。なお,実際は,図 3.1 に示す通りである。補強土の締固め度を向上さの設計において,地震時のジオテキスタイルの設計引張強せると,天端中央,のり肩の沈下量や水平変位は軽減され度は 130.5kN/m であり,地震時の設計引張強度を超えるよる。今回の解析においては,ジオテキスタイルの有無では,うな張力は発生せず、補強領域の安定性は保たれる。194 150150み載せる。図の黒線は施工中,青線は地震後 7 秒まで(最5002q = Mp′大加速度発生直後),赤線は地震後 7~50 秒後の力学挙動100RDeviator stress q (kPa)Deviator stress q (kPa)1.0100には,黒線で限界状態線の傾きである M=1.78 を示した。405010015001005024図 3.17,図 3.18 に示す補強土締固め度 90%に着目する。応力ひずみ関係や有効応力パスを見ると,ジオテキスタイNCL2ルありも無しも地震によって,非排水条件下において,載M =1.781.451.400Shear strain es (%)荷と除荷を繰り返し受けていることがわかる。この時,ジ1オテキスタイル無しは,軸差応力が 100kPa 程度まで除荷501001500M ean effective stress p′ (kPa)盛土施工中43hSpecific volume v (=1+e)Pore water pressure u (kPa)1502Shear strain es (%)M ean effective stress p′ (kPa)1.500をそれぞれ示している。また,右下の応力比-ひずみ関係50Shear strain es (%)-500.5地震開始~7秒後24されるのに対し,ジオテキスタイルありは,ほぼ軸差応力Shear strain e (%)地震開始7秒後~地震終了が 0kPa になるまで除荷されている。また,ジオテキスタ図 3.17 要素 1 の力学挙動(ジオテキスタイルあり締固め度 90%)5001020Shear strain es (%)100縮し平均有効応力は減少し,正の過剰間隙水圧が発生して050100150M ean effective stress p′ (kPa)001020Shear strain es (%)盛土施工中少の程度は,ジオテキスタイルありの方が大きくなった。また,応力比を見ると,ジオテキスタイルありの方が小さNCLM =1.7821.45くなっている。締固め度 95%は,ジオテキスタイルあり無しに拘らず,11.40050100150M ean effective stress p′ (kPa)30いる。この時,水圧の発生の程度および平均有効応力の減30hSpecific volume v (=1+e)Pore water pressure u (kPa)501020Shear strain es (%)31.50100排水条件下で繰返しせん断を受けることによって,塑性圧0.55030150た。応力パスや過剰間隙水圧の値を見ると,両者ともに非1.0q = Mp′R100-50イルありの方は地震中にひずみが減少する現象が見られ150Deviator stress q (kPa)Deviator stress q (kPa)150地震開始~7秒後01020ほとんど違いは見られないが,締固め度 90%の時と同様で,30Shear strain es (%)ジオテキスタイル無しは,軸差応力が 100kPa 程度まで除地震開始7秒後~地震終了荷されるのに対し,ジオテキスタイルありは,ほぼ軸差応10050-500R200盛土施工中有効応力パスを見ると,最大加速度付近では,限界状態線の上側に状態を取り,軸差応力や平均有効応力が上昇して0いく。その後は,やや平均有効応力は減少していくが,最0.40.8Shear strain es (%)終的には 100kPa 程度になる。また,地震時には,負の過3NCL21.35剰間隙水圧が発生するが,地震直後においては,ほとんどM =1.78水圧は発生していない。11.300200400M ean effective stress p′ (kPa)0.40.8Shear strain es (%)力比に着目すると,ジオテキスタイルありの方が小さい。0.50200400M ean effective stress p′ (kPa)0.40.8Shear strain es (%)150力が 0kPa になるまで除荷されている点に違いがある。応1.0q = Mp′400h2000Pore water pressure u (kPa)Deviator stress q (kPa)400Specific volume v (=1+e)Deviator stress q (kPa)図 3.18 要素 1 の力学挙動(ジオテキスタイル無し締固め度 90%)地震開始~7秒後0また,締固め度の違いについて着目する。締固め度 90%は,地震開始直前において,ほとんど正規圧密状態になっ0.40.8Shear strain es (%)ているのに対し,締固め度 95%は過圧密状態である。この地震開始7秒後~地震終了違いにより,地震開始直後~最大加速度まで,締固め度20000.40.8Shear strain es (%)90%は,塑性圧縮挙動を示し,締固め度 95%は,塑性膨張1.0q = Mp′挙動を示した。地震後の状態も大きく異なり,締固め度R40020095%はほとんど水圧が発生していないのに対し,締固め度0.590%は正の過剰間隙水圧が発生した。これらの挙動はジオ0200400M ean effective stress p′ (kPa)0テキスタイルの有無に拘らず起きている。0.40.8Shear strain es (%)315010050-5000.40.8Shear strain es (%)盛土施工中NCL21.354. 結論M =1.78hPore water pressure u (kPa)Deviator stress q (kPa)400Specific volume v (=1+e)Deviator stress q (kPa)図 3.19 要素 1 の力学挙動(ジオテキスタイルあり締固め度 95%)11.300200400M ean effective stress p′ (kPa)地震開始~7秒後0本研究では,ジオテキスタイル補強土を用いた盛土に対0.4して地震応答解析を実施した。補強土やジオテキスタイル0.8Shear strain es (%)の挙動に着目し,地震時における盛土の挙動を調べた。ま地震開始7秒後~地震終了た,補強土の締固め度や,ジオテキスタイルの有無による図 3.20 要素 1 の力学挙動(ジオテキスタイル無し締固め度 90%)本研究においては,補強土エリア内の代表土要素として,違いを比較した。以下に結論を述べる。1) 締固め度 90%では,ジオテキスタイルの有無により図 3.11 に示す要素 1 に注目し,その力学挙動を図 3.17~解析結果に違いが現れ,ジオテキスタイルを用いた3.20 に示す。代表要素は数地点調べたが,今回は 1 要素の195 補強土は大きいひずみが発生しない。一方,締固め度 95%では,両者ともにほとんどひずみが発生しなかった。2) 締固め度 90%において,補強土部分では,ジオテキスタイルの有無で変位量について明確な違いが見られたが,天端部分では違いは見られなかった。これは,ジオテキスタイル無しの場合,変形している箇所が補強土のみになっているためである。3) ジオテキスタイルに発生する張力は,締固め度が高い補強土の方が,施工直後,地震中ともに小さくなった。また,両者ともに,盛土の変形が大きくなっていく地震開始 10 秒程度において最も大きくなっている。4) ジオテキスタイルのあり無しを比較した時に,ジオテキスタイルありの方が,ジオテキスタイル無しの場合よりも,地震時の応力比が小さくなっている。参考 文献1) 館山勝,堀井克己,古関潤一,龍岡文夫:ジオテキスタイル補強土擁壁の耐震性,ジオシンセティックス論文集,第14巻,pp.1-18,19992) 竜田直希,板垣聡,間沼徳,佐々木哲也,杉田秀樹,中根淳:ジオテキスタイル補強土壁の地震挙動-急勾配補強土壁の遠心振動載荷試験-,ジオシンセティックス論文集,第21巻,pp.183-186,20063) Asaoka, A., Noda, T., Yamada, E., Kaneda, K. and Nakano, M.:196An elasto-plastic description of two distinct volume changemechanisms of soils, Soils and Foundations, Vol.42, No.5,pp.47-57, 2002.4) Noda, T .,Asaoka, A. and Nakano,M.: Soil-watar coupled finitedeformation analysis based on a rate-type equation of motionincorporating the sys cam-clay model, Soils and Foundations,Vol.48, No.6, pp.771-790, 2008.5) 酒井崇之,中野正樹:地震後に発生した傾斜地盤上盛土の大崩壊に関する水~土連成有限変形解析による再現,地盤工学ジャーナル,Vol.7,No.2,pp.421-433,20126) 吉見吉昭, 福武毅芳: 地盤液状化の物理と評価・対策技術,技報堂出版,2005.7) William, B., Joyner and Albert T. and F. 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The many embankments are restored by geotextile reinforcement soil. The objectives of this study are tosimulate seismic behavior of embankments using geotextile reinforcement soil, and to study behavior ofreinforcement soil during the earthquake. The conclusions are shown as follows. 1) The geotextile reinforcement soilexhibits high performance against earthquake. 2) If degree of compaction of reinforcement soil is high, the behaviorsof reinforcement soil are not change independent of using geotextile. 3) When degree of compaction of thereinforcement soil is big, the tension of geotextile during the earthquake is small. 4) During earthquake, the stressratio of reinforcement soil using geotextile is smaller than stress ratio of the soil not using geotextile.Key words: geotextile, embankment, seismic response analysis197
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  • タイトル
  • 間隙水圧消散工法の液状化対策効果の予測に関する水~土連成解析
  • 著者
  • 野中俊宏・山田正太郎・野田利弘・矢藤彰悟
  • 出版
  • 地盤工学会特別シンポジウム -東日本大震災を乗り越えて-
  • ページ
  • 198〜204
  • 発行
  • 2014/05/14
  • 文書ID
  • 67560
  • 内容
  • 地盤工学会特別シンポジウム-東日本大震災を乗り越えて-21間隙水圧消散工法の液状化対策効果の予測に関する水~土連成解析野中俊宏 1,山田正太郎 2,野田利弘 1,矢藤彰悟 21名古屋大学・減災連携研究センター2名古屋大学大学院・工学研究科社会基盤工学専攻概要液状化対策工法の一つである間隙水圧消散工法の数値シミュレーションを,骨格構造概念に基づく土骨格の弾塑性構成式 SYS Cam-clay model を搭載した水~土連成解析コード GEOASIA を用いて実施した。バーチカルドレーンによる排水効果を計算に取り入れるために,一種の均質化法であるマクロエレメント法を用いた。解析の結果,以下の知見を得た。1) マクロエレメント法は動的問題においても十分な近似精度を有している。2) マクロエレメント法を導入した GEOASIA により効率的に間隙水圧消散工法の諸特性を再現できる。3) 2 次元メッシュを用いた計算に先立ち,1 次元メッシュを用いた計算で有効なドレーンピッチを把握することにより,より効率的に設計を進めることができる。キーワード:間隙水圧消散工法,液状化対策,水~土連成解析,マクロエレメント法1. は じ め に例について示す。また,後半の計算事例において,2次元メッシュと1次元メッシュを用いた計算結果について比較することにより,2次元もしくは3次元メッシュを用いた計間隙水圧消散工法では,バーチカルドレーンによる排水算ケースを減らすための工夫についても触れる。によって地震時の水圧上昇を抑制する結果,締固めによる地表面沈下をある程度許容する。したがってこの工法では,液状化を防げるか否かという点と併せて,液状化を抑制した際に発生する変形量の予測が重要な課題の一つとなる。2. 動的問題におけるマクロエレメント法の近似精度の検証この沈下量の定量的予測を含め,間隙水圧消散工法の諸特性を把握すべく,骨格構造概念に基づく弾塑性構成式SYS2.1Cam-clay model1)を搭載した水~土骨格連成有限変形解析解析はドレーン一本とそのドレーンが改良を担当するコードGEOASIA2) による同工法の数値シミュレーション地盤を対象に行った。改良の対象としたのは層厚 10m のを行った。GEOASIAを用いて計算を行った理由は,間隙ゆるい砂地盤である。解析領域を水平方向にも細かくメッ水圧消散工法のシミュレーションでは,締固め現象と液状シュ分割したものを厳密モデル,水平方向にはメッシュ分化現象,および,地震中に発生し得る締固めによる沈下と割せず,マクロエレメント法を用いるものを近似モデルと液状化後に発生し得る圧密沈下を統一的に扱える必要がする。それぞれのモデルの有限要素メッシュおよび境界条解析条件あるためである。同工法を対象とした数値計算でもう一点件を図 1 に示す。水平成層地盤にドレーンが 1.0m ピッチ重要となるのは,計算効率を如何に上げるかという点であで正方形配置されている場合を想定して,側面には周期境る。地中に埋められた無数のバーチカルドレーンとその周界を課した。底面水平方向には粘性境界を用い,鉛直方向辺地盤を細かくメッシュ分割すると,莫大な計算コストがは固定条件とした。水理境界条件については,側面と底面掛かってしまうということがその背景にある。このバーチを非排水境界とし,地表面は初期に水圧ゼロで,その後,カルドレーン工法に共通する課題を克服するために,圧密水頭が一定に保たれる排水条件とした(上水が溜まる状問題を対象にした有効応力解析では,マクロエレメント法態 )。 バ ー チ カ ル ド レ ー ン は 直 径 0.1m , 透 水 係 数3),4)という一種の均質化手法がしばしば用いられる。本論7.0×102cm/sec のスパイラルドレーン 5)を想定した。厳密モ文では,これまで準静的な問題へ適用が限られてきたこのデルにおいては,ドレーン部分を空洞とし,ドレーンとのマクロエレメント法を新たに動的問題へ適用することで接触部分を地表面と同じく水頭一定の排水境界とした。近この課題の解決を図った。はじめに,マクロエレメント法似モデルにおいて用いたマクロエレメント法は著者らのによる近似精度について検証した後,盛土直下を間隙水圧提案するドレーンの水圧を未知数に取るマクロエレメン消散工法で液状化対策した場合の効果について計算したト法 4)である。表 1 と 2 に地盤材料の材料定数および初期198 表1値,表 3 に底面粘性境界の材料定数,表 4 にドレーンの材地盤材料の材料定数料定数を示す。地盤は無改良の場合に液状化が発生しやす地盤い緩い砂地盤を想定した。表 1 と 2 には後半の解析事例で〈弾塑性パラメータ〉~圧縮指数 膨潤指数 ~用いる盛土の値についても示している(盛土の材料定数と初期値については,実際に河川堤防で使用されている材料を想定して与えた)。なお,近似モデルにおいては,上記限界状態定数の条件下では,解析領域の水平方向の大きさが解析結果にNCLの切片*影響を与えることはない。厳密モデルと同じ解析領域に設ポアソン比定したのは,コンター図における比較のしやすさを考慮し0.1100.0160.0201.001.351.981.710.30.3MN正規圧密土化指数 m回転硬化指数 br排水境界(水位一定条件)mb回転硬化限界定数透水係数 k (cm/sec)土粒子の密度  s (g/cm3)2.202.000.100.503.500.100.700.401.0×10-31.0×10-42.652.67*q = 0, p' = 98.1 kPaにおける練返し粘土の正規圧密線上周期境界非排水境界0.050〈発展則パラメータ〉構造低位化指数 a ( b  c  1.0 )たためである。盛土表 2 地盤材料の初期値地盤1/R*0構造の程度過圧密比 1/R010.0m周期境界水平断面図盛土4.01.11.242.5側圧係数 K00.80.8異方性の程度 01.001.001.00~1.200.65~0.72比体積 e水平方向:粘性境界鉛直方向:速度境界(固定条件)表 3 底面粘性境界の材料定数1.0m基盤の密度  (g/cm3)1.0m2.00150.0基盤の S 波速度 Vs (m/sec)非排水境界(a) 厳密モデル表4ドレーンの材料定数ドレーンの有効直径 de (m)ドレーンの直径 d w (m)排水境界(水位一定条件)透水係数k w (cm/sec)1.130.107.0×102図 2 に入力地震動を示す。主要動の継続時間 120sec,最大加速度 180gal 程度の東海・東南海・南海三連動型地震を想定した地震波であり,水平方向の 2 方向に加振してい非排水境界周期境界る。ax (cm/sec )周期境界E-W 成分2002ax (cm/sec)210.0m0-200水平方向:粘性境界鉛直方向:速度境界(固定条件)0501002ay (cm/sec)2ay (cm/sec )1.0m1.0m非排水境界(b) 近似モデル200150200N-S 成分2000-200050100Time t (sec)時間t (sec)図1150Time t (sec)時間t (sec)有限要素メッシュと境界条件図2199入力地震動 2.2解析結果過剰間隙水圧比過剰間隙水圧比(Δu/σ'v0)図 3 に各モデルの過剰間隙水圧分布を示す。厳密モデルについては,ドレーンを含む鉛直断面の分布も示す。表面からの比較では,同様な傾向の分布になっていることが分かる。厳密モデルの内部はドレーン近傍で水圧が低くなっていることを確認することができる(近似モデルでは,地1深さ 2.5m深さ 5.0m深さ 7.5m0.80.60.40.200盤の水圧は同一高さに一つである)。図 4 に入力開始から50100150200時間 t (sec)時間t (sec)80 秒経過時点での過剰間隙水圧の当時曲線を示す。近似(a) 厳密モデルモデルにおける地盤の水圧は,厳密モデルにおけるドレー過剰間隙水圧比過剰間隙水圧比(Δu/σ'v0)ンから 0.4m 離れた地点の水圧分布とほぼ同じ分布を示している。図 5 に時間-過剰間隙水圧比関係を示す。厳密モデルでは地盤から 0.4m 離れた地点の値を示している。継時変化を追ってみても,近似モデルの過剰間隙水圧は,厳密モデルのこの位置での値とほぼ同じであることが分か1深さ 2.5m深さ 5.0m深さ 7.5m0.80.60.40.200る。なお,両モデルとも,過剰間隙水圧比は加振開始から50100150200時間 t (sec)時間t (sec)しばらくの間は上昇するが,0.8 程度で上昇が止まり,液(b) 近似モデル状化には達していない。(同地盤を無対策で計算すると,図5過剰間隙水圧比は 0.95 を超える。)時間-過剰間隙水圧比関係上記では,本解析条件下において,近似モデルが厳密モデルのドレーンから 0.4m 程度離れた位置の水圧変動をよく近似できていることが分かった。次に変形挙動が上手く近似できているか調べる。図 6 に時間-沈下関係を示す。30厳密モデルでは,地表面はほぼ水平に沈下している。近似モデルは,これらの沈下曲線とほぼ同じカーブを描いている。図 7 に地表面および基盤面の加速度の時間変化を,図8 に基盤面に対する地表面の相対変位の時間変化を示す。厳密モデルの応答はドレーンに接する節点の値である(地表面の他の節点でもほぼ同じを示す)。厳密モデルと近似モデルではほぼ同じ応答を示していることが分かる。0ue [kPa]0図3(表面)(b) 近似モデル沈下量settlement(m)(m)(表面)(断面)(a) 厳密モデル過剰間隙水圧分布(40 秒経過時点)ドレーンから 0.06mドレーンから 0.20mドレーンから 0.40m0.10.20.30.40ドレーンから 0.06mドレーンから 0.20mドレーンから 0.40m100(a) 厳密モデル00200Time t (sec)時間t (sec)ドレーン地盤2446settlement (m)沈下量(m)2深さ(m)深さ (m)深さ(m)深さ (m)00.10.20.30.40650100150Time tt (sec)時間(sec)(b) 近似モデル88図6100204060水圧変化量 (kPa)過剰間隙水圧 (kPa)図480100204060水圧変化量 (kPa)80過剰間隙水圧 (kPa)(b) 近似モデル(a) 厳密モデル過剰間隙水圧の当時曲線(80 秒経過時点)200時間-沈下関係200 もたらされる間隙水圧の上昇抑制や締固めによる圧縮の地表面基盤面22))加速度ax a(cm/secx (cm/secント法は大きな効果を発揮しているが,排水効果によって500再現,また動的な計算そのものを可能にしているのは SYS0Cam-clay model およびこのモデルを搭載する GEOASIA の効果である。次章では,間隙水圧の上昇抑制が,側方流動-500050100150などの変形抑制に対してどの程度の効果を発揮するか,2200Time t (sec)次元計算によって示す。時間 t (sec)Specific volume v (=1+e)500地表面基盤面22ax (cm/sec)加速度ax (cm/sec)(a) 厳密モデル0-500050100150200Time t (sec)時間t (sec)(b) 近似モデル図7時間-加速度関係2.0521.9501020(a) 厳密モデル50Specific volume v (=1+e)ux (cm)ux (cm)相対変位Mean effective stress p' (kPa)0-50050100150200Time t (sec)時間 t (sec)ux (cm)ux (cm)相対変位(a) 厳密モデル5002.0521.950(b)-5001020Mean effective stress p' (kPa)50100150Time t (sec)地震中の要素挙動地震後の要素挙動時間 t (sec)(b) 近似モデル図8近似モデル200時間-相対変位関係図9平均有効応力-比体積関係3. 盛土直下に対策を施した場合の改良効果の算定例と効率的な算定手順に関する一考察この章の最後に,地盤内の要素挙動として平均有効応力と比体積の関係について比較する。比較の対象とする要素は深さ 2.5m の位置の要素である。また,厳密モデルにつ3.1いては,ドレーンから 0.4m の位置にある要素を対象とす解析条件る。該当する要素の挙動を図 9 に示す。地震中の要素挙動次に,盛土直下の砂地盤に間隙水圧消散工法による液状を黒線で,地震後の要素挙動を赤線で示している。両要素化対策を施す場合を想定して行った計算について述べる。が良く似た応答を示していることを確認することができ図 10 に解析に用いた有限要素メッシュおよび境界条件をる。また,いずれの要素も平均有効応力が最大でも初期の示す。水平成層地盤上に,高さ 6m の盛土を 18 日間かけ2/3 程度にまでしか低下していないこと,一方で,その代て追加し,定常状態に落ち着くまで圧密計算を行った。こわりに地震中に締固めによる圧縮が生じていること,また,のようにして作製した盛土-地盤系に図 2 に示す地震動地震後の圧密による圧縮はほとんど生じていないことがの E-W 成分を入力した。前章と同じく間隙水圧消散工法分かる。このように,バーチカルドレーンの排水効果によによる改良域には山田らの提案するマクロエレメント法 4)る,間隙水圧の上昇抑制,およびその代償として生じる地を適用した。適用したマクロエレメント法はドレーンの水盤の締固めが計算によって再現できている。なお,バーチ圧を未知数として地盤の変形や間隙水圧と同時に解くとカルドレーンの排水効果の近似的な計算にマクロエレメいう点で,オリジナルのマクロエレメント法と異なる。こ201 の機能拡張により,ドレーンの通水能力が不十分で排水がを 3 次元的に換算して解析に取り込むことができる点も滞り液状化が発生するようなケースも解析の対象とするマクロエレメント法の長所として挙げることができる。図ことができる(ただし,今回想定した条件ではそのような12 に示すドレーンピッチをパラメトリックに変化させた現象は発生しなかった)。解析においてもその長所が発揮されていると言える。マクロエレメントの境界条件についても,地盤と同様に上端は大気圧に解放し,下端は非排水境界とした。本論文では,無改良のケースを基準に比較検討を行うが,ドレーンによる改良の効果のみを純粋に把握するため,無改良のケースにおいても盛土と地盤の境界部分を排水境界とした。各種材料定数と初期値は表 1 から 4 に示す値と同じである。16m(a) 無改良排水マット(排水境界)周期境界地表面排水(大気圧)20mドレーン改良域マクロエレメント上端:排水境界(大気圧)下端:非排水境界500m34m下端・両端非排水水平方向:粘性境界鉛直方向:速度境界(固定条件)図 103.2(b) 改良(ドレーンピッチ 0.8m)有限要素メッシュと境界条件(2 次元メッシュ)0解析結果図 1180 [kPa]地震終了直後の過剰間隙水圧分布図 11 に無改良とドレーンピッチ 0.8m のケースの地震動入力完了直後の間隙水圧分布を示す。図中には変形の様子1.2隙水圧消散工法の水圧上昇抑制効果が解析結果に表れていることが分かる。図 11 より,間隙水圧の上昇を抑制した結果,盛土直下地盤の側方流動および沈下や,盛土の変形が抑制できていることを確認できる。無対策の場合は,水圧上昇を伴って有効応力は原点に近づき,せん断剛性を失うために,大きな側方流動が発生するが,同工法を適用1.010.80.60.90.4水圧上昇率沈下率側方流動率0.2した場合は,有効応力の減少が食い止められ,土がせん断00抵抗を発揮するため,側方流動およびそれに伴う沈下を抑1えることができるのである。図 12 にドレーンピッチと無改良地盤に対する水圧上昇率(= 改良時の最大間隙水圧図 12/無改良時の最大間隙水圧)ならびに,沈下率(= 改良234ドレーンピッチ (m)側方流動率示す太線を示した。マクロエレメント法の適用により,間水圧上昇率,沈下率が分かりやすいように,地震前の改良域側面と盛土外周を0.85ドレーンピッチと改良効果の関係(2 次元メッシュ解析)時の盛土天端中央の最終沈下量/無改良時の盛土天端中3.3央の最終沈下量),側方流動率(= 改良時の最終盛土底面幅/無改良時の最終盛土底面幅)との関係を示す。同図よ1 次元メッシュ解析の活用による効率的な効果の算定手順の提案り,ドレーンピッチを狭くして間隙水圧の上昇を抑制する冒頭でも述べた通り,間隙水圧消散工法では変形をあるほど,沈下や側方流動等の変形を抑えることができること程度許容するため,変形量を予測して改良域やドレーンピを確認できる。本解析の条件下では,ドレーンピッチがッチを決めることが肝要である。上記の結果より,マクロ2.0m ぐらいから効果が発揮されはじめ,ドレーンピッチエレメント法を適用して計算効率を上げた有効応力解析が 1.0m を切ると,より大きな効果が得られている。はこの要求を満たす一つの有効な手段に成り得る。ただし,なお,図 12 に示す計算は全て図 10 に示す有限要素メッマクロエレメント法を適用して計算効率が上がっているシュを用いて行った。メッシュ分割幅がドレーンピッチにといえども,できる限り計算ケース数は抑えたい。図 12左右されない点や,2 次元解析でもドレーンピッチの効果が示す通り,有効なドレーンピッチは限られているため,202 予めこのピッチを把握することができれば,計算ケースを在を考慮した。解析結果を図 14 に示す。図 14 には 2 次元絞ることができる。図 12 が示すもう一つ重要な点は,工メッシュ解析の結果も併せて示しているが,1 次元メッシ法原理からすれば当然であるが,間隙水圧の上昇抑制と変ュ解析と 2 次元メッシュ解析で,ドレーンピッチと水圧上形抑制の間には高い相関があるという点である。変形の正昇率の関係はほぼ同じであることが分かる。これより,2確な予測には 2 次元もしくは 3 次元メッシュを用いた解析次元もしくは 3 次元メッシュ解析に先立って 1 次元メッシが必須であるが,間隙水圧の上昇抑制効果を把握するためュ解析を実施し有効なドレーンピッチを把握しておくこだけであれば,1 次元メッシュを用いた解析でもその効果とで,より効率的に設計を進めることができると言える。を十分に把握できる可能性がある。そこで,図 13 に示す4. 結論1 次元メッシュを用いた解析によりドレーンピッチと間隙水圧の上昇抑制効果について調べた。計算条件は図 13 に示す通りで,地盤の材料定数や初期値は 2 次元メッシュ解本研究で得られた主な知見を以下に示す。析と同じである。ただし,1 次元メッシュ解析では,盛土1)分の分布荷重を地表面に加えることで,簡易的に盛土の存準静的問題に適用が限られてきたマクロエレメント法は,動的問題においても十分な近似精度を有している。2)地表面排水(大気圧)骨格構造概念に基づく弾塑性構成式SYS Cam-claymodel を 搭 載 し た 水 ~ 土 連 成 有 限 変 形 解 析 コ ー ド1.0mGEOASIAにマクロエレメント法を適用することにより,ドレーンピッチを考慮しない比較的粗いメッシュを用いても間隙水圧消散工法の基本的特性を再現で周期境界2次元または3次元メッシュを用いた計算に先立ち,1次元メッシュを用いた計算で有効なドレーンピッチ20m側面非排水きる。3)を把握することにより,間隙水圧消散工法の設計を効率的に進めることができる。謝辞水平方向:粘性境界鉛直方向:速度境界本論文は,地盤工学会東日本大震災対応調査研究委員会「地盤変状メカニズム研究委員会(委員長:浅岡顕)」に関連する報告である.同委員会テーマリーダーの電力中央底面非排水研究所 石丸真氏には貴重なご助言を頂いた。記してここ図 13 有限要素メッシュと境界条件に謝意を表する。(1 次元メッシュ解析)1.21)水圧上昇率1.00.82)0.63)0.41次元メッシュ解析2次元メッシュ解析0.20123ドレーンピッチ (m)44)5図 14 ドレーンピッチと改良効果の関係5)(1 次元メッシュ解析と 2 次元メッシュ解析の比較)203参 考 文 献Asaoka, A., Noda, T., Yamada, E., Kaneda, K. and Nakano,M.: An elasto-plastic description of two distinct volumechange mechanisms of soils, Soils and Foundations, Vol.42, No. 5, pp. 47-57, 2002.Noda, T., Asaoka, A. and Nakano, M.: Soil-water coupledfinite deformation analysis based on a rate-type equationof motion incorporating the SYS Cam-slay model, Soilsand Foundations, Vol. 45, No. 6, pp. 771-790, 2008.関口秀雄, 柴田徹, 藤本朗, 山口博久: 局部載荷を受けるバーチカル・ドレーン打設地盤の変形解析, 第 31回土質工学会シンポジウム発表論文集, pp.111-116,1986.山田正太郎, 野田利弘, 田代むつみ, Nguyen Son: ドレーン内の水圧を未知数にとるマクロエレメント法によるウェルレジスタンス現象の再現, 第 48 回地盤工学研究発表会講演概要集, pp. 991-992, 2013.DEPP 工法研究会: DEPP 工法技術資料, 2011. Soil-water coupled analysis on prediction of liquefaction countermeasure effectof pore water pressure methodToshihiro NONAKA1,Shotaro YAMADA2,Toshihiro NODA1,Shogo YATO21 Nagoya University, Disaster Mitgration Research Center2Nagoya University, Department of Civil EngineeringAbstractNumerical simulation of excess pore water pressure dissipation method that is one of liquefaction counter measuremethods were conducted using a soil-water coupled finite deformation analysis code GEOASIA that mounts the SYSCam-clay elasto-plastic soil model based on soil skeleton structure on it. The macro element method that is a kind ofhomogenization method was used due to include the effect of vertical drains to numerical analysis. The mainconclusions obtained in this study are outlined below. 1) Macro element method has satisfactory approximationaccuracy in dynamic problems. 2) Basic characteristics of excess pore water pressure dissipation method can beefficiently reproduced using GEOASIA with macro element method. 3) Design can be preceded more efficiently bygetting effective drain pitch by means of 1 dimensional mesh analysis before conducting multi-dimensional meshanalysis.Key words: pore water pressure dissipation method, liquefaction countermeasure, soil-water coupled analysis, macroelement method204
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  • タイトル
  • 地震後も続く粘性土地盤の長期圧密沈下挙動の解明
  • 著者
  • 磯部公一・大塚悟・高原利幸
  • 出版
  • 地盤工学会特別シンポジウム -東日本大震災を乗り越えて-
  • ページ
  • 205〜211
  • 発行
  • 2014/05/14
  • 文書ID
  • 67561
  • 内容
  • 地盤工学会特別シンポジウム-東日本大震災を乗り越えて-22地震後も続く粘性土地盤の長期圧密沈下挙動の解明磯部公一 1,大塚悟 2,高原利幸 31北海道大学・大学院工学研究院環境フィールド工学部門2長岡技術科学大学・環境・建設系3金沢大学・大学院自然科学研究科概要2011 年東北地方太平洋沖地震では,堆積年代の比較的若い沖積粘性土層において地震後の沈下現象の観測事例が報告されている。同様の現象は 2007 年の新潟県中越沖地震でも観測されており,柏崎平野の沖積粘性土地盤では地震から 7 年が経過した現在もなお沈下が続いている。本研究では新潟県中越沖地震を対象に,まず長期沈下が観測された柏崎市内の地質構造を調査し,地盤材料の物理特性・力学特性の把握を行った。その後,調査結果を基に,土の構成則に過圧密・構造・異方性の概念を導入した弾塑性構成式を用いる土水連成三次元弾塑性有限要素解析を行い,地震後の長期沈下挙動のメカニズムの解明と将来の沈下量の予測を試みた。キーワード:沖積粘性土,沈下,圧密,構造,FEM1. は じ め にの発生要因の検証を行い,今後の沈下量を予測した。本稿ではこれらの結果について報告し,最後に粘性土地盤の地震後長期沈下現象のメカニズム解明に対する今後の課題,2011 年東北地方太平洋沖地震では,千葉県浦安地区に展望をまとめる。おいて堆積年代の比較的若い沖積粘性土層の地震後の沈下現象が観測されている 1)。地盤沈下は,盛土や直接基礎2. 調査対象地域およびサンプリング試料のような構造物では不同沈下,杭基礎では負の摩擦力を引き起こすため,粘土地盤であっても地震時・地震後の変形挙動評価が重要である。過去にも 1957 年メキシコ地震,図 1 に柏崎市において観測された累計地盤沈下(濃淡)1978 年宮城県沖地震,1985 年メキシコ地震,1995 年兵庫と中越沖地震後の地盤沈下(等高線)の相関図を,図 2県南部地震,2000 年鳥取県西部地震において,同様の沈に同地域の地質図を示す。これらより,累積地盤沈下発生下現象が観測されており,地盤調査や要素試験に基づいた箇所は主に沖積層上に分布していることから粘性土地盤メカニズムの解明や長期的な沈下量の予測が行われてきで発生していると判断される。一方で,地震後の地盤沈下た2) 3) 4) 5) 6)。しかしながら,粘土地盤の地震時・地震後のは累積地盤沈下発生箇所と重複するものの,海岸沿いに集変形挙動に関しては,必ずしも実測データの蓄積は豊富で中していることが分かる。新潟県は同図に B で示す位置はなく,定量的な評価に結びつく詳細な分析が十分に行わ(新橋地区)で層別沈下量,地下水位の経年変化を観測しれているとは言えない。ている。図 3 に地表面から観測点(深度 23 m)までの収2007 年に発生した新潟県中越沖地震では,砂丘麓や旧縮量(沈下量)と地下水位の経時変化を示す。同図より,河道における液状化被害が注目を浴びる一方,粘性土地盤中越沖地震の発生した 2007 年 7 月を境に沈下量が急増し,で構成される柏崎平野での被害は相対的に軽微とされて現在もなお沈下が継続する長期間の沈下挙動が観測されいた。しかし,新潟県による経年地盤沈下観測が行われてている。これは同図に併記した揚水によって生じる地下水いた柏崎平野上の柏崎市新橋地区において,地震後の長期位変化による圧密現象では説明できない。7)間にわたって地盤沈下が生じている事実 が明らかになっそこで本研究では,この地震後の長期沈下メカニズムをた。この原因を調査するため,地盤沈下計測点脇にてボー解明するために,沈下の観測された柏崎市新橋付近にてボリング調査を実施し,採取土に対し室内土質試験を行ったーリング調査を実施し,試料のサンプリングを行った。図8)。続いて,土質試験結果を基に決定した材料パラメータ4 に土質柱状図を示す。これより当該地盤は N 値が 0~2を用いて,土・水連成弾塑性有限要素解析を行い,沈下観と非常に軟弱な粘性土層であり,深度 11.0 m 付近から僅測データの再現を試みた。解析結果を基に,長期地盤沈下かな風化した貝殻片の混入が確認でき,深度 14.0 m 付近205 よりその混入が顕著に見られることから,深度 14.0 m 以現地より採取した海成粘土(GL -16.7~19.0 m)とそれ深は海成粘土である可能性が高いと判断される。また,同以浅の陸成粘土(GL -9.0~11.7 m)の標準圧密試験結果を図に併記する「ほくりく地盤情報システム 10)」に保存され図 5 に示す。図中には同試料を十分に練り返して作製している新橋周辺の既存ボーリングデータ(図 4 地点 C)かた再構成試料の圧縮曲線も併記した。高位な構造を有するら,地震後沈下量の大きい新橋付近は N 値 50 以上の工学地盤の指標として,「軟弱な粘土地盤で圧縮指数比が 1.5基盤までおよそ 50 m もの沖積粘土層が厚く堆積している以上」という報告 11)があり,初期構造が高位なほど圧縮指ことがわかる。一方で,その周辺地盤では沖積粘土層の堆数比が大きい傾向にある。図 5 より,海成粘土の圧縮指数積層厚が比較的薄い。また,海岸寄りでは地表面に砂丘が比は 2.25 と初期に比較的高位な構造を有している。再構発達している様子がわかる。このことから,地震後の沈下成試料の圧縮挙動は e~log p 図で直線となるのに対し,量が多い地域は沖積粘性土層が厚く堆積している地域と不かく乱試料は鉛直応力の増加に伴い急激に圧縮し,再構一致する。成試料の圧縮曲線に漸近する様子を確認できる。一方の陸成粘土でも海成粘土ほどではないもののある程度の構造松波-200-100安政町-50桜木町北園町黒新花町H19-21年沈下量(mm)東港町西港町-40東柏 崎停柏崎 停-30黒部・柏崎線柏崎港線番神寿町緑町天神町若葉町常盤台52北半田すると,圧縮軟化挙動により長期に亘って沈下が継続する茨目岩上田中城塚南光町宮場町い圧縮軟化挙動 11)を示すことになる。地盤が進行的に軟化三和町宝町穂波町関町赤坂町と同義であり,通常の地盤工学では取り扱うことのできな東長浜町R8R2幸町柳橋町東の輪町扇町豊町日石町大久保生したものと考えられる。構造の低位化は地盤強度の軟化田塚長浜町日吉町錦町線0新田畑四谷鏡町駅前新橋構造の喪失をもたらし,間隙の圧縮が生じて地盤沈下が発東柳田東本町野田・西 本線中浜-10藤元町 柳田町線比角車場 線車場西本町-20崎松美諏訪町中央町小倉町学校町・柏大和町010部北斗町栄町有しており,中越沖地震による地震動によるせん断変形が春日-20-10以上より,対象地域の粘性土地盤は比較的高位な構造を小金町R3 52-40-30を有していることがわかる。橋場町槇原町H21年累計沈下量(mm)と推察される。半田新赤坂米山台西枇杷島劔野枇杷島枇杷島R8城東元城町R353鯨波米山台三島町米山台東 三島西剣野町劔野下方希望が丘朝日が丘南半田佐藤池新田半田佐藤池新田向陽町 軽井川ゆりが丘長峰町横山劔野3.0間隙比 e図 1 累計地表面沈下量と地震後地表面沈下量の相関図地質砂丘堆積層沖積層中位段丘堆積層古砂丘堆積層越後c黒部・柏崎c0.5砂丘堆積層1東高位段丘堆積層東柏 崎停cr線砂丘堆積層西山層cr圧縮指数比c /c = 2.251.51.0沖積層灰爪層2.0線R3 52溶岩・火砕岩など海成・不攪乱海成・再構成陸生・不攪乱陸成・再構成圧縮指数比c /c = 1.402.5柏 崎停車場 ・比角線車場 線1010010002圧密圧力 p [kN/m ]10000野田・西 本線柏崎線港線R2沖積層古砂丘堆積層黒 部 ・柏 崎 線溶岩・火砕岩など図 5 標準圧密試験結果R8場線砂丘堆積層崎停車・柏黒部柏崎西山層信越中位段丘堆積層52本線灰爪層古砂丘堆積層3. サンプリング試料の非排水せん断特性沖積層高位段丘堆積層R8中位段丘堆積層中位段丘堆積層溶岩・火砕岩などR3 533.1沖積層静的せん断試験対象地域の地震後の長期沈下挙動の原因を高位な構造図 2 柏崎市の地質図9)を有する海成粘土の圧縮軟化挙動であると考え,海成粘土のせん断特性を把握するために,同一試料に対して非排水-5.0地下水位 [cm]0.02005.0150101001550中越沖地震発生試験機にセットした後に背圧 100 kPa を与え,飽和度を地下水位 [cm] 累積収縮量 [mm]累積収縮量 [mm]20せん断試験を実施した。供試体は,自然含水比状態で三軸25095%以上にした。所定の圧力で 18 時間等方圧密した後に,0.021 mm/min の軸圧縮速度の下,せん断を実施した。図 6 に海成・陸成粘土の不かく乱試料の有効応力経路を示す。拘束圧 50 kPa,100 kPa の有効応力経路に着目す0ると,間隙水圧の上昇に伴い有効応力が減少し,軸差応力25-502006/1 2006/5 2006/9 2007/1 2007/5 2007/9 2008/1が減少し始めても体積圧縮が続く軟化圧縮現象が生じる図 3 沈下量時変化(2006~2008年)ことが分かる。一方,拘束圧が 150 kPa,200 kPa の場合には軟化圧縮現象は見られない。これはせん断前の等方圧密206 深度[m]土質区分0.75盛土0N値10 20 30 40 5013101518深度[m]土質区分1.00盛土N値10 20 30 40 50024粘土334354383712.10シルト質粘土14.0015.0016.1017.1018.0019.0020.0020.50砂質シルトシルト・砂互層細中砂腐植土・小砂礫砂質シルトシ ルト質砂シルト互層砂質シルトシルト質粘土27.8528.3028.7029.5030.50細砂シルト質粘土表土粘土粘土粘土8.108.90シ ル ト質粘土・混砂互層細砂粘土38161粘土粘土1217粘土( 風化した貝殻片混入)81099101020.1021.7024182023.10粘土混じりシ ルト24.3025.40微超砂・シルト互層粘土混じりシ ルト743B26.005粘土質シルト6627.30細砂28.70粘土質シルト29.90細砂26粘土質シルト5735.7024砂質シルト38.50A粘土質シルト41.80粘土質シルト47.50500100500Deviator stress (kPa)200150100500510Axial strain (%)15中砂砂質シルト29.3530.25N値10 20 30 40 5041024110000123398112630172218151619111319細砂50505050砂礫33.80202121固結粘土40.4520222121DC505050500.70-20-400 10 20 30 40 50 60 70 80平均有効応力 p' [kPa]0.6DA = 1 %DA = 2 %DA = 5 %0.50.40.3 0.370.20.1110100Number of cycles1000図 7 動的三軸圧縮試験より得られた液状化強度曲線3.2150動的せん断試験静的せん断試験と同様の条件で拘束圧 50 kPa として繰100返しせん断試験を実施した。図 7 は試験結果の一例とし50て,不かく乱海成粘土に対し応力比 σd/2σ’0 が 0.4 のケース00777656776767767678-6050 100 150 200 250Mean effective stress (kPa)50kPa (E)100kPa (E)150kPa (E)200kPa (E)200シルト質細砂26.502025050kPa (E)100kPa (E)150kPa (E)200kPa (E)砂質シルトシルト質細砂互層25.25144015015250Deviator stress (kPa)2000510Axial strain (%)6Cyclic stress ratio d/20'10023.306050kPa (E)100kPa (E)150kPa (E)軸差応力 q [kPa]15015140土質柱状図(左から図 2 の A,B, C, D に対応)25050kPa (E)100kPa (E)150kPa (E)Deviator stress (kPa)Deviator stress (kPa)250シルト質細砂砂質土丹51.3018.6520.90砂礫49.70シ ルト18細砂粘土細砂22.0022.7023.804砂質粘土砂混り粘土互層シルト質粘土220.8010913図 414.9016.103013141213.452129シルト質微砂111112320シルト質細砂粘土・中砂互層5.9514.0011112004.404.7024188細砂・シ ルト互層44.70表土粘土49粘土質シルト土質区分1.151細砂39.00深度[m]砂混じりシ ルト質粘土9.0010.0034.7036.00N値10 20 30 40 50015.407.001181015砂混りシルトシルト質細砂砂混りシルトシルト質粘土32.00土質区分0.702.0017砂深度[m]0の有効応力経路と不かく乱海成粘土の液状化強度曲線を50 100 150 200 250Mean effective stress (kPa)示す。繰返しせん断試験では引張側にひずみが増幅し,間図 6 静的三軸圧縮試験結果(上:上層,下:下層)隙水圧の発生に伴い有効応力が減少する結果となった。また,砂質土ほどではないが,粘性土にもかかわらず繰返し時に自然堆積粘土の構造が低位下したことが原因と考えせん断に伴って過剰間隙水圧が発生する。両振幅軸ひずみられる。陸成粘土では過圧密粘土の挙動に近く,海成粘土DA = 5 %で定義した海成粘土の液状化強度は 0.37 と,液と比較しても同拘束圧下での限界状態に至る軸差応力が状化強度は一般的な砂質土よりも大きいが,中越沖地震の大きい。地震動(最寄りの計測点での最大水平加速度 668 Gal (NS))を考慮すると十分にせん断破壊が生じうることが分かる。207 4. 数値解析による長期圧密沈下現象の再現度を測定している KiK-net のデータを利用し,司,翠川の距離減衰式 16)を用いて KiK-net 観測地点(川西および湯之4.1概説谷)における地表面および基盤面の最大加速度を推定した。過圧密状態で構造を有する粘性土地盤の地震後の長期次に,PS 検層結果を基に地盤をモデル化し,重複反射理沈下挙動を再現するために,土・水連成弾塑性有限要素解論に基づく一次元線形逆解析によって,開放基盤面での入析による数値解析を実施した。得られた解析結果を基に,力波を推定した。より実測波形の再現性が高かった湯之谷長期沈下発生要因の検証を行い,今後も継続が想定されるの基盤波形が距離減衰のみの影響を受けて,比例的に減衰沈下量の予測を行う。したと仮定し,最大値が 96 gal になるようにしたものを解4.2解析条件析地点の開放基盤面での入力波形とした。図 10 に本解析解析プログラムは土・水連成有限要素解析プログラムで用いた入力波形を示す。地震動は地盤底面より与えた。12)「DBLEAVES」 を用い,土の構成式には下負荷面の概念13)及び上負荷面の概念減衰モデルは剛性比例型とした。14)に基づいて,土の力学挙動に大きく影響を与える過圧密,構造,応力誘導異方性を統一的に表 1 地盤パラメータ表 現 で き る 移 動 硬 化 型 弾 塑 性 構 成 式 Cyclic mobilityShallow layerDeep layerSilt0.2640.2140.104Swelling indexが固定された降伏曲面(式 1)を有し,他モデルと異なるStress ratio at critical stateRf3.5003.5003.000Void ratio (p ' = 98 kPa on N.C.L)N1.6101.5400.920応力誘導異方性とその発展則(式 2),応力誘導異方性のPoisson's ratio0.3300.3300.200Degradation parameter of overconsolidation statem5.00015.0002.200影響を取り入れた過圧密の発展則(式 3)を適用しており,Degradation parameter of structurea0.1000.2000.100Evolution parameter of anisotropybr0.1000.1000.100Initial mean effective stress [kPa]p'8 ~ 7378~111117~295R01/R 00.9500.6000.6001.9~191.3~1.82.5000.0000.0000.000Compression indexmodel15)を用いた。本モデルの特徴は,応力空間に C.S.L関連流れ則の適用による簡便性が挙げられる。また,式 4*Initial degree of structureに示す変換応力を取り入れ中間主応力の影響も考慮されInitial degree of overconsolidationInitial anisotropyる。3∗0∗1Unit weight under water [kN/m ]MD ln5.00E-095.00E-091.00E-0715.3615.6617.00'5.155.537.00∗(2)ln‖‖⋅250250(1)(3)50kPa (E)100kPa (E)150kPa (E)20050kPa (S)100kPa (S)150kPa (S)150100500(4)の比較を図 8 にて行う。これらの結果より,一部十分に表現できないケースがあるものの概ね要素試験結果を再現している。また,今回の地盤調査ではサンプリングしていない 21 m 以深に堆積するシルト層については標準的な200100kPa (E)100kPa (S)150kPa (E)150kPa (S)15010050510Axial strain (%)地層構成は C 地点の土質柱状図を参考に,地表から陸成粘土層,海成粘土層,シルト層,礫層の 4 層と仮定した。解析領域底面を完全固定とし,動的解析時は同一高さの節点Deviator stress (kPa)深さ 48 m の三次元解析メッシュを用いた。簡便のために,20015010050とし,鉛直方向のみを自由条件とした。50kPa (S)100kPa (E)150kPa (E)100kPa (S)150kPa (S)15010050050 100 150 200 250Mean effective stress (kPa)50kPa (S)100kPa (S)150kPa (S)2001501005000設定した。その後の圧密解析時には,水平方向を固定条件50kPa (E)25050kPa (S)100kPa (S)150kPa (S)0は水平方向に等変位境界を設定し,鉛直方向を自由条件に20015250本解析では,図 9 に示すような幅 1.0 m,奥行き 1.0 m,50 100 150 200 250Mean effective stress (kPa)00シルトのパラメータで代用した。得られた応力履歴,応力4.350kPa (S)0~ひずみ関係についても図 8 に合わせて記載した。5025050kPa (E)Deviator stress (kPa)Deviator stress (kPa)地盤材料パラメータを表 1 に示し,計算結果と実験結果1000250非排水三軸圧縮試験シミュレーションにより決定した50kPa (S)100kPa (S)150kPa (S)15051015Mean effective stress (kPa)Deviator stress (kPa)/50kPa (E)100kPa (E)150kPa (E)20000, 0.010kDeviator stress (kPa)MD ln3Deviator stress (kPa)tr∗∗MD lnSaturated unit weight [kN/m ]0.031 satPermiablity [m/sec]MD ln0.080510Axial strain (%)15050 100 150 200 250Mean effective stress (kPa)図 8 静的三軸圧縮試験のシミュレーション結果(上:陸成粘土層,入力波形・境界条件・時間積分中:海成粘土層,下:シルト層)基盤入力波形を求めるために,地表面と基盤面での加速208 4.4いているが,現地において間隙水圧の観測を実施できてい解析結果ない等の理由から確かな証拠に欠けるのが現状である。さ図 10 に水平方向の地表面加速度,図 11 に沈下量,図12 に過剰間隙水圧比の時刻歴を示す。所定の時刻(地震らに,柏崎市を含む中越地方は日本有数の豪雪地帯であり,前,地震中,地震直後,1 年,3 年,5 年,7 年,10 年,地下水を有効利用した消雪パイプが道路上に張り巡らさ20 年,30 年後)の過剰間隙水圧比のコンターを図 13 にれ,降雪時の地下水の利用は地震後も盛んに行われている。示す。これらの結果より,地表面の応答加速度は 500 galこのような冬季の地下水位の変動は,粘性土地盤の長期圧程度までに増幅され,100 sec まで小さな揺れが継続して密沈下挙動を加速化あるいは長期化させる可能性も懸念いる。過剰間隙水圧比は深度が浅い陸成粘土でより大きなされる。以上のような現象は,東北地方太平洋沖地震の被値を示し,深度の深い海成粘土でも過剰間隙水圧比が上昇災地においても十分に起こり得るため,早急な解明と対応する様子が窺える。地震の半年後には間隙水圧の消散が進が求められるが,これらの課題を解決するためには,長期行し,徐々に沈下量が増大する。最終的に 30 年後には,的なモニタリングの継続,サンプリング試料の充実および全層に亘ってほぼ過剰間隙水圧比が消散し,沈下量も収束力学試験データの蓄積が欠かせない。幸いにも柏崎市では地盤沈下による構造物への影響は,する。観測値と比較すると,解析結果の方がやや沈下量を過大評価する傾向にあるものの,ある程度の精度で観測結地震後から現在に至るまで顕在化していないものの,粘性果を表現できている。本解析結果によると,過剰間隙水圧土の圧密沈下挙動は,盛土や直接基礎の不同沈下,大規模が消散する 30 年後には約 250 mm まで長期継続沈下する構造物を支える杭基礎へのネガティブフリクションの発と予想される。生を誘発し,地震から数年経過後に人知れず構造物に損傷次に,図 14 に深度ごとの過圧密比および構造の程度のを与える可能性も考えられる。特に,地震時に変形,軽微経時変化を示す。この様子から,地震中は過剰間隙水圧のな損傷を受けた杭基礎にとっては,健全時におけるネガテ上昇に伴い過圧密比も増加し,間隙水圧の消散とともに過ィブフリクション作用の影響よりも厳しい負荷が発生す圧密状態も解消する。深度の深い層では過圧密比は初期のる可能性が懸念されるため,粘性土地盤の長期沈下挙動が値近くまで戻るのに対し,深度の深い層では初期の値まで構造物基礎(直接基礎・群杭基礎(直杭・斜杭))へ与え戻らず,地震前よりも過圧密な状態で留まる様子がわかる。る影響も合せて評価していく必要がある。一方で,構造の程度を表す 1/R*では地震中の変化は極わず6. 謝辞かである。ゆえに,本解析では当初想定していた「地震動によるせん断変形が構造の喪失をもたらし,間隙の圧縮を本稿は,地盤工学会東日本大震災対応調査研究委員会生じて地盤沈下し,その後,地盤が進行的に軟化し圧縮軟「地盤変状メカニズム研究委員会(委員長:浅岡顕)」に化挙動により長期に亘って沈下が継続する現象」は表現さ関連する研究報告である。れず,地震動によるせん断変形が過剰間隙水圧を上昇させ,1)粘性土の低い透水係数がその消散と沈下を長期化させた原因であることがわかった。2)5. 結論と今後の課題および展望3)柏崎市新橋地区で地震前に観測された地盤沈下は,地下水揚水による粘性土地盤の圧密沈下現象であると推察さ4)れる。一方,新潟県中越沖地震後に観測された長期圧密沈下挙動は,地震動によるせん断変形が過剰間隙水圧を上昇5)させ,粘性土の低い透水係数がその消散と沈下を長期化させたために発生したものと判断される。特に,粘性土層厚の厚い地域において沈下量の増大が顕著になったものと6)推察される。本解析結果では,地震後 7 年経過した時点でも過剰間隙水圧が完全に消散していないことから,今後も7)8)長期地盤沈下を継続する可能性が高いと予想される。ただし,本研究では,①地盤の採取深さや,場所が特定の範囲でしか実施できていないため,数値解析では未採取9)深度の地盤を,採取した地盤が一様に分布するものと仮定している。②静的三軸試験で同定したパラメータでは動的10)11)三軸試験結果を定量的には再現できていない。③粘性土地盤の間隙水圧の上昇が長期沈下を誘発したとの結論を導209参 考 文 献濁川直寛,浅香美治:千葉県浦安市における地震に伴う沖積粘土地盤の長期沈下の実測,第48回地盤工学研究発表会発表講演集(CD-ROM),2013.Zeevaert, L.: Foundation Engineering; For Difficult Subsoil Conditions,Second Edition, Van Nostrand Reinhold Company Inc., pp.521-523,1972.鈴木猛康:動的応力履歴を受けた飽和粘性土の沈下挙動,応用地質,Vol.25, No.3, pp.21-31, 1984.Jaime, A. P., Romo, M. P. and Jasso, M. 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Ses. 9 (eds. by Murayama, S. and Schofield, A. N.), Tokyo,JSSMFE, pp.73-82, 1977.14) Asaoka, A., Nakano, M. and Noda, T.: Superloading yield surfaceconcept for highly structured soil behavior, Soils and Foundations, JGS,Vol.40, No.2, pp.99-110, 2000.15) Zhang, F., Ye, B., Noda, T., Nakano, M. and Nakai, K.: Explanation ofcyclic mobility of soils: Approach by stress-induced anisotropy, Soilsand Foundations, JGS, Vol.47, No.4, pp.635-648, 2007.16) 司宏俊,翠川三郎:断層タイプ及び地盤条件を考慮した最大加速度・最大速度の距離減衰式,日本建築学会構造系論文報告集,第523号,pp.63-70, 1999.(2014. 4. 4 受付)01.2-250-50001.41.0ResponseInput4080120 160Time (sec)200240280100200(sec)3001 10 20 30 40 50(year)Time図 13 各層の1/R および1/R*の経時変化図 10 基盤入力波形と地表面応答加速度の時刻歴210 図 14 地震前,地震中,地震後の過剰間隙水圧比のコンターおよび変形の様子Mechanism on long-term subsidence of soft clay due to earthquakeKoichi ISOBE1,Satoru OHTSUKA2,Toshiyuki TAKAHARA31Nagaoka University of Technology, Department of Civil and Environmental Engineering2Nagaoka University of Technology, Department of Civil and Environmental Engineering3Kanazawa University, Graduate School of Natural Science TechnologyAbstractIn 2007 Niigata Prefecture Chuetsu-Oki Earthquake, ground liquefaction was outstanding at the toe of sand dune andold river channel. On the other hand, no distinct disaster has been found at clayey ground after the earthquake.Long-term subsidence of ground after the earthquake, however, has been observed at Shinbashi in Kashiwazaki city.In order to investigate the long-term subsidence mechanism, ground investigations as boring survey and indoorelement tests for sampled soil were conducted in this study. As the results, the sampled soils were found very soft andrelatively highly-structured. In the second process, the subsidence behavior of ground was simulated by soil-watercoupling elasto-plastic FE analysis. In the simulation, Cyclic Mobility model developed by Zhang et al. (2007),which contains the concept of subloading and superloading as described in the work by Hashiguchi and Ueno (1977)and Asaoka et al. (2002), is used for the constitutive model. Its parameters were determined based on theabove-mentioned element test results. Based on the simulation results, the post-earthquake behavior of the soft clayand its mechanism were discussed and the successive subsidence was predicted forward.Key words: soft alluvial clay, subsidence, consolidation, structured soil, FEM211
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  • タイトル
  • 亀裂進展解析による地震時の河川堤防分離破壊の解明
  • 著者
  • 新保泰輝・矢富盟祥
  • 出版
  • 地盤工学会特別シンポジウム -東日本大震災を乗り越えて-
  • ページ
  • 212〜218
  • 発行
  • 2014/05/14
  • 文書ID
  • 67562
  • 内容
  • 地盤工学会特別シンポジウム-東日本大震災を乗り越えて-23亀裂進展解析による地震時の河川堤防分離破壊の解明新保泰輝 1,矢富盟祥 21五大開発株式会社2金沢大学技術研究所名誉教授概要河川堤防は地震によって堤防盛土天端や法面部分に複数の開口型やせん断型の亀裂を生じる事で非常に複雑な破壊形態を示す。特に液状化現象を伴う場合には,盛土が開口亀裂によって短冊状に分離する特徴的な破壊形態を示す。このような河川堤防盛土の複雑な破壊形態の破壊メカニズムを解明するためには、盛土内にある亀裂の進展過程を考慮する必要がある。本論文では盛土が短冊状に分離する破壊形態の破壊メカニズムを解明するために,側方流動によって盛土底部に微小亀裂が発生したと仮定して亀裂進展解析を行った。その結果,盛土底部に発生した複数の亀裂が側方流動によって開口しながら地表面に向かって進展していく事で盛土が分離する破壊形態となる事を示した。キーワード:河川堤防,分離破壊,X-FEM,亀裂進展解析1. は じ め に2011年に発生した東北地方太平洋沖地震によって河川堤防には数多くの被害が発生した。東北地整管内では773箇所の堤防が被災しており,その内,「決壊・崩落」「陥没,沈下,亀裂」による被害は約6割を占めている1)。河川堤防が決壊すると,河川水が越流し,堤内地に甚大な被害を生じるため,減災という観点において河川堤防の耐震対策は(a)開口型亀裂非常に重要な問題である。耐震対策を検討するためには,(b)せん断型亀裂図 1 亀裂の変形モード地震時に河川堤防に生じる破壊形態の破壊メカニズムを把握する必要がある。元地形地震被害を受けた河川堤防盛土には多くの亀裂が存在する。この亀裂を変形モード別に分類すると,図 1(a)に示すような開口型亀裂,図 1(b)に示すせん断型亀裂,それらを組み合わせた混合型亀裂の3種類になる。様々な種類の亀裂が盛土の至る所に生じる事で,河川堤防盛土は非常に液状化層複雑な破壊形態を示す1),2)。これらの亀裂は基礎地盤の液状化に伴う側方流動や地震中に天端や法面に引張応力が卓越する事で生じる3),4)。その長さは盛土の位置や盛土形図 2 液状化に伴う河川堤防の分離破壊形態状,盛土材料によって大きく異なる。特に液状化現象を伴う場合,図 2に示すような亀裂が盛土底部まで到達して盛土を短冊状に分離する破壊形態を示す事がある。盛土が分離する事例は数多く存在する1)。この破壊形態軟弱層に至るメカニズムは,基礎地盤や盛土内に液状化現象が発生し,天端や法面に発生した開口亀裂(図 1(a))が側方流動によって進展して盛土底部まで達する事で発生すると考えられている1)。しかし,この説明はどのような応力状態で亀裂が進展するかを全く考慮していない。例えば,一図 3 亀裂を有する河川堤防盛土の自重解析212 ②t  0 on  t①u xcf ( x)  0c c : crackf ( x)  0cbf (x)  0 on cu onu図4 亀裂先端への土圧による拘束効果図 5 解析領域の定義様な基礎地盤に液状化が発生した場合,図 3(詳細は後述する)に示すように,天端や法肩部は圧縮応力状態にある一方,側方流動によって盛土底部には引張応力が作用しため,亀裂面は閉口する。そのため,天端や法肩部に発生ている。一般に土の強度はせん断強度に対して引張強度のした亀裂が側方流動によって開口しながら進展して,河川方が小さい。そのため,この時生じた引張応力により,盛堤防盛土を分離するとはいえない。土底部に微小亀裂が発生し,これが側方流動に伴い進展すると考えるべきである。特に被災時に多くの亀裂を伴う河川堤防の破壊メカニそこで,本論文では側方流動によって盛土底部に亀裂がズムを考究する上で,盛土内にある亀裂の進展過程を考慮形成されたと仮定して,X-FEMによる亀裂進展解析を行い,した破壊力学による考察は必要不可欠である。著者らは既報5)において,どのようにして開口亀裂が進盛土が短冊状に分離する破壊形態の破壊メカニズムの解明を行う。展するかを検討するために,亀裂を考慮した河川堤防盛土の地震応答解析を行い,その亀裂進展可能性を検討した。2. X-FEM の定式化その結果,地震時に法面に発生した亀裂(図 4中①)は地震中に盛土底面に達する可能性がある事を示した。これは法面では土圧による拘束圧は小さい事から,地震によって本論文では亀裂進展解析手法としてX-FEM7)を用いた。亀裂が長くなった場合でも,亀裂先端近傍では引張応力状紙面の都合上,定式化において特に重要になる式のみを記態となるためである。天端中央に発生した亀裂(図 4中②)載する。も同様に拘束圧は小さいが,この亀裂が長くなると土圧に今,図 5に示すような連続体に外力として物体力が作用よる拘束圧は大きくなる。そのため,振動中,亀裂先端前する問題を考える。図中の  は物体領域全体, c は有限方は引張応力状態とはならず,圧縮応力状態になる。した要素近似された亀裂を有する要素である。また,亀裂面  cがって,天端中央付近に発生した亀裂が開口しながら盛土に対して符号距離関数 f  x  を与える。さらに f  x   0 方向底部にまで到達する可能性は低い5)。ただし,この事実はの単位法線ベクトルを n c と置く。このとき,σ を応力とし,実際の被災事例において盛土底部まで到達しない,天端か物体力を b とすると準静的な運動方程式は次式となる。divσ  b  0 on (1)ら数十cmの亀裂が生じる現象を説明している。また, ,  をラメの定数とすると線形等方弾性体の構以上の検討により,法面に発生した亀裂は盛土底部に達成式は次式で表される。する可能性は示された。しかし,本議論だけでは盛土中央 1σ  Ceε, Ce :  I  2   I  1  1  3付近が分離する現象を説明する事はできない。また,著者らは基礎地盤や盛土内が液状化した場合を想(2)ここで,物体境界   t   c  u において変位境界条件定して盛土下部に弾性係数の小さい軟弱層を導入する事で液状化層を簡易に模擬し,自重解析を行った 。この時,u  u on  u ,荷重境界条件 t  0 on  t を考える。また,亀裂地震中に亀裂が生じたと仮定して,盛土天端に亀裂を挿入面上ではMohr-Coulomb型の摩擦則が成り立つとし,弾完して解析を行った。その結果,側方流動によって盛土が変全塑性接触摩擦モデルを用いている8)。亀裂面の相対変位形する場合には図 3に示す変形モードが発生し,天端や法を u と置くと,亀裂面の境界条件は次式となる。5)する事を示した。閉口した亀裂面がすべりを生じる場合にσn if u  n c  0fc :  cotherwise0は図 1(b)に示すせん断破壊の可能性がある。実際に,河川なお,亀裂面はめり込まない事から常に u  n c  0 である。堤防の地震時破壊形態の1つとして,液状化に伴うせん断ここで, d を節点変位自由度, bˆ を変位不連続を表す付肩付近の亀裂には圧縮応力が作用する事で亀裂面は閉口on  c(3)破壊がある 。しかし,前述したように図 3に示すような加自由度,要素の節点数 num,形状関数を N(x) とし,亀盛土下部の基礎地盤に一様な軟弱層が存在する場合には,裂先端近傍変位場の特異解を用いない場合には要素内変天端付近では圧縮応力が卓越し,特にその亀裂先端では土位-節点変位関係式は次式で表される。6)圧による拘束圧が大きくなる。そのため,亀裂面は閉口すu( x)  N(x)d  Φ(x)bˆ on  /  cるだけではなく,すべりを生じない固着状態となり,せんΦ(x) :   I (x I )N(x I ),num断破壊は発生しない。I 1213 I (x) : H  f (x)   H  f (x I ) (4) ˆ (x) と置く。以上を用またここで, Φ(x) の空間微分を Φ5m盛土軟弱層いて式(1)の弱形式の離散化を行い,非線形問題の解法とし5m地層1 F d k 1 n1 G k 1 d n1F bˆ nk 11  d nk 11  Fnext1  Fnint1,k 1 int ,k 1 G  bˆ kn11  G extn 1  G n 1k1bˆ n1 10m25mて Newton-Raphson 法を用いると最終的に次式が得られる。75m地層210m135m(5)図 6 解析モデル図表 1 材料パラメータ FT d k 1   B DBd  n1 F  BT DΦˆ d   NT f  u  Ndc u kn11 bˆ kn11 (6) GˆT d k 1  c Φ DBd  n1 G  Φˆ T DΦˆ d   ΦT f  u  Nd c u kn11 bˆ kn11 c(7)単位体積重量[kN/m3]弾性係数[kN/m2]ポアソン比[-]亀裂面の摩擦係数[-]亀裂面の粘着力[kN/m2]盛土軟弱層地層1地層217.0788,0000.2580.1518.541500.330018.54150,0000.33--20.6738,0000.33--式(5)右辺のノルムが許容誤差以下となるまで収束計算を行う。ここで,n は荷重ステップであり,k は収束計算の繰返し回数を意味する。図 7 解析メッシュ図3. 側方流動に伴う開口亀裂の進展解析本章では,図 6 に示す河川堤防モデルを用いて亀裂進展解析を行う。議論を簡単にするために材料は線形等方弾性体と仮定した。ただし,亀裂面には摩擦係数,粘着力が存在している。解析に用いた材料パラメータを表 1 に示す。図 7 に解析に用いた有限要素メッシュを示す。三角形二図 8 盛土内に亀裂がないモデルの自重解析次要素を用いて節点数 41,271,要素数 20,476 とした。図 8に河川堤防盛土内に亀裂が存在せず,自重のみが外力とし亀裂て作用している場合(以後,自重解析と呼ぶ)の  x の分布図を示す(以後記載している分布図は全て  x 分布である)。なお,正値が引張応力である。図 8 に示すように軟図 9 初期亀裂モデル(拡大図)弱層の影響によって盛土が沈下し,法尻部分では隆起する変形モードが得られている。この時,図 8 点線内に示すyように,盛土底面に引張応力  x が作用している事から,引張応力により鉛直方向の微小亀裂が形成されたと仮定r rし,図 9 に示すように,初期亀裂を盛土底面中央に挿入した。初期亀裂長さは 1.5m であり,堤防側に 0.5m,軟弱r層側に 1m とした。 rr亀裂進展は,図 10 に示す極座標を用いて,亀裂先端からの距離 r = 0.2m で引張周応力    r ,  の最大値    r , max Oが引張破壊強度   , f  1.5MPa 以上となる場合に,  max 方向に発生すると仮定した。なお,議論を簡単にするために,亀裂先端図 10 亀裂先端を原点とした極座標地盤材料のせん断破壊強度は引張破壊強度に対して非常に大きいと考え,せん断破壊は発生しないとする。また,本解析では数値解析精度を考慮し,亀裂進展方向が±5 度程度となった場合には,みなし角として 0 度(直進)方向に亀裂が進展するとした。図 9 の初期亀裂モデルにおける自重解析結果を図 11に示す。また,図 9 に示す亀裂の上下先端近傍応力場を図 11 初期亀裂モデルでの解析結果図 12 に示す。図 12 の縦軸は引張破壊強度   , f  1.5MPa で214x Nondimensional Angular Stress Distribution σσrσθσrθ321(a) 盛土側 亀裂長さ 50 cm (図 11 再掲)0-1-180-120-600θ(゜)60120180Nondimensional Angular Stress Distribution σ(a) 上側亀裂先端 (鉛直方向上向きが 0 度)(b) 盛土側σrσθσrθ0.5亀裂長さ 1m0-0.5-180-120-600θ(゜)60120180(c) 盛土側 亀裂長さ 1.5m(b) 下側亀裂先端 (鉛直方向下向きが 0 度)図 12 亀裂先端近傍応力場除して無次元化した応力成分  を表示しており,   が 1を超えると引張破壊となる。図 11 に示す  x 分布図は図 8とほとんど違いは見られないが,亀裂先端近傍応力場を見ると,上側先端では亀裂が開口した事によって亀裂先端近傍に応力集中が発生し,図 12(a)に示すような典型的な開口型亀裂の応力分布を生じている。この時,亀裂先端近傍(d) 盛土側亀裂長さ 3mの引張周応力は亀裂が直進する方向(0 度方向)に最大となっている。一方,軟弱層側では図 12(b)に示すように,周応力は全方向で圧縮を示している。この応力分布は均一圧縮応力状態であり,亀裂面は閉口している事を意味している。なお,極座標表示で振幅,振動数が等しく振動している場合は均一応力状態であることに注意したい。亀裂進展解析結果を図 13 に示す。亀裂は図 13(a)から徐々に盛土内をまっすぐに進展していき,最終的に盛土天(e) 盛土側 亀裂長さ 4m端表面に到達する(図 13(f))。一方,軟弱層側の亀裂先端近傍は一貫して図 12(b)に示すような均一な圧縮応力状態を示し,亀裂進展は発生しない。以上より,盛土底面に亀裂が形成された場合には,側方流動に伴って亀裂が開口しながら進展する事が判明した。しかし,図 13(f)に示すように,盛土全体の変形モードを見ると,盛土中心に対して天端が沈み込むような変形モードとなっており,盛土が離れていくような短冊状の破壊形態とはいえない。(f) 亀裂が盛土天端に到達図 13 亀裂進展解析結果215 4. 側方流動に伴う複数亀裂の進展解析亀裂前章の解析結果より,1 つの亀裂では,図 2 に示すような盛土が分離する破壊形態は得られない事が判明した。そこで,側方流動によって盛土底部に複数の亀裂が形成され,これが成長する事で盛土が複数に分断されると考え,複数図 14 複数初期亀裂モデル(拡大図)亀裂による進展解析を行った。本解析では,図 14 に示すように,盛土底部中央,盛土底部左側に盛土側 0.5m,軟弱層側 1m の亀裂の 2 本を挿入した。以後,それぞれ単に中央亀裂,左側亀裂と呼ぶ。その他,解析に用いたモデル,解析メッシュ,材料パラメータは前章と同じである。図 15 に初期亀裂モデルにおける自重解析結果を示す。また,この時の両上側亀裂先端近傍の周応力分布を図 16図 15 複数初期亀裂モデルでの自重解析結果応力は亀裂がまっすぐ鉛直に進展する方向を示しており,   1 を超えている。また,その最大値は左側亀裂の方が大きい。これは,左側亀裂の方が中央亀裂に対して土圧による拘束圧は小さいためである。したがって,亀裂は左側亀裂から進展を開始する。図 17 に左側亀裂が初期状態,進展中(詳細は後述する),法面到達時における,中央亀裂の亀裂先端近傍周応力分布を示す。また,図 18 に亀裂進展解析結果を示す。図 17 に示すように,左側亀裂の進展に伴って,中央亀裂の最大引張周応力が小さくなっている。これは,左側亀Nondimensional Angular Stress Distribution σに示す。図 16 に示すように両亀裂上側先端近傍の最大周4σθ 中央亀裂σθ 左側亀裂3210-1-180-120-600θ(゜)60120180裂が進展することで応力再分配が発生したためである。す図 16 初期状態における両亀裂上側先端近傍周応力分布Nondimensional Angular Stress Distribution σなわち,左側亀裂が進展中(図 18(b))に開口する事で,中央亀裂は左側から圧縮され,拘束圧が大きくなり,引張周応力は小さくなったといえる。また,左亀裂が法面到達時(図 18(c))には,左側亀裂を境にして盛土が分離する。この時,分離した右側の盛土の左側亀裂面は反時計方向回りに少し傾いたまま沈下している。そのため,左側亀裂の下側先端近傍の軟弱層は変形が局所化し,結果として左側への側方流動は抑えられている。これにより,盛土底面に生じる引張応力は小さくなる。この影響は大きく,図 17 に示すように中央亀裂の最大引張周応力は初期状態に対して 1/2 程度まで小さくなっている。ただし,盛土右側の法尻部は隆起した状態,すな3σθ 初期状態σθ 左側亀裂進展中σθ 左側亀裂法面到達時210-180-120-600θ(゜)60120180図 17 左亀裂進展時の中央亀裂上側先端近傍周応力分布わち,盛土右側への側方流動は生じたままであるために中央亀裂は閉口する事なく,開口したままである。また,こ盛土右側部分との間に変位差を生じたためである。の時,最大引張周応力は引張破壊強度を超えている。した以上の解析結果より,河川堤防盛土が分離するような短がって,左側亀裂が法面に到達した後に中央亀裂は進展を冊状の破壊形態は,河川堤防盛土下部の基礎地盤が側方流開始する。動を生じる事で盛土底部にいくつかの微小亀裂を形成し,図 18(d)に示すように中央亀裂はまっすぐ上方に進展しこの亀裂が側方流動に伴い開口しながら進展し,法面や天ていき,最終的に天端へと到達し,図 18(e)に示すような端に到達することで生じる事が分かった。盛土が短冊状に分離する破壊形態となる。図 18(e)に示すように盛土天端中央付近に段差が生じて5. まとめいる。これは,盛土の左側亀裂と中央亀裂に挟まれた部分が盛土全体から分離してブロック化した事で,その底部の本論文では,地震時に河川堤防盛土に発生する盛土が短傾きが自重によって水平となり,反時計回りに傾いている冊状に分離する破壊形態の破壊メカニズムを解明するた216 事が分かった。〇複数亀裂(盛土底部中央,左側)の発生を考慮した場合,拘束圧の小さい盛土左側から亀裂は進展する。このとき左側亀裂が進展する事で応力再配分が発生し,中央側の亀裂の最大引張周応力は小さくなることを示した。(a) 初期状態(図 15 再掲)〇左側亀裂が法面に到達後,中央亀裂が進展を開始する。この中央亀裂が盛土天端に達する事で,河川堤防盛土が短冊状に分離される破壊形態が生じる事を示した。今後は,液状化領域の位置によって引張破壊,せん断破壊のどちらが発生するかを検討する事で引張破壊とせん(b) 左側亀裂が進展断破壊を含めた統合的な河川堤防盛土の破壊メカニズムの解明を行う。謝辞本稿は,地盤工学会東日本大震災対応調査研究委員会「地盤変状メカニズム研究委員会(委員長:浅岡顕)」河川堤防ワーキンググループ(リーダー:小高猛司)に関連(c) 左側亀裂が法面に到達する研究報告である。WG メンバーには多くのご意見を頂きました。ここに記して感謝します。1)2)3)(d) 中央亀裂が進展4)5)6)(e) 中央亀裂が天端に到達図 18 複数亀裂の亀裂進展解析結果めに,側方流動に伴って盛土底部に亀裂が生じたと仮定し7)て亀裂進展解析を行った。その結果,以下の事を示した。〇8)盛土底部に発生した亀裂の亀裂先端近傍応力場は典型的な開口型亀裂の応力分布を示し,亀裂進展方向は鉛直参 考 文 献財団法人国土技術センター:北上川等堤防復旧技術検討会報告書,http://www.thr.mlit.go.jp/,2014年3月12日取得.財団法人国土技術センター:河川土工マニュアル,平成21年 4月,http://www.jice.or.jp/,2014年3月12日取得.余川弘至,田辺 晶規,八嶋厚,杉戸真太,沢田和秀,久世益充,中山修,星加泰央:地震動の加速度振幅と継続時間が河川堤防の変形に及ぼす影響,日本地震工学会論文集 Vol. 9, No.5,5_1-5_20, 2009.中田光彦,澤田純男,後藤浩之,吉田望,飛田善雄:引張破壊を考慮した液状化地盤上における盛土の地震時破壊性状に関する研究,第47回地盤工学研究発表会,2012.川瀬貴文,新保泰輝,鈴木達也,矢富盟祥:動的 X-FEM を用いた引張亀裂を有する盛土の地震時破壊形態に関する基礎的研究,第48回地盤工学研究発表会,2013.Sasaki, Y., Moriwaki, T. and Ohbayashi, J.: Deformation process of anembankment resting on a liquefiable soil layer, Deformation andprogressive failure in geomechanics, Proc. IS-Nagoya’97, pp.553-558,1997Belytschko,T., Chen, H., Xu, J., Zi, G. : Dynamic crack propagationbased on loss of hyperbolicity and a new discontinuous enrichment, Int.J. Numer. Meth. Engng., Vol.58, pp.1873-1905, 2003.李炳奇, 矢富盟祥:陰解法リターンマップ手法を用いた圧縮荷重下におけるき裂先端近傍場の X-FEM 解析, 応用力学論文集,Vol.8, pp. 461-470, 2005.( 2014.3.31 受付)上向きである事が判明した。これにより,亀裂は開口しながら盛土中をまっすぐに進展していき,天端へと到達する217 On an earthquake-induced separation failure ofa river dike by a crack extension analysisTaiki Shimbo1,Chikayoshi YATOMI21Researcher, GODAI Kaihatsu Corporation2 Professor emeritus, Kanazawa UniversityAbstractA river dike has several earthquake-induced failure modes because of many cracks in an embankment. In particular ,asoil liquefaction induces an opening separation of an embankment into some blocks. To elucidate the failure modes, itis important to consider the extension process of some cracks in an embankment. By assuming two initial straightcracks at a bottom of an embankment and a liquefaction induced weak foundation under the embankment, weexamine a crack extension X-FEM analysis based on the hoop stress criterion. As a result, we obtain the openingseparation of the embankment into three blocks.Key words: River dike, Separation failure mode, X-FEM, Crack extension analysis218
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  • タイトル
  • 粘土基礎地盤上の河川堤防の被災メカニズムに関する一考察
  • 著者
  • 小高猛司・野田利弘・吉川高広・高稲敏浩・李圭太・崔瑛
  • 出版
  • 地盤工学会特別シンポジウム -東日本大震災を乗り越えて-
  • ページ
  • 219〜224
  • 発行
  • 2014/05/14
  • 文書ID
  • 67563
  • 内容
  • 地盤工学会特別シンポジウム-東日本大震災を乗り越えて-24粘土基礎地盤上の河川堤防の被災メカニズムに関する一考察小高猛司 1,野田利弘 2,吉川高広 3,高稲敏浩 4,李 圭太 5,崔 瑛 11名城大学・理工学部社会基盤デザイン工学科2名古屋大学・減災連携研究センター3名古屋大学大学院・工学研究科博士後期課程4淺沼組・技術研究所5建設技術研究所・大阪本社水工部概要東日本大震災では,粘土基礎地盤上の河川堤防において堤体が液状化する被災事例が見られた。本論文では,軟弱地盤上の河川堤防を対象に,地震発生前の築堤過程から地震後まで含めて,一連の解析を実施することにより,河川堤防の被災メカニズムについて考察した。具体的には,水-土連成有限変形弾塑性 FEM解析コード GEOASIA を用いて,1) 地震前の築堤に伴う圧密沈下と閉封飽和域の形成,2) 地震時の堤体液状化,3) 軟弱粘性土基礎地盤への堤体の即時沈下,4) 地震後の長期にわたる継続沈下,などを検討した。その結果,堤体の液状化による変状の他,粘性土基礎地盤においては長い継続時間の地震動によって即時的な沈下も発生する事例があることが示された。キーワード:河川堤防,堤体液状化,閉封飽和域,粘性土基礎地盤,即時沈下1.はじめに続する沈下,である。震災後に行われてきた多くの河川堤防の被災メカニズムの検証では,1)がすでに発生している平成 23 年 3 月 11 日に発生した東北地方太平洋沖地震に前提で,2)が詳細に検討されてきているが,その検討にあおいて,軟弱粘土地盤を基礎地盤とする河川堤防が大変状たっても粘性土地盤の地震時挙動についてはほとんど考する被害が多数発生した。この原因は,堤体下部の閉封飽慮されていないのが現状である。和域が地震時に液状化したためであると考えられている。2.閉封飽和域とは,堤防築堤によって粘性土基礎地盤が長期粘性土の室内試験とモデル化にわたり圧密沈下し,砂質土堤体が地下水位以深まで沈み込むことにより堤体下部に形成される高含水状態の領域数値解析に先立ち,実際に東日本大震災で被災した河川のことである。すなわち,東北地方では堤体内に閉封飽和堤防近傍からサンプリングした粘性土を用いて室内三軸域が多く存在したために,震災前にはあまり想定していな試験を実施し,数値解析に用いる粘性土の弾塑性パラメーかった堤体自身の液状化による大変状が多数発生したとタを決定した。具体的には,典型的な大変状被害が発生しされている。しかし,この堤体大変状のメカニズムを検討た堤防の堤外地にて,築堤の影響を受けていない粘性土をするためには,閉封飽和域ありきで砂質堤体の液状化のみ深度 0.5 ~3.5m から採取し,圧密試験と三軸試験( CU 試を議論するのではなく,粘性土基礎地盤が地震時に果たし験)を実施した。図 1 はぞれぞれの深度で実施した三軸試験結果とそのた役割を丁寧に評価してみる作業も必要である。本研究では,地盤解析で多くの実績を有する水-土骨格シミュレーションの結果を同時に示したものである。構成GEOASIA1)2)を用いて,粘性土基礎地盤モデルは,修正カムクレイモデルに構造,過圧密,異方性上の河川堤防で想定される一連の現象を解析し,東日本大の概念を導入した SYS Cam-clay model3)~6)を用いている。震災によって被災した河川堤防の被災メカニズムを検討ただし,今回の解析では異方性の発展は考慮していない。する。すなわち,時系列で示すと,1) 築堤後の長期圧密表 1 および 2 にシミュレーションで設定した粘性土の初期連成有限変形解析による堤体の基礎地盤へのめり込み沈下とそれに伴う堤値と弾塑性パラメータをそれぞれ示す。供試体毎の試験結体下部の閉封飽和域の形成,2) 地震時の堤体の液状化に果のバラツキが大きいので,初期値は供試体ごとに異なる伴う変状,3) 継続時間の長い地震時に発生した粘性土基ものと仮定しているが,弾塑性パラメータは今回すべての礎地盤の即時変形,そして 4) 地震後にも長期にわたり継供試体に対して同一としている。219 表 1 粘性土の初期値0.5~0.95m採取位置値2.5~3.5m2.392.282.542.422.512.402.652.57v (kPa)1002001002001002001002000.00.00.00.00.00.00.00.0初期構造の程度 1 / R * 01.31.11.31.51.31.32.32.8初期過圧密比 1 / R 02.381.451.271.111.441.051.421.100.5450.5450.5450.5450.5450.5450.5450.545初期鉛直応力期1.5~2.5mv0初期比体積初1.0~2.0m初期応力比0初期異方性の程度0200Deviator stress q (kPa)Deviator stress q (kPa)表 2 粘性土の弾塑性パラメータ10000100200Mean effective stress p (kPa)200弾塑性100限界状態定数 M1.50NCL の切片 N2.54圧縮指数0.27膨潤指数~~10Shear strain20構造劣化の塑性尺度(IREV)s (%)pDv と D s p の割合 c sDeviator stress q (kPa)Deviator stress q (kPa)構造劣化指数10000100200Mean effective stress p (kPa)0.30ポアソン比00(a) 深度 0.5~0.95m2000.030発展則200a (b c 1.0)正規圧密土化指数回転硬化指数br100回転硬化限界面00物性10Shear strain土粒子密度20msmb(g/cm3)40.500.102.000.0011.002.650s (%)(b) 深度 1.0~2.0m図 1 に示す三軸試験における軸差応力~軸ひずみ関係200Deviator stress q (kPa)Deviator stress q (kPa)より,いずれの試験ケースにおいても明確なピークが見ら10000100200Mean effective stress p (kPa)れず,軸差応力は単調増加している。有効応力経路に着目200すると,(a)の浅い深度の供試体では,試験途中でわずかに正のダイレイタンシーを伴う過圧密挙動が現れている。図1001(b)~(d)の試験結果の軸差応力に着目すると,いずれも初期有効拘束圧 100kPa の場合の最大軸差応力が 110kPa 程度,0010Shear strain初期有効拘束圧 200kPa 時の最大軸差応力が 180kPa 程度で20s (%)ほぼ同一である。これに対し,深度が最も浅い(a)の最大軸差応力は他ケースより 50kPa 程度大きいが,この深度の粘(c) 深度 1.5~2.5m200Deviator stress q (kPa)Deviator stress q (kPa)性土は他深度に比べて砂分が卓越していることが原因と10000100200Mean effective stress p (kPa)考えられる。2003.1003.10010Shear strain粘性土基礎地盤上の堤防の地震時挙動の解析解析条件前章で示した被災堤防で採取した粘土の力学試験結果20s (%)をもとに,粘性土基礎地盤上の堤防の築堤~地震時~地震後挙動について GEOASIA1)2)を用いて事例解析を実施する。(d) 深度 2.5~3.5m解析に用いた有限要素メッシュおよび境界条件を図 2図 1 三軸試験と SYS Cam-clay model によるその再現に示す。(太線:試験値,細線:解析値)220 12.5m排水境界50010m5m350m両端周期境界5m盛土材(表 3 参照)排水境界1:2.51:2.55mDeviator Stress q (kPa)5m12.5mDeviator Stress q (kPa)非排水境界2500水位粘性土10m砂質土2.05m加速度(gal)表 3 基礎地盤と盛土の材料定数1.502.540.270.0300.31.501.800.100.00220.1発展則パラメータpDv と D p の 割 合1.00.50.952.21.01.00.0803.50.90.11.01.02.00.0011.02.05.01.00.201.00.2物性土粒子密度(g/cm3)s透水係数 k (cm/s)2.6368.25×10-32.6505.56×10-62.6011.00×10-5初期値初期比体積 v 0初期応力比 K 01.6230.62.5200.61.02.90.61.550.61.81.0初期構造の程度 1 / R * 0初期異方性の程度 K0-2 0 0盛土材1.201.980.0450.0200.15構造劣化指数 a構造劣化指数 b構造劣化指数 c正規圧密土化指数 m回転硬化指数 br回転硬化限界面 m b0200400M ean Effective Stress p' (kPa)図 3 盛土材の非排水せん断挙動のシミュレーションm a x = 3 9 3 .7 ga l100200時 間 (se c )-4 0 00300(a)入力地震動フーリエ振幅(gal・sec)粘性土弾塑性パラメータ限界状態定数 MNCL の切片 N~圧縮指数膨潤指数 ~ポアソン比s20200図 2 有限要素メッシュおよび境界条件cs200400非排水境界粘性境界(Vs=300m/sec)砂質土10Shear Strain εs (%)4006004002000 -21010-1100周期(sec)101102(b)フーリエ振幅図 4 入力地震動(補正後)解析に用いた材料定数および初期値を表 3 に示す。粘性1.629土については,前章で設定した土質パラメータを用いる。基礎地盤の砂質土については,液状化しない密な砂を設定した。盛土材料は,試料を採取できなかったため,他の堤防盛土から採取したものを用いた。図 3 はこの盛土材の非検討対象とした基礎地盤は 2 層からなる地盤で上層 10m排水せん断挙動をシミュレートしたものであり,実際の解が粘性土地盤で,その下 5m を砂質土層とした。地盤の初析と同様に比体積,構造の程度を一定として,過圧密比を期状態は構造の程度,比体積は各層で均一として,土被り未知数として計算している。砂に近い中間土の挙動を示す圧に応じて過圧密比を鉛直方向に分布させた。水位面は,材料であることがわかる。地表面に位置し,水理境界は,地表面はそれぞれの水位に入力地震動については,2011 年 3 月 11 の KiK-NET 小応じた排水(静水圧)境界とし,両側面,下面は非排水境野田における観測波(EW 成分)を翠川の式により補正し界とした。また,工学的基盤面にあたる地盤下端は,底面今回の工学的基盤面での入力地震動とした。その入力波と粘性境界(Vs=300m/s)を設定し,地盤左右両端においてフーリエ振幅を図 4 に示す。50 秒および 100 秒付近に大同じ高さにある節点に等変位条件を課す「周期境界」としきな加速度があり,2 秒~4 秒付近に卓越した周期を持つた。堤体の盛土については,勾配 1:2.5,高さ 5m とした。地震動である。この地震動を,盛土載荷が完了し,圧密終施工過程を考慮して 1 層 0.5m ごとに有限要素を追加生成了した後の地盤に入力し,地震時挙動の解析を行った。することで再現した。221 点C点Ay点Bx0.1x位置図3点A点B点D0-0.110 1 102時間(days)10310-1-2-30104点A点B点C点D1000沈下量(m)沈下量(m)(a) x 方向変位盛土載荷終了0.20.6300-100.4200時間(sec)(a) x 方向変位-0.2位置図2-0.210-2 10-1 100点D点Byx方向変位量(m)x方向変位量(m)0.2点A点D0.297m点A点B点D10-2 10-112100101 102時間(days)10330104点A点B点C点D100200(b) 沈下量(b) 沈下量図 5 盛土載荷による変位~時間関係加速度(gal)200010000-1000点A点B点C点D-200000.0300時間(sec)100200時間(sec)300(c) 応答加速度(x 方向)0.25 以上図 7 地震中の変位および応答加速度図 6 盛土載荷による圧密終了時のせん断ひずみ分布3.3(地震入力直前)地震時挙動図 7 は地震入力時の x 方向変位,沈下,x 方向の応答加3.2速度の時刻歴を示す。地震終了時には,盛土の法尻点 A,築堤に伴う圧密沈下点 D で 2.5m 側方へ変位し,盛土天端中央点 C で 2.5m,盛図 5 に築堤に伴う盛土載荷による地盤の沈下~時間関係を示す。水平地盤に 2 日間で築堤した後に 1000 日にわ土中央地盤面点 B で 1.7m の沈下となった。水平変位も沈たっての変状を計算した。最終的に,盛土の法尻点 A,D下量も第 2 波目以降に大きく増加しており,地震動の継続で 0.15m 側方へ変位し,盛土中央地盤面点 B で 0.30m の時間が長かったことが,堤防の変状を大きくした主要な要沈下となった。圧密終了時のせん断ひずみ分布図を図 6 に因のひとつであると考えられる。示す。有限変形解析のため,堤体築堤に伴い基礎地盤が沈図 8, 9 および 10 に,それぞれせん断ひずみ分布図,平下していることがわかる。天端直下での 30cm 程度の沈下均有効応力分布図および構造の程度の分布図を示す。図 8を最大として,堤体盛土の下部が下に凸に基礎地盤にめりのせん断ひずみ分布図を見ると,第 1 波目の地震動(b)にお込み,圧密沈下に伴って地下水位以下となった閉封飽和域いては,大きな変化が明確に現れておらず,第 2 波目以降に相当する部分が新たに形成されたことがわかる。ただし,の地震動(c)において急激に変化が生じており,継続時間がこの段階ではそれほど大きなめり込み量ではない。短ければ,大きな変状に至らなかったことがわかる。222 400(b)(c)(d) (e)加速度(gal)2000(f)(a)-200-4000(a) 地震前300(a) 地震前(b) 50.78 秒後(a) 地震前(b) 50.78 秒後(c) 101.08 秒後(b) 50.78 秒後(c) 101.08 秒後(d) 125.0 秒後(c) 101.08 秒後(d) 125.0 秒後(e) 153.0 秒後(f) 地震終了時0.0max=393.7gal100200時間(sec)0.25 以上図 8 地震中のせん断ひずみ分布図(d) 125.0 秒後(e) 153.0 秒後(e) 153.0 秒後(f) 地震終了時(f) 地震終了時75.0kPa 以上0.0図 9 地震中の平均有効応力分布図2230.03.0 以上図 10 地震中の構造の程度の分布図 図 9 の平均有効応力分布を見ると,50 秒付近の第 1 波点C点A目でも有効応力の変化は堤体で現れているが,変状をもたyらすまでの変化ではなかった。101 秒以降の第 2 波目以降には堤体全域に有効応力の低下領域が広がり,特に低下がx著しい部分で図 8 に示すようにせん断ひずみも局所的にせん断ひずみが大きくなり,盛土底面で徐々にせん断ひず2x方向変位量(m)大きく発生している。具体的には,101 秒には法尻付近で3みの大きい領域が広がり,ついには,盛土を貫通するようなせん断ひずみの局所化した様子がみられ,盛土の破壊した様子をみることができる。これは,図 9 の有効応力の低下域とよく一致している。一方,図 10 に示す堤体の構造の程度に着目すると,第位置図10点A点B点C点D-1-2-301 波目では構造の劣化がほとんど生じず,地震動の長い継続を経た第 2 波目に大きな劣化を生じ,大変状に至ってい200400時間(sec)600800(a) x 方向変位-1る。本解析では堤体土を中間土に近い設定をしたために,地震動の継続時間の影響が現れたが,良質な砂質土であれ0沈下量(m)ば構造の劣化がもっと早く,液状化の発生も早いために地震動の継続時間の影響は現れない場合もある。3.4点D点B123地震後挙動地震後の挙動について,図 11 に点 A,B,C,D における地40点A点B点C点D200震開始時を基準とした変位量を示す。x 方向の変位は,法400時間(sec)600尻部の点 A と点 D では,地震後に徐々に大きくなる傾向(b) 沈下量がある。地震開始から 730 秒付近で,大きなせん断ひずみ図 11 地震終了後以降の変位量800が生じて崩壊した盛土天端付近の変形がさらに大きくなり,隣接する要素が重なったため計算は停止した。ただし,によって,堤体の基礎地盤への即時沈下を含む変状度合は,計算が停止するまでは変形はわずかながら徐々に進行し堤体と基礎地盤との剛性比によって異なることが示されている。そのことから,粘性土基礎地盤上の堤防においてている。したがって,ここで示した変形量は実際の被災堤は,地震後においても沈下が数年に亘って徐々に継続する防の変形量を定量的に模擬するものではなく,本解析結果ことが示唆される。完全に切り返して地盤改良などを実施は堤体変状メカニズムの一考察に資するものである。した堤防では問題はないが,むしろ地震時には切り返す程の大きな変状がなかった堤防などにおいて,継続沈下の問参1)題が後になって顕在化する可能性もある。4.まとめ2)現状の被災メカニズムの検証においては,粘性土の地震時変形は考慮されておらず,被災堤防の開削調査で観察された堤体のめり込みは,すべて地震前から存在していたこ3)とが前提となって議論されている。そのため,粘性土はR-O モデルなどのほとんど変形が発生しないモデルで事後検証解析がなされており,堤体下部の閉封飽和域の液状4)化のみに議論が集中している。しかしながら,粘性土地盤についても丁寧に弾塑性体でモデル化して検証すると,地震時にも変形が発生していた可能性があることがわかる。5)さらに,堤体材料についても細粒分を含む中間土的な砂質土であれば,地震動の継続時間が堤体変状の度合いを決め6)る重要な要素であったことがわかる。堤体材料についても丁寧な弾塑性モデルを用いた議論が必要であることがわかる。なお,別途実施しているパラメトリックスタディー224考文献Asaoka, A. and Noda, T.: All soils all states all round geo-analysisintegration, International Workshop on Constitutive Modelling Development, Implementation, Evaluation, and Application, HongKong, China, pp.11-27, 2007.Noda, T., Asaoka, A. and Nakano, M.: Soil-water coupled finitedeformation analysis based on a rate-type equation of motionincorporating the SYS Cam-clay model, Soils and Foundations, Vol.48,No.6, pp.771-790, 2008.Asaoka, A., Nakano, M. and Noda, T.: Superloading yield surfaceconcept for the saturated structured soils, Proc. of 4th European Conf.on Numerical Methods in Geotechnical Engineering, Udine, Italy,pp.233-242, 1998.Asaoka, A., Nakano, M. and Noda, T.: Superloading yield surfaceconcept for highly structured soil behavior, Soils and Foundations,Vol.40, No.2, pp.99-110, 2000.Asaoka, A., Noda, T., Yamada, E., Kaneda, K. and Nakano, M.: Anelasto-plastic description of two distinct volume change mechanisms ofsoils, Soils and Foundations, Vol.42, No.5, pp.47-57, 2002.Asaoka, A. : Consolidation of clay and compaction of sand – an elastoplastic description, Proc. of 12th Asian Regional Conference on SoilMechanics and Geotechnical Engineering (12th ARC), Keynote Paper,Singapore, Vol.2, pp.1157-1195, 2003.
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  • タイトル
  • 軟弱地盤上の矢板補強した河川堤防の地震時評価
  • 著者
  • 野田利弘・中井健太郎・加藤健太
  • 出版
  • 地盤工学会特別シンポジウム -東日本大震災を乗り越えて-
  • ページ
  • 225〜231
  • 発行
  • 2014/05/14
  • 文書ID
  • 67564
  • 内容
  • 地盤工学会特別シンポジウム-東日本大震災を乗り越えて-25軟弱地盤上の矢板補強した河川堤防の地震時評価野田利弘 1,中井健太郎 2,加藤健太 21名古屋大学・減災連携研究センター2名古屋大学大学院・工学研究科概要軟弱地盤上に築造された河川堤防の耐震性を静的/動的水~土連成有限変形計算によって評価した。その結果,粘性土が鋭敏で構造高位な場合には,砂質土の液状化に加えて,粘性土内から発生する滑りによって河床の隆起や堤体の更なる沈下が引き起こされ,堤防の機能が著しく低下する危険性があることを示した。また,鋼管矢板による河川堤防の補強効果について検討した結果,矢板が支持層まで打設されていない場合には側方流動を抑止することができず,耐震効果がほとんど得られないことを示した。しかしながら,矢板間をタイロッドで連結することによって高い拘束効果が発揮され,矢板の根入れ深さが短くても,沈下量および側方変位低減に効果的であることがわかった。キーワード:地震応答解析,河川堤防,軟弱地盤,液状化,鋼管矢板1. は じ め に2. 計算条件東北地方太平洋沖地震では河川堤防においても甚大な解析に用いた河川堤防構築後の有限要素メッシュ図を被害が発生した。南海トラフでの巨大地震の発生が危惧さ図 1 に示す。地層構成は,深部から洪積層(支持層),それている中,河川堤防の耐震性を適切に評価し,必要な耐の上部に軟弱で鋭敏な粘性土層,表層に緩い砂質土層が存震対策を施すことが急務となっている。本報では,深部か在している水平成層地盤とした。この初期地盤に対して堤ら洪積層(支持層),粘性土,砂質土で構成される軟弱地防高 5m,堤防天端は右岸が 7m,左岸が 14m,法面勾配が盤上に築造された河川堤防の耐震性を静的/動的水~土1:1 の河川堤防を築堤した後で,河道部分の掘削を行い,連成有限変形計算によって評価するとともに,鋼管矢板に河川の水位を T.P.+1.2m まで上昇させた。水理境界は,地よる補強効果について検討した。用いた解析コードは,砂表面が地下水位面と一致するように水圧ゼロとし,下端及から粘土さらに中間土までを同じ理論的枠組みで記述可び両側面は非排水条件,堤外地側の要素境界は水位の高さ1)能な土の弾塑性構成式(SYS カムクレイモデル )を搭載に応じた水圧を要素に与える排水境界としている。解析に用いた弾塑性性状の一覧を表 1 に示す。材料定数した動的/静的水~土骨格連成有限変形解析コードGEOASIA である。2)は東海地方の河川堤防のボーリング調査で採取された試料を用いて行われた各種力学試験結果を SYS カムクレイ図 1有限要素メッシュと地層構成225 モデルで再現することによって決定している3)。図 3 に沖地震波を工学的基盤での Vs を考慮して 2 倍に増幅させた積砂の非排水三軸圧縮試験( CU 試験)結果を,図 4 に沖ものである(図 4)。地震時は境界両側端で周期境界を設積粘土の標準圧密試験および非排水三軸圧縮試験(UU 試定するとともに,地盤底面の全節点の水平方向に験)結果を示す。沖積砂層の N 値は 10 程度と小さく,液Vs=300m/s に相当する底面粘性境界を用い,地震波を地盤状化の危険性が高い。また,沖積粘土は正規圧密線の外側底面の全節点の水平方向に等しく入力した。への嵩張った圧縮曲線やせん断時のひずみ軟化挙動を示しており,構造高位な状態にあることがうかがえる。自然地盤の初期状態は,骨格構造の程度(構造,過圧密,異方性)および初期応力比は各層で均一とし,比体積を土被り圧に応じて分布させた。一方,盛土の初期状態は,締固めしながら嵩上げしていくことを考慮し,比体積が層内で均一とし,土被り圧に応じて過圧密比を分布させた。表1解析に用いた弾塑性性状盛土砂質土粘性土洪積層1.50弾塑性パラメータ限界状態定数 M1.381.331.50NCL の切片( p =98kPa) N1.801.932.402.00圧縮指数 0.2250.0830.2100.080膨潤指数 ~0.0120.0030.0350.0010.30.30.30.3構造劣化指数 a0.802.200.452.00 Dv~ポアソン比図43. 無対策時の地震中~地震後挙動発展則パラメータp入力地震動と D s p の比 c s0.350.700.300.60正規圧密土化指数 m2.000.1010.010.03.1回転硬化指数 br1.202.000.010.00回転硬化限界面 m b1.000.701.000.00図 5 は,左岸堤防中央直下における砂質土の地震中~地2.111.95~1.863.09~3.041.71~1.69有効応力 p が大きく減少する。主要動付近では応力状態0.5450.5450.5450.545震後の要素挙動である。地震中の繰返し載荷に伴って平均初期値比体積 v0応力比  0初期構造の程度 1 / R初期過圧密比*01 / R0初期異方性の程度  0土粒子密度  s (g/cm3)透水係数 k (cm/s)各層の要素挙動4.001.2095.01.10がほぼ q  p  0 となって液状化し,この時,大きなせん1.87~3.062.261.0235.6断ひずみが発生する。地震動終了後は,土要素は剛性回復0.000.3750.000.002.5122.6692.7112.650を示しながら圧密沈下を生じる(液状化に伴う揺すりこみ1.0×10-41.0×10-31.2×10-61.0×10-5沈下)。図 6 は,同じく左岸堤防中央直下における粘性土の要素挙動である。砂質土ほどではないが,粘性土であっても p が減少する。詳細は後述するが,これは初期に高位な構造が地震動によって乱されたためである。地震終了後は,繰返し載荷中に蓄積した過剰間隙水圧の消散とともに大圧縮を生じる。図2図3砂質土の非排水せん断挙動(実験,計算)粘性土の非排水せん断挙動と圧縮挙動(実験,計算)解析に用いた入力地震波は,中央防災会議(2004)で策図5定された名古屋港付近における東海・東南海・南海 3 連動226堤体中央直下における砂質土の要素挙動 水平成層地盤では,構造の程度がほとんど低下していない。これは,河川堤防直下のように偏心荷重を受ける箇所では,地震中に大きなせん断変形が発生し,地震動によって地盤が大きく乱されていることを示している。図63.2堤体中央直下における粘性土の要素挙動地震中のせん断ひずみと構造の程度の経時変化図 7 は地震発生前~地震発生後までのせん断ひずみ分図8布の経時変化を示す。主要動付近(地震開始から 30 秒経構造の程度の経時変化過)では,砂質土層の液状化に伴って堤体が沈下し,法尻付近が側方へ流動し始める。その後,粘性土層の上部にせ3.3ん断ひずみが発生し,60 秒も経過したころには,この部図 9 は地震中に生じた左岸堤防中央における層別沈下分を起点として,堤内地・堤外地両方へ進展する滑りが発量を,図 10 は堤体法尻の水平変位量を示す。ともに左岸生する。滑り発生とともに粘性土層でも堤体直下の大きな堤防の数値であるが,右岸と大きな差異はない。堤体は沈下が発生する。2.5m の沈下とともに,法尻で 3.8m のストレッチング(堤地震中に生じる河川堤防の沈下および側方変位内地側に 2.0m,堤外地側に 1.8m)を示す。河川堤防の被害としては,砂質土層の液状化による沈下と側方流動に加え,粘性土層から発生した滑りに伴う河床隆起が河積の減少を引き起こし,堤防機能が著しく損なわれてしまう。図11 は地震後にそのまま 30 年間圧密放置した時の層別沈下量を示す。地震中に蓄積した過剰間隙水圧の消散とともに圧密が進行する。砂質土や盛土は地震終了から 1 日程度で沈下が収束するが,透水性の小さい粘性土では約 10 年かけて圧密が収束する。最終的には,堤体天端中央で 3.0mの沈下を生じる。図7せん断ひずみの経時変化(Case1)図 8 は地震発生前~地震発生後までの構造の程度の経時変化を示す。築堤とともに,堤防直下の構造の程度はある程度は低位化するが,地震発生前には依然として高位な図9状態を保っている。地震動の継続時間が非常に長いため,河川堤防直下の構造の程度は,図 6 で示したように徐々に低下していく。一方,上載荷重のない河川堤防から離れた227左岸堤防中央直下における天端沈下量と層別沈下量(地震発生~地震終了まで) 4. 補強効果の解析的検証4.1鋼管矢板打設による補強効果河川堤防の耐震対策としては,液状化による側方流動抑制を目的とした鋼管矢板による補強工法がしばしば用いられる。また,東日本大震災では,耐震目的ではないが,堤防建設時から残っている止水矢板が耐震性向上に寄与したという報告もある。ここでは,鋼管矢板の補強効果について検証するため,表 2 に示すように,鋼管矢板の打設図 10左岸堤防法尻における水平変位量箇所と根入れ深さを系統的に変えた解析を実施した。なお,鋼管矢板は一相系弾性体としてモデル化し,降伏モーメントに達した要素はヤング率を 100 分の 1 に減少させることで,簡易的に鋼管矢板の降伏を表現している。表2鋼管矢板の根入れ条件鋼管矢板図 11左岸堤防中央直下における天端沈下量と層別沈下量(地震発生~30 年後)解析結果から,河川堤防は地震終了時までに初期堤防高の約 50%(2.5m)の沈下を生じ,圧密沈下収束後には,沈下量は初期堤防高さの 61%(3.05m)にまで達した。図 12川表川裏Case1なしなしCase2短いなしCase3長い短いCase4短い短いCase5短い長いCase6長い短いCase7長い長いは明治以降に発生した地震動による河川堤防の沈下量と堤体初期高さの関係をまとめたものである4)。地震動の種すべての解析ケースにおける地震終了直後のせん断ひ類や規模,地盤の状態がそれぞれ異なるので定量的評価はずみ分布を図 13 に,左岸堤防の天端中央における沈下量難しいが,河川堤防の地震による沈下量は最大で初期堤防を図 14 に,堤体法尻における水平変位量を図 15 に示す。高さの 75%にまで達するが,それを超えることがなかった止水矢板の効果を把握するために,Case1, 2, 3 で河表側ことがわかる。本報告の解析は,軟弱地盤上に構築されたへの矢板打設効果を比較してみると,天端沈下量および堤河川堤防に巨大地震が入力された時の地盤変状を求めて体のストレッチング量に大きな差異は見られない。しかしきた。河川堤防の地震時変状(沈下量および側方変位)がながら,鋼管矢板の根入れが浅いと(Case2),側方流動を大きすぎるように思うかもしれないが,実測値と比べてみ抑えることができないばかりか,粘土層から発生する滑りてもあり得ない数値ではないと考えられる。が矢板先端の地盤深部で発生してしまい,河床隆起量が大きくなってしまう。一方,根入れを洪積層まで深くすると,堤体前面での変形抑止には多大な効果を得ることができる。しかしながら,逆に住居のある堤体背面側(堤内地)の水平変位や隆起を促進し,補強が逆効果となってしまっている。図 16 は,東北地方太平洋沖地震による関東地方の河川堤防被害をまとめたものであり,止水矢板の有無が堤体法尻の側方変位に及ぼす影響を検討している5)。観測結果を見てみると,本解析結果と同様に,止水矢板の存在は河表側(矢板打設側)の水平変位量の低減効果は発揮していたものの,堤体法尻におけるストレッチング量にはほとんど効果を発揮していない。図 12明治以降で観測された河川堤防の沈下量228 図 16東北地方太平洋沖地震による関東地方の河川堤防被害(止水矢板の有無による比較)河表・河裏側両方へ鋼管矢板を打設した Case4~Case7を見てみてみると,河表・河裏ともに根入れが洪積層まで深い Case7 では,堤体沈下量,堤体ストレッチング量とも図 13根入れの違いによる地震動終了後のせん断ひずみ分布に大きな低減効果が得られているものの,どちらか一方の根入れが不十分だと矢板は「逆ハの字」に開いてしまい,根入れが浅い方で大きなせん断ひずみと水平変位が発生する。「地震は最も弱いところを探して被害を与える」とはまさにこのことであり,対策の際は注意が必要であることがわかる。4.2タイロッド式矢板締切工法による補強効果前節の解析結果から,軟弱地盤上に築造された河川堤防の鋼管矢板のみによる補強では,十分に根入れ深さを深くしないと堤体沈下量や堤体法尻のストレッチング量とも図 14天端中央部における沈下量の比較(左岸堤防)に大きな低減効果を得ることができないことを示した。しかしながら,洪積層まで深く鋼管矢板を打設することは施工的にも経済的にも優れているとは言い難い。そこで本節では,堤体法尻のストレッチング抑止として川表・川裏の鋼管矢板上部をタイロッドで連結したタイロッド式矢板締切工法の耐震性について検討した。矢板の根入れ長さは川表,川裏ともに短い Case4 と同じとする。なお,タイロッドは矢板先端部の 2 節点間の距離が不変という制約条件を与えて再現した。図 17 は地震発生前~地震発生後までのせん断ひずみ分図 15布の経時変化を,図 18 は地震中に生じた左岸堤防中央に堤体法尻の水平変位量の比較(左岸堤防)おける層別沈下量を,図 19 は堤体法尻の水平変位量を示す。無対策(図 7)や鋼管矢板のみによる補強(図 13)と比べると,タイロッドで連結することで鋼管矢板上部の側方流動が抑えられ,砂質土および粘性土の沈下量が小さく229 5. おわりになるとともに,堤体法尻のストレッチング量低減に非常に大きな効果を発揮している。特に堤体直下の砂質土および粘性土の変形量が小さくなっており,矢板の根入れ深さが砂・粘土互層の軟弱地盤上の河川堤防では,地震中に砂質土層の液状化だけでなく,粘性土層に生じるすべりによ短くても大きな耐震効果を得ることができた。って河床の隆起や堤体の沈下が引き起こされ,堤防の機能が著しく損なわれることから,粘性土層も適切にモデル化した上で数値解析を行い,耐震性を評価することが重要である。また,河川堤防に設置された鋼管矢板は支持層までしっかり根入れすることで補強効果が発揮される。しかし,根入れが浅い場合には,地盤深部で滑りが発生してしまい,注意が必要である。また,根入れを深くしたとしても,堤防の片側にしか設置されていない場合には,その反対側の変状が大きくなり,かえって大きな被害が発生する可能性がある。しかしながら,矢板間をタイロッドで連結することによって高い拘束効果が発揮され,鋼管矢板の根入れ深さが短くても沈下量および側方変位低減に効果的であることがわかった。6. 謝辞図 17せん断ひずみの経時変化(Case4+タイロッド)本研究は,地盤工学会東日本大震災対応調査研究委員会「地盤変状メカニズム研究委員会(委員長:浅岡顕)」に関連する研究報告である。研究遂行にあたっては,JSPS科研費(21226012,25249064)および南海トラフ広域地震防災研究プロジェクト(文部科学省)の助成を受けた。ここに深く謝意を表する。図 18参 考 文 献1) Asaoka, A., Noda, T., Yamada, E., Kaneda, K. and Nakano, M.:. Anelasto-plastic description of two distinct volume change mechanisms ofsoils, Soils and Foundations,Vol.42, No.5, pp.47-57, 2002.2) Noda, T., Asaoka, A. and Nakano, M.: Soil-water coupled finitedeformation analysis based on a rate-type equation of motionincorporating the SYS Cam-clay model, Soils and Foundations Vol.48,No.6, pp.771-790, 2008.3) Noda, T., Takeuchi, H., Nakai, K. and Asaoka, A.: Co-seismic andpost-seismic behavior of an alternately layered sand-clay ground andembankment system accompanied by soil disturbance, Soils andFoundations, Vol.49, No.5, pp.739-756, 2009.4) 河川堤防の構造検討の手引き, 国土技術研究センター, 2002.5) 第1回地盤工学から見た堤防技術シンポジウム委員会報告・講演概要集, 土木学会地盤工学委員会堤防小委員会, pp.27-35, 2013.左岸堤防中央直下における天端沈下量と層別沈下量(地震発生~地震終了まで)図 19左岸堤防法尻における水平変位量230 Seismic assessment of river embankments with cut-off wall constructed on thealternatively layered soft groundToshihiro NODA1,Kentaro NAKAI2,Kenta KATO21Nagoya University, Disaster Mitigation Research Center2Nagoya University, Department of Civil EngineeringAbstractSeismic stability of river embankments constructed on the alternatively layered soft ground was evaluated usingGEOASIA. The results showed that disaster prevention function was significantly reduced by not only theinstantaneously settlement and lateral flow of the liquefiable sandy layer but also the sliding failure of the soft clayeylayer seated below the sand. Moreover, aseismic effect of cut-off wall embedded to the soft clayey layer wasinvestigated. Consequently, slip failure occurs in deeper part of the pile’s tip which causes larger upheaval of riverbedalong with no significant difference/effect for the quantity of crown settlement and stretching of the embankment. Onthe other hand, if the pile was embedded to the deeper layer, there was obvious effect to restrain the deformation atthe river side; on the contrary, the deformation at the interior land side becomes larger which means reinforcementproduces the opposite effect. On the other hand, if the steel pipe sheet pile of the river side and land side wereconnected, significant effect to restrain the deformation was obtained even the embedded depth were not deep enoughto Diluvial layer.Key words: seismic response analysis, river embankment, soft ground, liquefaction, steel pipe sheet pile231
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